特集 座談会 新たな価値創造のための情報リテラシー教育に向けて

座談会 新たな価値創造のための情報リテラシー教育に向けて
〜大学で求められる能力と高校における情報科教育の現状・課題を踏まえて〜

<出席者>

村井  純 氏 (情報教育研究委員会委員長 慶應義塾大学環境情報学部長)
玉田 和恵 氏 (情報リテラシー・情報倫理分科会主査 江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授)
家本  修 氏 (FD情報技術講習会運営委員会委員 大阪経済大学情報社会学部長)
佐藤万寿美 氏 (兵庫県立西宮今津高校教諭)
天良 和男 氏 (東京都立小石川中等教育学校教員)

<司会>

今泉  忠 氏 (事業普及委員会委員長 多摩大学経営学部教授)

※上記の委員会・分科会名は私立大学情報教育協会設置の事業組織。

今泉:社会がめまぐるしく変化している中で、国を超えて知恵を出し合い問題を解決していける人材が求められています。世界で活躍できる人材を日本で育成していくためには、どのような教育が求められているのでしょうか。
 平成20年に中央教育審議会から「学士課程教育の構築に向けて(答申)」(12月24日)が出されました。そこでは、社会の様々な変化に対応して問題を解決して社会に貢献できる人材、つまり21世紀型の市民社会を築いていける人材を育成するために必要な学士力について述べられています。
 各専攻分野を通じて培う学士力には「汎用的能力」があります。そこには「コミュニケーション・スキル」、「数量的スキル」、「情報リテラシー」、「論理的思考力」の四つが挙げられています。「情報リテラシー」は知識の修得に留まらず、大学4年間の学びを通じて専門分野でも活用できるよう身に付けなければならない能力です。
 一方、私立大学情報教育協会(以下、私情協)では今年、「情報リテラシー教育のガイドライン」(後掲)をまとめました。
 そこで本日は、「情報リテラシー」に焦点をあて、これからの人材育成のために高等教育さらには中等教育過程でどのような取り組みが必要であるか、情報リテラシーに造詣の深い方々にお話を伺い、今後の課題を探りたいと思います。
 まず、私情協の「情報リテラシーのガイドライン」の趣旨と背景について、ガイドライン作成を担当された玉田先生からご説明いただき、その後、大学の情報リテラシーに関連している高校での教科情報について、その状況や課題を高校の先生方からご紹介いただきたいと思います。

情報リテラシー教育のガイドラインの趣旨とねらい

玉田:情報リテラシー教育はすべての教科で共通に必要な能力ということで、様々な分野でどのような能力が必要であるか、私情協の31分野の委員会で議論しまとめていただきました。そして、大学4年間の後で学士力の情報リテラシーとして何を保証するかという視点で各分野で求められる能力を集約し、そこに共通なものを明らかにする目的で、「情報リテラシーのガイドライン」をとりまとめました。
 学士力として情報通信技術の可能性と限界を理解した上で、それぞれの専門分野で適切・適正に情報を活用し、課題発見や課題解決ができる人材を育てるために、三つの到達目標を掲げました。
 到達目標1は、「情報社会の光と影を認識し、主体的に判断して行動することができる」能力で、読みとった情報を自分の知識として定着させ、知恵の段階まで伸ばしていくことを目標としており、情報倫理の部分です。
 到達目標2は、「課題発見、問題解決に情報通信技術を活用することができる」能力で、主に多くの大学でリテラシー教育の中で行われているものです。
 到達目標3は、「情報通信技術の仕組みを理解し、モデル化とシミュレーションを課題発見や問題解決に活用できる」能力で、情報通信技術の仕組みを理解し、モデル化、シミュレーションを問題解決に活用できるという能力です。大学におけるすべての分野で必要なのは問題解決力で、例えば情報科学分野でも経済学の分野でも、それぞれの方法で問題をモデル化しシミュレーションすることを教えなければならないというのが、このガイドラインの重要なポイントです。
 しかし、中教審の答申にもあるように、大学教育では、それぞれ分野固有の専門性の上で、これらの能力を活用していくことを想定されていますが、現状は大きく異なることが、昨年度私情協で実施した「大学の情報リテラシー教育の実態調査」でわかりました。

