大学教職員の職能開発 No.1

平成22年度 ICT利用による教育改善研究発表会 開催報告

 本発表会は、全国の国公私立大学・短期大学教員を対象に、教育改善のためのIT活用によるFD(ファカルティ・ディベロップメント)活動の振興普及を促進・奨励し、その成果の公表を通じて大学教育の質的向上をはかる」ことを目的としている。教育の質向上のための教育方法の改善という趣旨をより明確にするため、これまでの「全国大学IT活用教育方法研究発表会」から「ICT利用による教育改善研究発表会」に名称を変更し、今年度は平成22年8月7日(土)に上智大学(四谷キャンパス)において開催した。一般参加者は128名(77大学、10短大、1高専、賛助会員4社)で、発表会は第1次選考も兼ねて59件の研究発表が行われた。当日の発表内容は以下の通りである。
 その後、第2次選考を10月9日(土)に実施し、11月25日(木)の本協会の第56回臨時総会冒頭に表彰式を行った(詳細は本誌p.42を参照)。

Aグループ

A-1 数学ソフトウェアによる金融工学分野の数学教育の改善
学習院大学   白田由香利
千葉商科大学 橋本 隆子

 3次元グラフィックスを用いて多変数関数の数式の振る舞いを描画し、複雑な数式を理解させようとする教育法の報告である。3次元の描画には市販の数式処理ソフトウエアが使用され、適応事例として金融工学における債権価格関数などが取り上げられた。改善効果として大学院生2名のアンケート結果が提示され、理解度向上に効果があったと報告された。

A-2 社会科学系ゼミナールにおけるSNSを通じた関係資本の形成と強化
専修大学   秋吉 美都
大阪府立大学 七條 達弘
獨協大学 藤山 英樹
山形大学 田中  敦

 社会科学系ゼミナールに所属する学生間のネットワーク形成をSNSにより行った教育報告である。使用されたSNSは市販のSNSエンジンをベースに開発されたものであり、7大学と連携されている。ゼミ単位でのコミュニティづくりから2大学の合同ディベートなどSNSの活用形態が報告され、コミュニティの拡大の様子がデータにより示された。

A-3 学習意欲向上を目指した課題達成型学習プログラムとグループワークの連動
創価女子短期大学   折本 綾子、南  紀子

 授業内の個別学習、グループワークに授業外の個別学習、グループワークを加えた学習サイクルを構築し、授業外グループワークにWindows Liveを用いた実践報告である。個別学習には課題達成プログラムを導入し、グループワークにはグループ内メンバー間、グループ間の相互評価を取り入れ可視化を図った。ICTスキルの低い学習者にも有効な教育効果があったと報告された。

A-4 企業経営の実践および学生間・教員間の連携を育むシミュレーション演習の導入
新潟国際情報大学   佐々木桐子

 企業経営における情報システムの利活用の習得を目的とする演習科目において、理論的な講義に加え、実践としてICTを活用したビジネスゲームを導入し、参加・協調型学習、問題発見・問題解決型学習を実践することによって、意思決定・データ分析・コミュニケーション能力の向上、学生間・教員間の連携の推進等の効果が見られた。

A-5 IPhoneによる視覚的教育効果とその方法
横浜商科大学   小濱  哲

 横浜商科大学では、本年4月より在学する全学生と全教職員を対象にiPhoneを全学生・教職員に無償貸与した。現在、座学とe-learning、テキストを立体的に活用した講義方法を模索している。iPhone導入により、学生同士のコミュニケーションの活性化、個別の受講生への対応、教員の講義内容の改善などが見込まれる。

A-6 「iPhoneを用いた東大阪まち活性化プロジェクト」による社会連携教育の試み
近畿大学   大野 司郎、三星 昭宏、久  隆浩、麓  隆行

 大学院での「東大阪モノづくり技術者育成プロジェクト」をベースに、学部学生がものづくり現場に出向き、技術者や経営者への取材を行い、iPhone上で技術情報や「生の声」に関するWeb雑誌を作成し発信した。現在は教員がボランティアでサポートしているが、今後は本活動を多くの学生が取り組めるよう環境を整備することが必要である。

