教育・学修支援への取り組み
学校法人 福岡女学院は1885(明治18)年に「英和女学校」として福岡市に創立しました。1921(大正10)年には日本で初めてセーラー服を制服に採用するなど、変動する社会にも常に貢献できるよう新しい教育分野を拓き続けながら幼稚園から大学院までの総合学園へと成長しました。
福岡女学院大学の教育の目標は、キリスト教に基づく建学の精神を土台に、神と隣人への「愛」に生きることを要とした、主体的人格を持つ女性を育成することです。このために、本学では、3学部6学科を設置し、広い教養と国際性を養成するために必要な、一人ひとりの個性と可能性を大切に育てる教育を行っています。
学生数は、人文学部(現代文化学科、表現学科、英語学科)1,079名、人間関係学部(心理学科、子ども発達学科)955名、短期大学部227名で、専任教員数は92名です(2012年5月1日現在)。
2013年度より人文学部表現学科を改組し、「メディア・コミュニケーション学科」、「言語芸術学科」を新設予定です。
メディア教育研究センターは情報処理教育の推進の主管部署であり、学内ネットワークを中心とした情報処理教育・研究システムの構築や運用管理を行っています。社会の高度情報化に適応し、高速1ギガビットの光ケーブルによる全学LANを敷設し、情報処理教室の整備、教育研究環境の情報化を継続的に推進しています。現在、中心となる四つの情報処理教室(略称PCルーム)を授業使用時以外は自習室として開放し、定期試験に備えた期間は特別開室するなど、学生をサポートしています。PCルームは2013・2014年度に新校舎へ移転し、コンピュータやネットワークが利用できる自習スペースの充実および基幹ネットワークの高速化や無線LANアクセスポイント(Wi-Fi)の拡充を図り、さらに快適な環境となります。 また、学生・教職員を対象に自宅から大学に専用回線のように接続できるVPN環境を整備し、情報処理教育の推進と各種サービスの提供、ネットワーク利用による図書館や事務と連携した学生の利便性向上を目指しています。
教学組織であるメディア教育研究センターが策定するICTを活用した教育改善計画に基づいて、事務組織であるメディア情報課が事務、技術業務を行い、システムと基盤を支えるという体制をとっています。
なお、メディア教育研究センターは2013年度より、組織名称の変更を行う予定です。
(1)福岡女学院大学の情報処理教育、教育の情報活用の取り組み
大学では開講中の「コンピュータリテラシー基礎」を実社会の変化に合わせて一部改訂し、2013年度から、1年次に「情報リテラシー」(必修科目)を開講しています。ここで、入学後の基礎となる大学ネットワークシステムや電子メールの操作と基礎知識、情報検索や情報の扱い方およびセキュリティ管理を学び、コンピュータや一般的なアプリケーションソフトの基本操作を習得します。 単に操作を学ぶのではなく、国際的な情報ネットワークの急速な普及の中で、コンピュータとネットワークを使いこなし、仕事や日常生活に活かすことができる情報処理能力を身につけることを教育の目的としており、続いて「PC演習A」、「PC演習B」、「PC演習C」(すべて選択科目)とさらに高度な学習へステップアップができます。 一方、技能習得もおろそかにはしません。日商PC検定(文書作成・データ活用)やマイクロソフトオフィススペシャリスト検定試験に準拠した、文書作成ソフトや表計算ソフトの操作も学ぶことができます。この他に、情報処理教育を通して幅広く活躍できる人材の育成を目指し、情報処理以外の科目でのコンピュータの活用を推進しており、今では語学をはじめ、心理学、社会学、初年次教育など様々な分野の授業での利用が広がってきました。授業以外での、卒論作成や就職活動など学生生活にコンピュータを活用する支援もその一環です。
(2)福岡女学院大学短期大学部の情報処理教育、教育の情報活用の取り組み
短期大学部では、2年間で英語の4技能「話す」「聞く」「読む」「書く」をしっかり身につける教育を行います。キリスト教科目、英語科目、基礎科目、キャリア教育をベースに、専門科目で学びを深める教育課程となっています。キャリア教育の一つとして、コンピュータ技能を位置づけています。
