巻頭言
情報環境の整備をめぐる課題
平松 一夫(関西学院大学学長)
関西学院大学の会計学教員として私が初めて情報教育にかかわったのは26年前、1979年 のことでした。アメリカ留学中に学んだBASIC言語で会計に関するプログラムを作成し、簿記の授業などに活用したのです。その後、他の教員や院生と共同して、日経企業財務データを分析するプログラムを開発し、あわせて教材も何冊か出版しました。これは経営分析に役立つこともあり、学内でももっとも利用者の多いプロジェクトとなりました。
時を経て1997年には、インターネットを用いてアメリカ、スイス、スペイン、日本の4か国を結び、大学院レベルで国際会計の実験授業を行いました。時差もあり言語の問題もありました。また、私費で賄った施設は十分でなく、授業が取得単位に算入されることもなかったので院生にとっては厳しい授業でした。しかし、この授業はその後アメリカ公認会計士協会・アメリカ会計学会から表彰され、院生の苦労も報われることになりました。
2002年に私は関西学院大学の学長に就任しました。私自身は情報の専門家ではありませんが、全学的な立場から情報教育を見渡したとき、様々な面で改善すべき事柄があることに気付かされます。大学によって抱えている課題は異なることは承知していますが、本学において情報教育・情報環境に関連して、いま私が取り組もうとしている点を以下にいくつか紹介させていただきます。
1)情報教育の担当教員
情報教育の充実を図るためには、情報教育担当の教員を各学部に配置することが望ましいが、財政的に困難である。そこで、学内組織である情報メディア教育センターに情報教育担当の教員を増員し、センターにおいて各学部の学生が受講できる体制で教育の充実を図ることが現状では有効と考えられる。
2)教材の作成援助とデータベース化
授業で配布されている資料を電子化し、ホームページから取り出せるようにするため、センターが広報活動と補助を行う。
3)e-Learning
e-Learningは、本学ではなお今後の課題となっている。e-Learningシステムの活用は、学生の学習意欲を高めるための道具でなくてはならない。また、教材は広く社会に役立ち、本学以外でも要求されるようなソフトの作成を目指さなければならない。しかし、この部分は大学としてかなりの覚悟が必要であるため、当面は市販のコンテンツの活用を考えることが望ましいと考える。
4)図書館における研究データベースの整備
図書館には学内の研究に関する教員の学術論文・研究ノートなどを閲覧できるようにデータの整備を行う必要がある。
5)大学ホームページの充実
受験生やその保護者は大学の情報をホームページから得ることが多い。また、例えば貴重な講演会などはビデオ形式にして見られるようにすることなども、大学としては必要である。ホームページ作成には人的・資金的資源の投入を惜しむべきでない。
学長として2期目を迎えた私にとって、情報教育の充実は最大の課題であると認識しています。多くの方々からのご示唆を乞いたいと思っています。
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