A-7 ICTを活用した多人数講義におけるアクティブ・ラーニングの実践
関西大学    千晶
武蔵大学 中橋  雄

 学生が受身になりがちな多人数授業の問題点を解決するために、アクティブ・ラーニングを取り入れた報告である。他者の意見を知ること、自分なりの意見をもつことを教育目的としている。授業外で大学共用LMSのフォーラム機能を使い、授業内でのグループワークの思考の深化を促した。アンケート調査よりフォーラム、グループワークの教育効果が提示された。

A-8 MoodleとJoomlaを用いたOn Line eLearningコースの作成
流通科学大学   小無 啓司

 二つのCMSを用いてフルオンラインのeラーニングを作成した報告である。フルオンラインの難点であった、受講者の孤独感を防ぐ工夫として、ブログ画面からログインさせ従来のCMSへ導く方法を取っている。受講者同士の緩やかな繋がりの感覚を持たせる狙いである。最終受講者数が提示されフルオンライへの方向性が示されたと報告している。

A-9 介護過程の講義、演習、評価、実習の統合を試みた教育改善
神戸女子大学   横山 正子、西田 実継

 従来型の講義、演習にeラーニング、協調学習を取り入れ、実習にWeb指導を取り入れた教育改善報告である。eラーニング後のアンケート調査結果がコントロール群と比較され、導入クラスが有意に肯定的な回答であった項目が示された。また実習後の面接調査によりWeb指導における学生と実習指導者、双方の利点が示された。

A-10 社会福祉の知識習得の学習プロセスの検討
愛知淑徳大学   伊藤 春樹、神波 幸子、磯川 舞子

 基礎学力の確実な習得、学士力向上と学習意欲の把握や学習達成度の可視化を目的として、また国家試験受験対策に寄与するため、初級、中級、上級の3段階のレベルごとにランダムに問題を出題し、それとは別に初級と中級で間違えた問題を集めて弱点を克服することが可能なe-Learningシステムを開発し、効果をあげた。

A-11 国際食糧支援の疑似体験ゲームによる公衆栄養戦略の理解向上
名古屋女子大学   今枝奈保美

 栄養士養成課程必修の公衆栄養学において、発展途上地域への栄養改善活動を具体的に理解させるために、国際食糧支援の疑似体験ゲーム(Food Force)を教材にして、07、08、09年の栄養士課程2年生計232名を対象として、学生参加型の教育を試みた。学生の意欲を高め、専門知識を体験的に理解させることができた。

A-12 ケータイ栄養管理システムを使用した遠隔栄養相談の教育効果
名古屋文理大学   江上いすず、石川 豊美、吉田 友敬、長谷川 聡

 ケータイ栄養管理システムを構築し、大学内で、教員の指導のもと、4年生が卒業演習として児童に対する遠隔栄養相談を実施した。初回面談以外はすべて電子メールやFAX、郵便等を利用し、遠隔での栄養相談を行った。児童および保護者、栄養指導した学生からのアンケートで、実践的な成果が認められた。

A-13 コンピュータで行う心理学実験授業
関西学院大学   中澤  清

 ネット上で資料の提示、プリントの配布および心理学実験を行い、その実験結果のデータ収集を可能とするシステムを構築した。それを活用し実践した授業規模は1クラス60人、3クラス合計180人の多人数授業である。教育効果として学生による授業評価の結果が示され、多人数授業においても概ね教員の狙い通りの授業効果が得られたことが報告された。

A-14 SNS利用による学生間交流促進に基づく社会的スキルの向上
東京工科大学   奥  正廣、千種 康民

 学習支援のためにBBSに替わってSNSを導入した授業での教育効果の報告である。クリティカル・シンキングに基づく社会的スキルの向上を教育目標としている。受講生による授業評価の分析に基づく教育効果が述べられた。レポート表現、多様な視点からの考察・表現、作品作成などのスキルの促進が認められたことが報告された。