大学の情報リテラシー教育の実態調査

玉田:調査結果では、リテラシー教育は初年次教育や情報センターでの実施が約7割で、実施内容も「加工・表現・発信」、「文章表現・統計計算」、「情報社会の理解とセキュリティ対策」は7割から9割という大半の大学が実施していることがわかりました。一方「コンピュータの仕組みと原理」や「コミュニケーション」は6割程度で、「情報の信頼性を選別・識別」は4割、「モデル化、シミュレーション」は2割程度の実施に留まっている現状でした。そして、大学のカリキュラムで情報リテラシー教育が各分野に系統的に組み込まれている事例はほとんど見られませんでした。しかし、どの分野においてもモデル化やシミュレーション、つまり「仮設と検証」は身に付けるべき重要な要素ですから、ガイドラインに到達目標3として盛り込むことにしました。
 前述のように、情報リテラシー教育は大半の大学が初年次だけ実施していますが、各専門分野と情報リテラシーの連携、情報専門の教員との連携、さらには大学間の連携、産学連携の中で、各専門分野の4年間で日常的な教育として取り組むことをガイドラインを通じて働きかけていくことを目的としています。

新しい価値の創造

村井:到達目標1の中にある到達度「1.発信者の意図を理解した上で、情報を読み解く力ことができる」は、情報社会を構築するために必要な第一歩ですが、グローバル社会を考えると、リテラシーでは他者を説得でき動かせることも重要な能力です。

家本:相手が何を言っているかを理解した上で、次の情報を引き出すために双方向性の情報伝達能力が必要になると思います。

村井:さらに、リテラシーというのは生きていくための力ですから、グローバル社会では、お互いに知恵や知識を出し合って新しい価値を創造していくことが重要ですが、ガイドラインではどのように捉えているでしょうか。

玉田:何かを創造するにはいわゆる総合的な能力が必要で、それはリテラシー教育と専門分野との連携の中で取り組んでいくステップになりますので、情報が関与することがあっても、どのように専門分野と関連づけるかまではガイドラインでは踏み込んでいません。
 ただ、グローバル社会において新しい価値を創造していくためには、情報活用のスキルが必要ですが、それにも増して心の教育が重要ですので、それがガイドラインの到達目標1の精神となっています。
 さらに、到達目標3の中の到達度に「3.社会における情報通信システムの役割を考え、有益なシステムの在り方を考察することができる」があります。これは、持続可能な社会を作る上で、情報システムを考える視野をリテラシーの中に入れ、グローバル社会や変転する社会に対して柔軟性、創造性を持つことを目指しています。

天良:このガイドラインは、高校のいわゆる学習指導要領の中の文言とかなり似ているところがあります。村井先生がおっしゃったように新しい価値の創造などを入れて、高校の情報教育との違いを明記する必要があるのではないでしょうか。

玉田:このガイドラインの上に、各学問分野で情報を活用する教育として「分野別教育における情報教育のガイドライン」[1]を31分野に亘って作りました。そのため「情報リテラシー教育のガイドライン」は各学問分野共通で教育してほしい内容として位置づけられます。

佐藤:高校の情報教育でできないのは価値の創造で、大学で教育してほしいのは問題解決の手法としてディベートです。高校で実施するには知識の定着度から考えると難しいので、大学のレベルで様々な情報を集め、データから何が言えるのか、何が作れるのか、何が駄目なのかということを考えさせる教育で、高校との区別ができると思われます。

家本:ディベートで面白さを感じることによって、学生は「情報教育を学んでいるんだ」という感覚を持てます。大学ではこのディベートなどを活用した問題解決の教育から始めたいのですが、実際には基礎的なレベルから始めなければならない学生が沢山おり、現実的な教育意図と現実のギャップが生じています。

今泉:高校でも本来行うべき情報科の教育が行われていない、また、担当教員も少ない上に、数学など他の教科の免許を持っていないと情報の科目を担当できないなど様々な問題があると聞いていますが、高校での情報科教育の現状を教えていただけますでしょうか。

