事業活動報告

産学連携による情報系人材教育の支援活動

 本協会では、人材育成に対する大学と企業等のミスマッチの解決に向け、産学関係者が相互に意見交流を行う産学連携の仕組みづくりに取り組んでいる。平成23年3月の第2回産学連携人材ニーズ交流会(情報系分野)では、大学と産業界の双方で産学連携の意義についての賛同は得られたが、具体的な連携を議論するところまでは至らなかった。
 そこで、平成24年3月に実施の第3回産学連携人材ニーズ交流会では、人材育成に対する大学と企業等のミスマッチの解決に向けた双方の意識合わせ行い、連携の実現に向け、以下の取り組みを進めた。
 一つは、人材育成の目標・水準、求める人材像について、産学関係者が意見交流する場づくりを設定し、教育内容・方法等についてマッチングを行った。
 二つは、教員の教育力を高める現場研修、いわゆる教員のインターンシップを中心とした連携事業の具体化を確認し、条件合わせの可能性を検討した。
 三つは、新たな産学連携事業の可能性として、志のある学生が希望と夢を自ら描けるきっかけになるよう、学生の社会スタディの場を構築する意義・必要性について検討した。

1.情報系人材教育の学士力の考察

 情報系人材教育の学士力について、産学連携人材ニーズ交流会での意見を踏まえ、当初策定した到達目標を情報専門教育委員会において次の点を見直し、現時点では以下のように設定した。

1)情報通信系教育の学習成果の到達目標等の見直し

2)情報コンテンツ・サービス系教育の学習成果の到達目標等の考察

 以上について平成24年3月の人材ニーズ交流会で次のような意見交流があった。

2.産学連携事業のマッチング

 過去2回の産学連携人材ニーズ交流会を通じて、情報系分野の連携を実際に進めるための検討を行い、本協会としての関与の在り方について次のように決定した。

1)連携を希望する大学と企業の仲介を行うため、連携条件の整理及び調整を行う。

2)連携を普及するため、連携の活動内容・成果・課題などをとりまとめて公表する。

3)連携に伴う実費は当事者間で負担する。

4)連携の希望調査を平成24年3月までに実施し、実現に向けたマッチングを始める。

5)連携の内容は、「大学教員の現場研修の受け入れ」「大学教育に対する支援」「大学から受けたい協力・支援」とした。

 以上の方針に沿って、平成24年3月までに連携の希望調査を実施したところ、大学の希望と企業の希望が比較的多いのは、教員のインターンシップと言われる「大学教員の現場研修の受け入れ」であった。
 具体的には、「学びの動機付を行うための教員の現場研修」では10大学の要請に対して5企業から支援の表明があった。「キャリア形成支援の教育力向上に向けた現場研修」では9大学に対して6企業から支援の表明。「最新の現場情報・技術情報・技能情報の振り返りの研修」では7大学に対して3企業からの支援の表明であった。
 「大学教育に対する支援」では、「現場情報・実務情報の紹介などの支援」に8大学の希望に対して4企業、「人間力を高めるキャリア形成教育の支援」に9大学の希望に対して4企業から支援の表明があった。大学からのリカレント教育の提供、企業の人材育成への協力・支援に対して、大学からは9から8大学からの支援の表明があったが、企業の受け入れは2社とニーズが低かったことから、当面は、大学と企業とのニーズが多い、教員のインターンシップを優先することになり、平成24年度の実施に向け、準備することになった。

3.「社会スタディの場」の構想

 日本の未来に立ち向かう志のある大学生、高校生を対象に世界の動き、産業界の将来像・社会的役割・今後の課題などの情報を提供し、国・社会の発展にICTが原動力になっていくことに気づきを与える機会を提供するもので、約140名に意思表示を求めたところ、概ね8割の賛同があった。社会スタディ構想の概要は次の通り。

1)社会スタディの必要性
 成長社会から低成長社会、成熟社会へと変化する一方、新興国による成長が目覚ましい。日本は強みであるモノ作りにこだわるあまり、世界の潮流を見失った。新興国の成長を取り込む中で、それぞれの国・社会に支持されるモノ作り、それを利用する仕組み作りを一緒に提供するイノベーションが求められている。
 他方、世界は一国の利益を追求する時代から、世界の国々との連携・協調の中で共生する時代に移行しつつある。
 そのような変化の中で、日本の未来に立ち向かう志のある若者が希望と夢を自ら描けるきっかけになるよう、世界の動き、産業界の将来像、社会的役割、今後の課題などの業界情報を分かりやすく説明し、国・社会の発展にICT(情報コミュニケーション技術)が原動力になっていくことを気づかせる機会を提供する。

2)社会スタディのイメージ
 成熟社会における新たな価値創造の可能性、ICTを活用する業界の将来性、社会的役割、雇用の実態などの現場情報を産業界から提示して、会場で意見交流する。気づきを持たせ、早い段階から目的意識をもって学びに取り組めるよう意欲を喚起する。また、教員にも参加を求め、産業界の将来像や課題について理解の共有を図る。
 会場に参加できない学生、教員に対して情報を提供できるよう、スタディの状況を学生の個人情報に配慮して収録し、後日、インターネットで公表する。

3)社会スタディと教育機関の関係
 日本の未来を切り拓く志のある高校生、大学生を対象に支援する。大学、高校の教育課程への組み入れは考えていない。学びの目的意識を持たせ、日本のICTの力を高めることに興味を抱かせることを目指す。

4)学習プログラムのイメージ
 現在考えているイメージを紹介するもので、具体的には今後委員会で検討することにしている。

5)24年度は準備を行い、25年度に実施する。

6)録画を配信することで、社会の動向との関連付が促進され、主体的な学習が普及する。

4.企業から大学への要望

1)大学の学習内容の状況が外部から見えにくいので工夫の必要があること。

2)単位取得で何を教育して、何ができるようになったのかが明確になるようにして欲しい。
  教育情報の公表も含めて大学の課題として受け止めることにした。

3)PBLによるプロジェクト型教育を積極化する中で、失敗してもやり遂げる体験を教育で実践するよう工夫されたい。

4)学習成果報告会などに、企業等学外関係者の参加ができるようにすることが望まれる。


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