A-15 Web上の討議を用いた教材理解の深化と比ゆの活用
大阪経済大学   光田 基郎、滋野 和重

 受講生に散文を閲読させた後にWebのチャット機能を用いて内容を討議させ、その後再認検査をさせた場合と、再認検査の後に内容を討議させた場合の二つの教育方法から、その教育効果を比較した報告である。討議を先行させた場合には、閲読前に教示がなければ、討議によって内容理解への促進が見られるなどの効果が報告された。

Bグループ

B-1 クリッカー活用教育の実践と展望
立正大学   今井  賢、五味 久壽

 本取り組みは、無線近距離通信によるコミュニケーションツール(クリッカー)を大教室講義型授業に導入し、学習意欲向上と教育の質保証の実現を試みるものである。このシステムでは、出席管理、小テスト・アンケート実施、リアルタイム理解度チェックなどが実施できる。これらの機能によって双方向の授業展開がいっそう促進できるようになった。

B-2 文章作成支援ツール各種の有機的活用による日本語文章力育成の効率的実施体制の確立
青山学院大学 又平恵美子、稲積 宏誠、大野 博之、竹内 純人

 本取り組みは、日本語文章作成支援ツールを開発し実際に教育の現場で使用したものである。このシステムの機能は、文法や論理展開の学習支援、自習機能、学生同士のクロスチェック機能、学生が作成した文章の添削を自動的に返信する機能などである。これらによって、学生の文書作成学習を効率的かつ効果的に支援できる。

B-3 e-Learningによる国際通用性を目指した基礎学力の養成
近畿大学   井原 辰彦

 本取り組みでは、欧米で使用されている英語版テキストを7科目の共通テキストとして使用し、さらに学習補助教材としてテキスト全和訳と講義で用いるパワーポイントを学内Webサイトに準備した。これらのICTツール利用によって、学生の専門科目および英語の成績は著しく上昇した。

B-4 発表中止
B-5 大人数講義の双方向教育を実現したp-HInT
阪南大学   花川 典子

 大人数講義の授業改善を目的とし、携帯情報端末を利用した授業支援システムp-HInTを開発・運用した結果、私語の削減や講義時間の増加等の授業改善が実現した。また、同一科目・同一教員でp-HInT システムを利用したクラスと利用しないクラスの教育効果を比較した結果、論述試験の成績がp-HInTシステムを利用したクラスの方が良いことが分かった。

B-6 Podcastを利用した情報基礎教育と地域学習
金沢星稜大学     泉、奥村 実樹

 2年次の必修科目である基礎ゼミ2での地域学習に対する動機づけのため、初年次の必修科目である情報基礎の授業において一般的なWord、Excel、PowerPoint、情報倫理の指導に加えて地域を紹介するPodcastを作成する課題を設定し、PowerPoint技術の習得およびコミュニケーション能力の向上を目指した結果学生の満足度が高かった。

B-7 自動採点ツールが保証するコンピュータリテラシー教育の高大接続
札幌学院大学   石川 千温、皆川 雅章、渡邊 慎哉、中村 永友、小池 英勝

 ワープロ、表計算の課題の自動採点を行うツールで課題のチェックを学生自らが行うことができるようにした結果、教員の手を借りずに学生は好きなときに課題に取り組み、自学自習の時間が増加し、学習密度が高まった。さらに、近隣の高等学校でこのツールを利用し、その高校と本学で、教育内容・教育方法の接続性を確立した。

B-8 WebClassを活用したクラス編成による教育改善について
関西国際大学   陳  那森、山下 泰生、窪田八洲洋

 コンピュータリテラシー科目においてWBTシステムを用い、学習目標に基づいて選定された「ICT基礎知識の理解力」に関する設問をWebテストで回答させるプレースメントにより、クラス編成の作業を行った。実施前後2年計4年間にわたる学生による授業評価のデータから、受講後のICTスキルのバラツキが明らかに縮小していることが確認できた。

