特集 図書館による学習支援力
図書館の学習支援は、全新入生対象に実施されるFYSで1年間の活動が始まります。図書館員がFYSの授業内で、図書館利用と情報検索の入門編を担当します。内容は『図書館利用教育ハンドブック』の5領域のうち、「領域1:印象づけ」に重点を置きつつ領域2と領域3を若干加味した内容として、すべての学生が均しく備えるべき基礎知識の習得を目指します[1]。授業は図書館が作成したパワーポイントと『情報リテラシーテキスト』を使用して進めます。この授業が図書館におけるその後の情報リテラシー教育の基盤となります。
写真 情報リテラシーテキスト
FYSも終盤になるとディベートとプレゼンテーションへ進みます。学生たちはこの段階に至り、自分の意見を裏付けるための情報収集の必要性に迫られます。ここで、教員と図書館員とが有効に連携するタイミングが生まれます。ディベートは教員が設定した一つのテーマに対して賛成と反対に分かれて進められます。自らの意見の論拠となる情報を収集する試みは、ほとんどの学生にとっては初めての体験です。学生によっては自分の本意と反する意見を展開しなければならない場合もありますが、一つの事柄に対して様々な見解がありうることを学ぶ貴重な経験となります。
さて、こうしたプログラムの支援のためには、ニーズとのミスマッチをできるだけ避けるために教員と図書館員との事前打ち合わせが極めて重要となります。例えばある教員は次のようなテーマを設定し、図書館にガイダンスの依頼をしてきました。
テーマ: 「日本の税制と福祉政策は、高福祉・高負担に改めるべきである/でない」
事前の確認項目は、検索する際のキーワード、必ず確認すべき資料、学生の大まかなレベルなど多岐に亘ります。このケースの場合には、学生の問題や関心を喚起することと、どのような資料にどのような情報が収録されているのかを印象付けるために、敢えて数多くの資料を紹介することになりました。一つの情報源から情報を入手することで満足してしまう傾向のある学生に対して、情報源の多様さを印象付ける狙いからです。紹介する資料は『情報リテラシーテキスト』にすべて掲載されており、随時参照しながら説明します。そのことにより、授業時間内で消化し切れなかったとしても、後の自学自習時の参考資料としてリテラシーテキストを印象付けることになります。また不明なことがあれば遠慮なくレファレンスカウンターで相談するように、このタイミングを活用して促します。ガイダンスを担当した図書館員がカウンターにいることは、学生と図書館員との距離を縮める有効な手段です。
FYSや授業との連携を通じて、情報を入手するための大まかな方向性を示すことができます。しかし、レポート作成や卒論の段階に至ると、きめの細かい個別対応がさらに求められます。個別対応は図書館が従来から提供しているレファレンスサービスが中心となって担います[2]。FYSから授業支援に至る過程で、図書館の有用性を印象付けられればその後の図書館活用率は上がり、情報へのアクセスポイントとしての重要性をアピールすることができます。本学図書館では現段階において、特段目新しい試みはしていませんが、まずは図書館の基本的なサービスに愚直に取り組み続けることが、最終的には利用者と図書館職員との信頼関係を築くと考えています。
関連URL | ||||
[1] | FYSについては平成21年度「NII報リテラシー教育担当者研修」発表資料を参照のこと。 http://www.nii.ac.jp/hrd/ja/literacy/h21/curritxt2.html (参照:2010年1月12日) |
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[2] | 本学図書館のレファレンスサービスの状況は、「第5回レファレンス協同データベース事業フォーラム記録集」を参照のこと。 http://crd.ndl.go.jp/jp/library/documents/forum_h20_report.pdf (参照:2010年1月12日) |
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