巻頭言
山下 宏幸(福岡大学長)
目前に迫った大学全入時代を前に各大学では魅力ある大学作りへの努力が続けられていることと思います。
さて、ここでは平成15年度の情報化基本構想策定から始まり、その後の3年間をかけて行った福岡大学の全学的情報化について紹介したいと思います。
本学は、「人材教育」と「人間教育」の共存、「学部教育」と「総合教育」の共存、「地域性」と「国際性」の共存を教育研究の理念とし、これら三つの共存を図ることによって、真理と自由を追求し、自発的で創造性豊かな人間を育成し、社会の発展に寄与することを目的としています。本学は、9学部31学科大学院10研究科32専攻で構成される総合大学で、約2万人の学部生・大学院生が在籍しています。
今回実施した全学的情報化では、大規模な大学でとかくおろそかになりやすい学生サービスの向上を主たる目的に掲げました。ここでいう学生サービスの向上とは、学内で必要な様々な事務手続きの利便性の向上だけでなく、入学前から卒業するまでの修学指導の向上も含んでいます。今回の情報化では、多くのシステムを導入したときに複数個のユーザ名とパスワードを持つようになることを避けるため、すべてのシステムのユーザ名とパスワードを一元的に管理する統合認証システムを最初に構築しました。その後、様々なシーンで個人認証に要する時間を削減するために全学生の学生証と職員証をICカード化し、学内の全講義室にICカードリーダを設置しました。
これらの情報基盤を用意した上で、すべての講義の出席状況を収集する出席調査システム、卒業可能性の判定などを行って科目履修登録のミスを事前にチェックするWeb履修登録システム、様々なシステムのデータベースに蓄積された成績情報や出席情報などを学生自身がいつでも、どこからでも確認できて、各自の学習計画を自ら検討することが可能な学生個人カードシステムなどに代表される多くのシステムを構築しました。これらのシステムは、すべてポータルから利用可能になっています。ポータルからは、教員のオフィスアワー検索機能や講義ごとに教員と学生が意見交換できる電子掲示板、教員から指定した学生に連絡を送るお知らせ機能なども利用可能になっています。
これらすべてのシステムはこれまで培われてきた学部の独自性を活かしたまま、全学的に統一して利用されています。
今回の情報化では、情報技術を駆使して、教員と学生のコミュニケーションの場を拡大し、学生一人ひとりの個性に応じた修学指導を行うことを目的としましたが、同時に業務系システムの見直しも行い、事務業務の効率化も図りました。在学証明書など大学が発行するほとんどの証明書を発行できる自動証明書発行機を要所となる学内の10箇所に設置し、学生の事務手続きの簡素化・窓口業務の省力化も行っています。
今後とも、情報化を推進することによって、学生は時間や場所の制約にとらわれることなく各自の修学状況を確認・検討することが可能になり、職員は情報化によって生まれた時間を今まで以上に対面的な対応が必要な学生サービスに充てることが可能になります。