B-9 全学共通情報教育の内容変遷に関する考察
京都女子大学   水野 義之、宮下 健輔

 全学共通の情報教育を、1回生の前期後期に共通必修、2回生に共通選択科目を提供している。基礎的スキル科目の重視、HTML教育から図書館データベース教育への変更、教育方法PBLを加えた授業などのカリキュラム改定を行った。今後は共通選択科目に、ITパスポート試験の3分野に対応した科目の設定、情報専門教育の設定などを行う。

B-10 「Mastery Skill」を目指した情報基礎教育のeラーニングコンテンツ開発と授業開発
武庫川女子大学   中野  彰

 本取り組みは、直接的にICT操作技能向上に結びつくeラーニング用システムの開発を試みる。本取り組みのeラーニング・システムは、ICT操作技能向上を達成するために、オフィスソフトの操作結果をシステムが判断する仕組みを取り入れるとともに、自律的学習の仕組みをも兼ね備える。

B-11 問題発見・解決型の実験科目における動画投稿ホームページの構築
金沢工業大学   北庄司信之、千徳 英一、岩田 節雄、亀井 衛一、三木 修武、上田 秀雄、濱辺 謙二、磯崎 俊明、吉本 隆志、Lee Rynearson、今井  悟

 本取り組みは、動画投稿ホームページを構築し、学生の実験内容を動画で紹介できるようにした。本ホームページ構築の主要な目的は、学生が相互に刺激しあい楽しむことで学習意欲を向上させるとともに、積極的に実験に取り組むことの喜びを感じさせることにある。

B-12 初年次教育におけるレゴマインドストーム NXTを使ったアルゴリズムの学習
朝日大学   曽我部雄樹

 本取り組みは、コンピュータ・プログラミング学習を効果的かつ効率的に展開するために、体験型の学習システムを開発し実際に授業に導入したものである。本学習システムは、初年次教育において利用し、コンピュータや情報処理の基礎を楽しみながら学習し、学生の間に大学での学習への興味を喚起できる。

B-13 教養ゼミナールにおけるホームページを活用したバーチャルな物作りとリアルな物作りを融合した教育の試み
日本大学   伴  周一、大久保尚紀、岡田 悟志
日本大学短期大学部 豊田 陽己

 現実のもの作りと情報発信に自己学習を加えた教養ゼミナールの授業において、リアルな物作りを課題とし、課題作成過程を含めた作業すべてを素材・題材としてホームページ作成を行う。このリアルとバーチャルを融合した物作りにより高い学習意欲が持続し、高い教育効果が得られた。

B-14 インストラクショナルデザインに基づいた教材開発のための授業・教材設計ツールの開発
帝京大学   佐々木 茂、渡辺 博芳

 質の高いWeb教材開発のために、授業アウトラインおよびコンテンツアウトラインの作成を含む授業・教材設計手順が提案され、その手順に沿った授業・教材設計を行うツールを開発した。教材開発、学生による評価による教材の改定を行った結果、作成したツールが授業・教材設計において有効であることが示唆された。

B-15 仮想化を利用したネットワーク基礎教育のための自習環境
岡山理科大学   須藤 清一

 ネットワークの基礎技術の学習で、既存のネットワークから完全に切り離されている自習環境を用意する必要があるため、VMwareを利用したシンクライアントシステムとOpenVPNを組み合わせて学生毎に個別の仮想ネットワーク環境を利用できるようにした。これにより、学生は既存のネットワークへの害を心配することなく、作業ができるようになった。

Cグループ

C-1 多人数参加講義における学生の理解力向上のための工夫
名城大学   酒井 順哉

 講義の開始時に、授業中に利用させるサブノート、指定座席表、確認テスト用マークシートを配布し、学生証をRFIDリーダで読み込ませて出欠記録を取っている。座席表を毎回、ランダムに指定することで、私語の顕著な減少による受講態度改善が図られた。理解度の向上については十分な状況把握に至らなかった。

