私情協ニュース3

全国大学IT活用教育方法研究発表会 開催報告



 平成19年度全国大学IT活用教育方法研究発表会は、「全国の国公私立大学・短期大学教職員を対象に、教育改善のためのIT活用によるFD(ファカルティ・ディベロップメント)活動の振興普及を促進・奨励し、その成果の公表を通じて大学教育の質的向上をはかる」ことを目的として、平成19年7月7日(土)にアルカディア市ヶ谷(東京、私学会館)において開催された。今年度の参加者は175名(97大学、20短期大学、賛助会員1社)で、発表会は第1次選考も兼ねて55件の研究発表が行われた。当日に発表された内容は以下の通りである。
 その後、第2次選考会は9月8日(土)に行われた。選考結果については11月26日(月)の当協会の臨時総会にて発表する予定である(第2次選考結果は次号に掲載)。


Aグループ

A-1   実践的ソフトウェア開発実習における授業設計とその評価
芝浦工業大学 松浦 佐江子氏

 ソフトウェア開発実習の目標達成のために、課題要因、プロセス要因、人的要因の3要因を11因子に分類して授業設計を行い、5年間の実習履歴の中で何が目標達成に必要なのかを調査した。その結果、「前提知識(UMLやJAVAのプログラミング能力)の均一化」と「ある程度の難易度をもつ課題を与えること」が重要であることがわかった。


A-2   実機とシミュレータを活用した多人数教育
東京工科大学 横田 祥氏、大山 恭弘氏、橋本 洋志氏

 多人数に対する実機を用いるマイコン教育を行うために、実機を模擬したシミュレータ(PicSim)を製作し、講義で使用した。画面内に立体配線図を表示し、マウスによるSWのオン・オフを可能にするとともに、実行中のプログラムやメモリマップも表示できるようにしたことでハード、ソフト、メモリの状態の関連が理解しやすくなった。


A-3   色彩とアニメーションを題材としたプログラミング基礎演習
大阪電気通信大学 高見 友幸氏

 プログラミングの導入授業にJavaに類似したActionscriptを用い、文法やアルゴリズムだけでなくソフトウェア設計論の紹介も演習に含めて学生の興味を喚起させる授業を設計した。アンケートにより調べた学生(1年生)の授業の満足度は5段階評価で3.4、有用度は同じく3.9であった。


A-4   習熟度別クラス編成における協調学習の導入とその効果
日本大学 遠藤 拓氏、杉浦 義人氏、田井 秀一氏

 工学系情報リテラシーの科目において、学期開始前に基本用語のアンケート実施の結果によって、習熟度別クラス編成を行い、グループ協調学習を導入し、中・下位クラスの成績向上を目指した報告である。学生間の教え合いネットワークを把握でき、下位クラスの成績を向上させることができたとの報告であるが、成績評価の公平性に問題点が見受けられる。


A-5   学生による練習問題作成を通して理解度を高める取組
帝塚山大学 日置 慎治氏

 学生の学習意欲の低下を食い止める方策として、学生に講義内容に関する4択形式の問題を作成させることで講義に対する積極的な取り組みを促そうとする試みである。学習意欲の度合を評価するために、eラーニング登録者数に対するレポート提出者数の割合を用いたところ、前年度の9割前後から7割前後に下がった。発表題目にある理解度については触れられていない。


A-6   大学におけるサービスラーニング実施のためのIT活用
湘南工科大学 水谷 光氏、本多 博彦氏、二見 尚之氏、石村 光敏氏、木村 広幸氏、眞岩 宏司氏、田坂さつき氏、佐藤 博之氏

 地域社会に貢献する活動を通して、学習の動機付けや意欲を引き出すことに有効なサービスラーニングの科目を、大学において実施するためにはIT活用のシステム運用が不可欠との報告である。授業科目の「社会貢献活動」には、年間のべ200名の学生が、40余りの実習先に派遣されるため、学生へのきめ細かな個別サポートには、IT活用の本システムが有効である。


