研修事業報告3

短期大学部門FD/IT検討会議 開催報告

 本会議は、短期大学におけるファカルティ・ディベロップメントの在り方を研究するため、人間基礎力を育成するための教育・学習指導法の工夫、保育等のIT活用教育の工夫などFDの課題と対応策について、経営管理の責任者、教員、事務局が参集し、研究討議することを目的に開催している。今年度は、「教育改革IT戦略大会」と併催し、平成20年9月4日(木)にアルカディア市ヶ谷(東京、私学会館)を会場に、下記の通り3件の事例紹介を踏まえて全体討議を行った。


事例紹介1

「教育研究推進センターを中心とした教育改革への取り組み」

自由が丘産能短期大学 教育研究推進センター所長 池内 健治氏

 同短大の概要やFDに関するこれまでの活動について紹介した後、現在のFD推進の組織である教育研究推進センターとその活動や今後の方針について紹介があった。
 FD推進のための組織は、従来は教育研究推進委員会、FD委員会などの諮問の委員会であったが、本年度から教育研究推進センターとして、研究員4名と事務局職員1名の他にワーキンググループを組織し、それぞれのFD活動をワーキンググループが推進していく体制をとっている。同センターは、教養と専門教育との連携、正課と正課外活動の連動、全教職員が連携するためのキャンパスコミュニティの活性化を主な目的としており、具体的には中長期的な視点でのFD活動の企画立案、学生の学習プロセスに合わせた教育方法の改善、教育成果の測定、教職員の活動支援、FD活動による成果の情報発信などの活動を行っている。限られた資源の中で大きな効果を得るために、どこを焦点としてどのような方法で取り組んでいくべきかを念頭に置きながら、全教職員の活動の連携をとるコーディネーターの機能を発揮し、成果を出せる体制を組んでいきたいと考えている。
 同短大で育成する人材像は、「ビジネス実務の専門知識・技能をいかし、また現代社会を生きる教養をもって、課題に創造的に取組むことを通じて、豊かな社会をつくることに寄与する人材」であるが、これをもう少し具体的に科目群とリンクし、達成目標という形で教育成果を測る物差しになるよう分解し、さらに、達成するための方法についても現在、ディスカッションしている。


事例紹介2

「学生ニーズにフォーカスする教育プログラム」

新潟青陵大学短期大学部 教務副部長 野中 辰也氏

 人間総合学科人間総合コースを例とした様々な教育プログラムの実践について紹介があった。
 人間総合学科の教育課程は「フィールド(専門教育科目、教養教育科目)>ユニット(科目群)>科目」を設け、学生の興味や関心、取得希望資格によって特定のフィールドやユニットを中心に履修できるようになっている。履修学生による授業評価は、平成12年度より全開講科目で学期ごとに行い、評価用紙に回答(5段階評価法および自由記述)され、集計結果を各教員に還元する他、学内で公開している。現在、概ね各項目の平均値が上昇し、教員の教育改善が認められる。
 平成19年度から授業公開・見学を大学院・大学・短期大学部合同で実施し、見学した教員によるコメントを全専任教員にフィードバックする。今年度から見学者を専任助手、学内常勤職員まで広げ、FDとSDを連動させるよう改善している。
 学生生活の様々な指導を行うためにアドバイザー制を確立しており、入学時オリエンテーションでのアンケートをもとに、希望の学習分野や取得資格分野に対応した教員を1年次のアドバイザーに割り振っている。また、卒業必修科目「基礎ゼミ」で、少人数制の履修・学習・就職の指導も実施している。学生は概ね好意的で、教員も指導がしやすくなったとの意見で、教員間で授業のアイディア交換も積極的に行われている。
 学内にはポータルサイトが構築されており、学生は自らの状況を確認でき、教員間では学内教育の最新情報を共有し、授業や学生指導の利便性が向上している。
 キャリア教育・就職支援は、キャリアカウンセラー(専門職員)の常駐、全アドバイザー教員による個人面談・小論文指導・企業訪問など、多岐に渡っている。その結果、ここ数年の人間総合学科の就職内定率は95%以上を確保している。その他、オリエンテーションや学生募集についての取り組みも紹介された。
 最後に、教育プログラムの組み立てに加え、教職員一丸となった迅速・着実な取り組みが機能していることも成功例と評価される一因と推察されると結ばれた。