高校の情報科教育の実情と課題

佐藤:過日に私情協から依頼があり、大学の先生向けに高校の情報科教育の実情と課題についてまとめさせていただきましたので、それをもとにまず、情報A、B、Cから「社会と情報」、「情報の科学」に再編成される様子などを説明させていただきます[2]
 情報A、B、Cについて、「情報A」は「情報活用の実践力」、「情報B」は「情報の科学的な理解」、「情報C」は「情報社会に参画する態度」に主眼に置いていますが、現状の問題点の一つは、その実施状況が「情報A」に偏っているということです。そこで今回の学習指導要領の改訂では、A、B、Cの中身が分かりにくいことから科目名を変え、「情報A」の内容を科学と社会の両方に入れました。しかし、近隣の高校に聞いたところ、約30校で「社会と情報」と「情報の科学」のどちらを実施するか既に決まっており、生徒数で4対1、学校数で3対1と「社会と情報」に偏っていることがわかりました。
 二つ目に教員配置の問題があります。これは大学の教員養成課程、いわゆる採用試験の問題と関わりがあります。大学の中で教科情報の認知度が低く、数学の教員が情報の免許を取って教えるという複数免許というのが現状です。入試に情報科目が入っていないことも原因かと思います。採用試験の現状は、全国47都道府県のうち、昨年度は15都道府県しか実施されていないようです。結局、教育実習の受け皿がなく、大学の先生方からもご指摘を受けていますが、高校の教員だけではとても解決できません。大学や私情協でもぜひ取り上げていただきたい問題です。
 三つ目は、高等学校はセンター試験の受験科目を重視して時間割を編成しているのが現状ですので、大学入試に情報科目を導入することで情報科のステイタスも上がっていくのではないかと思っています。
 四つ目は、新しい「情報の科学」と「社会と情報」の話題です。今回の学習指導要領改定の特徴は、一つは、教育課程編成上の課題があります。1週間30〜32単位の中に科目をどのように編成するかというものです。二つは、設置学年についてはこれまで教科「情報」は1年生で2時間が定着していましたが、基礎理科を2単位入れなければならないため、2年生で教える動きも出てきています。三つは、設置科目は「社会と情報」と「情報の科学」ですが、四つは、これを生徒が自由に選択できるという選択制の導入です。
 私が所属している西宮今津高校では新学習指導要領の試行ということで、情報BとCの選択制を導入し、1年次にガイダンスを行っています。1年生240人のうち44人が「情報B」を選択、それ以外は「情報C」を選択しました。「情報B」を選択した44名にアンケートをとったところ、選択制の導入は「良かった」と30人が回答し、その理由として「内容がよかった」が23人いました。
 このようなことからも、ガイダンスで内容をきちんと説明すれば、「情報の科学」の履修者が増え、先の偏りの問題の改善にもつながるのではないかと思われます。また、生徒が自ら選択するので、モチベーションが高い状態で授業に臨んでくれます。選択制の導入と工夫が学習指導要領の次期改定で「情報」の必履修につながっていくよう、実践事例として全国の高校に情報発信していきたいと思っています。

中学「技術」情報分野・高校教科「情報」の履修状況

天良:私からは大学入試との関係を中心にお話しします。まず、中学校で技術、高校では教科「情報」がありますが、現実には一部で実施されていないケースが挙げられます。高校の教科「情報」の履修状況を大学で調べてもらい、学会で発表しました。
 1年生に対するアンケート調査をしたところ、情報系の科目はまったく履修していないというのが数%あったという状況です。教科「情報」は、高校で2時間(2単位)勉強しなければなりませんが、5大学での調査によると、週1時間1年間しか実施しなかった、つまり2単位の中の1単位しか実施していないのが45%もあるということです。このようなアンケート調査を、一部の大学だけでなく、例えば私情協に加盟する大学の中で実施して、その結果をまとめて報告してほしいと思っています。
 また、中学校の「技術」情報分野の履修状況についても前任校で4年間調査したところ、「ある程度学習した」「ほとんど学習しなかった」、「まったく学習しなかった」の3段階のうち、1時間も情報を実施していない学校が数%程度ある状況でした。
 数年前に未履修問題がありましたが、達成度を測る仕組みがないために、現時点でも、残念ながら一部の学校で未履修ないしは未履修に近い状況が存在しているのです。
 大学入試のために高校教育があるわけではありませんが、現実の問題として、入試などの達成度を測る仕組みがないと本気になって実施してもらえないのです。