A-7   ストリーミング配信を活用した授業公開によるFDの推進
常葉学園大学 小田切 真氏

 FDを促進するために、平常時の授業等を記録し配信するシステムを整備し、自由な時間に視聴・研修が可能な「授業公開・評価システム」を構築した。平成18年度の視聴回数(累計)は990となり、ある程度の有効性が推察でき、平成14年度から行っている授業改善の意識の高まりが出てきた。


A-8   数学教育「紙と鉛筆」の時代は終わった
東海大学   渡辺 信氏
筑波学院大学   垣花 京子氏

 数学教育にパソコンを導入することで、紙と鉛筆で考えることからスタートする数学概念について、実験して考える新しい発見的数学を目指す。具体的には、技能の訓練に終わることがない発見的な数学教育を行うことが可能な数式ソフトを用いた方法に挑戦する。


A-9   問題発見・解決型の工学基礎実験における教員支援のホームページの構築
金沢工業大学 北庄司信之氏、千徳 英一氏、亀井 衛一氏、三木 修武氏、上田 秀雄氏、岩田 節雄氏、濱辺 謙二氏、吉川 文恵氏、今井 悟氏

 問題発見・解決型の工学基礎実験を担当する教員のためのホームページを構築し、その中で過去の学生の成果物である実験レポートをデータベース化し、キーワードをもとに検索、閲覧できるようにして、FDを試みた。教員が他の教員のための授業支援ホームページを構築することで、情報共有が促進された。


A-10   初年級理工系大学生を対象とした授業理解の基盤となる自然科学eラーニングコンテンツ
東海大学 佐藤 実氏、峯崎 俊哉氏、及川 義道氏

 大学の理工系講義理解を助けるために自然科学的な視点を養成する目的で、数学、物理、化学などの基本的な知識や技能を横断的・総合的に扱い、自然科学の基本概念を学習できるようなeラーニングのコンテンツを制作した報告である。他の授業との連携や本格的な学習効果の検証などの実践はこれからである。


A-11   携帯ゲーム機を活用したポータブル情報演習室−予想と集計でたのしい双方向講義−
大阪電気通信大学 舟橋 春彦氏、早野 秀樹氏、勝間 智康氏、村上 佑樹氏

 携帯ゲーム機の「投票モジュール」機能を利用して一般教室の講義の双方向化を実現し、仮設実験授業に適用した事例報告である。実験結果の予想の投票を各学生の携帯ゲーム機を通じて行い、リアルタイムにその結果がスクリーンに投影され、集計情報が共有されることに対する学生の反応は好評であった。


A-12   デザイン力育成のための3次元CAD教育の改善
産業技術短期大学 二井見博文氏、小池 稔氏、竹内 誠一氏、堂原 教義氏

 3次元CADの基礎教育においては立体物を描く力が必要であるため、CADの操作方法の教育とともに、手書きで斜眼紙に立体を描く練習を取り入れた授業の報告である。手書き演習の具体的効果が卒業研究活動で現れたようであるが、客観的な評価はなされていない。


A-13   建築構法学習支援システム
明治大学 澤田 誠二氏、小山 明男氏、酒井 孝司氏、大河内 学氏、小林 正人氏

 学習内容が多岐にわたり要求知識も多い建築構法知識を、効率良く快適に学習できる環境と教材を、eラーニングのシステムによって提供しようとする試みの報告である。2005年度に開発目標の達成度の検証を実施し、2006年度からは学習者による検証の方策・検討などを行い、現在、システムの効用の検証段階である。



Bグループ

B-1   初心者が学習しやすい中国語コンテンツ
日本大学 郭 海燕氏

 受講者が増加しクラスサイズも大きくなった中国語授業においてeラーニング教材を作成し利用することで個別指導の充実を図った。60分間の対面授業と30分間のeラーニングの組み合わせにより、自習回数の増加、リスニング力の向上、検定試験受験者の増加、履修後も継続的に学習する学生の増加などの成果を得た。


B-2   英語を通じた国際理解教育:デジタルコンテンツを利用した経験学習の実践と評価
慶應義塾大学 飯沼 瑞穂氏、千代倉弘明氏

 コラボレーションサイト上での3Dデジタルコンテンツを活用した英語による共同学習の実践報告。ベトナム紹介の教材を使用し、3Dコンテンツにより学習対象をイメージすることで、体験学習を実践した。また、少人数のグループ学習という面でも効果的であった。


