特集 図書館による学習支援力
明治大学図書館では、2008年11月より情報発信サービスとしてオンランナレッジサービスを開始しました。このシステムは、1)コミュニケーション機能(オンラインレファレンス等)、2)情報発信機能(リソースバンク機能等)、検索機能(国立国会図書館との横断検索機能等)を実装しています。その目的は、図書館と利用者のアクセスポイントを増強し、加えて図書館からの情報発信力を強化することによって、より一層図書館の教育・研究活動支援を充実させることです。近年はオンラインジャーナル等の図書館非来館型のサービスが広がっており、図書館はそのような潜在的な利用者を積極的にサポートする必要があります。
さらに、2009年11月より学生の図書館利用活性化と学習支援を目的として、読書ノート機能を公開しました。この機能は、利用者自身が自らの読書履歴を管理し、あわせて資料に関するレビューを公開することができるものです。
これまで図書館は、資料を収集・組織化して利用者に提供し、その効果的な利用を促すためにレファレンスサービスを提供してきました。しかし、学生の図書館離れ・読書離れが加速する中、図書館はより積極的に利用者、特に学生のサポートに力を注ぐ必要があります。そのために開発したのが読書ノート機能です。この機能は、利用者自身が読書履歴を作成し、その評価や独自のコメントを保存することを可能とします。加えて、ユーザーレビューを作成して公開することができます。この機能の主な目的は、1)学生が自らの読書履歴を管理して、学習活動を効果的に行うことを促す、2)レビュー公開によって文章作成の訓練の場とする、3)資料選択のための付加情報を増やし、読書を促す、の3点です。
また、教員には学生向けの推薦資料にレビューを作成してもらえるように広報活動を進め、資料を通じた学生と教員の接点となることも想定しています。本学の図書館リテラシー教育の一環である図書館活用法(平成19年度特色GP採択)には既に実習の一部として組み込みこんでおり、学生への普及活動に努めています。
読書ノート機能をリリースしましたが、図書館の学習支援機能としてはまだ課題が残ります。読書ノート機能およびユーザレビューを普及させるためには、多くのコンテンツ(レビュー含む)が必要です。そのためには、レビュー公開に伴うインセンティブの設定や、図書館HPとの連携等によって多くのレビューが閲覧可能となるような仕組みが求められています。
コンテンツ量については単一大学では限界がありますので、複数大学でのデータベース構築などの新たな試みを検討中です。オンラインナレッジシステムは複数大学での協同構築・運用が可能なシステムとして設計されています。また、公開されたレビューについて、学習支援の観点から図書館員や教員からアドバイスをオンラインで送れる仕組みも検討予定です。
読書ノート機能は、図書館と利用者をオンラインで結ぶ新たなサービスです。アクセスポイントが増えたことによって、図書館はこれまでにない新しい学習支援機能を行える可能性がありますが、プラットフォームとしてのシステムは第一歩です。今後は教員・学内他部署との連携を強化しながら、どのような学習支援を展開できるか検討を進めていきます。
図 OPACとユーザーレビュー
文責: | 明治大学学術・社会連携部 | |
図書館総務事務室 | 中林 雅士 |