2年間で習得した技術や知識が、一人ひとりの「将来」につながるような学びを可能にするために、アカデミック・インテンシブコース、エアライン・ツーリズムコース、メディアイングリッシュコースという三つの専門コースを設定しています。特に、メディアイングリッシュコースでは、インターネットをはじめ、テレビやラジオなど各種のメディアを使用して、英語の力、とりわけ英語による発信力を磨きます。映画やニュースを題材に生きた英語を学ぶともに、情報発信のためのツールとしてWebなどの利用方法を学びます。情報収集能力と活用能力を磨き、世界で起こっていることを分析する力を身につけ、最終的にiPod(R)などの機器を活用してPodcastingの番組を作成し、世界に向けて発信することを目指します。
(3)新学内情報教育システム
2011年度に、より充実した教育環境と教員・学生の利便性を考慮して学内情報教育システムの刷新を行いました。情報処理教室4室(計224台)、CALL教室2室(62台)、教員用コンピュータ100台、およびネットワーク機器と各種サーバを更新し、2011年10月から新システムが稼働しました。
1)ネットワーク環境の改善
本学の教育研究の情報化を支えるネットワークをミッションネット(Mission Net)と呼んでいます。基幹ネットワークには光ケーブルを敷設し、末端まで1ギガビットの帯域を確保した機器を導入し、マルチメディア通信に対応した環境を実現しています。インターネットへの接続は、200メガビットの複数回線を負荷分散して常時接続し、高速でインターネット情報検索が可能です。このミッションネットを利用し、メールやインターネット情報検索の他、大学図書館の蔵書検索、掲示板、休講・補講情報などの情報サービスを行っています。
メールシステムについては、2011年のシステム更新を機に、学生の利便性向上と外部からの利用(PC、携帯端末、スマートフォンからの利用)を考慮して、Gmailを利用するよう変更しました。
また、新たに統合認証システムを導入し、学内のPCログオン、メールシステム(Gmail)、各種Web教育支援システム、無線LAN認証、VPN認証等のアカウント同期を行い、利便性とともにセキュリティも向上し、かつアカウント管理等の運用も容易となりました。
2)無線LAN(WiFi)による自学習環境の拡充
学生自身のノートパソコンやタブレットを学内で利用するために、学内の無線LANアクセスポイントを大幅に増設し、カフェテリアや食堂など学生が集まるエリアを中心にWiFiエリアを拡充しました。
学生持ち込みPCやスマートフォン・タブレット等は、Web認証によりセキュリティを確保しています。
3)学習管理・支援システム(LMS)の活用
本学では、Webとコンピュータを使った学習管理・支援システム(LMS)を導入しました(図1)。ネットワークを利用して、教材の配布やレポートの提出およびテスト等の実施と、それに対する成績評価や学習成果を統合的に管理するシステムです。LMSを通じて教材を介したやりとりを繰り返すことで、教員からきめ細やかな指導を受けることができます。さらに、教員と履修者および履修者間のコミュニケーションを円滑に行うため、メールへの転送設定を備えたお知らせ機能、掲示板やフォーラム、FAQ等も設けています。このシステムの利用によって、学生の学習意欲の向上、教員と学生双方の利便性と創意工夫が促進され、教育効果の向上につながることを目指しています。
運用開始して1年半が経過したところですが、これまでの運用結果を分析して、レポート提出までの時間、教員からの指示を閲覧するまでの時間、掲示板の発言頻度などを総合して授業に対する取り組み姿勢=すなわち学習態度として数値化することにより、学習態度と成績との相関関係が見えつつあります。LMSを使って学習を「管理」することのみならず、学生の学習態度や理解度を把握し、一人ひとりに応じた指導に加えて、より良い教材開発、教育方法の改善へとつながるものであることを期待しています。