C-2 大規模教室におけるリアルタイム意見収集およびコメントフィードバックシステムに関する研究
東京工科大学   中村太戯留、板宮 朋基、飯沼 瑞穂、千代倉弘明

 大教室の授業であっても、少人数の研究会のように双方向の授業ができる支援システムを目指した試みである。多くのコメントの中から「ワードクラウド」の手法により、特徴的なキーワードを迅速に閲覧可能とし、講義中にその場で学生の代表的な意見や特徴を抽出する一手法として提案されている。

C-3 学習者の多様性に配慮した協同学習による情報リテラシー教育
東京農工大学   加藤由香里

 理系大学出身者が備えるべき情報リテラシーを議論させ、教員向けの情報リテラシーに関するeコンテンツ作成を最終課題とする授業モデルを提示し、実践を行った報告である。受動的ではなく、積極的、主体的にグループで取り組ませることにより、IT技術に苦手意識を持っていた学生が興味を失わずに、最後まで取り組むことができた。

C-4 データマイニングによる成績予測に基づく教育指導の実践
名古屋工業大学   伊藤 宏隆、舟橋 健司、山本 大介、内匠  逸、松尾 啓志

 学期途中に、受講生の学習履歴データと前年度受講生のデータを用いてデータマイニングの手法により、現在の受講学生の成績を予測した。理解度や成績の予測に基づき、三つのグループ分けとグループごとにレベルの異なる課題を出題することで、理解度に合わせた学習指導ができ、かつ、意欲の低い学生の脱落防止にも有用であった。

C-5 対面型授業におけるLMS活用の諸形態の実践と評価
摂南大学   松永 公廣

 授業形態を座学用の一般教室からコンピュータ演習室に変えて、授業中にコース管理システムの一つであるMoodleの多様な機能を活かして学生に取り組ませ、改善を試みた。具体的な内容は、例題解説、確認小テスト、計算問題の小テストなどをその場で行わせ、従来に比べ、2コマ分程度の内容を実質的に増やすことができた。

C-6 携帯電話を利用した講義評価システム
工学院大学   管村  昇

 毎回の講義で、学生から電子メールで講義評価を受け付け、教師と学生にその評価を公開するシステムを構築した。自由記述文から「理解」の言葉を含む文章抽出を行い、講義評価の収集、分析、整理過程を自動化している。「理解」の言葉での抽出が、多様な授業評価の意見抽出に適切であるかは疑問の余地が残っている。

C-7 情報系資格試験問題を取り入れた授業展開とその効果
広島工業大学   永田  武

 授業内容をIPAの基本情報技術者試験に対応するようにして、過去問題の小テスト実施と自動採点にICT(Webテスト)を利用した。受験者数の増加と資格試験の合格率が向上し、一定の効果を得た。

C-8 外部評価を導入した教員養成課程におけるICT活用指導力の向上
岐阜聖徳学園大学   石原 一彦

 ICT活用による指導力をつけた教員を養成するために、情報ネットワーク教育活用研究協議会が実施する検定試験を受験させて、単位認定の際の客観的な評価資料とした。検定試験に合格した学生は、ICTを活用した教材作りに積極的な教員養成につながることを確認した。

C-9 デジタルストーリーテリングベースの提案課題の学習意欲に及ぼす効果
桜美林大学   笠見 直子

 情報基礎教育における学習意欲の向上を目的として、文章のみのレポート課題の代わりに、お勧めのバスツアープランを画像・音声・ビデオを使って作成させ、電子掲示板に添付ファイルとして提出させた。アンケート結果によれば、学習意欲が上がったことを示す結果が得られた。

C-10 動画へのコメント付加機能を持つWikiの開発
青山学院大学   佐久田博司、矢吹太朗

 動画の特定の場所へのリンクを可能にするために、Wikiの持つメタ情報を管理し利用した。このシステムによって、教育・研究に動画を利用することが容易になるとしている。

C-11 学生の相互評価によるプレゼンテーション能力向上
名古屋学芸大学短期大学部
  山本 恭子
南山大学 河野 浩之

 プレゼンテーションスキルの向上を目的として、学生同士で評価させるための27項目の評価シートを設計し、自己評価と他者評価の違いに着目させた。テキストマイニングによる自由記述分析によれば、プレゼンテーション評価に関連する語句が抽出でき、「改善点の気づき」を促すことができた。

