私情協ニュース

第56回臨時総会開催される

 第56回臨時総会は、平成22年11月25日(木)午後1時30分より、東京のアルカディア市ヶ谷(私学会館)にて開催。当日は、議事に入るに先立ち、文部科学省専門教育課の神田企画官より挨拶の後、引き続き平成22年度ICT利用による教育改善研究発表会受賞者の表彰が行われた。続いて、23年度の私立大学関係補助金の概算要求等について文部科学省私学助成課の山田課長補佐、日本私立学校振興・共済事業団私学振興事業団の小瀬補助金課長より、次のような説明があった。

1.平成23年度情報関係補助の文部科学省概算要求

【文部科学省私学助成課説明】

1)我が国の私学を支える基盤的経費はまったく十分でないという状況で、近年大幅に削減されてきたことから、必要な額を確保するための概 算要求を行った。民主党政権になって初めての概算要求ということで、大きな組み換えを求められている。すべての予算は基本的に1割減し、元気な日本特別枠で要望して政策コンテストで評価するという形になっている。

2)今年度の予算額3,222億円から107.5億円増の3,329億円を要求しているが、一般補助と特別補助の内容を大きく組み替えている。一般補助と特別補助の割合は、2対1の割合であったが、これを大幅に組み換えた。昭和40年代から様々な特別補助を上乗せする形で増えてきたが、ほとんどの大学で取り組まれており、一般補助で 支援すべきものが多く含まれている。特別補助に一般補助で補助すべき内容が含まれていた結果、政策的なメッセージが見えにくくなっているということで、一般補助で措置すべきものは一般補助に移し、新成長戦略などを踏まえたメッセージ性があるものを厳選して、新たな特別補助として要求することにした。

3)2,120億円だった一般補助を特別補助の一部を移し、2,816億円と大幅に増額要求をしている。単価の増額の中でこれまで特別補助で行っていたICT関係の補助も当然のものとして、一般補助で要求させていただいている。新成長戦略を踏まえた新たな特別補助は、政策コンテストで要望枠513億円が現在審査を受けている状況になっており、一般補助2,816億円と特別補助513億円を合わせると107.5億円の増額要求をしている。

4)特別補助は新成長戦略を踏まえた六つの柱からなっている。成長分野で雇用に結びつく人材の育成、社会人学生の組織的な受け入れへの支援、大学等の国際交流の基盤整備への支援、大学院等の持続可能性のある発展の基盤整備への支援、大学ガバナンスの強化支援という柱と経済的に就学が困難な学生の負担軽減ということで授業料減免等を新たな特別補助として513億円要求している。

5)政策コンテストの状況は、私立大学の教育研究基盤強化として455億円、授業料減免58億円の二つに分けて今評価を受けている。パブリックコメントでは、多くの意見をいただいている。「強い人材」育成のための機能強化イニシアティブが、全省庁1位の7万1千件、その次が授業料減免を含むが5万5千件と大学関係の二つで全省庁でかなり大きな意見をいただいており、ほとんどが肯定的な意見であった。一部報道で組織票であったのではないかというような批判もあったが、学生からの意見が13%もあり、組織票だけで多数の意見が出るというものではなく、これだけの関心が寄せられているものと考えている。

6)政策コンテストの各省からのヒアリングは終了しており、11月下旬から12月の初めに各省要望に関する優先順位付けがA、B、C、Dとランク付けされる。大学も相当な危機感をもって望まなければ大幅な減額は免れられないであろうということで、現在、様々な方面で必要な額が確保されるよう努力している。総額が足りないと、どのような方法であっても支障を来してしまうのではないかということで、皆様方におかれてもぜひ、ご支援をたまわれればと思う。

 これを受けて向殿会長から、『従来要求してきた8項目の特別補助がなくなり、一般補助に移行されたことで質保証、高度情報化、地域貢献などの取り組みが弱くなることが心配される。多様な教育研究活動に対する大学の取り組みを後退させないように、一般補助の中でも単価設定などで高度情報化など大学教育の質の向上が図れる工夫を考えていただきたい。』との配慮を求めた。
 これに対して、山田課長補佐から『会長の言われる通りで、情報を含めて大学の様々な取り組みを限られた予算の中で支援するというのが我々の役目と思っている。具体的にどういうふうに、この一般補助の中で支援ができるのかというのは、決まっているわけではないので、一般補助は一般補助の中で具体的に大学の取り組みを促すことができるような方法で来年度に向けて検討を進めていきたいと思っている。』との発言があった。

2.平成22年度の経常費補助金特別補助の執行状況

【日本私立学校振興・共済事業団】

1)単価設定などは決まっていないが、調査票等での調査内容についての変更箇所を説明する。21年度の交付状況では、実際のところ8割近くは増額、2割くらい減額という形になった。説明責任という観点から十分な根拠が説明できるような仕組みにより、良くしていきたいということから、今年度も随時、修正することにしている。

