私情協ニュース
第47回総会は、平成20年3月28(金)午後1時30分より、東京市ヶ谷の私学会館にて開催。当日は、議事に入るに先立ち文部科学省私学助成課我妻専門官から20年度情報関係補助金政府予算案および19年度執行状況について、概ね次のような説明があった。
1) | 平成20年度予算案の経常費特別補助は、1,005億2,900万円と19年度より若干減少した。メニューは19年度予算と同様となっている。 |
2) | 私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費補助金の情報通信施設(マルチメディア)は、△が大きく立っている中で必要なところに予算を手厚くしようということで、僅かではあるが8,000万円増の20億4,300万円、情報通信装置(学内LAN)は前年同額の9億300万円となった。 |
3) | 私立大学研究設備補助金の情報処理関係設備は、現在、買取りではなく、ほとんどがリースで対応されていることから、実態に合わせて5億4,100万円となった。 |
4) | 20年度の事務手続きとして、サイバーキャンパス整備事業は19年のうちに構想調書提出依頼を実施し、3月24日に選定委員会を開催し、今、最終まとめをしており、4月中旬に選定通知、不採択の理由を知らせる予定としている。それを受けて計画調書を提出し、5月末を期限に内定、申請の手続きをさせていただく。情報通信施設、情報通信装置、情報処理関係設備は、計画調書の提出依頼の最終調整中で4月に大学に送付し、5月末締め切りで考えている。8月に内定通知ができるよう鋭意作業をさせていただいている。 |
5) | 平成19年度補助金の採択結果は、学内LAN、マルチメディアとも38%と厳しいものになっている。情報通信設備は84%とになっている。経常費特別補の結果は、補助金返還や若干の不祥事で配分の見直しを私学振興・共済事業団で行っていたことから報告できなかった。 文部科学省の説明の後、私情協事務局から「1千万円以上買取りの情報通信設備予算について、19年度の実態として11月に追加募集した。借入れによる導入が多くなってきたこと、私情協の考えも配慮して減額したと思われる。私情協としては、不足しているマルチメディアに予算を増加することを強く要望した結果、全体が減額されている中で増額することができた。なお、19年度のマルチメディア、学内LANの採択率の低下は、新潟地震などを受けて、大学の耐震補強の申請が突出したことによるものであった。」 |
総会の主な議事は、20年度事業計画の決定、20年度収支予算の決定、19年度収支決算様式変更、基金の取り扱いの他、報告協議事項として、私立大学教員授業改善調査の中間結果、電子著作物権利処理事業の利用協力、アーカイブ情報関連規定の利用紹介、20年度行事日程などであった。以下に主な議事の一部を紹介する。
20年度事業計画は、新法人への移行を視野に入れ、事業内容を一層公益化することを基本とした。また、事業の位置付け、特徴を明確化するため、事業区分を見直し、「情報教育及び情報環境の調査・研究」、「情報教育及び情報環境の振興・支援」、「大学教職員等への啓蒙・啓発」、「大学関係者に対する理解の普及」の四つに再編した。
【情報教育及び情報環境の調査・研究】
(1)情報教育に関する研究
1)
ファカルティ・デベロップメントにおける情報技術活用の研究」は、FDに求められる情報技術の活用を研究するため、分野別固有の身につけるべき能力、到達目標を整理した上で、教育効果を高める情報技術の活用方法を研究する。学士力に求められる情報リテラシー能力についても学系固有、学系共通の研究を開始する。委員会での研究状況を共有できるようWebサイトを活用し、できるだけオープン化する。
2)
「世界水準を目指した情報専門系教育の研究」は、持続可能なIT人材育成に向けた産学連携パートナーシップの構築、教育の質保証を認定する大学共用試験など、事業化の可能性を模索し、実現可能な事業の準備を研究する。
3)
「情報倫理教育のファカルティ・ディベロップメントに関する研究」は、大学での教育が社会で起きている負の現象について、学士力として身につけるべき情報倫理教育が機能しているのかどうか、FDの立場から見直すことにしている。
(2)情報環境に関する研究
大学の情報セキュリティ対策の自己点検・自己評価の判断指標を情報の管理政策、運用対策、管理技術の面からポートフォリオとして構築し、対策が不十分な場合の行動計画を支援できるようなセキュリティ支援システムを研究する。