C-12 インターネットを利用した身近な環境問題についての能動的な学習
駒澤大学   山縣  毅

 関東信越地域の光化学スモッグの発生と汚染地域の拡大の検証をインターネットを使った実習により行い、環境問題に対する能動的な学習に結びつけた。

C-13 動的視覚化による新しい教育
大妻女子大学   浪平 博人、森崎 巧一

 2次元あるいは3次元データを、コンピュータ上で動的視覚化によって表現することにより、基礎知識が十分でない学生に対して意味を伝達する教育を行うことができる。そのために、PC上で動作するソフトウェアを開発し、教育で実践した。

C-14 ICTを活用した情報系科目における単位の実質化に関する取り組み
千歳科学技術大学   林  康弘、深町 賢一、小松川 浩

 学部1年生から3年生までの情報系科目に関し、ICTを活用した総合的な学習支援を行い、予復習も含めた成績評価システムを構築した。学習状況や達成度合いを把握した結果、学習時間の担保ができた。

Dグループ

D-1 ICT利用のproject based learningによる学習効果
武蔵野大学   鈴木 洋子

 留学生が、インターネットを利用して自立的、積極的に専門の学習に専念できるようなプロジェクト型のシラバスを考えた。15週で商品の企画から販促のためのプレゼンテーションまでグループ学習させることによって、学習の動機付けおよび学習効果の向上を目指した。

D-2 感動を“ことば”で伝えるICT活用の実践
東海大学   五嶋 正治、佐藤  実、久保田美明

 2009年7月に日本で観測された「皆既日食」を、デジタル・コミュニケーション機器をフル活用して、東海大学各キャンパス21ヶ所の拠点と同時生中継し、プロジェクト型授業を実践した。

D-3 ICT活用による中国語総合教育システム “游”
成蹊大学   湯山トミ子、武田 紀子

 e-Learningの複合利用により、自分の発音に対する発音波形表示機能を備え、効果的な音声教育を行うことが可能となった。学習者が授業内で中国語を音声中心に学べる基盤を作り、達成感の獲得による学習の自律的継続性の確立、語彙力の向上、平易な表現での中国語活用力の養成を目指した。

D-4 統合型英語Online CALLシステム
千葉大学   高橋 秀夫、土肥  充、久保田正人

 平成14年度より一般教養課程での英語コミュニケーション能力養成のためのCALL教材の開発に着手し、今回、専門英語教材を追加するとともに、Web配信型に移行することで、学内外から自由な利用が可能となり、時間的空間的に制約のない学部・大学院一貫型英語教育が可能となった。

D-5 ネットの画像やムービー・メーカーから創造性をはぐくむ英語教材を作る
日本福祉大学   小泉 純一

 英語を書き解答するという枠にはまった方法でなく、ネットからの画像と学生が書く英文を合わせることで、イメージから言葉が生まれてくる過程を視覚化させ、自由な発想による自己表現を通して、未知の自分や世界との出会いを体験させ、創造性を育む取り組みである。

D-6 学生の授業時間外の英語学習時間の増大と英語力の向上
京都産業大学   ロブ トーマス、加野まきみ

 言語習得には多読学習が効果的であることから、2008年度から外国語学部でMoodleで学生の多読記録を管理するシステムを開発し、2009年度から全学で実施した。授業時間外の英語学習時間が増大し、その結果、全学で読解力の有意な向上が認められた。

D-7 コンピュータシミュレーション教育システムによる診療模擬実習の展開
東京医科歯科大学   木下 淳博、大谷 啓一、荒木 孝二、小長谷 光、樺沢 勇司、大山  篤、近藤 圭子、須永 昌代、和達 礼子、中村 輝保
千葉県立保健医療大学 吉田 直美

