特集 図書館による学習支援力
立教大学図書館では以前から、新入生対象の「図書館ガイダンス」、教員の依頼により授業の1コマを利用して行う「情報検索講習会」、少人数で情報とのつきあい方を体系的に指導する図書館の自主講座「図書館活用講座」等を実施し、学生に積極的な図書館利用を呼びかけています。そして昨年からは、講義形式では伝えきれない図書館の魅力と可能性をもっと親しみをこめて学生に届けるため、新たな取り組みを開始しました。本稿ではその取り組みを紹介します。
新入生は入学式直後、不安と緊張の中、様々なガイダンスや行事に次々に参加しなければなりません。そのため、図書館が大教室で一方向に行うガイダンスにおいても、伝えたい内容が一人ひとりの心に残っていないのではないかという危惧がありました。高校までの図書室とは異なる壮大な知の世界「大学図書館」と最初に出会い、大学での学びを始める貴重な時期に、図書館の魅力を新入生の目で発見してもらい、その後も足を運んでもらうにはどのような働きかけが有効なのかを検討し、次の企画を実施しました。図書館広報誌「Your Library」(写真1)を用い、図書館資料や情報検索に関わるクイズを解きながら、実際に足を使って館内を探索し、すごろく形式で先へ進んでいきます。ゴール地点では、後述のラーニングアドバイザー(写真2)が出迎え、答え合わせと疑問点へのフォローを行うというものです。出会ったばかりの友人同士が数名のグループごとにわいわいと参加する光景も見られました。ゴールまで辿り着いた学生には図書館オリジナルのエコバックをプレゼントしたことも話題となり、最終的には300人ほどの参加者がありました。このように、講義形式ではなく楽しみながら図書館に触れる機会を提供することで、その後の大学生活に図書館を活かしてもらうきっかけになればと考えています。
写真1 すごろく形式で図書館内を巡る企画
写真2 ラーニングアドバイザーとの相談風景
レポート・論文作成で不安や疑問を抱える多くの学生に対してきめ細かなサポートをするために、大学院生に相談ができるラーニングアドバイザー(以下「LA」)制度を導入しました。LAは図書館内専用ブースに待機して学生の学習をサポートしており、2009年度には延べ150名程の学生が訪れました。相談内容は、資料の探し方、レポートの書き方、大学院入試のための研究計画書作成など多岐にわたります。LAは「答え」を教えるのではなく、相談者が自ら「答え」を導き出せるようなアドバイスを行っており、利用した学生からは「自分の考えが整理されてやるべきことが明確になった」、「レポートに対する抵抗や不安が少し和らいだ」といった声が寄せられています。またLAと図書館職員との協働で、レポート作成に有効なコンテンツの作成等も始まっており、展開によっては様々な可能性があるかもしれません。まだ試行錯誤の段階ですが、さらに広く認知され、より多くの学生が気軽に足を運ぶ場所となるよう、ニーズ分析や工夫を続けていきたいと考えています。今後も図書館からの能動的な働きかけによって、学生が抱く図書館のイメージが「本と座席があるところ」ではなく、「大学での学びに不可欠で頼りがいのあるパートナー」という認識へと変わるよう努力していく所存です。
文責:立教大学図書館利用支援課 宮尾 香奈子 |