事業活動報告

情報リテラシー教育の実態とガイドラインの考察

 分野共通の学士力としての情報活用能力のガイドラインを研究するため、加盟大学での情報リテラシー教育の実態を調査し、その結果を踏まえて情報リテラシー教育のガイドラインの研究を進めた。

1.情報リテラシー教育の実態

1)「文章表現・統計計算」「情報の倫理に配慮して、加工・表現・発信」「情報社会の理解とセキュリティ対策」を7割から8割の大学が実施しているが、「コンピュータの仕組みと原理」「情報通信技術を活用したコミュニケーション」は6割、「情報の信頼性の選別・識別」は4割、「モデル化、シミュレーション」は2割に留まっており、課題解決能力の一環として、情報を読み解く能力と解の妥当性を判断する情報の科学的能力の教育が大半の大学で実施されていないことが判明した。

情報リテラシー教育の内容

(1) 収集した情報を情報の倫理に配慮して、加工・表現・発信できるようにする 74%
(2) ソフトを使って文章表現・統計計算ができるようする 89%
(3) 情報社会の光と影を理解させ、安全を維持するためのセキュリティの知識・技能を身に付けさせる 74%
(4) コンピュータと情報通信の仕組みと原理を理解させる 65%
(5) 問題を効果的に解決する手法として、モデル化やシュミレーションに必要な知識と技能を習得させる 24%
(6) 情報通信技術を活用して最適なコミュニケーションを行うための知識と技能を習得させる 59%
(7) 情報の信頼性を選別・識別する知識と技能を習得させる 43%

情報リテラシー教育の実施体制

(1)授業で情報倫理を取り上げている 30%
(2)授業で情報倫理を取り上げていない(ホームページ、電子メール、文書・表計算ソフトの活用法などになっている) 70%

情報倫理教育の実施状況

(1) 情報部門センターで、ネットへのアクセス権限等を取得させる中で実施 4%
(2) 情報部門センターでの実施と初年次教育の一環として実施 29%
(3) 情報部門センターでの実施と初年次教育およびキャリア教育で実施 10%
(4) 初年次教育で実施 45%
(5) 初年次教育およびキャリア教育で実施 11%
(6) キャリア教育で実施 1%

2)課題解決能力の一環として、情報の正確性や信頼性を識別し、発信者の意図を読み解く能力と計算結果を鵜呑にせず、解の妥当性を判断する情報の科学的能力が不可欠となってくる。文系理系等を問わず、学問分野共通のリテラシーとして様々な教育場面で身につけておくことが求められてる。

3)情報の倫理教育を実際に授業で取り上げているのは3割に留まっており、人格形成教育の入り口として情報を取り扱う心の教育の普及も含めて課題であることが判明した。5割近くが初年次教育、3割が情報センタ部門での教育と初年次教育で実施しており、あらゆる分野の授業でリテラシー能力の活用を取り上げ、身に付けさせるようなカリキュラムとはなっていない。

4)情報の取り扱いに関する問題は、ケーススタディによるグループ学習を通じて身近な問題として認識しておくことが重要で、専門教育の様々な場面において取り上げていくことを学内で共通理解しておくことが望まれる。それには、教員の指導能力の開発が必要であることから、大学のガバナンスにFD対応の提案を呼びかけていくことが重要としている。

2.情報リテラシー教育のガイドラインの考察

 上記のアンケート結果を踏まえて、分野共通に身に付けるべき学習成果の到達目標について情報社会を主体的に判断・行動できる、情報通信技術を活用できる、情報を科学的にとらえ、問題解決できる点を重視して、以下の通り三つの到達目標を設定した。その上で、それぞれ学習成果の「到達度」「教育・学習方法の例示」「到達度の測定方法」を中間的にとりまとめた。今後、中間まとめを見直し、9月に紹介する予定にしている。

【到達目標1】
 情報社会の光と影を認識し、主体的に判断し行動することができる。

(到達度)

【到達目標2】
 問題解決に情報通信技術を活用することができる。

(到達度)

【到達目標3】
 コンピュータと情報通信の仕組みを理解し、モデル化やシミュレーションを用いて効果的に問題を解決できる。

(到達度)


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