私情協ニュース2
平成18年度 短期大学部門検討会議開催報告
今年度の短期大学部門検討会議は、平成18年6月18日(土)に帝塚山大学東生駒キャンパスで開催された。授業内容・方法を改善し、向上させるための組織的な取り組み(ファカルティ・ディベロップメント)を研究するため、教員の意識改革、IT活用を含めた教育力、教職員による学生個人指導の工夫などの課題について討議することを目的とし、事例紹介を踏まえて全体討議を行った。
事例紹介1
「専門職業人となる人材の基盤的英語教育の実践」
北星学園大学短期大学部 吉田かよ子氏(短期大学部長、北星学園常任理事)
専門職業人となる人材が備えるべき幅広い教養知識を在学中に習得させるため、オンデマンド授業配信とe-Learningの教材開発を核としたカリキュラムの拡充、学生の学習ニーズに合致した授業運営と個別指導に取り組まれている事例を紹介いただいた。オンデマンド授業のコンテンツは学科教員が独自に制作し、学習管理システムも大学仕様にアレンジした。学生の習熟度に合わせて学習できるよう、リーディング、ワードトレイナー、サウンドアーカイブシステムなどの機能を備えたe-Learningを導入し、教材はすべて学科教員が制作した。この他、オーラル・イングリッシュの授業における外国人チューターの採用、ライティング・ラボにおけるネイティブ・スピーカーによる個別の英文添削とアドバイス、学科教員全員によるプログレス・シート(通称カルテ)の活用など、学科全体で英語力向上に取り組んでいる。
事例紹介2
「学びの自由化と個別教育の推進」
東海大学福岡短期大学 八尋 剛規氏(情報処理学科助教授)
基礎的教養、スキル、専門科目のe-Learning教材の開発とともに、多様な学生への適切な履修・学習・進路指導など、個別教育を実現するための全学的な取り組みを紹介いただいた。入学前のアンケート調査により指導教員が作成した履修案を全教員が見直し、さらに学生と指導教員との話し合いの末、最終的な履修科目を決定している。また、教職員全員で学生に関する様々な情報を蓄積・共有し学生に適切な指導を行うため、学生カルテを開発・運用し、カルテに蓄積された情報を基に、教授会・学科会議・合同会議等を通じて教員間で情報交換や指導に関する検討会を定期的に実施している。学生の異なる習熟度や時間的制約による受講科目数の限界などを解決するため、e-Learningを実施しており、コンテンツはWeb型、VOD型、CAI型、学生の理解状況や将来目標に応じてコンテンツが変化するマルチストーリー型から構成されており、すべて大学オリジナルである。また、学習効果を高めるためメンタリングを義務付け、メンタリングの結果は、学生カルテに蓄積・共有し、個々の学生に合わせて指導や教材提供を可能にしている。
事例紹介 3
「学生の資格取得への総合的支援システム」
創価女子短期大学 水元 昇氏(資格試験指導室長、現代ビジネス学科助教授)
実務的知識と能力の習得を目的として、伸ばしたい能力や身につけたい技能を学生の資質に合わせて習得できる体制や環境を確立するため、資格試験指導室を設置し、学生への情報提供、指導・アドバイスなどきめ細かな取り組みを紹介いただいた。資格試験指導室が講座の企画・運営、講師の推薦、担当講師との綿密な連携をとり試験結果の分析と活用などを行い、会議以外に日常的にメーリングリスト上で議論を展開し活動を推進している。また支援組織として、IT教育推進室と英語教育センターがある。取り組みに対する評価は、ホームページ上の取得資格申告システムと事務で掌握した情報を総合し「学生の資格取得データ」を収集して、学生の資格取得状況を把握している。また、電子会議室や電子掲示板を活用し、質問や合格者など学生の声を直接吸い上げ、学生が抱える課題や実態を掌握している。掌握した学生の資格取得状況や推移、各講座担当者から提出される報告書等をもとに、コーディネータ会議や指導室会議を実施して、次の講座計画に向けて効果の分析・評価を行っている。指導室の設置前と後とを比較すると、資格試験の総受験者数は1.36倍、総合格者数は1.41倍、上級取得者も目覚ましく増加し、学生のモチベーションも高まった。
全体討議
「ファカルティ・ディベロップメントとしての教育戦略」
社会に通用する人材育成をより効果的に短期間で実現するため、授業内容・方法の改善、教員の意識改革などについて、参加者を交えて討議した。
まず、討議に入る前に、ファカルティ・ディベロップメントへの取り組み事例について、2短期大学より紹介いただいた。
大阪成蹊短期大学の浅野 敏彦氏(教育支援センター長)からは、教育支援センターの設置や独自の「学生による授業アンケート」、研修会・勉強会の実施について紹介された。また、自由ヶ丘産能短期大学の池内 健治氏(能率科第II部学科長、FD委員長)からは、授業評価や授業参観の実施方法、教員へのフィードバックについて具体的に紹介された。
次に、事例紹介の5名の講師と参加者との質疑応答を行い、授業実施の上で、参加者が日頃抱えている課題や問題について意見交換を行い、とりわけ授業評価と教員の研修、指導について、学内の対応をどのようにすべきかなどを中心に意見が交わされた。
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