特集 アクティブ・ラーニングの実質化に向けて

「学ぶ」から「できる」へ
〜経営系科目のアクティブ・ラーニング〜

西村 宣彦 長崎大学 経済学部教授

1.取り組みの背景

 「大学時代はサークルやバイトばっかりやっていて、全然勉強しませんでした。今ではもっと勉強しておけばよかったと思っています」。これは、長年、大型機械製造メーカの研究開発部門に勤務してきた著者が、営業部門、管理部門や資材調達部門に勤務する経済学部や商学部の出身者からほぼ一様に聞く声でした。工学部出身の著者もさほど熱心に勉強したほうではありませんが、学生実験、卒論、修論などの実験や解析などでは、かなり鍛えられたという記憶を持っています。
 経済・経営系の出身者がまったく勉強しなかったと話す理由の一つは、大学時代に学んできた知識が大学在学時には形式知としては理解できても、実践に活用できるまでは理解できないこと、また、得た知識がどのような文脈で自分の役に立つのかが、大学生には十分理解できなかったことが一因ではないかと考えます。医学部を出なければ医師にはなれませんが、経営系学部を卒業しなくてもサラリーマンにはなれますし、多くの経営者は経営系の学部を卒業したわけではありません。このため、学生にとっては卒業することが目的となり、卒業要件を満たすために必要な単位をいかに容易に取得するかが主要な課題になっているのではないでしょうか。このようにして得た形式知は、その後時とともに忘れ去られてしまい、冒頭で述べたような発言になっていると考えています。すなわち、形式知を講義で習得しただけでは、この知識を将来の社会生活のさまざまな文脈に応じて使えるようにはならないということだと思います。
 経営学では経営に関するさまざまな実社会での事象を概念化します。概念化された知識を文脈に応じて適切に活用することによって、より論理的で高度な経営意思決定が行えるようになることを目指します。しかし、上述したように概念化された知識を学ぶことと、この知識を使えるようになることとは異なります。自分が知っている文脈の中で概念化された知識をどのように活用すべきか、その活用の型を繰り返し学んで身に付ける必要があります。
 これは、まさに自動車学校のように、学科で自動車の構造と法規を学んだだけでは、自動車を公道で運転できる(活用できる)ようにはならないことと似ています。公道で運転できるようになるためには、学科で知識を習得するとともに自動車学校のコース、さらには路上で、机上で学んだ知識を「意識しながら実践し、振り返る」ことによって、体得するプロセスが必要です。
 経営学の分野では、社会人を対象としたMBAにおいてケーススタディーとして上述したような自動車学校の実技教習のような講義が実施されていますが、大人数への教育が必要な学部教育ではあまり実践されていないのが実情のようです。
 また、社会での意思決定の多くは、個人ではなく集団で行われます。多様なバックグラウンドを持つ個人が、それぞれの意見や知識を主張し、チームとして合意を形成するための技術の習得が、実社会ではきわめて重要です。これは、就職試験においても、企業側がグループディスカッションや面接を多く課して対象者のコミュニケーション能力を測ろうとしていることからも伺えます。しかし、このことについて実践を伴って学ぶ授業の場はほとんどないのが現状です。
 そこで、ここでは、経営学の分野において、知識の習得とその活用、さらには振り返りを協同で行うアクティブ・ラーニングについて、著者が実施している講義の概要を紹介します。

2.実施科目・規模

 著者が担当している講義を表1に示します。
 教養教育では各学部の2年生に向けた「現代の経営」という授業を担当しましたが、昨年度から長崎大学の教養教育のカリキュラムが全面的に変更になり、今年度からは「安全で安心できる社会II−社会科学から見た安全安心−」を担当しています。さらに、経済学部の学部学生に向けた経営情報システム論は夜間主の講義も受け持っており、これらのすべての講義をアクティブ・ラーニング形式で行っています。このうち、120名程度の受講生がある経済学部生に向けた専門教育科目である「経営情報システム論」のみには、後述するように3名のStudent Assistant(SA)をつけ、授業をサポートさせています。
 さらに、本学部では1〜4年生向けに受講生数10〜15名のゼミがあり、そのいずれにおいても、自治体や地元企業に協力いただいた、より実践的なアクティブ・ラーニングであるPBL(Problem Based Learning)型のゼミを開講していますが、紙面の都合上ここでは紹介を省略します。

