私情協ニュース6
平成17年度 大学情報化職員基礎講習会報告
本講習会は、平成17年7月6日(水)から8日(金)までの2泊3日の日程で、静岡県浜松市の浜名湖ロイヤルホテルを会場として、大学・短期大学の職員を対象に開催し、昨年度より約40名増の256名(114大学、2短期大学)の参加があった。
学生一人ひとりへの適切な人材育成と質保証は、学生、保護者、社会に対する大学の責務であり、それを果たすため、各大学では効果的な教育の実現を目指して、教育内容、支援組織と体制、環境整備に対し創意工夫し試行錯誤している。このような中で、大学職員は教育における情報化の本質を再確認し、教育目標を的確に把握した上で、目標の達成に向けた日常業務への努力が求められている。
本講習会は、業務経験の浅い大学・短期大学の職員を対象に、上記を実現するための知識や課題について、講師の経験を踏まえて分かりやすく解説し、職員に求められる役割と責任を明らかし、参加者の意識改革に寄与することを目的とし開催した。
初日の全体会では、研修運営委員会の石井博文運営委員長より講習会の主旨説明と、事務局より調査結果報告などを行い、その後、2日間にわたり講義を行った。
講義の形式は、参加者の要望や意見を取り入れ見直した結果、参加者が4グループに分かれて各講師が入れ替わり講義するというこれまでの形式から、1会場ですべて講義を行う形式へ変更した。
各講義内容は下記の通りである。
講義−1 大学改革のための組織・体制
講師:
石井 博文氏
(芝浦工業大学学事部長)
教員の要求を常に意識し、最適な環境の構築や授業運営を支援するためには、職員の立場から授業改善に向けた教育方法や教育・学習環境などの提言を行い、教育現場で求められる人的支援、学習指導に必要な個人情報の提供など、日常的に教員と連携し、組織力をもって達成していく必要がある。
講義では、大学改革に向けて、職員はどのような意識を持ち、どのような役割を担うべきか、大学改革における職員の役割について、組織・体制を中心に教職員一体の協業体制の事例等を交えて解説した。
講義−2 これからの教育支援
講師:
梶田 晶子氏
(東海大学総合情報センターシステム開発課課長)
教育改善の実現には、ファカルティ・ディベロップメント(FD)など、教員の教育指導能力向上のための組織的な取り組みが必要で、そのためには、他大学の取り組みの情報収集や紹介、授業を円滑に運営するためのIT活用能力の研修、FD研究会の組織化、学習指導に必要な個人情報の提供、教育の産学連携の企画、教育業績の評価制度の企画等について、職員の立場から環境構築することが望まれる。講義では、教育の質的向上を実現するための組織的な教育支援体制のあり方について解説した。
講義−3 戦略的な環境整備
講師:
濱中 正邦氏
(青山学院大学事務局次長)
教育を充実させるためには、学生がいつでもどこでも学習できる、教員と学生が日常的にコミュニケーションがとれる、授業に学外の専門家の解説や助言を取り入れられる、授業を自動的に録画しe-Learningが可能など、教育の基盤環境としてIT環境の充実が不可欠である。
講義では、このような新しい教育を実現するために、ネットワーク環境やマルチメディア教室、携帯電話の活用、e-Learning環境など、効果的な環境整備について成功事例や最新の技術動向を踏まえながら解説した。
講義−4 大学としての情報活用の可能性
講師:
斉藤 和郎氏
(札幌学院大学総務部情報処理課長)
教育研究支援・人材育成という目標を達成するため、重要な資源として学内のあらゆる情報を電子化し、利用しやすいようにデータベース化し、役員、教員、職員、学生、社会がそれぞれの目的に応じて活用できることが求められる。また、個人情報保護法の施行に伴い、大学での情報管理のあり方が厳しく問われていることに鑑み、技術的な対策や構成員の情報の取り扱いについて、適切な実施マニュアル等のセキュリティ対策が必要となっている。
講義では、すべての職員が様々な立場から戦略的に情報を活用できるよう、情報活用の可能性や適切な管理手法、著作権対策などについて、活用事例を交えながら解説した。
2日目前半に講義は終了し、その後、フォローアップディスカッションを行い、講師が壇上に上がって横断的に質問への回答や考え方を補足し、参加者にとってより広がりのある回答が得られるよう工夫した。
2日目後半から最終日の3日目にかけてグループディスカッションを行い、講義を通して参加者が得た考えを基に、「大学」の共通モデルを作り上げた。また、合宿形式の特徴を生かし、初日夜の懇親会と2日目夜のフリーディスカッションでは、参加者が講義内容の感想や疑問点、相互の大学の情報交換などを活発に行い、グループディスカッションでの不足部分を補うよう、相互の見識をさらに深めることができた。
3日間を通して意欲的な参加者の姿を見ると、情報を一つの視点としながらも、大学本来の目的を達成するためには何をどのように考えていかなければならないのか、目標に向かってどのような実践形態があり得るのかを、参加者それぞれの考えの中で広がりと具体性を持たせることができたのではないかと実感できた。
今後もより満足度の高い講習会を目指して、今年度の開催結果や参加者アンケートを踏まえて、研修運営委員会を中心に内容を充実させたいと考えている。そのために、今後とも関係各位の積極的な参加と成果を高めるための提言を期待している。
最後に、校務ご多忙のところ、講習会のため時間を割いてプログラム作成から講義に臨んでいただいた講師の方々に心から感謝します。
文責:
研修運営委員会
山梨学院大学 石丸 勝也
【目次へ戻る】
【バックナンバー 一覧へ戻る】