私情協ニュース4
大学情報化職員基礎講習会報告
本講習会は、平成18年7月5日(水)から7日(金)までの2泊3日の日程で、静岡県浜松市の浜名湖ロイヤルホテルを会場として、大学・短期大学の職員を対象に開催し、249名(116大学、3短期大学)の参加があった。
人材育成を最大の使命とする大学教育について、社会から質の保証が問われている。それに応えるためには、教育改善に向けて理事会、教員組織、職員組織が一体となって取り組むことが要請される。このような中で職員の役割は、教育改革を効果的に進めるためのコーディネート、マネジメントを通して教育支援、人材育成支援を実現することにある。
本講習会は、業務経験の浅い大学・短期大学の職員を対象に、上記を実現するための知識や課題について、講師の経験を踏まえて分かりやすく解説し、職員に求められる役割と責任を明らかし、参加者の意識改革を促すことを目的とし開催した。
初日の全体会では、研修運営委員会の山田憲男運営委員長より講習会の主旨説明が行われた後、本協会の井端正臣事務局長より「教育改善の方向性と課題」と題して、本協会が実施した教員の授業改善調査や大学の情報環境調査の結果を踏まえ、授業で直面している問題、今後の教職員の課題、大学における課題などを紹介し、それらを解決していくための様々な評価・点検項目などを提示した。
その後、2日間にわたり講義を行った。各講義内容は下記の通りである。
講義−1 期待される職員像 〜教育・研究の支援者としての働き〜
講師: |
杉町 宏氏(立命館大学情報理工学部事務室事務長) |
大学の教育・研究活動が抱える問題点について共通認識を持ち、さらにその解決に向けて職員に求められる基本的な能力・姿勢について解説した。特に、教員との協働化、経営管理組織への提案、職員組織間での調整・マネジメントなど、職員としての基本的な能力について取り上げた。
講義−2 情報化戦略の基本的な考え方
大学改革のための戦略やビジョンのもとで、日常の業務を見直し、問題解決への取り組みについて整理し、それらを実現するためのIT 活用の可能性と限界について解説した。具体的には、大学の情報化戦略として目指すべき方向、大学のガバナンスと教育・研究の組織体制、管理運営方法の改革、環境基盤整備の考え方について取り上げた。
講義−3 教育支援の手段としての情報技術
講師: |
梶田 晶子氏(東海大学総合情報センターシステム開発課課長) |
教育改善を実現するための有効な手段として、情報技術の活用を取り上げた。学生の学力、モチベーション、価値観が多様化しており、大学が質保証して社会に送り出すには、従来の授業形態や学生指導の方法では限界がある。教育力強化のためのFD、eラーニング、教授法、授業構成、内容、さらに授業評価など、教員に対する教育支援の試みと、学生ポータル、コミュニケーション、履修支援、キャリア形成、学生カルテなど学生に対する学習指導・支援の試みを紹介し、それらを実現するための組織体制や職員に求められる能力、スタッフ・ディベロップメントについて考察した。
講義−4 情報資産の活用とセキュリティ
講師: |
高橋 清隆氏(東洋大学情報システム部情報システム課長) |
大学が教育・研究活動を発展させ持続していくためには、基盤環境としての情報の整備が必要である。修学指導、進路・キャリア支援、経営戦略、自己点検・評価、研究、校友組織による教育支援などについて、様々な貴重な情報資産があり、これらの情報を活用し新たな教育研究戦略の情報を創造するため、積極的に公開してもよい情報と、守るべき情報について解説した。また、情報の価値に応じた管理のあり方やセキュリティ対策、情報への接し方、コンプライアンス(法令遵守)や技術面での対策についても解説した。
2日目前半に講義は終了した。
また、後半から最終日の3日目にかけてグループディスカッションを行い、講義項目に基づいたシミュレーションとして、グループごとに選んだテーマに対して解決案を討議し、理想の大学像の提案としてグループごとの発表を行った。
この他、合宿形式の特徴を生かし、初日夜の懇親会と2日目夜のフリーディスカッションでは、参加者が講義内容の感想や疑問点、相互の大学の情報交換などを活発に行い、グループディスカッションでの不足部分を補うよう、相互の見識をさらに深めることができた。
3日間を通して意欲的な参加者の姿を見ると、大学本来の目的を達成するためには何をどのように考えていかなければならないのか、目標に向かってどのような実践形態があり得るのかを、参加者それぞれの中で具体的に描いていくことができたのではないかと感じられた。
今後もより満足度の高い講習会を目指して、今年度の開催結果や参加者アンケートを踏まえて、研修運営委員会を中心に内容を充実させたいと考えている。そのために、今後とも関係各位の積極的な参加と成果を高めるための提言を期待している。
最後に、校務ご多忙のところ、講習会のため時間を割いてプログラム作成から講義に臨んでいただいた講師の方々に心から感謝します。
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