2)調査票の情報通信設備を活用した教育研究では、情報通信設備の基盤整備および維持の基本的な要件を当該年度の4月1日現在の台数とし、年度内で使用可能なものとした。サーバ等は減価償却が終わった機器を除外。PCは4年、サーバは5年を限度として、減価償却期間の範囲内を対称にした。借入れは、借入れの期間内という形で設定した。補助対象とするソフトウエアから除外するソフトウエアとして、OSからウイルス駆除等のセキュリティソフトに至る6種類を対象から除外。電子計算機台数のうち、補助金で導入した機器という欄を追加。これまで、この項目については経常費についての補助という部分で、実際の設備の購入費というよりは、そのランニングコスト的な形の捉え方もあったかというふうに思うが、実際にものとしては一緒のものになってくることから、少し実態を調査して最終的にはどうするか判断したい。

3)教育研究情報の電子化も、9月30日現在で許可されたライセンス等により、当該教育研究情報が利用可能なPCの台数とした。契約期間は、継続的に利用する価値のある教育研究情報を補助対象とするという考え方で6ヶ月以上と設定した。調査項目では、タイトル数を追加して、契約数を削除した。今どのように補助の計算に使用するか検討している。

4)大学独自のデータベースの活用も、9月末現在と時期を設定した。データベースとコンテンツの区分では質が違うことから、単価設定等をどうするか検討させていただきたい。

5)今回一律に調査表の簡素化という観点で整理したが、補助金の教育効果、実際の使用状況について調査で伺っていたこともあり、補助金の趣旨を知らせるためにも、今後、少し充実させた形の調査票を考えている。調査票をもとに試算などをしており、文部科学省と相談しながら、具体的な計算の仕方等を詰めていきたい。

6)ICTに関しての検査院の状況は、11月から始まっている。現物がどう存在しているのか、有償の支払い状況のチェックが入ってくると思う。有償でないものが含まれていたり、あるいは備品台帳、契約書関係、領収書関係の書類が精査できないといった状況もあるので、補助申請した台数と証憑書類のチェックは、今のうちから整備をしていただければと考えている。

 会員代表者の変更について報告・紹介の後、直ちに議事事項の審議に入った。議事は、新法人移行準備に伴う平成22年度予算の変更、新法人定款の変更案の一部修正、定款の変更案に伴う関連規程を審議。報告・協議では、分野別情報活用能力のガイドライン、「私立大学教員授業改善調査」の実施、教職員の職能開発事業の実施経過を報告。以下に、概要を紹介する。

私立大学等の経常費に対する補助
私立大学等の教育研究装置・施設の整備費に対する補助
私立大学等の研究施設等の整備費に対する補助

3.新法人移行準備に伴う平成22年度予算の変更

 公益社団法人への移行を目指して申請の準備を進めているが、財務書類として平成22年度の損益計算に基づく収支予算が必要であることになった。本年3月の総会で決定した収支予算は、特例民法法人として文部科学省に届け出るための資金収支計算による予算であって、公益認定の申請に必要な損益計算ベースの収支予算ではないことから、当該年度の収益と費用から純資産の確保の健全性を判断することを目的とした収支予算が必要となった。また、資金収支による22年度当初の予算では、基本金の取り崩しと繰越金約を充当して予算を編成したが、当期の支出を当期の収入で賄えないことから、総会の場で10%程度の支出節減を行うことを表明し、これまで6ケ月間にわたり支出の見直しを行い、当該年度の収入で支出を賄えることが判明したことと、損益計算ベースによる収支予算にしたことにより、22年度予算の内容が大きく変更することになり、改めて22年度予算を機関決定した。

4.新法人移行準備に伴う定款の変更案の一部修正

 定款の変更案は、平成21年5月29日の臨時総会において特別議決しているが、新法人移行準備に伴う申請作業を進める過程で、定款の変更案を修正することが必要となったことから、理事会の議を経て変更案の一部を修正。主な変更箇所は、経費負担用途の明確化、理事および監事の報酬等の決定、会計監査人の撤回など。

5.定款の変更案に伴う関連規程の設定

 定款の変更案の修正に伴い、総会の決議を得なければならない関連規程を設定する必要から、当面、申請に必要な規程として、「入会金及び会費に関する規程」と「理事及び監事の報酬及び費用の支給に関する規程」を新たに規定した。

