私情協ニュース4

大学情報化職員基礎講習会報告



 本講習会は、平成19年7月4日(水)から6日(金)までの2泊3日の日程で、静岡県浜松市の浜名湖ロイヤルホテルを会場として、大学・短期大学の職員を対象に開催し、194名(105大学、3短大)の参加があった。
 人材育成を最大の使命とする大学教育について、社会から質の保証が問われている。それに応えるためには、教育改善に向けて理事会、教員組織、職員組織が一体となって取り組むことが要請される。このような中で職員の役割は、教育改革を効果的に進めるためのコーディネート、マネジメントを通して教育支援、人材育成支援を実現することにある。

 本講習会は、業務経験の浅い大学・短期大学の職員を対象に、講義およびディスカッションを通じて、大学職員に求められる役割や責任を理解するとともに、魅力ある大学づくりのために各参加の意識改革を促すことを目的とし開催した。



1日目・2日目前半


 初日の全体会では、研修運営委員会の山田憲男運営委員長より講習会の主旨説明が行われた後、本協会の井端正臣事務局長より「授業改善とITの活用」と題して、本協会が発刊した「ファカルティ・デベロップメントとIT活用」をもとに教育改善の課題や方策、それを実現するための大学ガバナンス、教職員の意識改革等を解説した。
 その後、2日間にわたり講義を行った。各講義内容は下記の通りである。


講義−1 期待される職員像〜教育の支援者としての働き〜

講師: 杉町 宏氏(立命館大学情報理工学部事務長)

 本講義では、大学の教育活動を支援する立場から、大学が抱える教育問題、人材育成の現状について共通認識を持つとともに、それらの課題解決に向けて職員に求められる基本的な能力・姿勢について解説した。 とりわけ基本的な能力の一つとして、教員との協働化、経営管理組織への提案、職員組織間での調整・マネジメントを取り上げた。
(キーワード)大学を取り巻く情勢と社会が求める人材育成、大学の社会的責任、教育改革の必要性、教職協働のあり方、求められる資質・職員像とスタッフディベロップメント


講義−2 大学運営と情報化戦略

講師: 梶田 晶子氏(東海大学総合情報センター情報システム開発課課長)

 情報共有は単に業務の効率化や学生・教職員一人ひとりへの支援やサービスに留まらず、経営戦略や組織改革といった大学の意思決定にまで活用されつつある。大学運営の活性化のために、ITを活用した新たな環境づくりが求められているという現状を踏まえ、大学改革を進めるための基盤としての情報戦略について解説を行った。
(キーワード)情報基盤と環境の整備、大学運営にかかわる情報利用


講義−3 「情報技術の活用による教育支援・人材育成支援」

講師: 斉藤 和郎氏(札幌学院大学情報処理課長)
事例紹介: 朝川 俊二氏(日本福祉大学教育開発室室長)
高橋 公生氏(名古屋学院大学学術情報センター課長)

 教育改善を実現するための有効な手段として、情報技術の活用を取り上げた。多様な学力、モチベーション、価値観を持つ学生を、大学が質保証して社会に送り出すには、従来の授業形態や学生指導の方法では限界がある。教員に対する教育支援や学生の学習指導の支援、キャリアアップ支援について、実際の大学で行われている先進的な取り組みを紹介するとともに、今後の課題や対策を考察した。
(キーワード)ITを活用した教育支援、学習支援環境・学生指導のツールとしてのIT、FD支援、教育支援組織のあり方、大学事例紹介(キャリア形成支援、学生ポータル、FD支援)


講義−4 情報技術導入による大学の新たな可能性

講師: 山崎 達朗氏(芝浦工業大学学術情報センター事務部長)

 情報技術による教育・学習支援や学生サービスの最新動向の事例紹介を通じて、情報技術導入の可能性と限界を見極めるとともに、教育・学生情報の漏洩対策等、情報のセキュリティについても解説した。また、大学職員として最低限身につけるべき情報技術力(ITスキル)の基礎についても紹介した。
(キーワード)技術導入に伴う心構え、職員に求められるITスキル、eラーニング、情報セキュリティ



2日目後半・3日目

 2日目前半に講義は終了し、後半から最終日の3日目に亘ってグループディスカッションを行った。ディスカッションは、参加者が希望のグループに入り、ディスカッションを通じて講義の内容と自己の業務を関連付けて考えることにより、本講習会の趣旨をより明確に理解することを目的としたものである。
 この他、合宿形式の特徴を生かし、初日夜の懇親会では、参加者が講義内容の感想や疑問点、相互の大学の情報交換などを行い、相互の見識をさらに深めることができた。

 3日間を通して意欲的な参加者の姿を見ると、大学の目的を達成するため、教職員一体となってどのような課題を解決していくべきなのか、そのためには職員はどのような能力を必要とされるのか、参加者それぞれの中で具体的に描いていくことができたのではないかと感じられた。
 今後もより満足度の高い講習内容を目指して、今年度の開催結果や参加者アンケートを踏まえて、研修運営委員会を中心に充実させたいと考えている。そのために、今後とも関係各位の積極的な参加と成果を高めるための提言を期待している。

 最後に、校務ご多忙のところ、講習会のため時間を割いてプログラム作成から講義に臨んでいただいた講師の方々に心から感謝します。


文責: 研修運営委員会

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