(3)情報教育・情報環境に関する調査
1)
「私立大学教員による授業改善調査」
授業改善調査の最終結果を5月総会で報告する。
2)
「私立大学情報環境整備・利用調査」
情報環境の適正化を図るため、整備・利用の現状を点検評価し、大学が整備すべき情報環境の方向性、環境利用の促進対策について大学の考えを調査する。
3)
「私立大学高度情報化補助金活用調査」
財政援助の在り方を点検し、改善を提言するため例年と同様実施する。
【情報教育及び情報環境の振興・支援】
(1)大学連携、産学連携の振興・支援
1)
「サイバー・キャンパス・コンソーシアムの振興・支援」では、分野別の教育問題についてサイバー上で教員が連携・協力し、解決に向けた取組を展開する。また、大学間の連携による授業の共同化、教材の共有化、eラーニング支援専門人材の育成を振興するため、CCC協力拠点大学と連携し、支援する。
2)
「大学教育における産学連携の実験・支援」では、大学と企業との人材育成のミスマッチを解消するため、可能な範囲で企業現場のフィールドワーク研修を教員に提供できるようにするとともに、教育に必要な企業等での現場情報の収集などの協力を働きかけ、教育支援に対する教育効果の実証実験を進める。
(2)大学等電子著作物権利処理の振興・支援
文化庁の著作権管理事業による権利処理の代行を振興・普及するため、有料コンテンツの権利処理として著作権利用料の請求・回収、分配を20年度より実施し、コンテンツの相互利用の実現と教育実績の獲得を支援する。また、報道機関のコンテンツの教育での再利用についてインターネット配信できるよう協力を要請する。
(3)高度情報化推進の振興・支援
1)
電子ジャーナル等の負担軽減を促進するため、「教育研究用電子情報整備支援機構」に改称。
2)
教育研究用電子情報整備の促進では、教育改革に求められる情報技術の活用、教育学習支援のあり方などの企画・提言支援を行うため、「情報戦略の企画支援、財政援助活動の適正化支援」として支援室を適宜設ける。
3)
コンテンツ作成支援、FD情報技術支援の準備は、独立行政法人メディア教育開発センターとの連携の可能性を検討。
【大学教職員等への啓蒙・啓発】
四つの事業を廃止して二つに統合し、8事業にした。一つは、「大学教育・情報戦略大会」と「教育改革ITフォーラム」を廃止統合し、「全国大学教育改革IT戦略大会」に改組。二つは、「大学情報化職員基礎講習会」、「大学情報化職員研修会」を廃止統合して、「私立大学職員情報化研究講習会」改組。なお、既設の事業は省略(45ページの事業計画を参照されたい)。
【大学関係者に対する理解の普及】
事業の成果を広報する受け身の姿勢から、事業の普及を積極化する活動に転換し、社会と大学とが理解し、支え合えるよう情報発信するため、「広報委員会」を改組して「事業普及委員会」にした。
授業改善のための情報技術の活用は避けて通ることのできない課題であり、Webサイトに授業に必要な教材、資料情報を掲載して自学自習を指導する教室外授業が本格的に展開される。また、教育実績の自己評価の対象に優れた教材の作成が指摘されているように、教材の充実、使用の実績を高めるにはネットワークを介して他大学の授業で利用されるなど、教員同士によるコンテンツの相互利用を円滑に権利処理する仕組みが望まれている。
本協会では、文化庁の著作権管理事業に登録し、国立、公立、私立大学、短期大学の教職員を対象に著作権処理をインターネット上でオンラインで自動処理するシステムを構築して、これまで無料コンテンツを対象に相互利用の仲介、著作権処理手続きの簡便化を図ってきたが、20年度より有料コンテンツの権利処理も代行することにした。
本事業では、企業等との権利処理の仲介についても支援ができるようにしている。参加条件は、大学単位で参加することを基本にしているが、都合により大学としての参加が困難な場合は、教員個人の参加も可能としている。この事業に参加するための手数料は無料だが、有料コンテンツを使用する場合には提供者が提示する著作権使用料を大学が支払う仕組みとしている。
著作権使用料についても、経常費補助金特別補助のメニュー群の「教育研究情報利用支援」の対象として、電子ジャーナル、データベースなどと組み合わせて学問分野別に60万円以上となれば、2分の1の補助が可能となる。そのため、使用料の支払いは大学負担とした。また、コンテンツ提供者が使用料をどう設定すべきかわからないような場合は、本協会で作成の使用料規程によることも可能である。