B-3   ポータルサイトを利用した外国語授業の改善
慶應義塾大学 中山 純氏、鈴村 直樹氏

 多様化する学習者に対してポータルサイトを活用することで、ドイツ語授業において教授者との対面学習の効果を上げることを狙った。教授者と学習者で共有するポートフォリオにより学習状況の推移の記録を行ない、成績グラフや表・評語の提示により評価プロセスの可視化を図った。授業の品質管理という観点で成果を上げている。


B-4   ドイツ語e-Learningソフトを用いた語学授業の改善
日本大学 中川 浩氏

 基礎的な語学力が不足しかつ大人数のドイツ語クラスに対して、初級ドイツ語文法と基礎語彙の習得を目標としたeラーニングソフトを作成した。ネイティヴの音声の聴き取りとスペリングを重視し基礎語彙の定着を図った。その上で確認テストの難易度を高めに設定することで、学習者が達成感を得られるという効果があった。


B-5   三ラウンド・システムのCALL教材作成支援システムの開発と評価
千葉大学   土肥 充氏、高橋 秀夫氏、Lorene Pagcaliwagan-Davis氏
文京学院大学   与那覇信恵氏、竹蓋 幸生氏
大阪大学   竹蓋 順子氏

 英語教育システム「三ラウンド・システム(3R)」に基づいた教材をより短期間・安価に開発する実用的な手法として、Excelファイルとして作成した問題データをXMLに変換するツールとJavascriptを組み合わせ、動画・音声素材ファイルとともに教材化をした。実際の使用で従来の3R教材と同様に効果が得られることを確認した。


B-6   専門教育との連携を志向するeラーニングの開発
東京農工大学 加藤由香里氏、江木 啓訓氏、望月 貞成氏

 上級日本語教育の教材として大学作成の研究案内を活用し、eラーニング教材を作成した。LMSに組み込むことで日本語教員と専門科目教員の間で情報を共有し、チームティーチングを実現した。利用した学習者へのアンケート結果を因子分析し、留学生と日本人学生の間の評価の違いを確認した。


B-7   授業支援ソフトの組み合わせによる効果的な外国語授業の展開の試み
成蹊大学   里村 和秋氏
南山大学   オリファ・バイアライン氏

 時間数が制限された大人数クラスのドイツ語授業の授業改善として、Moodleをプラットーフォームとしたe-Learningと個人の学習状況に応じた個別指導やSkype等を用いたネイティブとの遠隔対面授業によるblended learningを実践、学生の多様な反応に対する適切な授業システム構築の提案と評価を報告した。


B-8   サンスクリット語ソフトキーボード付ドリル
種智院大学 橋本 哲夫氏

 サンスクリット文字入力には、特別のフォントが必要であり、各フォントによって異なるキーを覚えねばならないという困難がある。本発表では、キーボードを使わないでマウスだけで入力できるプログラム(サンスクリット語ソフトキー)を作成、55種のドリルを課して、学習者が自ら学習状態を把握できるシステムを提案した。


B-9   e-Learningシステムを利用した理工系ESP教育の展開
関西大学 山本 英一氏、土戸 哲明氏、楠見 晴重氏、坂野 昌弘氏、堂垣 正博氏、冬木 正彦氏、山川 栄樹氏、安達 直世氏、檀 覚成氏

 本発表では、理工系学部カリキュラムに「ESP科目」を設置、専門教員・英語教員・TA協働によるe-Learning活用型「専門/ESP」教育を構築、正課と課外をシームレスに結ぶ学習サイクルの形成、専門と英語の成績との相関関係、専門のコンテンツと英語がレトリックを通じて有機的に関係し学生の理解を促進することを報告した。


B-10   ITを利用した情報の蓄積・共有化による教育と学生サポートの質的向上
札幌国際大学 川名 典人氏、梅村 匡史氏

 全学科教員が学科情報を共有化するためのブログを導入、また「授業風景」サイトで全学科教員が授業内容を公開、学生が入力できる学生カルテの構築により、1年共通英語は全学科対象でインターネットから自学自習できる環境を作った。本発表は、構築したLMSによる授業への積極性と、授業公開による教育の質向上を検証した。


