教育支援環境とIT
学校法人安達学園は建学の精神として、「学術とスポーツの真剣味の殿堂たれ」を掲げ、1962年(昭和37年)以来、中京高等学校、中京短期大学、中京幼稚園を順次創立してきました。中京学院大学は、岐阜県中津川市の地に、中京短期大学経営学科を母体として、1993年(平成5年)に創設され、この5月で創立15年を迎える大学です。経営学部1学部に経営学科と中国ビジネス学科の2学科を含み、学生数760名、教員31名、職員28名です。
本学における情報教育支援体制の中心を担っているのが、総合メディアセンターで、情報教育特別館(以下 特別館)と図書館を管轄しています。センター長(教授)の下に、特別館スタッフ2名、図書館スタッフ2名という体制で運営しています。主に教員からなる運営委員会としては、情報教育運営委員会(教員5名+特別館スタッフ1名)、図書運営委員会(教員6名+図書館スタッフ1名)の二つの運営委員会で常時教育の質の向上や図書の充実、FD活動などに積極的に関わっています。
瑞浪市にある中京高等学校図書館と中津川市にある中京学院大学図書館とはオンラインで結合され、図書の検索・利用が可能となっています。
特別館が管轄するコンピュータは、計209台で、第1コンピュータ室33台、第2コンピュータ室69台、第3コンピュータ室41台、自習室であるMedia Oasis20台、貸し出し用のノートパソコン40台、図書館での利用コンピュータ6台という構成です。
第1コンピュータ室および、第2コンピュータ室では、2画面タイプのコンピュータが計102台稼動しています。片方の画面でインターネットを開きながら、他方の画面でアプリケーションを開くなどの利便性から2002年に導入しました。
OSはWindows XP/Vistaを、アプリケーションとしてはOffice2003/2007を採用しています。また、第1コンピュータ室はLinuxも搭載しています。学内の無線LANは21基設置されて、研究室も含めた、学内の全エリアをカバーしています。学生を全般的に支援するキャリア支援部では4台のパソコンが稼動し、就職活動用などに使用されています。構内、各地から特別館へのアクセスパスは最大でも200m以内と近く、必要とするときその場でパソコンが使えるという環境となっています。
写真1 2画面タイプのコンピュータ
視野角は自由に変えられる
本学には、専門教育科目として、情報処理科目と展開科目があります。1年次配当の情報処理科目は、情報処理概論と演習科目などの基礎科目から成り立ちます。2年次以降に配当される展開科目は、Linux・Java言語などのより専門性の高い科目です。e-Learning化した教科は表1のようになっています。
経営学部の他の教科では、「会計情報システム論」や語学の教科で第3コンピュータ室を使って授業を進めています。
e-Learning教材はすべて教員の手作りで作成されていますが、内容としては情報処理系の資格試験(マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト試験などや情報処理技術者試験)に合格に対応できる質と内容になっています。教員手作りという面では、学生の声を反映できる点で有利な反面、アプリケーションの進展(例えば、office2003からoffice2007へ)に対応するための改版作業が少なくない点に難点があります。
表1 情報処理系科目
情報処理科目 情報処理概論A(HW,SW)
情報処理概論B(LAN、インターネット)PowerPoint教材
シスアド教材はe-Learning化情報処理演習1A(文書作成) e-Learning化(2002年〜) 情報処理演習1B(表計算)) e-Learning化(2002年〜) 情報処理演習1C(ビジネス文書) e-Learning化(2007年〜) 展開科目 情報処理演習2B(表計算上級) e-Learning化(2002年〜) 情報処理演習2C(プレゼンテーション) e-Learning化(2002年〜) Webプログラミング論1、2 e-Learning化(2004年〜) データベ−ス演習1(Access基本) e-Learning化(2004年〜) データベ−ス演習2(Access応用) e-Learning化(2004年〜) マルチメディア論(画像処理) e-Learning化(2007年〜) Linux・Java言語1、2 ネットワーク演習1、2 情報ネットワーク論
特別館で実施されている教科に関して、教室ごとに特色を述べていきます。
(1)第1コンピュータ室
主に情報処理演習1A(文書作成)、情報処理演習1B(表計算)、情報処理演習1C(ビジネス文書)、Webプログラミング論1、2、Linux・Java言語1、2の授業や専門ゼミで使用されています。2画面コンピュータとマルチOSを有効に使う授業や専門ゼミで使用しています。