図1 電子著作物権利処理事業の機能
第48回総会は、平成20年5月27(火)午後1時30分より、東京市ヶ谷の私学会館にて開催。当日は、議事に入るに先立ち文部科学省私学助成課の泉係長から情報通信装置、情報通信施設等関係、私立学校振興・共済事業団の今副助成部長から経常費補助金特別補助の高度情報化推進メニュー群の申請に伴う留意点を中心に、概ね次のような説明があった。
<サイバー・キャンパス整備事業、情報通信装置、情報通信施設、情報処理関係設備> | |
1) | サイバー・キャンパス整備事業は、情報通信装置、情報通信施設、情報処理関係設備の3および経常費特別補助のコンテンツ開発費等と一体的な支援を行う事業で、インターネットを活用した国内外の大学、地方自治体、企業等との連携による研究教育を推進することを目的としており、同一キャンパス内でのネットワークの交信、他大学への配信を行わないような事業は対象とならない。不採択の多くは、同一大学内で完結しているような事業、システムの構築が不明確でどのようなことが得られるのか分からない事業となっており、20年度の選定結果は、採択数4件となり、採択率は57.1%となった。 |
2) | 昨年度の実績として情報関係設備は約8割が採択された。情報通信施設、情報通信装置は、ともに約3割となり、昨年、一昨年と大変厳しい状況となっている。補助金の枠組みに耐震化、アスベスト対策の事業費も盛り込まれている関係で緊急性の高い事業に予算を優先的に配分した。耐震化は重要だが当然ながら情報化教育の重要性も十分認識している。そこで、情報化関連予算を執行に反映できるよう、19年度補正予算で20年度執行する耐震化予定事業の前倒しを執行した。 情報通信施設のマルチメディア施設は、20年度予算においてすべて減額されている予算の中で若干増額した。私学助成がマイナス1%という流れの中で、数年前までの採択率が8割、9割というところまでは届かないにしても、20年度は少しでも高い採択率での支援をできればと考えている。 |
3) | 審査の視点は、第一に「教育研究上の効果が具体的であるか」、総花的な書き方をされているとテーマが見えなくなり、事業の目的が不明確になってしまう。単なる機材を更新したいという申請がよく見かけられるが、更新によりどのような成果が得られるかを示す必要がある。第二に、「利用計画が現実的であるか」、今後の教育研究における計画が実際に得られる合理的な計画になっているか、無理な計画になっていないか。第三に、「管理体制が明確に組まれているか」、例えば大規模なシステムにも関わらず、1名の研究者、技術職員で管理するような場合に管理できるのか。なお、記入漏れが非常に多く、そのまま審査にかかってしまうので注意が必要。 |
4) | 交付内定等のスケジュールは、今年は6月6日に締め切り、現段階の予定では8月から9月頃と考えている。計画書が提出された後に事業経費等の変更、補助事業が年度内に終わらないような事態が生じるような場合は、文部科学省に早急に連絡いただきたい。 |
<経常費補助金特別補助高度情報化推進メニュー群> | |
1) | 昨年度から経常費補助の特別補助は、ゾーン化、メニュー化が導入された。高度情報化推進の部分は、どのゾーンを選ばれても対象になっている。申請は例年どおり7月を予定している。 |
2) | 申請の一般的な留意点としては、「補助要件を確認されたか。経費の計上に誤りがないかどうか」、「内容や時点・期間を確認されたか。大学と短期大学との経費の妥当性ある按分方法が学内で統一しているか」、「対象外となる学部、経費を加えていないか」、「学校独自の処理による思い込みによらず、一般的な処理との整合性がどうなのか」、「電子提出のデータ内容が古いものになっていないか」などあげられる。 |
3) | 高度情報化推進メニュー群の留意点としては、「申請区分に誤りはないか」、教育学術ネットワーク支援で申請するところを教育学術情報データベース等の開発で申請してしまった。「補助要件にあっているかどうか」、対象経費の下限未満の申請が多い。「実施事業と経費の計上に妥当性があるのか」、「学校間や管理部門との計上経費の按分に誤りはないか」、「契約内容と経費計上期間に誤りはないか」。年度の途中から1年間の契約をする場合に補助対象は当該年度分に該当する経費になるので、年度をまたぐ経費は次の年度の対象となるよう会計処理することが必要。「対象外経費を計上していないか」、「添付書類に不備はないか」などあげられる。 |