B-11   ネット・インターンシップによる実践的教育
山梨学院大学   金子 勝一氏、齊藤 実氏
明治大学   山下 洋史氏
日本大学   小田部 明氏

 本発表では、テレビ会議システム等を活用してインターンシップを実施し、実用性の可否を検証した。その結果、従来のインターンシップ実習に対し場所や期間の問題には対応可能であること、実習前後の事前・事後学習においても、学生と企業とのコミュニケーションが可能になり、従来以上の人材育成教育の成果が得られることを実証した。


B-12   「NetCommons」を活用した図書館司書課程教育
法政大学 坂本 旬氏、菅原 真悟氏

 本発表は、国立情報学研究所作成による「NetCommons」の実践例として、図書館司書課程授業の統一性を図り、大学図書館との連携と司書課程受講学生間の相互コミュニケーションを図るための実践報告である。受講生は授業の内容を常に把握、グループ学習を重視し、学習過程や成果をオンライン上で共有できる。


B-13   多人数講義での協調自律学習のための学習支援システムの活用
佛教大学 望月 紫帆氏、西之園晴夫氏

 本発表では、教職必須科目において自律的な学びを支援するテーマと教材を開発し、携帯電話からアクセスできる学習支援システムを介して、チームの中での役割と教材の有効な使用方法、講義時間外に及ぶ継続的な学びを達成、大半の学生がA4で10枚以上のレポートを執筆することができたことを報告した。


B-14   学習者の自立促進を目標とするe-Learning授業(コミュニケーション概論)の試み
大阪商業大学 津村 修志氏

 本発表では、教養科目の授業「コミュニケーション概論」にe-Learningの手法を取り入れ、Webサイトにテキストとオンライン・マニュアルを構築、メールによる課題提出、掲示板によるディスカッション、パワーポイントによるプレゼンテーションを組み合わせて、学生が達成感を味わい、将来の学習に対する自信を培うための授業を報告した。



Cグループ

C-1   病理学教科における動画教材コンテンツの開発と自学自習向けのWeb配信
日本歯科大学 佐藤かおり氏、島津 徳人氏、青葉 孝昭氏

 病理組織標本、組織などをインタラクティブにかつ立体的に学習するシステムを利用した病理学教育を導入した。平面的に示される組織像が歯牙あるいは顎骨などの立体構造の中でどのように病態を形成しているか、CTなどの画像ではどのように現れるかを学生が理解できるようになった。実習後にも学生がコンテンツを利用でき自己学習を促進した。


C-2   歯科大学におけるIT活用−教育効果に関する解析−
松本歯科大学   金銅 英二氏、塩島  勝氏、長谷川博雅氏、黒岩 昭弘氏、王 宝禮氏、岡藤 範正氏、音琴 淳一氏、倉澤 郁文氏、
村田 洋祐氏、有賀 則正氏、森本 俊文氏

 歯科系入学者の専門教育へのレディネスを高めるために、新入生がパソコン端末を使って、ウィークリーテストを受けるシステムと関連した事項を自習するeラーニングシステムを構築した。毎週試験を受けることで、その週に学んだことを復習する機会となり、学生同士の教え合いによる学習を促進した。また、教員にとっては自分の講義を評価する機会となった。


C-3   携帯電話を用いた学習・講義支援システムの開発
近畿大学 大鳥 徹氏、村上 悦子氏、鈴木 茂生氏

 講義情報、講義への出席、講義中に出題する多肢選択問題などを、学生が携帯電話で送受信するシステムを使った授業を導入した。講義を行いながら学生の理解を評価する事ができるので双方向型授業が可能となり、また薬学教育で導入される共用試験Computer-based testing対策としても有効と考えられた。


