教育・学習支援への取り組み
明治法律学校、のちに明治大学は、1881年に岸本辰雄、宮城浩蔵、矢代操によって創立されました。2011年の今年は創立130周年となります。
明治大学には現在、法学部・商学部・政治経済学部・文学部・理工学部・農学部・経営学部・情報コミュニケーション学部・国際日本学部の9学部および大学院10研究科と、高度専門職業人の養成を図る法科大学院(法務研究科)、専門職大学院(ガバナンス研究科、グローバル・ビジネス研究科、会計専門職研究科)があり、さらには付属高等学校・中学校をも擁する総合大学として発展してきました。
現在、明治大学は、駿河台キャンパス・和泉キャンパス・生田キャンパスにおいて、教員数941名、職員数539名、学生数32,955名(2011年5月1日現在)で教育研究活動を展開しています。
2013年度には中野駅前において、第4のキャンパス「中野キャンパス」を展開する予定です。
明治大学は「権利自由」「独立自治」を建学の基本理念として、「質実剛健」「新しい知の創造」「時代の要請」に応える人材の育成に努め、既に50万人を超える卒業生を社会に送り出し、わが国の発展に大きく貢献してきました。近年は建学の精神をもとに『「個」を強くする大学』『世界へ』のスローガンを掲げ、各界の中枢で活躍する多くの卒業生も、社会的に高く評価されています。
和泉キャンパス(2010年4月)
明治大学において教育改革や改善をリードするプロジェクトは「教育改革支援本部」「教育開発・支援センター」が担っています。
そして、各学部、付属機関がその趣旨に賛同し、連携・協力しています。
(1)教育改革支援本部
教育改革支援事業への取り組みに対する支援・推進を目的として設置されています。
具体的にはGPの採択に向けての支援、募集、審査、選定、申請等の任務を行っています。成果として毎年のようにGPを獲得し、活発に教育改革を進めています。
(2)教育開発・支援センター
下図のように四つの専門部会・検討部会が活発に活動を続けています。
図1 教育開発・支援センター体制図
本稿では、筆者が参画するICT関連の組織が取り組む教育改革、改善について紹介します。
明治大学には次のようなICT関連の機関等が展開しています。
(1)教育の情報化推進本部
明治大学の教育の情報化をより効果的に推進するために、2005年4月に学長の下に発足しました。副教務部長の下、教育の情報化、情報メディアを利用した教育支援、全学的で体系的な情報教育の実施などを担っています。
図2 教育の情報課推進本部体制図
この任務を遂行するために、下図のように3推進部を設置し、それぞれの役割に応じた任務を遂行できる体制をとっています。
(2)情報基盤本部
明治大学のネットワーク、メール等の情報基盤を整備するために、情報基盤本部が設置されています。
この任務を遂行するために、以下のように3推進部を設置し、それぞれの役割に応じた任務を遂行できる体制をとっています。
(3)ユビキタス教育推進事務室
eラーニング(メディア授業)の実施、遠隔教育、デジタルコンテンツ制作・活用など、大学のユニバーサル・アクセス化を推進するために、ユビキタス教育推進事務室を設置しました。ユビキタスカレッジ運営委員会の下、活発に活動を進めています。
明治大学では、それぞれの機関の強みを生かし、様々な場面で教育改革、改善を実施しています。では具体的な活動をいくつかご紹介します。
(1)Oh-o!Meiji System(授業支援システム)
Oh-o!Meiji(おお、明治)は言わずと知れた明治大学の校歌の出だしの歌詞です。このフレーズを冠した授業支援システムは、元祖GP「特色ある大学教育支援プログラム」の初年度、平成15年度に申請し採択されました。当時としては先進的な授業支援システムを独自に構築しました。しかし、このシステムもリリースから10年経ち、多言語対応、携帯端末対応、ポートフォリオ機能など近年の要求に応えられなくなってきました。現在次期Oh-o!Meijiシステムの構築を行っています。今回の構築もパッケージ購入ではなく、オープンソースをベースに構築します。2013年度利用開始を目標にしています。
このOh-o!Meijiシステムにはクラスウェブという機能があり、その中でディスカッション、資料共有等ができるので、オンライン上での「双方向授業」が実現しています。
図3 Oh-o!Meijiシステムログイン画面
(2)クリッカー
クリッカーとは学生一人ひとりに配布したリモコンでアンケートを取るツールです。クリッカーを活用することで、多人数の授業でも学生の前提知識、理解度、感想などを即時に収集し、プロジェクターに表示することができます。教員は、学生の理解度などを確認しながら授業を進めることができます。また、クリッカーをきっかけに活発な議論も期待されます。
