教育支援環境とIT
新潟経営大学は、平成6年(1994年)に新潟県央地域の当時18自治体からの浄財によって学校法人 加茂暁星学園が新潟県加茂市に設置した私立大学です。加茂暁星学園は、大学の他に、短期大学、専門学校、高等学校を有しており、大正9年の創立以来70年にわたって、地域の発展のために有為な人材を育成してきました。
本学が位置する新潟県央地域には、地域を代表する中堅企業、地場産業が多数存在しています。これらの企業は、時代の進展と激変にともなって、「経営管理の情報化に対応し、経営学に関する専門知識を基礎に、情報科学に関する専門知識と技術を持ち、それで経営管理に総合的に活かせる人材を地域で育てたい」という強い希望を持つようになりました。そこで、この社会的要請に応え、経営情報学部を擁する4年生大学の設立を文部省に申請いたしました。
現在、経営情報学部 経営情報学科、競技スポーツマネジメント学科の1学部2学科で、学生数613名、専任の教育職員32名、専任の事務職員18名(平成20年3月現在)です。
(1)設備環境
本学では、授業や実習などで使用するコンピュータルームを3室設置しています。それぞれ第1情報処理室、第2情報処理室(写真1参照)、第3情報処理室と呼称しております。第1情報処理室、第2情報処理室はそれぞれ48台のパーソナルコンピュータが設置されており、第2情報処理室は公開講座などにも対応できるようなソフトウェアのライセンス形態をとっています。また第3情報処理室は、ゼミナールなどでの使用を想定しており20台と比較的小規模な構成となっています。合計116台のパーソナルコンピュータが設置されています。これらの情報処理室は、授業や実習のない空き時間には、自習室として学生に開放しています。
情報処理室の設備として、教員操作画面の表示機器、ビデオ、DVD、OHC、プロジェクタが配備されており、各種教材を用いて効果的に授業が進められるよう整備されています。
情報サービスの拠点は情報処理準備室であり、各サーバやネットワーク全体の管理運用を行っています。また、専従の職員も配置しています。
ネットワーク環境に関しては、情報処理室に併設されている情報処理準備室を基点として、全施設にネットワークを敷設しております。基幹ネットワークは1Gbps、各施設内は100MbpsでLANに接続されています。またこれらすべてからインターネットに接続できます。
対外接続は、100Mbpsの専用回線で商用プロバイダを経由してインターネットに接続されています。
写真1 第2情報処理室
(2)ソフトウェア環境
情報処理室のソフトウェア環境について、OSはWindows XP(第3情報処理室はWindows 2000)を使用しています。Linuxなど他のOSは導入されていません。表1に情報処理室に導入されている主なソフトウェアを示します。第1情報処理室、第3情報処理室については、学内のみの教育目的のライセンス形態ですが、第2情報処理室は、公開講座などにも対応できるようなソフトウェアのライセンス形態をとっています。ハードウェアに関しても同様ですが、ソフトウェアに関して今後カリキュラムに合わせてどの様に構成していくかが検討課題です。
表1 情報処理室の主なソフトウェア
情報処理室に導入されている主なソフトウェア
- Access 2003
- Adobe Flash Player 9.0.115.0
- Adobe Reader 8.1.2
- Borland Delphi
- Eclipse 3.2 with CDT
- FFFTP 1.96
- GIMP 2.4.4
- Intervideo WinDVD 5
- Office 2007互換機能パック
- Office XP(Word,Excel,PowerPoint,Access)
- SoundEngine 3.07b
- TeraPad 0.91
- 弥生会計08
(3)Web環境
学内のWebサイト上に、学生用Webページ(図1参照)を設置しています。このWebページでは、講義や資格講座の情報、休講情報、イベント情報など、学生にとって必要な学内情報を発信しています。合わせて、情報処理室の使用方法や学生に必要な書類のダウンロード、ポータルサイトなど学生にとって便利なWebサイトのリンクなどがメニュー化されています。