C-4   情報基礎教育格差是正における理解度トレーニングシステムの試み
東京情報大学 安岡 広志氏、横澤 美紀氏

 2006年度以降では情報教育を受けた学生が入学してきている。このため、これからの情報基礎教育では、学生間の理解度格差が問題であるとして、この格差是正を目的としたWBTシステムを構築した。さらに授業アンケートの分析から、学生にはコンピュータに対する態度、受講の意欲などに関して五つのタイプがあることをクラスター分析により示した。


C-5   情報リテラシー授業におけるケース教材とピアレビュー導入の試み
桜美林大学 笠見 直子氏

 授業設計にInteresting、Intelligent、Interactiveの三つのI、具体的にはストーリーベースの授業展開、ケーススタディ形式の課題、ピアレビューと教員からのフィードバックの3要素を取り入れ改善した授業の教育効果の報告である。授業アンケートの結果が分析され、改善効果が示された。

C-6   学習管理システムJapricoの開発とその評価
早稲田大学 深澤 良彰氏、梅沢 功氏、藤田 彰氏、小豆川泰男氏

 既存の学習管理システム(LMS)の問題点を解決しるために開発したLMSの報告である。オープンソース化され、Web上で公開した。以後のダウンロード申込者数、ダウンロード数などが示された。またこのLMSを維持するためのコミュニティが紹介された。


C-7   資格試験に有効なe-Learningコンテンツの作成法
流通科学大学 小無 啓司氏

 情報教育の習熟度に大きなバラツキのある入学生に対して、講義コマ数を増やすことなく一定レベルに到達させようとする授業の報告である。これまでの講義コンテンツに加えて、課題が早く終了した学生向けにシステムアドミニストレーター初級の過去問題と、解説を補う単語辞書を用意し実施したところ私語がなくなる等の改善が見られた。


C-8   PBLを効果的に実施するe-Learning環境の構築
甲南大学 井上 明氏

 PBL(Problem Based Learning)を支援するためのe-Learning環境として構築したシステムの報告である。システムはグループ情報共有用掲示板、自学自習用の教材、学習評価支援のためのアンケートシステムから成っている。併せてPBLにより学生の自主的能力が向上したことが示された。


C-9   レポート作成活動を題材とした思考・判断力育成型ゲーミング教材の開発
日本女子大学   久東 光代氏
東京工業大   松田 稔樹氏

 思考・判断力育成を目的として開発した教材を使用した授業報告である。教材は意思決定ゲームを応用したもので、レポート作成活動を題材にした。授業における学生の教材使用状況から学生を3群に分け、テストの得点や作成レポートの評価結果を比較した。教材の教育指導効果があることが報告された。


C-10   UNITeS(国連情報技術サービス)ボランティア学習を通じた総合情報教育プログラムの実践と評価
関西学院大学 吉野 太郎氏、豊原 法彦氏、大江 瑞絵氏、地道 正行氏、村田 俊一氏

 国連ボランティア計画(UNV)本部と協定を結び、半年間途上国にITボランティアとして学生を派遣するプロジェク(UNITeS)を通じて、OJT的IT教育の成果が端的に表れた、という報告である。現場のニーズに合わせたIT実務遂行のポテンシャルと、派遣地から日本側から適切な支援を得るためのITコミュニケーション能力の向上が見られた。


C-11   ビデオ時間軸に沿ってコメントを付与するプレゼン評価学習
大阪大谷大学 大倉 孝昭氏、開沼 太郎氏

 Web上で先輩・クラスメイト・自分のプレゼンに、ビデオ時間軸に沿って時系列的にコメントを付与することで、学習者が評価の視点を明確に意識し、自らのプレゼン能力向上に大きく寄与するという報告である。評価コメントが付いたプレゼン・ライブラリを他の教員・学生が閲覧し、「これほどうまくなるものか!」という反応が得られている。


C-12   オーサリング技術を応用した授業レポート手法の開発
実践女子大学 犬塚潤一郎氏

 マルチメディア型コンテンツを作成するためのオーサリング技術を活用することによって、従来は少人数教室に限られた同手法を新しい課題レポート形式に応用し、教育プロセスの改善を図った、という報告である。複数科目でマルチメディア型レポート課題を試験導入した結果、メディア活用能力の向上と、成果・評価の公開による相互効果が得られた。

