巻頭言
軽部 征夫(東京工科大学学長)
本学は昭和43(1968)年工学部のみの単科大学として設立され、今年25周年を迎えた。現在は八王子キャンパスにメディア学部、応用生物学部、コンピュータサイエンス学部、蒲田キャンパスに医療保健学部とデザイン学部の5学部を持つ大学となり、在学生は2年後には約8,000名になる予定である。
本学の理念を取りまとめる言葉として“実学主義”を掲げて教育と研究を行っている。実学とは実社会に役立つ知識や技術を指しているが、主義をつけて実社会に適応できる人材を育成していこうという考えである。実際には入学試験が多様化しており、色々な能力を持った学生が入学してくる。これらの学生の能力に合わせて、教育内容を柔軟に変えて学士力を保証する教育を行わなければならない。本学で行っている教育は具体的に四つのミッションとしてまとめている。
(1)学生の個性を重視した教育の実施
本学のメディア学部、応用生物学部、コンピュータサイエンス学部、デザイン学部の4学部はそれぞれ1学部1学科で運営されている。医療保健学部は厚生労働省の指導があり、学科制を採用しているので本学では例外の学部ということになる。
4学部は学部名と同じ学科であるので、学生にとっては専門分野が広すぎてどのような専門分野を選択したらよいか悩むことになる。そこで、専門分野を明らかにするガイドとしてコース制を取っている。これには定員がなく、横断的にどのコースの授業や実験、演習もとれるようになっている。そして、3年生の後半から卒業研究に着手することになり、初めて自分の専門を本格的に身につけて、就職に向かって研究を進めることになる。
(2)先端技術教育による実社会に役立つ技術者や多様なエキスパートの育成
本学のキャンパスは美しいし、校舎は立派で最先端の設備が用意されている。特に片柳研究所には最先端の教育・研究設備が設置されている。学生はこのような優れた設備を利用して勉学したり、研究することができる。ここで身につけた知識や技術・スキルは実社会ですぐに役立つことになる。
(3)ICTに精通した技術者や多様なエキスパートの育成
本学は5学部共通で情報通信技術(ICT)を徹底的に教育することにしている。八王子の3学部ではノートPC必携となっており、本学教員の開発した教育用ソフトをインストールしたノートPCを用いて授業の出席確認、レポートやプログラムなどの作品の提出、無記名アンケートの提出などの電子サービスを行っている。蒲田の2学部についても同様のサービスが受けられるようになっている。また、教育におけるクラウドコンピューティングの利用研究を進めており、クラウドサービスセンターを設立している。
(4)国際的人材育成のための外国語(特に英語)の実践教育
グローバル化に伴い、外国語、特に英語の修得が不可欠になっている。八王子キャンパスでは入学後にプレースメントテストを実施し、この成績を参考に英語授業の少人数クラス分けを行っている。学生の能力に応じてネイティブスピーカーの教員と日本人教員が英語のきめ細かい指導を行っている。蒲田キャンパスの2学部では外部からネイティブスピーカーの教員を派遣してもらい、やはり能力別の少人数クラスでこれらの教員による英語の授業を行っている。学生はネイティブスピーカーの教員による授業は刺激的らしく、TOEICなどの試験に積極的に挑戦している。
以上、四つのミッションを簡単に紹介したが、教職員の行動規範としてオンリー・ワン・ベストケアを定めている。これは他大学で行っていない独創的な教育を行うこと、学生が入学してから卒業・就職するまで十分に満足してもらえるようにベストを尽くしてケアしますという教職員の学生に対する約束である。