 臨床系講義や基礎実習への動機づけと学習意欲の向上を目指して、コンピュータとの対話により実際の診療を疑似体験できるコンピュータシミュレーション教材を開発・活用した。

D-8 薬学における教育支援ゲーム
帝京平成大学   林  譲、石井 竹夫、岩木 和夫、平  郁子、鈴木 重紀

 従来型の暗記学習方式は本を読む、図を眺めるなど単調であるため魅力がなく、学生が飽きやすいと考え、学生にとって魅力的と思われるゲームを盛り込んだ、生薬学習教育支援ソフトを開発し活用した。

D-9 自律的学習システムによる薬学基礎知識向上への取り組み
高崎健康福祉大学   吉田  真、佐内  豊

 全国統一薬学共用試験対策のため、約2,600題の五者択一問題による演習形式の学習システムを開発した。各自の理解度に応じて演習したい分野が選択可能で、過去の回答正誤状況から問題を自動選出する効率的な学習方式などで自己学習を推進し、高い教育効果が得られた。

D-10 情報倫理教育を通じた薬学部の医療人教育
神戸学院大学
  山岡由美子、宇佐美美紀子、内海 美保、前田 光子、大畑 順子
東京大学 大西 弘高

 薬学生として必要な情報倫理を学ばせるためのカリキュラム開発を行い実施した。Web上の議論やブログでの情報発信も試みており、授業後に考え方の変化をポートフォリオとして提出させ、教員が継続的にフォローできる仕組みとなっている。

D-11 大学間連携による教材整備とVPNによる電子カルテ教育の実現
国際医療福祉大学   中國 秀章、外山比南子、石川  徹、横山 重子、江田 哲也

 医学系7私立大学が連携してVPNを導入し、電子カルテ教育の実現を図るため、各大学のコンピュータから1拠点大学のサーバへ教材が登録・参照できる教材データベースシステムを開発し、様々な職種が関与する模擬患者カルテを作成した。

D-12 電子カルテを用いたコメディカル養成のための医療情報活用教育
国際医療福祉大学   石川  徹、中國 秀章、江田 哲也、黒田 史博、外山比南子、横山 重子

 2005年から導入している電子カルテシステムを拡大・整備し、模擬患者カルテの症例数も増やして、電子カルテを通じて診療の流れを疑似体験しながら、チーム医療を考えられるように工夫した。医療用語のアンケートを作成し授業前後に実施し、授業の教育的な効果の評価が可能となった。

D-13 手書きおよび電子文書のハイブリッドレポート提出・添削システムの開発
九州共立大学   守  啓祐

 毎回のレポートに、学内各所の既設のネットワークコピー複合機をスキャナーとして活用した。ファイルサーバに蓄積された提出物を教員はネットワーク経由で参照し、添削は文書管理システム上で個人ごとのフォルダに返却することにより、システム化が図られた。

D-14 
 
教育の実質化を目指すKITポートフォリオインテリジェンス
金沢工業大学    中沢  実

 平成16年度より導入しているポートフォリオを電子化して、データの蓄積、 PDCAにモチベーションと成長を加えたサイクルの確認および指導を充実させた。モジュール型教育として「理論」「実践」「リフレクション」のプロセスを意識した教育方法に取り組んでいる。

D-15 キャリアデザイン講座におけるe-ポートフォリオ活用
京都光華女子大学   吉田 咲子、阿部 一晴

 日々の過ごし方を考える動機づけとなるキャリアデザイン講座での「気づき」をWebシステムのe-ポートフォリオに記録することで、「気づき」を振り返り、記憶にとどめることが可能となった。Web上でリアルタイムに教員との双方向性コミュニケーションをとることで、「気づき」の定着ができ学習意欲が向上した。

D-16 反省的ソーシャルワーク実践教育支援システムの構築
三重中京大学短期大学部   新川 泰弘

 親子が抱える生活問題に対するソーシャルワークについて学生の主体的な学習を推進するため、現職社会人の実践知を蓄積している専用サイトへアクセスして学生の学びを深め、グループ討議で学生間の学びあいを促進する教育支援を構築した。


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