C-13   情報共有による協調的プログラミング学習の試み
大阪国際大学短期大学部 谷口るり子氏

 ネットで作品の作成過程での情報を共有すれば協調学習が行われると考え、情報共有システムのアルバム機能を用いて、作品(プログラム)の案、進捗状況報告、でき上がった作品等をネットワーク上に提出するようにした報告である。他の学生の作品の概略と進捗状況に影響を受けながら作品に取り組み、効果的な協調学習が行われた。


C-14   初等アセンブラプログラミング演習におけるPSI方式によるセルフラーニング型の補習
帝京大学 高井久美子氏、荒井 正之氏、古川 文人氏、及川 芳恵氏、渡辺 博芳氏、武井 恵雄氏

 学科の必修科目の不合格者に対応するため、教科内容を9個のスモールステップに分割して、PSI形式のセルフラーニング教材として開発した。2名の学習補助員によるアドバイスと組み合わせて、ほぼ全員がレベルを落とすことなく再試験に合格できるようになった。ほとんどの受講生が、セルフラーニング型の補講に肯定的であったことが報告された。



Dグループ

D-1   児童の創造性教育と大学生のキャラクターデザイン教育を結びつけるウェブサイト「オバケーション」
東京工芸大学 笠尾 敦司氏

 キャラクターデザインの授業において、子供がアイディアを応募し、それを学生がデザインして公開し、子供の評価を受けるというしくみを、「オバケーション」というウェブサイトで導入した。教員の指導や学生同士の議論に加え、デザイナーの仕事をしている卒業生も参加して、社会との接点を持つ教育を実現できた。


D-2   幼児教育学科の特色を活かしたデジタル紙芝居制作演習の実践
武蔵野学院大学   荻原 尚氏、木川 裕氏
立正大学   小堺 光芳氏

 幼児教育現場や幼稚園ではコンピュータを利用することに消極的で、幼児教育学科でも情報教育カリキュラムやコンピュータを用いた幼児教育方法の研究が十分に行われていない。そこで、幼稚園教育要領に基づいた「創作デジタル紙芝居制作演習」カリキュラムを開発し、IT活用教育を実践したところ、受講生や教員から高い評価を得た。


D-3   遠隔学習支援システムを用いた教育・保育実習の実践
常磐会短期大学 平野 真紀氏、恒川 直樹氏、卜田真一郎氏、新谷 公朗氏、糠野 亜紀氏、輿石由美子氏、植田 明氏

 保育の教育実習において、保育者養成校の大学教員と実習園の担当教員との連携指導を可能とするために、実習現場で行われる反省会に養成校教員が「遠隔学習支援システム」を通じて参加するようにした。実習生による指導案や実習のビデオ記録を画面上で共有しながらディスカッションを行うことで、理論と実践を繋げた体系的な理解を促進することが可能となった。


D-4   論理的整合性を意識した学習指導案作成支援ツールの開発と実践
大阪大谷大学 開沼 太郎氏、大倉 孝昭氏

 学習指導案作成教育においては、指導の一貫性の確保が難しいことや、指導計画における論理的整合性の意識づけの確保が困難であることなどの問題が指摘される。そこで、学習指導要領や各教材の特徴、児童生徒の実態に関する配慮事項等の情報をデータベース化し、学習者が指導案を作成する際に論理的整合性を確認できるように、Web上で適切な支援を受けられるシステムを開発した。


D-5   学習者による「学習の記録」作成のための教員の「デジタルえんま帖」
佛教大学 達富 洋二氏

 教員養成における教科教育法の授業では、学生の潜在的な教職への問題意識を講義中や講義直後に取り上げ、学習を動機づけ、次の学習へと展開させ、また学習の記録を振り返りながら評価することが有効である。そこで、講義内容の提示、課題提出と評価、成績管理などの指導記録をデジタル化した学習支援システムを導入したところ、従来の紙媒体の利用では不可能であったさまざまな成果をあげることができた。