図1 LMS教員機能 参考画面
4)ICカード学生証の活用
2011年4月に、九州初となる交通系ICカード型学生証を導入しました。学内の各種個人認証に利用するとともに、大学内外で電車・バス定期も含めて電子マネー決済ができるものです。
4月には、図書館のセキュリティゲート、図書館貸出システムの認証として利用を開始し、夏には、PCルームにICカード学生証を用いたプリント管理システムを導入しました(図2)。
図2 交通系ICカード学生証と
プリント管理システム
パソコンから送った印刷データをプリンタサーバにいったん蓄積し、複数設置しているプリンタ側で選択して印刷するしくみです。学生証は、自分が送った印刷データを表示させる「ユーザ認証」に用います。このシステムにより、4教室あるPCルームのどのプリンタからでも自分の印刷物を受け取ることができるようになりました。カラー印刷・両面印刷対応でタッチパネルによる直感的なわかりやすい操作性は学生にとても好評です。
ICカード学生証をかざして印刷することを学生自身が楽しんで利用していく中で、「認証」というセキュリティ意識が高まるとともに、ネットワークコンピューティングの概念がイメージできるという効果もありました。
5)学生指導支援システム
本学は一人ひとりの学生に応じた指導に力 を入れています。その一つが2006年度より運用してきた「学生指導支援システム」と呼んでいる本学独自開発の学生情報データベースシステムです(図3)。本学では「アドバイザー制」をとっており、学生一人ひとりに担当するアドバイザーの教員が修学・学生生活の指導を行います。当システムでは、科目担当者から欠席しがちな学生がアドバイザーに報告され、アドザイザーは学生の情報(過去の成績、これまでの指導の経緯)を閲覧しつつ直接対面の指導を行います。アドバイザーの指導結果を科目担当者および事務職員と共有することによって、学生一人ひとりに応じた指導を行うものです。
いわゆる「学生カルテ」のようなシステムですが、本学の全学的な取り組みに合わせて独自に開発を行い、改善を重ねてきました。今後、さらに学生ポータル、ポートフォリオシステムへの展開を検討しています。
図3 学生指導支援システム画面
6)社会人基礎力育成の取り組み
昨年度の日本経済新聞主催「社会人基礎力育成グランプリ2012」において、本学人文学部現代文化学科浮田ゼミの3年生が、1位「社会人基礎力大賞(経済産業大臣賞)」を獲得しました。
アンケート調査・分析結果の評価作成でのICTの活用など、社会人にとって必要となる課題発見力、提案力、解決力が高く評価されました。
引き続き社会人基礎力育成に力を入れ、今年度も九州沖縄予選会を通過し、全国大会への最後の仕上げを行っているところです。
本学では、2012〜2013年度の2年計画で、新棟の建設を行っています。現在学内の各棟に分散しているPCルームやCALLルーム等のICT関連施設をこの新棟に集約する予定です。集約することにより、管理面の効率化を図るだけでなく、学生の利用しやすい環境整備と教育や自学習への支援の向上を目的としています。併せて、学生が自身のPCやタブレットを持ち込んで、個人学習やグループ学習ができるラウンジを設置します。また、グラフィックス・CAD・映像・音楽制作等を行うクリエイティブ・デザイン実習室にはアクティブ・ラーニングの概念を取り入れることや、従来型のCALL教室ではないICTを活用した語学学習スペースを増設することを検討しています。
また、2013年度4月より開設する「言語芸術学科」では、学生一人ひとりにiPad(R)を貸与し、電子ブックの講読、電子テキスト、文献や情報の検索、コミュニケーションツールとして活用します。そのための情報基盤の整備、コンテンツの作成や配信のしくみ作りを研究していきます。
現代社会のみならず教育にもICTはなくてはならない「基盤」であるとともに、「ツール」であります。ICT化、デジタル化が目的になることなく、本来の教育を支援・補完するツールとしての活用を行うことを考えていきます。
文責: | 福岡女学院大学 メディア情報課 大石 定和 |