図1 学生閲覧用Webページ
また、学生用Webページと同様に、学内の教職員向けのWebページを用意しています(図2参照)。このWebページでは、学内の情報共有化を目的として、学内の会議や各種イベントなどのスケジュールを始めとして、学内業務で使用する書類などのダウンロード、メーリングリストの一覧などがメニュー化されております。
図2 教職員用Webページ
(1)弊学の状況
平成19年度から経営情報学科にコース制を導入し、「ナレッジ・マネジメントコース」、「アカウンティング・ファイナンスコース」、「コミュニケーション・デザインコース」の3コースを設置しました。情報教育に関しては、コンピュータリテラシーを含む基本的な情報リテラシーは3コース共通、および競技スポーツマネジメント学科で行っておりますが、専門的な情報教育は特に「コミュニケーション・デザインコース」で行います。
一般的に本学に設置されているような経営情報学科は、文系の中では最も「情報」に専門特化した学科である言えます。しかし、入学する学生においては、県央地域唯一の大学といった立地などの要件から、「情報」を専門的に学ぶために入学する学生はそれほど多くありません。そのため、コンピュータ操作など「情報」を苦手とする学生も多くいます。一部授業において自分の情報レベルについてのアンケートを取ったところ、ほとんどの学生が初心者・初級者に含まれ、中級者レベルと答える者は1、2名程度であった、というような状況も確認されています。昨今、リメディアル教育の必要性が言われておりますが、特に弊学のような状況では基本を身に付けさせることが最重要であると考えられます。
(2)情報教育に関するカリキュラムについて
特に専門的に情報教育を行う「コミュニケーション・デザインコース」ですが、コース制を検討した際に本学を取り巻く外部環境要因の分析を行いました。その結果、コースコンセプトを「企業内外でプロジェクトを立ち上げたり、広報・宣伝活動を行ったりすることで、有益な情報を効果的にいきわたらせる技能と知識を持った人材の育成」と設定しました。
すなわち、従来の情報専門特化したSEやプログラマーなどの人材を育成するのではなく、基本的な情報技術を使いこなし、また情報技術のみならず、「マルチメディア」、「映像」、「英語」の能力を総合的に身に付け、「情報」をデザイン(意匠・設計)し、コミュニケーションを行うことのできる人材を育成することをコースの骨格としました。このコースコンセプトに合わせて、情報関連科目を設定しております。
なお、本稿では情報教育にあまり関係しない「コミュニケーション・デザインコース」の映像科目および英語科目、さらに「ナレッジ・マネジメントコース」、「アカウンティング・ファイナンスコース」については、割愛させていただきます。
1)学科共通必修科目
表2(1)に学科共通必修科目の一覧(情報科目のみ)を示します。学科共通必修科目として、講義科目「情報リテラシー基礎」、演習科目「情報リテラシー基礎演習」を1年次に、講義科目「情報リテラシー応用」、演習科目「情報リテラシー応用演習」を配置しています。
従来、基礎的なコンピュータリテラシー等の科目は1年次のみでした。しかし、上述したように入学する者の中には情報に対して苦手意識を持つ者も多いです。そこで、全員が3・4年次の専門教育等をスムーズに受けられるよう、また将来一般的な企業に就職しても事務的な仕事をそつなくこなせるようなレベルに到達させるために、2年次においても科目を配置しました。これまでの1年間の授業だけでは、コンピュータやソフトウェアの操作や情報工学系知識の詰め込みとなっていました。このコース制導入により2年間、時間をかけて基本を繰り返し行い、自己の目的に応じてOutput(成果物)が作成できるようになることを目指しています。
2)コース必修科目