D-6   幅広い年齢層に有効なブレンディッド型通信教育
佛教大学 黒田 恭史氏、原 清治氏、西之園晴夫氏、望月 志帆氏

 通信教育課程において、e-Learningと集中講義を合わせたブレンディッド型講義システム導入した。特定の教員に過度の負担を強いず、高齢の教員でも使用可能となるようにサポート体制を整えたが、システムの開発・運用に必要な経費を考慮しても、十分に運営可能な収支であることが確認できた。また、テスト結果やアンケート調査から、高年齢層におけるe-Learningの有効性が見出された。


D-7   セルフスタディ・モデルの構築と教育実践
星稜女子短期大学 竹村 哲氏

 合意形成型の公共を創造するための組織のセルフスタディモデルと自己実現を目指すための個人のセルフスタディモデルを構築し、“認識の収束”を手助けするプログラムを利用することによって、学生による自己スキーマ作成および学生参加型のプロジェクト組織化・集団的意思決定が可能になった。


D-8   初級簿記教育デジタル支援システムの実践
立正大学   小堺 光芳氏
武蔵野学院大学   木川 裕氏、荻原 尚氏

 講義効率低下の大きな要因である簿記講義での板書量を減少させるために、簿記教育のデジタル教材を開発し、一般教室においてプロジェクタで投影する授業を行った結果、板書のみの講義に比べ説明の時間に大幅に短縮され、講義効率の問題について改善効果が見られ、学生からの高い評価も得ることができた。


D-9   携帯メールを活用した授業支援システム〜出席確認・アンケート・小テスト・諸連絡〜
阪南大学   福重 八恵氏、前田 利之氏
愛媛大学   岡本 直之氏、崔 英靖氏
大阪成蹊短期大学   三浦 徹志氏
大阪大学   淺田 孝幸氏

 出席確認、アンケート、小テスト、連絡の機能を持った、携帯メールを用いた双方向型授業支援システムの導入した。このシステムにより授業で出席確認や理解度チェックを行いデータは瞬時に集計され、教員や学生に対してリアルタイムにフィードバックされる。情報は学生と共有し、即授業に反映できるようになり、回収や集計に使う時間をさらなる教育サービスの向上に向けることも可能となった。

D-10   HPでの講義録音とレジュメの公開
金沢星稜大学 稲原 泰平氏、隅田 和夫氏、野  宏氏、篠崎 尚夫氏、井上 好人氏、島田 一志氏、杉林 孝法氏

 HPを介して、従来の講義レジュメの配信に加えて、新たに講義録音を学生に提供し、学生の講義内容の理解をいっそう深める効果をあげた。


D-11   TIESによる双方向授業の拡充
帝塚山大学 山本 国昭氏

 TIES(手塚山大学が開発したeラーニングシステム)のスクリーンを用いて、学生が提出するレポートを授業中に添削・解説し、学生の授業に対する理解をいっそう深めるとともに、学習意欲を高めた。

D-12   海外連携オンテーマ・ミニ講義交換の実践
龍谷大学 西本 秀樹氏、ウェルホイザー・ナディア氏、松岡 利道氏、河村 能夫氏

 本取組は、龍谷大学経済学部と同大学の海外提携諸大学との間でマルチメディア教材を交換し合う。教材のテーマは、各大学において学生に対するアンケートを参考にして選定される。この取組みは、従来の黒板を用いた、受け身の講義から脱却し、新しい講義の創出に資するものである。


D-13   城西国際大学における地理情報教育への取り組み−地理情報教育へのグローカルな展開に向けて−
城西国際大学 寺本 卓史氏、孫根 志華氏、小渕 究氏

 本取組は、地理情報システムの活用能力を情報リテラシーの一つに位置付けて、その教育・養成方法の構築を試みる。その成果として、「紀尾井町マップ」、「九十九里鉄道路線マップ」を作成した。


D-14   USBカメラを利用した介護技術教育の方法
東京文化短期大学 吉川 美加氏、池田えり子氏、清水 憲二氏

 介護実習室において、ベッド周りに経済的でしかも操作が容易なUSBカメラ2台を設置し、2方向から撮影した動画をコンピュータに記録する。これは、教員と学生のディスカッションにプラスの貢献を果たすとともに、学生の介護技術の向上に役に立った。



文責: 教育方法研究発表会運営委員会

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