事例紹介3

「保育者養成校の特色ある総合演習教育と子育て支援〜ボランティア体験と地域連携〜」

高田短期大学 子ども学科長、教授  三宅 啓子氏
子ども学科准教授  福西 朋子氏

 保育者養成教育と体験学習の取り組みと学内支援体制について紹介があった。
 地域との連携を目的とした2連方式のボランティア体験型教育を実施しており、一つは子ども学科の科目「総合演習―ボランティア精神」で、もう一つは、本学育児文化研究センターが企画する「子育て応援隊」と称した課外活動で、学生・教員の協働参画によるボランティア体験である。
 「総合演習―ボランティア精神」は2年生次通年科目で、他の保育専門科目で学んだ内容と関連付けながら、地域ボランティアを少人数で学ぶゼミ形式の授業で、基礎学習授業科目から、情報収集・計画、ボランティア活動体験・報告、幼児教育への応用、レポート作成、研究発表会である。学生の意欲や参加意識を高め、自主的な姿勢を養う工夫として、動機付けとなる授業内容を心がけている他、平成15年から「ボランティア活動支援室」を設置し、ボランティアコーディネータ(職員)が最新情報を常時提供し、学生の相談に応じるよう支援体制をとっている。
 育児文化研究センターの「子育て応援隊」は、年間行事の中から子育て支援事業への参加者を公募する他、学外の依頼による事業からも選択して紹介し、事前指導を経てボランティア活動に出向くようにしている。これらの事業は、センター研究員と学生ボランティアの協働活動で、「総合演習」で身に付けた「ボランティア精神」を子育て支援という活動領域で発揮できる実践的応用学習となっている。学生達は自治体や企業、民間団体等と連携した子育て支援事業に参加することで、保育者に求められる子育て支援力(ニーズ理解や企画力、支援の方法と技術、コミュニケーション能力等)を習得する。今年度の活動では、従来のボランティアとして参加するサポート的な立場に加え、学生自ら企画・実践し、指導方法について工夫していける立場へと展開をしてきている。


全体討議

「短期大学教育の再構築に向けて」

 文部科学省の中央教育審議会では、大学の学士課程教育の構築に向けてという審議のまとめが出され、学位授与、教育課程編成と実施、入学者受け入れの、三つの方針に貫かれた教学経営やPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Actionサイクル)の確立が要請されている。短期大学を取り巻く環境も益々厳しくなる状況の中で、短期大学の教育の再構築も不可欠となってきている。短大教育の再構築として、出口、教育内容、入り口の視点で、事例紹介の各講師から自校の方針や考え方を紹介いただいた。その後、各事例校で活発な活動が行われている要因や仕組みについて、講師から以下のとおり実践例や意見が述べられた。

自由が丘産能短期大学
 1年間の目標に対して1から5までで自己評価する全体的な仕組みがあり、各自が立てた目標を共有化している。教員全員が同じようなFD的な能力あるわけではないので、教職員が連携をとって弱いところを補い合わないと全体の目標は達成できないと思われる。
 
新潟青陵大学短期大学部
 危機感を持った教員がどれだけいるかということと、協力体制が取れる教員の割合が高いことだと思う。意見が通りやすい環境で教員間が刺激し合い、教職員間での相互理解など、信頼感が大きい。
 
高田短期大学
 教員の一致団結力で支えられている。危機感は持っているが、どうしたらよい学生を作れるか、どのように力を貸そうかと、協力してくれる意識が重要。FDに関して発表する場がたくさんあるので、互いを刺激し合うことに喜びを感じ、協力してくれるのだろうと思う。

 

文責: 短期大学会議FD/IT運営委員会


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