特集 図書館による学習支援力
牛崎 進(学校法人立教学院総務部長)
今日の大学図書館は、大学の構成員や社会に対してこれまでになく貢献できるチャンスを迎えている。大学が直面している課題、すなわち若者の活字離れや表現力の低下にどのように対応するのか、卒業していく学生の質保証を学士課程教育やキャリア教育を通じて社会に対してどのように説明しうるのか等の難題に対して、図書館が様々な学習支援を通じて貢献できそうなのである。本号の特集で事例報告されている大学での取り組みは、その具体的な実践としてお読みいただけるはずだ。以下に図書館の学習支援のこれからについて筆者なりの考えをまとめてみる。
(1)導入教育における情報リテラシー教育
この情報リテラシー教育は、1年次の図書館ガイダンスで一斉に実施するというよりは、授業が進行して学生の関心が高まる頃や、レポート提出や論文作成前の学生のインセンティブが高まる時をとらえて行うのが適切である。この数年、教員と連携して授業内でOPACの使い方、文献・情報の収集法や他機関の図書館の利用法等について案内する大学が増えている。この中で、インタ−ネット情報源の信頼性を評価することの重要性、および情報の活用についての情報倫理にも触れているようである。
(2)ノートの取り方、レポート等の書き方、プレゼンテーションスキル
学習支援は大学が総力を結集して取り組むことが望ましいが、既に図書館では教材を利用してレポートや論文の作成法を案内し始めている。さらに、ライティングセンターを設置して、文章作成力アップの支援やメディアセンターと協同してパワーポイントによるプレゼンテーションスキルの講習などを実施している事例も耳にするようになっている。
(3)キャリア教育支援
キャリアセンターや学部等との連携で進めるプログラムである。進路・就職支援の関連図書資料の提供、学生に教養を深めさせるために学部等の協力を得て作成する、学生に在学中に薦める教養図書の提供等である。エントリーシートを図書館のパソコンで作成している学生を見ることも珍しくなくなっている。
(1)電子ジャーナル、市販データベース等の利用環境の整備
電子メディア等増加する一方の図書館コンテンツを適正に整備することが大事な仕事になっている。この支出を軽減するため、毎年、公立・私立大学図書館のコンソーシアム(PULC)が業者と価格をめぐる契約交渉している。教員や学生の学術情報利用環境を悪化させない経営力が問われている。
(2)ラーニング・コモンズの整備とアドバイザーの配置
図書館をラーニング・コモンズとしてとらえ、ICT利用環境の整備にとどまらず、大学院生等による学習支援スタッフを配置したオールラウンドな図書館サービスを提供する新たな試みが始まっている。また、文献・情報の探し方、レポート・論文のテーマの見つけ方・作成法等、学生の個別ケースに応じた相談に応えるアドバイザーを配置するところも出ている。
以上のようなプログラムの企画、学内連携と調整、そしてプログラムの実践と評価をPDCAサイクルで回す力量を持つ職員の存在が欠かせないことは言うまでもない。職員が図書館の役割を限定することなく、大学の教育研究と学習環境を改善するために、教員と協働して学生の支援に積極的に関与することが求められている。