3.授業設計

 いずれの授業も受講生5、6人からなるチームで行います。基本的には6名を1チームとして、端数の調整をするため一部を5名のチームとします。これまでの経験から3名以下になるとチーム活動の活性が低くなり、7名を超えると活動に参加しない学生がでてくると感じたためです。
 複数の学部の受講生がある教養教育の授業では、一つのチームにそれら複数の学部の受講生が含まれるように編成します。また、友人同士が同じチームを構成するのを避けるために、チーム編成はすべて講師が行います。チーム分けは、初回の授業のアイスブレイキングの一環として、各学部の受講生ごとに大学から受講生それぞれの出身地の距離で順に並ばせて、ある学部の1番前(大学に最も近いところ出身)の受講者から順に作るチームの数までの数を1から順につけていき、次の学部の受講生へと順に数え、その番号でチームを構成するという方法で編成しています。たとえば、60人の学生が登録する授業では、1から順に10までの数を受講生が数えていき、同じ数を数えた受講生が同じチームになるようにします。
 チームはほぼ5週ごとに交代して、受講生が3つの異なるチームを経験するようにします。各学部の参加者を1名ずつずらして講師が新しいチームを編成します。

表1 アクティブ・ラーニングを実践している科目
科目 受講生 概要
経営と経済
(現代の企業経営入門)
全学部2年生(約50名) P.F.ドラッカー著「マネジメント」の予習と予習結果のグループ議論、学生企業家に関する仮想のケースを基にした授業
安全で安心できる社会II
社会科学から見た安心・安全
医学部、環境科学部、工学部
2年生(約70名)
村上陽一郎著「人間にとって科学とは何か」の予習と予習結果のグループ討議、各章に合致したテーマのディベートをもとにした授業
経営情報システム論 経済学部2,3,4年生
(昼間約120名)(夜間約60名)
「Management Information System」の予習と予習結果のグループ議論、学生企業家に関する仮想のケースを基にした授業
教養セミナー 経済学部1年生(15名) 県の産業労働部から頂いたテーマに関する文献調査、フィールドワークを主体とするゼミ活動
基礎ゼミ 経済学部2年生 学内の問題(就活・オープンキャンパスなど)に関するフィールドワーク、ベンチマーク、仮説検証を主体とするゼミ活動
専門・卒研ゼミ 経済学部3、4年生 県内の中小企業の経営者に協力頂き、当該企業の経営課題の発見、解決策の提案と実行を行うゼミ活動

 授業では、まずファシリテーションに関するワークショップ型の講義を最初に行います。ここで、ファシリテーターの以下の四つの役割とその方法を認知させます。すなわち、1)場をデザインする、2)引き出す、3)論理的にまとめる、4)合意を形成する、の四つです。また、参加者の役割である1)人の意見を傾聴する、2)わかりやすく意見を伝える、についても学ばせます。チームには必ずファシリテーターをおき、チームメンバーが順番にこれを経験するようにして、チームでの議論の運営を担わせます。各授業の最後に次回のファシリテーターをチーム内で決めさせます。
 典型的な授業シナリオを次ページ表2に示します。
 各講義について3〜15分程度に内容を区切ったシナリオを設計し、毎回講義後にシナリオに改善を加えるようにしています。アイスブレイキングはチーム編成直後の授業では長めに行います。また、このとき、それぞれが今日のチーム活動で自分が意識して実践しようと思うことをチームメンバーに順に話させ、チーム活動への意識付けを行います。
 予習はA4用紙1枚の予習シートに書かせます。本の章の要約、その章の中で自分に役立つこと等、講義内容によって予習課題は変えています。予習シートには履修番号のみを付させて、氏名がわからないようにします。チーム全員分の予習シートをまとめて封筒に入れさせて回収し、他のチームに封筒を無作為に配布します。各チームは配布された封筒内の予習シートを4ランク(AA:最も優れた予習で1名のみ、A:次に優れた予習で2名、B:普通の予習、C:ほぼ白紙に近い予習)にチームメンバーで協議して評価し、その結果を各予習シートに記入し、再度封筒に入れさせます。この封筒を回収し、もとのチームに戻します。封筒を戻された各チームでは、他のチームが評価した成績を、チーム毎に綴じた受講者個人の受講シートにファシリテーターが記入します。このチーム毎に綴じた受講シートは、授業開始前に講師がチームに配布し、授業終了時に回収します。
 次に、ファシリテーターがチームメンバーの予習結果を順に聞きだし、これをもとに書き出します。書き出す形式は教員が指定しますが、教科書をまとめる予習の場合は、マインドマップを用います。チームごとに配布できるホワイトボードがある教室では、ホワイトボードに書き出させ、ない場合にはA3用紙を配布して、これに書かせます。講師が巡回してチーム議論で書き出している内容と議論の活性度をもとに、チーム成績を3段階に評価し、チーム議論終了時に各チームのチーム成績をその評価理由とともに公表します。その結果を、ファシリテーターが受講カードに記入します。