2010年度より和泉キャンパスにこのクリッカーが配備され、様々な授業において活用され始めました。毎回のように利用している教員の利用シーンとして、
【授業冒頭】 時事問題(例えばアメリカ軍事基地問題)について触れる時間をとり、学生にそれに関する意見をクリッカーで聞く。 【授業最中】 本題のテーマについて事前認識レベルをクリッカーで聞き、授業を進める。 【授業終了時】 クイズ形式で復習問題、授業理解度をクリッカーで聞く。
というような活用がなされています。
学生からは「他の人の意見がわかって興味深かった。」「挙手で回答しづらい内容も回答できた。」「双方向的で楽しかった。」などの好反響が寄せられています。
クリッカーを1年使っての課題は、事前のパワーポイントへの問題の仕込みが必要であるので、なかなか利用する教員が増えないことが挙げられます。またクリッカーの個体差で、電池が早くなくなるものがあり、使おうと思った時に切れているクリッカーなども散見され、電池管理が煩雑であることが挙げられます。
現在、授業以外でもオープンキャンパス、FD研修会、新入職員研修、図書館ツアーでも取り上げられ、様々な場面での活用が推進されています。
写真1 クリッカー本体と画面表示の様子
(3)iTunes U
2010年8月、明治大学は慶応義塾大学、早稲田大学、東京大学とともに、日本で初めてアップル社のiTunes Uに参加しました。ここには、通常の講義に加えて著名な方のシンポジウム、スポーツなどの学生生活にまつわること、大学案内などを公開しています。
大学の活動を誰でもいつでも見ることができ、在学生、校友が一体となった感覚を感じることができます。
図4 明治大学iTunes Uトップ画面
(4)ユビキタス教育
明治大学のeラーニングは、eラーニングにありがちな継続学習の困難を軽減するために、専門家が授業設計を行っています。この授業設計をインストラクショナルデザイン(教授設計学、教授システム学)と呼びます。
教える側と学ぶ側双方の観点から運営体制を確立し、インストラクショナルデザインに重点を置き、取り組んでいます。
また、専門家チームによる教材作成支援体制および学習支援体制を確立しています。学習支援体制においては、学習者をサポートする「ラーニングコンシェルジュ」「メンタ」「チュータ」を置いています。
図5 明治大学のメディア授業
マンモス大学になるとなかなか学生への働きかけが鈍くなりますが、明治大学では意識的に学生への働きかけを行っています。2010年度のキーワードを「双方向」として、様々な活動を展開しました。
(1)新しいデバイスに触れる機会を提供
2010年はアップル社のiPadを始め、スマートフォン、電子書籍リーダーなど新しいデバイスが脚光を浴びた年でした。
学生にいち早く新しいデバイスに触れてもらいメディアに対するアンテナの感度を高めてもらうよう、iPadの展示、電子書籍リーダーの展示貸出し等を実施しました。
学生の感想を参考に、大学の設備整備を進めています。
写真2 学生ラウンジでのiPad展示の様子
(2)ITタウンミーティング
学生の率直な意見、要望、質問を聞く機会として「ITタウンミーティング」を開催しています。教育の情報化推進本部の情報教育推進部長、メディア環境利用を支援する部署の職員が学生の声に耳を傾け、メディア環境整備、情報教育カリキュラム、メディア支援体制などの検討に活用されています。
写真3 ITタウンミーティングの様子
(3)充実のサポート体制
きめの細かいICT活用支援のために明治大学では充実のサポート体制を構築しています。各キャンパスで情報関係科目の授業内サポート、メディア施設の利用支援を行う情報アシスタント体制があります。常勤の特別嘱託職員が19名、大学院生のTAが121名在籍しています。情報関係科目の授業には基本的にTA2名が教室に入り、情報関係科目が円滑に進められています。
また、各キャンパスには業務委託によるサポートデスクが設置され、プレゼンテーション設備の利用支援、ネットワークの利用支援、教材作成の支援(代行ではない)を行っています。それにより、教員は学生との質の高い双方向の授業の実現に注力することができます。
写真4 情報アシスタントネームプレート
教育・学習支援の活性化には常に現状を再確認し、新しい試みを続ける必要があります。
明治大学のICT部門における課題としては、
1) 新しい情報科目のカリキュラム改正については、現在、新カリキュラムを策定中であること、 2) コンプライアンスの確立については、ソフトウェア、DVDタイトル等の適正な利用体制が必要なこと、 3) 新キャンパスの中野キャンパスで2013年度に使用開始予定であること、
が挙げられます。
ぜひ、大学関係者各位からのご指導、ご助言をお願いいたします。
文責: | 明治大学 |
情報メディア部 和泉メディア支援事務長 和田 格 |