写真2 第1コンピュータ室
情報処理演習1C(ビジネス文書)の授業風景
(2)第2コンピュータ室
主に、情報処理概論A、B、情報処理演習1A(文書作成)、情報処理演習1B(表計算)、情報処理演習1C(ビジネス文書)、データベ−ス演習1、2(Access基本、応用)、マルチメディア論の授業に使用しています。2画面コンピュータを有効に使う授業や専門ゼミで使用しています。
写真3 第2コンピュータ室
マルチメディア論の授業風景
(3)第3コンピュータ室
主に、ネットワーク演習1、2、情報ネットワーク論、会計情報システム論の授業や専門ゼミで使用されています。ノートパソコン教室ですので、ワークグループによる学習形態や、空きスペースを利用した組み立て実習などが可能です。
写真4 第3コンピュータ室
情報ネットワーク論の授業風景
(4)自習室(Media Oasis)
スポーツを行う学生の利便性を考慮して、動作解析ソフトなども搭載されたコンピュータ自習室であり、朝9時から夕方7時までいつでも使えるようになっています。特別館1階事務所に併設されているため、学生の質問に適切に答えることができます。
写真5 自習室(Media Oasis)での勉強風景
バックグランドミュージックも流れ、
くつろげる雰囲気にしている。
(5)図書館のパソコンシステム
日曜日など、特別館が利用できない期間でも、図書館で作業ができます。大学のネットと結合されたシステムなので、例えば日曜日に教員フォルダにレポートを提出するなど可能です。
写真6 図書館スペースにおけるコンピュータ
(6)e-Learning講座管理、成績管理
Internet Navigwareというe-Learning開発ソフトを使用して、講座管理(新規登録、フォルダ作成、クラス設定、履修学生登録)、成績管理(履修状況、進捗管理、学習時間管理)を行っています。講座を開設する場合の作業は、
新規講座追加(講座名、教材ディレクトリ新規作成)→クラス名追加(講座名、クラス名、指導者)→学習者追加→教材up→講座の公開
というステップです。教材がすでに準備されていれば、数分の作業で行えます。
期末試験などの単発な試験であっても、教材作成は、DreamWeaberなどのホームページ用ソフトで作成し、これをサーバにアップして、試験直前に公開して、学生に受験させています。2画面コンピュータ室では、試験問題を一方の画面で表示しながら、他方の画面で該当する教材も開けさせて多面的に答えをさせるなど、コンピュータ環境を十二分に使った試験が可能となっています。
履修登録や履修状況、休講情報、補講情報など教科や学生生活に関するすべての情報は、Campus Avenueというシステムで、携帯端末へ情報発信を行っています。また履修登録はWeb上で行えますので、経営学I、IIなどの段階科目の履修にあたっての履修制約などは、学生毎に自動的に対応できるようになっており、取るべき科目群の選択などに利便性が図られています。
当校は、Word、Excel他の実務能力を証明するマイクロソフト認定資格、「マイクロソフト オフィス スペシャリストの試験会場にも登録しており、水曜日、金曜日の午後、学生が希望する時間に試験を行うことができ、資格取得のための便宜が図られています。
共有フォルダである講義・演習フォルダに30科目を越える教科に関しての電子教材が登録されており、学生はいつでもこれを開くことができます。e-Learningで使う演習用教材に関しては、インターネット上からも同一教材がダウンロードできるようになっていますので、国内外に遠征中の学生でも、演習実行と、その成果物の報告が可能となっています。
e-Learningにおいては、教員がいなくても自習できるように、懇切丁寧な解答や操作手順を示すVideoを付加していますが、学生がその解答Videoを真っ先に見るという問題が浮上しています。内容を完全に掴かめているか、役立つように本当に習熟したかなど、多岐に亘りフィードバックを行う必要があります。解答を別の場所に置くことや、より難解な問題をグループで答えさせるといったe-Learning上の「しかけ」も必要であると考えます。今後は、実践により即したPBL(Problem
Based Learning)手法をe-Learningに取り入れていこうと考えています。
経営学部の座学系の約110科目の中で、e-Learning化に適する教科が少ないのが現状ですが、まずは電子化を促進し、予習・復習ができるような環境の整備を行っていきたいと考えます。電子化が難しい教科では、授業内容をビデオ化し、Web上で学生に供給することも行っていきたいと考えています。
これらの一連の作業には、「マルチメディアコンテンツ作成」というテーマを持った情報系のゼミ学生によって運営する案も浮上しており、現在検討中です。
文責: | 中京学院大学 総合メディアセンター長 太田 宏 |