大学入試における情報科目の出題

天良:基礎的な学習の到達度測定には、OECDの学習到達度調査(PISA2009)や英国の中等教育の修了資格試験や、日本の大学入試センター試験があります。
 情報関連科目についても、大学入試センター試験や大学の個別入試に出題することによって、教員の嗜好による特定分野に偏った指導や未履修を防ぐ効果があります。

図 「社会と情報」「情報の科学」の内容

 私は、情報A、B、Cの学習指導要領の作成に関わってきまして、佐藤先生は、その後の「社会と情報」、「情報の科学」の学習指導要領に関わってこられました。
 これまでの「情報A」、「情報B」、「情報C」は実技教科とみなされていましたが、「社会と情報」と「情報の科学」は情報科学の学習という形になってかなり学問的な色彩が強くなり、実習時間の制約が削除されました。図のように大学入試に十分耐えうる内容になっています。
 大学入試で、教科「情報」を従来どおりの独自入試として出題している大学は現在26校程度で極めて少ない状況です。
 そこで、各大学の個別入試として教科「情報」を出題できないのであれば、他教科と情報を内容的に融合して出題する方法もあります。例えば、物理の「光の三原色」に情報の「画像のデジタル化の仕組み」の内容を絡めて出題するなど、物理や数学などの他教科の内容に情報を融合させたような問題です。そうすれば、現行の入試科目を増やさないで、教科「情報」の内容を入試に反映することができますし、総合的、横断的に事象をとらえる力も測定することができるのではないかと思います。

今泉:入ってきた学生に足りない力が沢山あるという問題を解決していくためには、入試問題について抜本的に考えていかなければなりませんね。

新たな仕組みへの提案

天良:将来は、高校の教科「情報」の科目である「情報の科学」と「社会と情報」を、数学と同じように「情報I」、「情報II」、「情報III」に発展させ、52は必履修科目、<2と=2は選択科目のような構造にすると大学入試にも出しやすいのではないかと考えています。52は全員の生徒が履修しなければなりませんが、IIやIIIはIより発展的な内容とし、興味をもった生徒だけが選択すればよいのです。

今泉:そうなると大学からの見通しもよくなり、大学で本来実施すべき教育が実現しやすくなりますね。

天良:その他に「情報学教育関連学会等協議会」が昨年12月にできました。これは、日本情報科教育学会や情報処理学会などの様々な学会や研究会が連合して、今後の情報科教育をどのように発展させるべきか、次(10年後)の新しい学習指導要領にどのような内容を反映させていくべきかなどを検討し、文部科学省などの関係する部署に提言していく組織です。ぜひ、私情協にも連携していただきたいと思います。

今泉:入試だけでなく、教育プロセスの中で情報をどのように位置づけ、どこに着地点を設定するかという新たな仕組みですね。

村井:先程、実践事例を紹介することで理解を広げていくお話がありましたが、優れた事例に対する「ベストプラクティス」などの制度を作ることで競争心が生まれ、全体的に改善されていくとよいですね。小さな単位であればできるのではないかと思います。私情協のような外部団体で広められると効果的だと思います。

今泉:情報分野では、必ず実習つまり「実際に行ってみる」がつきものです。それを単なる操作演習ではなく、学習内容の具現化とすることは言うまでもないことですね。ただし、各分野でも内容は異なるので、それぞれでの「ベストプラクティス」を行うことで、共通の「ベストプラクティス」を見い出すこと、見い出そうとすることが重要ですね。そのためにも、先生方がおっしゃっておられた新しい価値を創造していくためには、各専門分野と情報リテラシーで科目の連携、教員連携を行いながら、意識を共有し授業に取り組んでいく必要があることを改めて確認しました。また、その基礎力づくりとなる高校とも情報科目の位置づけを共有していくことが重要で、意見交流やコンソーシアムづくりなどできるところから始めて、多くの教員の方々に関わってもらう努力が必要と考えます。そして、それを支援してくのが私情協の役割と思います。
 本日はお忙しい中、先生方には貴重なお話をいただきありがとうございました。

