巻頭言

質評価を求められる大学教育におけるICTの活用

佃 昌道(高松大学・高松短期大学学長)

 我が国においては、インターネットの社会基盤整備を背景に、ブロードバンドネットワークの高速化、クラウドコンピューティング技術による情報サービスの利活用の普及、ソーシャル・ネットワーク・サービスを利用した新たな情報通信ネットワークの利用、スマートフォン等の普及など、ユビキタスネットワークの環境が整備されてきた。日本の成長戦略の要となるICT戦略とグローバル展開の中で、ユビキタスネットワークは大いに期待されているところである。そして、それを支える教育機関においても、ICT基盤の充実を図るハード、ソフトの両面から教育環境を整えるとともに、情報活用能力や問題解決能力の育成においてもICTの利活用は、重要な要素となっている。

 とりわけ、第二期教育振興基本計画において、教育の方法・内容の充実におけるICTの活用や、大学教育の質的転換におけるICTを活用した双方向授業の活用が掲げられおり、本学園においても、教育におけるICTの活用はその重要性を増している。

 さて、四国高松学園は、高松大学に経営学部(経営学科)、発達科学部(こども発達学科)、高松短期大学に保育学科、秘書科を設置、「対話に基づく豊かな人間教育」、「調和と主体性を培う教育」、「個性と創造性を伸長する教育」、「社会に即応できる実践能力を養成する教育」を教育理念に定め、地域に活躍できる人材の育成を行っている。本学園における情報活用能力や問題解決能力の育成も、この教育理念に基づくものである。

 本学園の情報通信ネットワークの導入は、昭和60年に始まり、その当時からパソコンネットワーク上で一人1台の端末環境を整備し、情報処理教育を行っている。当時から、ネットワークに重きを置いている理由は、人との対話の重要性や実社会でどう実践できるのかなどの実践能力の育成を行うことにある。つまり、人同士の仕事や問題の解決に必要な協働や共有という作業をコンピュータネットワークというデジタルの世界を通してどのように理解させ、情報機器をどのように利活用しながら解決を行っていくのかを、教育上の課題と設定し、「対話を軸とする人間教育」の推進を行うこととしたのである。

 これ以降、汎用コンピュータ、クライアント/サーバなどのシステムの形態は変化をとげてきたが、コンピュータを援用したコミュニケーション活動に推進は今も変わらないところである。

 例えば、電子メールなどのコミュニケーションツールは、「いつでも」、「どこでも」、「多様なサービスを」ということで、現在は学外利用や多端末利用を考え外部機関が提供するアプリケーションサービスを活用し、グループミーティングや教育情報の交換などを行っている。また、情報教育を中心とする授業の支援として、学習サーバや学生の教育データフォルダの提供を行っている。最近は、情報関連の授業以外でもコンピュータ利用の要望が増加しており、今後どのように対応するかが課題となっている。

 教育の質保証に対応するための学事情報の高度化の一環として、学習履歴やキャリア支援システム、教務を中心とする教務システムなどの導入利用が始まったが、今後は学事情報全体の統合化が必要と考える。しかし、学習情報、学事情報共に大容量化が進み、通信形態も、スマートフォンや無線LANが増加し、クラウドコンピューティングシステムの中核をなすと考えるユビキタスネットワークへの対応は大変重要である。

 本学では、このような課題解決する手段の一つとして、アクセスビリティやレスポンス向上のためにデータセンターへのデータおよびネットワークの運営管理委託や、外部アプリケーションサービスの利用などを行っているが、教育のアプリケーションには限界があると考えられる。

 最後に、大学における教育の質保証を考えるとき、大学教育の方法内容や充実を推進することは重要であるが、私立大学情報教育協会などが中心となり、同種の授業をもつ教員間や同種の学科間など、大学の枠を越えた授業開発や学習評価システムを協働・共有し、質の高い高等教育クラウドの計画実施を期待したい。


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