6.分野別教育に求められる情報活用能力のガイドライン

 平成22年3月の第54回総会に中間まとめを報告したが、その後本協会のサイバーFD研究員に意見を求め、その上で見直しを行い、30分野の情報教育のガイドラインをとりまとめた。意見については、大変高い評価をいただき多くの分野でほぼ中間まとめの内容となった。
 学生が卒業までに身につけておくことが望まれる学士力の一つとして、文部科学省中央教育審議会の答申(「学士課程教育の構築に向けて」)では、情報リテラシー能力を掲げており、「情報通信技術を用いて、多様な情報を収集・分析して適正に判断し、モラルに則って効果的に活用することができる」としているように、情報の取り扱いを中心とした教育が必要とされている。これまでは、表計算、レポート作成、プレゼンテーション、インターネット利用、ファイル管理などを中心とした技能の習得に比重が置かれてきたが、これからは本質的な学びを目指す学習成果の一つとして、技能の実践的な活用に加え、情報通信技術の可能性と限界を理解した上で、情報を適切・適正に取り扱う「心」と情報を的確に読み取る「解析・判断」能力を培う情報の取り扱い教育が要請されてきている。
 30の分野で、情報の信頼性を「選別・識別」する能力、情報の瓢窃など社会秩序に背く行為を「自己規制」する能力、情報の「整理(モデリング)、データベース構築、データを比較・分析」する能力、ソフトの使用結果をそのまま信用せずに「批判的に吟味」する能力、情報通信技術を活用して最適な「コミュニケ−ションを設定」する能力、情報漏えい、不正侵害対策などの「被害防止・被害回復」に対応する能力が社会に出て本格的に求められるようになるので、分野の特質に応じて情報活用能力の教育を授業の中で展開していただくことを提案している。新たに授業科目を設けるのではなく、専門教育の様々な場面において取り上げていくことを学内で共通理解しておくことが望まれる。それには、教員の指導能力の開発が必要であることから、大学のガバナンスに向けてFD対応の提案を呼びかけていく必要があることを強調している。情報を取り扱う心の教育は、教員も学生とともに「解」のない問題を学び合う授業を想定しており、考える場を作ることが心の教育につながると提案しており、無理のない範囲で情報教育が定着し、学士力の一つとして機能するよう考えることが望まれる。
 日本で初めて大学における情報教育のガイドラインをとりまとめることができた。これは入り口であって、多くの分野で情報教育を展開いただき、体験を持ち寄る中で、社会人として身につけるべき情報活用能力、ICTの活用能力を育成するための教育モデルを研究し、構築していく必要がある。

7.「私立大学教員授業改善調査」の実施

 私立大学教員の授業改善に関する調査を3年ごとに加盟校の専任教員全員を対象に6万5千人前後に実施。調査目的は、私立の大学・短期大学での授業現場の問題点を教員がどのように受け止め、授業改善の対策、大学教育の課題としてどのように考えているか伺う意識調査と、授業でのICTの使用状況、効果と問題点及び改善策、さらには効果的な授業事例を伺うことにしている。
 調査内容としては、授業で直面している問題として、学生に関する問題と教員自身の問題として伺い、授業改善に向けての教員自身の対策を披歴いただき、所属大学として取り組むべき課題、FDの実質化を図る対策、大学を超えて考えるべき課題をたずねている。授業で直面している問題の変遷、授業改善に向けての教員意識がニュースでよく報道されていることから、選択肢などを精査し、設定した。大学教育の課題では、教員自身の授業改善努力と相関させて、所属大学として取り組むべき課題認識を尋ね、教育改革に求められる問題を浮き彫りにすることを考えている。また、授業でのICTの使用状況では、授業運営一般、事前・事後学習、協同・協調学習、理解度の向上、動機付の向上、授業中の理解度把握、大学・産学連携、学習成果の点検・評価、授業評価、FD活動で、現在と2年先の計画を伺い、授業改善に向けたICT活用の工夫を浮き彫りにする。「問題点」では、レポート等をコピ・ペーストに依存し、学びが身につかない、授業に集中せずに関係のないことをしているなど、授業における現象を選択肢として追加している。さらに、教育効果が十分上がらない問題点の改善策について、板書、対話を含む授業設計の工夫が必要、パワーポイント等の教材の工夫と学生に手書きメモの義務付け、対面討論型授業の導入などの選択肢を設定した。

8.「FDのための情報技術講習会」 開催計画

 平成23年3月10日から12日に関西大学で3日間、教員のための情報通信技術の講習会を予定。目的は、ICTを用いた教材作成、授業設計に関する技能や知識の取得で教員の教育技術力向上を目指している。内容として、パワーポイントを中心としたプレゼンテーションの基礎コースでは、プレゼンテーション技術の習得、ビジュアル表現技術の習得、効果的な教授技術の習得。プレゼンテーションの応用コースでは、動画、アニメーションを取り入れた概念理解の形成を促進できるような教材作成の技術の習得を目指す。授業デザインコースは、情報通信技術を取り入れた効果的な授業の設計と授業の進め方、授業マネジメントの観点から、授業デザインの構築に必要な知識、技能の理解を深める。授業デザインに基づいた授業シナリオ作成技術の理解、情報通信技術を用いた授業シナリオの試作、情報通信技術を用いた授業シナリオの完成を計画している。


【目次へ戻る】 【バックナンバー 一覧へ戻る】