公益社団法人 私立大学情報教育協会

情報リテラシー教育のガイドライン(2012年版)

【到達目標1】

情報社会の光と影を認識し、主体的に判断して行動することができる。

 情報の信頼性を識別して発信者の意図を読み解き、情報から知識へ変換できるようにするとともに、他者の権利の尊重及び自己の被害防止、健全な情報社会を構築するために必要となる心構えや安全に関する知識・技能を修得する。

【到達度】

【教育・学修方法の例示】

 上記の到達度の達成に必要な教育・学修指導上の要点を例示する。

到達度1「発信者の意図を理解した上で、情報を読み解くことができる」

1インターネット上には、信憑性や信頼性を確認しなければならない様々な情報が存在することと、情報には必ず発信者の意図が含まれていることについて、事例を示して理解させる。

2情報の識別力を高めるために、情報検索や情報源の確認について、多様な方法をケーススタディさせて最適な方法を選択させる。

到達度2「情報社会の光と影を理解し、安全に配慮した上で主体的に行動することができる」

1身の回りで利用されている事例を踏まえて、情報通信技術の役割・特質について理解を深め、活用方法を考えさせる。

2情報社会で遭遇しうる様々な危険・不安について、利用者の視点から、グループなどでケーススタディさせる。

到達度3「社会の一員としての責任を理解し、他者に配慮して情報を扱うことができる」

1発信する情報に責任を持つことの意義を理解させ、社会に対する影響を認識させる。例えば、虚偽情報、誹謗中傷など個人の意図的な情報発信がもたらす被害や、意図的ではなくても何気ない言葉によって、慣習・思想・信条・宗教・経済などの背景が異なる人々へ与える文化摩擦などを、グループで討議させ、自己責任の重要性を理解させる。

2基本的人権の尊重、知的財産権の理解、発信情報の真正性の確保、異文化への理解など、個人として配慮・遵守すべき点について、グループなどでケーススタディさせ、適切に情報を扱う態度を身につけさせる。

【到達度の測定方法】

 上記の到達度の達成を以下の課題で確認する。

1発信者の意図を理解し、情報を識別するための多様な方法を列挙させる。

2社会で情報通信技術が有効に使われている事例をあげ、果たしている役割や特質について説明させ、情報社会で遭遇しうる様々な危険・不安について列挙させて利用者の視点から被害を防止するための方法を説明させる。情報を発信する者が遵守すべき事柄と負うべき自己責任の範囲について、事例をもとに説明させる。

3情報の活用方法について、その利点と考慮すべき危険について対で列挙させる。

【到達目標2】

課題発見、問題解決に情報通信技術を活用することができる。

 協働して「知」の形成や開発に携われるよう、課題や目的に応じて情報通信技術を適切に活用して主体的に情報を創り出し、その結果を効果的に他者に発信して相互理解ができるよう基礎的な知識と技能を修得する。

【到達度】

【教育・学修方法の例示】

 上記の到達度の達成に必要な教育・学修指導上の要点を例示する。

到達度1「課題や目的に応じて情報通信技術を適切に選択することができる」

1課題や目的に応じた情報通信技術やソフトウェアの活用方法についてグループで討議させることにより、解決手順・方法の検討や情報通信技術の適切な活用が重要なことを理解させる。

