巻頭言

学生の主体的な「学び」を支援する教育環境の整備

徳永 正直(大阪樟蔭女子大学・学長)

 大阪で最も歴史のある女子大学の一つとして、本学は「高い知性と豊かな情操を兼ねそなえた社会に貢献できる女性の育成」を建学の精神としてきたが、学士課程教育の構築に向けた改革を進める中で、変化の激しい現代社会に対応できるように、ミッションを新たに定めることにした。「1.自ら情報を収集精査し、広い視野から物事を判断し、自らの道を切り拓く自律的な生き方ができる人」、「2.堅実で心豊かな社会生活を営むことができる「知恵」を身につけた人」、「3.職場、家庭、地域社会において人間関係の要となる人」である。このミッションを実現するために、従来の学問中心・教員中心に構成された教養教育のカリキュラムを改革し、学習成果(論理的思考力や問題解決力などの汎用的技能や倫理観などの態度と志向性の獲得)を意識した系統性のあるカリキュラムを新たに構築し、同時に、教育方法へのアクティブラーニングの積極的導入によって、授業の改善を図ってきている。とりわけFD・SD活動推進委員会が「教育の質保障」のために積極的な提案を行っている。

 さて、2017年に創立100周年を迎える本学は、2015年にキャンパスを統合し、新たに建設中の「教室棟」(仮称)の中に「サポートスクウェア」を設置する計画である。そこはラーニングサポート、キャリアサポート、キャンパスライフサポートなどの支援機能が集約されており、学生たちにとって「快適な居場所」となり得る空間である。もちろん学生の自主的で主体的な学びを支援するためにはICTの活用が不可欠であるが、本学では以下のようにICTを活用している。

 大学におけるICT活用は、大きくは二つに分けることができる。第一は社会に対する説明責任を果たすための活用で、本学においてもホームページで様々な情報を社会に提供するとともに、受験生応援サイトを開設し、これから本学での学びを希望する高校生に適切な情報を提供している。第二については、教育の改善や学生支援にICTを活用するものである。教育カリキュラムの改善や各授業での理解支援等についても、既に各大学で精力的に実施されており、本学においても外国語教育でのe-Learningや、情報スキル教育でのICT活用など一定の成果を得ている。

 大学においてこれから力を注いでいかなければならないことは、上述のラーニングサポートなどによるきめ細かな学生指導と、学生の将来設計に適切な支援を行うことである。学生指導・支援でのICT利用は、その一つとしてWebポートフォリオという形で、多くの大学で本格運用が開始されている。本学においては、過去に現代GPに採択されたジェネリック・スキル教育においてWebポートフォリオを整備し5年前より導入するとともに、問題点の洗い出しを行ってきた。今回、この成果と反省をもとに、カリキュラムマップと連携した学生個人対応の新Webポートフォリオを設計・開発し、稼働を開始したところである。新Webポートフォリオは2015年のキャンパス統合を見据えており、前述の開設予定のサポートスクウェアにおいて、教員と職員が連携し、face-to-faceでのきめ細かな指導を可能とするなど、様々な機能を実装している。さらには、授業改善アンケート収集の機能も持たせており、迅速に学生の意見を教育に反映できるようにしている。なお、これらの機能は学生に提供している他のWeb機能(メールや連絡事項など)と連携させており、シングルサインオンで使用することが可能で、使い勝手の向上を図っている。

 本学ではいち早く無線LANの設備を2001年度に関屋キャンパスに導入しICT設備の充実を図り活用してきた。2015年のキャンパス統合に向けて更なる充実を図り、学生満足度の向上を実現していくが、教育や学生支援にICTを有効活用するためには、設備の充実を図るだけでは解決できない。教職員の意識を変革し、一丸となって教育サービスに積極的にICT利用の推進を図ることが重要である。


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