4) | 会計検査院の検査を何年間に1回かは受けていただく。個別の法人について誤りがあると不当事項として指摘という手続きをとられ、国会報告までいくことになる。注意をすればおきなかったようなケアレスミスが多い。また、資産に計上されるものではないかと、とられるものが情報化にはいくつかある。例えば、後からLANの配線をするのであれば問題がないが、校舎の新築とあわせてLANケーブルを工事をする場合は建物と一体のものではないのか、これは経費ではなくて資産として建物に含めて計上するべきではないか、というような主張を会計検査院はすることがある。新築工事とあわせて設備工事するような場合、経理の方と処理について調整をとっておいていただきたい。 |
5) | リース取引の会計基準の変更について、ファナンス・リースの所有権移転は従前から資産計上であったが、所有権移転外のものであっても資産計上する方向で検討が進められている。「資産」計上ということになると経常費補助金は「経費」を対象とすることから、対象にならなくなってしまう。まだ結論は出ていないが、ご迷惑をおかけしないように、今、取り扱いを検討している。取り扱いが決まり次第、改めて案内をさせていただきたい。 |
3年ごとに加盟大学の助手を除く専任教員全員を対象に、授業改善に向けた取り組み、授業でのIT活用の状況と今後の利用方法、効果と問題点について、昨年12月に調査を実施した。
回収率は、大学で33%、短期大学48%と、3年前にくらべ大学で12%、短期大学で4%減少した。「助教」の導入により、授業を担当する教員の分母が1万人近く増えたことと、個人情報保護法の普及によるものと思われる。
授業でITを使用している教員は、3年前より大学で11%増の60%、短期大学では7%増の48%となっており、授業でのIT使用が常態化してきていることが伺える。
「授業で直面している問題点」について、『学生に関する問題』では、依然基礎学力の不足と学習意欲の低下が指摘されており、焦眉の課題となっている。高校教科の未履修であれば補習授業で対応できるが、初等数学や読解力は補習以前の問題であり、初年次教育でのきめの細かい対応が望まれる。『教員に関する問題』では、動機付・学習意欲を高める工夫が難しい、授業設計、授業技術の工夫が必要と指摘しておりまして、FDの義務化に伴い早急に取り組まなければならない課題。『大学に関する問題』では、3年前と同様「組織的な教育・学習支援がない」としているが、「教育の質保証に対する危機意識が低い」にも多くの指摘がある。これは、大学が人材育成を最大の使命・課題として受け止めている大学が多くないことを物語っている。FD以前の問題であって、大学としての危機意識、教育目標の共有化などの意識合わせを大学の責任の下で緊急に行うことが望まれる。
「教育改善に向けた今後の課題」では、『教員自身による努力』として、3年前と同様、8割近くが学習意欲を高める授業作りの工夫をあげており、組織的に教育改善すべき喫緊の課題であること、また、6割が授業運営の問題として、授業中に学生の理解度を確認して学生の反応に応じた授業をかかげており、IT活用による解決が期待される。また、3割が対話重視の授業を3年前と同様の課題としている。3年前と異なる点は、ITの活用により事前・事後学習指導の徹底が進み1割減少した。反面、現場感覚を導入した社会との連携授業が1割増え3割近くとなり、人間力を高める体験活動を取り入れた授業へ転換しつつあることが伺える。『大学として取り組むべき課題』は、4割が「人材育成を職務とする意識改革・教育目標の共有化」、「学習到達度点検による出口管理の徹底」としている。特に、短期大学では、5割近くが職員の能力開発と教育・学習支援体制の整備を重視していることが伺える。他方、講義と体験を組み合わせたカリキュラムの導入は、知識偏重型の教育から達成感や自己実現能力の向上など、人間基礎力を求める教育を目指しており、教員の教育力再開発の必要性を指摘している。また、出口管理の方法として、学内認定試験の実施は、現段階では学士力が明確化されていないこと、これまでの科目ごとの履修判定の取り扱いなど問題が整理されていない段階では1割程度と低く、次期尚早であることが判明した。
「FDの実効を高める対策」については、教育改善に関心のない教員の参加を実現することが鍵であるが、教員の参加を義務付ける大学のリーダシップ方式では限界があること。重要なことは、教員自身による教育改善に向けた教育力の自己点検と、それを実現するためのFD支援体制の整備、さらには改善意欲を高めるための仕組みとしての優れた授業の評価・顕彰が指摘されている。不足している教育力のフォローアップは、大学がキャッチアップして、教員個別にきめの細かい支援メニューを大学連携の中で開発するなどの工夫が望まれる。