表2(2)にコース必修科目の一覧(情報科目のみ)を示します。コース必修科目は、「コミュニケーション・デザインコース」のコースコンセプトに照らし合わせて、「マルチメディア基礎」、「マルチメディア応用」、「情報デザイン」を配置しています。「マルチメディア基礎」、「マルチメディア応用」はマルチメディアに関する知識・技術を習得する科目であり、「情報デザイン」は情報やマルチメディアの知識や技術を駆使して、「情報」を作り出し発信していく技術を身に付ける科目です。また、1・2・3年次には「コミュニケーション・デザイン実践ゼミナール」を設け、各教科で身に付けた知識・技術を総合的に実践します。このゼミナールの延長上に4年次の「卒業課題」を配置し集大成を行います。
3)専門科目「情報科目」
表2(3)に専門科目「情報科目」の一覧を示します。専門科目では、学生の興味や希望に合わせ、そして将来進む目標に合わせて科目を選択することができるように設定を行っています。コースコンセプトはあくまでもコースの骨格であり、言い換えるとコース所属の学生が身に付ける基本能力を表しているとも言えます。
すべての学生が県央地域の地場産業を行っている企業に就職するわけではありませんので、学生の希望やまた県央域以外の企業のニーズにも柔軟に対応するためにコース必修科目は必要最低限の設定とし、選択できる専門科目「情報科目」を増やして設置しております。なお、本稿では各科目の説明は割愛させていただきます。
表2 情報・マルチメディア関連科目
(1)学科共通必修科目 (情報科目のみ) 1年次 情報リテラシー基礎 1年次 情報リテラシー基礎演習 2年次 情報リテラシー応用 2年次 情報リテラシー応用演習 (2)コース必修科目(情報科目のみ) 1年次 マルチメディア基礎 2年次 マルチメディア応用 3年次 情報デザイン 1・2・3年次 コミュニケーション・デザイン実践ゼミナール 4年次卒業課題 (3)専門科目 「情報科目」(選択) 2・3・4年次 プログラミング基礎 2・3・4年次 マンガコミュニケーション 3・4年次 プログラミング応用 3・4年次 ファイルとデータベース 3・4年次 ビジネスシミュレーション 3・4年次 システム設計論 3・4年次 経営情報システム論 3・4年次 会計情報システム論 3・4年次 人工知能論 3・4年次 情報と職業 3・4年次 情報ネットワーク論 3・4年次 情報コミュニケーション論
地方の小規模私立大学であるので、情報環境と教育に関して、これまでご説明させていただきましたように取り立てて皆様のご参考になるものがない状況にあると思います。情報に関する支援環境をハード面で整備するには大きな予算を必要とします。そのため、本学の状況では、非常に厳しいと言えます。とはいえ、学生の情報教育に関して必要最低限は設置し運用する必要があります。そのため、平成21年度に情報処理室の全PCのリプレイスを検討しております。合わせてマルチメディアやCALL環境の検討を行っていく予定になっています。その上で、将来的には無線LANやe-Learning環境を検討していきたいと考えております。
ハード面ではこのような状況にありますので、費用対効果を考えながら、ソフト面での創意工夫や運営方法の改善などで対応していく必要があると考えております。FDの取り組みがようやく組織的な行われるようになったばかりであり、電子化教材への組織的な取り組みは、残念ながらこれからの課題となっております。プレゼンテーションソフトを使用して講義を行ったり、講義資料をWeb上からダウンロードできるようにしたりしている教員の存在を確認しておりますが、現状では、教員毎に任されている状況にあります。さらに将来的な取り組みとして、学園内の短期大学や専門学校、高等学校との連携を図り、学園全体での情報コスト圧縮を行いたいと考えております。
このICT社会は、今やマウスイヤーと呼ばれ、スピード経営が必要とされています。一方、近年の大学の改革の流れの中で、文部科学省は「大学は教育を行う場である」と明確な立場を表明しております。このような状況を踏まえつつ、学生に対してどのような教育を行なうか、どのような付加価値を付けて如何に社会に送り出すかということをじっくり考えながら、今後とも情報環境と教育を検討していきたいと思います。
文責: | 新潟経営大学電子計算機委員会 委員長 西川 真裕 |