2ケーススタディを通じて、情報通信技術活用の新しい知見を得るために、いくつかの分野を対象とし、実務家とも連携して情報通信技術の効果的な活用について探究させる。

到達度2「課題や目的に応じて情報を検索・収集・整理・分析・表現・伝達・発信することができる」

1課題を提示し、Webやデータベースなどを活用して、必要となる情報を効率的に検索・収集する方法を修得させる。

2収集した多様な情報を目的に応じて、表計算、統計解析などのソフトウェアを活用する課題を与え、情報を整理・分析し、批判的に吟味する方法を習得させる。

3文書処理、表計算、図形・画像処理、データベースなどのソフトウェアを目的に応じて使い分け、組み合わせて表現する方法を修得させる。

4情報の受け手の特性を踏まえ、プレゼンテーションやWeb作成などを通じて、効果的に情報を伝達・発信する方法を修得させる。

到達度3「情報通信技術を活用して最適なコミュニケーションを行うことができる」

1代表的な情報通信サービスを取り上げ、メッセージの到達範囲、即時性、公開の有無などの観点からコミュニケーションの可能性と限界を議論させる。

2普及している情報通信サービスを体験させ、既存の問題解決や新規課題の発見に役立つ円滑で効果的なコミュニケーションの在り方を考えさせる。

【到達度の測定方法】

 上記の到達度の達成を以下の課題で確認する。

1代表的な情報通信技術やソフトウェアの特性について説明させる。

2教員間で到達度の評価シートを作成し、自己評価や学生間でのピアレビューを行わせるとともに、必要に応じて実務家から評価を受けさせる。

【到達目標3】

情報通信技術の仕組みを理解し、モデル化とシミュレーションを課題発見や問題解決に活用できる。

 データの表現方法や情報通信技術の仕組みと情報通信システムの役割を理解し、社会に有益なシステムの在り方を考察する。また、モデル化とシミュレーションを用いて課題の発見・明確化・分析・検証を行い、新しい評価軸を構築することによって問題解決へ繋がる基礎能力を修得する。

【到達度】

【教育・学修方法の例示】

 上記の到達度の達成に必要な教育・学修指導上の要点を例示する。

到達度1「情報のディジタル表現、情報システムの動作原理・構成を理解し、情報を科学的に捉えることができる」

1文字、数値、画像、音などをディジタルで表現する仕組みを説明させる。

2CPU、メモリ、ハードディスクなどの実物を見せることで、コンピュータの構成を理解させ、ソフトウェアの動作の仕組みと関連付けて理解させる。

3プログラミング環境を利用して、アルゴリズムを具体的なプログラムとして実現し、コンピュータで実行させる。

4Webやメールの通信履歴を見せることで、ネットワークの仕組みや通信プロトコルの役割を理解させる。

到達度2「モデル化とシミュレーションを通じて実践的な問題解決に取り組むことができる」

1現実の課題から抽象的なモデルを構築する手法を学修させ、モデルを扱うことの利点を理解させる。

2構築したモデルからシミュレーションなどを用いて解を求めさせる。

3シミュレーションの結果を分析・評価し、モデルの妥当性や限界を議論させるとともに、新たな課題を検討させる。

到達度3「社会における情報通信システムの役割を考え、有益なシステムの在り方を考察することができる」

1身近な情報通信システムの技術をとりあげて、社会における情報通信システムの役割を吟味させる。

2セキュリティに関する事件を紹介するなどして、セキュリティ技術の必要性を認識させ、身のまわりの情報通信システムについて批判的に考察させる。

3社会を発展させるための情報通信システムの構築を考察させる。

【到達度の測定方法】

 上記の到達度の達成を以下により確認する。

1私情協などのコンソーシアムを通じて標準化された到達度試験などにより達成度を確認する。

2モデルを作成させ、対象の特徴を表すパラメータや実際の動作に即しているかなど、モデル化のねらいに照らした妥当性を説明させることで評価する。

3社会における情報通信システムについて批判的に考察させ、情報化社会のあるべき姿について発表させ、相互評価や外部評価などで確認する。

参考文献および関連URL
[1] 分野別教育における情報教育のガイドライン
http://www.juce.jp/computer-edu/
[2] 佐藤万寿美:高等学校での情報科教育の実情と課題. 大学教育と情報, 2012年度No.1, 公益社団法人 私立大学情報教育協会, pp.2-6, 2012.
http://www.juce.jp/LINK/journal/1203/pdf/02_01.pdf

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