「大学で解決できない課題」は、ナショナルセンターによるFD事例のアーカイブ化、学外FDとして活動する本協会を含む関係団体と文部科学省との緊密な連携による分野別FDの研究、教育力を広く議論する公的な場の設定、教育に必要な体験情報、現場情報、人材ニーズのミスマッチなど産学官の教育支援制度の実現があげられており、企業とのパートナーシップの構築が急がれる。
「授業でのIT活用状況」は、図2の通り情報検索、教材作成、教育情報の掲載が8割以上となっており、教材など学習資料をWebサイトに掲載して、自学自習している割合は25%と期待した以上に低い。2年後には6割が希望しているが、大学の支援にかかっている。また、個人指導を含めたeラーニングの実態は5%であり、2年後の4割も大学の取り組み如何んにかかっている。3年前に比べ増加した点は、授業で理解困難な理論の映像化、理論と実際のマッチングの映像化が2倍程度となっており、現実感覚の工夫にIT使用が効果的であることが伺える。なお、3年前の計画を19年度の実態と突き合わせてみると、ほとんどが計画よりかなり乖離しており、実現していない。教員の希望と大学側の対応とに大きなズレが生じており、大学側が教育改善に力を注ぐことができるかにかかっている。
図2 授業でのIT活用状況
「情報技術の使用効果」は、刺激を与えることができたが、反面、成績の向上には3年前同様、多くの教員が情報技術の効果を認識していない。問題点としては、ノートやメモをとらなくなる、理解しているようで理解していない傾向が依然と高い。但し、計算結果を鵜呑みにする問題は、大学、短期大学も10%程度減少している。
「効果を高めるための今後の改善策」では、板書、対話を含む授業シナリオの工夫が6割としている。メモの義務付け、ソフトに頼らない原理原則の修得など、情報技術と対面との組み合わせのバランスをデザインする教育力をいかに開発できるかが、最重要であることが判明した。
授業でのIT活用の先進的な事例として、一つは、「Web製作会社の専門家からSkypeを用いた遠隔授業」で、最新かつ実践的な体験情報を授業に取り入れた双方向授業による学習成果の通用性を体感。二つは、「病理組織画像データベースによる自学自習支援」で学習支援教材としてQ&A形式の病理画像や3千症例を超えるデータベースを学内LAN配信し、病理診断テストの平均正答率が10%改善。三つは、「授業支援システムを活用した討論・対話型授業」で座学の後、ネット上で教員と学生が対話しながら、学生に独自の考えを促す授業。四つは、「英語の動機付を図る授業」で、英語を活用している場面を映像化し、それをWebサイトに掲載し、実用英語のレベル、学習目標を自覚させる。五つは、「三次元可視化ソフトによる基礎化学教育」。六つは、「LMSを活用した英会話」で学習管理ソフトウエアを活用し、音声と英作文を統合するバーチャルスピーチコンテスト。七つは、「医療人養成のPBLチュートリアル」で、ファシリテータとの個人教育をWebベースで実現した振り返り学習。八つは、「授業支援システムの活用」で、携帯電話とLMSを組み合わせ理解度の確認ができる双方向システムなどがある。
将来での活用は、経営学の「経営戦略論」のように携帯電話による意見交換、コメントのリアルタイムによるコミュニケーション、「数学」でのSNS電子掲示板システムによる個人指導、協調学習を計画、「歯学」の学外臨床実習におけるポートフォリオなどが計画されている。
情報機器の盗難が続発している。多くが深夜まで人の出入りが自由な理工系学部の研究室でおきていることに鑑み、協会として盗難防止対策の留意点を整理し、加盟大学に周知を呼び掛けた。
盗難防止には、窓・ドアの2重施錠、廊下等の防犯監視カメラの設置、机と情報機器の鎖などによる連結、夏休みなどには入退出の管理が厳格な場所にノートパソコンを移動してロッカー等に収納、保管する。
情報機器からの情報漏洩防止対策には、情報機器が起動できないよう研究室では教員がパスワードを設定する、デ−タにパスワードを設定する、ハードディスク・外付メモリーに暗号処理、情報機器にデータを残さないようファイルサーバにデータを転送(起動時にディスクを自動消去)、端末機に記憶機能をもたせずサーバで一元管理(経費負担が大きいことが課題)するなどの方法がある。
図3 情報機器等からの情報漏洩防止対策