表2 授業シナリオ
No. 実施内容 形態*
1 Ice Breaking GW
2 予習の採点 GW
3 今回の講義の目的・目標の説明 講義
4 チームまとめの作成 GW
5 討議項目の設定 講義
6 テーマに関する全体討議 全体
7 ケース/ディベートテーマ検討 個人
8 ケースのグループ討議/ディベート GW
9 ケースの全体討議/ディベート報告 全体
10 補足説明と予習の指示 講義
11 振り返り GW

*「GW」はグループワークを、「全体」は全体討議を示す。

 また、マインドマップ作成になれていない授業の初めの頃は、各チームのマインドマップを全員が見て回り、全員で最もよくまとめているチームを投票で決定して、そのチームの良さの要因を討議させたり、ワールドカフェ形式で他のチームにチームメンバーが参加して、そのチームで行われた議論の内容を聴取する活動を行わせたりして、チーム活動の質の向上を図るようにしています。図1に経営情報システム論においてあるチームが作成したマインドマップの例を示します。

図1 授業で予習結果をもとに学生が作成したマインドマップの例

 ケースやディベートではチームでまとめた内容を使って、得た知識を定着させるようにしています。ケースワークでは、大学生でも文脈を理解しやすい仮想のケースを作成して、授業前半で得た知識を使って、そのケースの課題をどのようにして解くかを考えさせています。例えば経営情報システム論では、大学生のサッカーサークルが学園祭でたこ焼き屋をやることにして、そこに情報システム導入させ、これを発展させて、最終的にアプリケーションサービスプロバイダーとして起業するストーリーを作り、経営情報に関するさまざまな問題を検討させるようにしています。
 ディベートは今年度の科目「社会科学から見た安心・安全」から取り組みはじめた方法です。授業のテーマからケースワークよりもディベートのほうが知識の定着に役立つと考え、設計しました。ディベートは最初はチーム内で行い、最後の3回をかけてチーム間でのディベートを計画しています。ここでは、原子力発電の即時停止の是非、胎児への異常の調査の是非について議論を行う予定です。
 振り返りでは当日の授業で得た知識の中で自分が覚えておきたいことを考えさせて、これをチームメンバーに話させるとともに、授業の最初にチームメンバーに宣言した「今日意識すること」についての自己評価をチーム内で順に発表させます。それぞれが振り返った後は拍手をするようにして、その回の授業を終了させます。

写真1 授業風景(社会科学から見た安心・安全)

 授業風景の例を写真1に示しますが、授業開始前に講義形式の机の配置を講義室前面のホワイトボードが見えるように島状に机を配置させ、着席させ、当日のファシリテーターがチームの中央に着席するようにします。
 評価は、上述した受講カードをもとに行います。毎回の課題の評価点30%、チーム内での貢献度20%、予習まとめ25%、議論まとめ25%で実施し、レポートや中間・期末試験を課していません。チーム内での貢献度は、いわゆるピアレビューで決めさせ、そのチームでの活動の最終日となる5週目の授業においてチーム内で各人の授業への貢献度を議論して3段階に分けて決めます。

4.アクティブ・ラーニングにおける工夫や配慮

(1)ファシリテーション講習と、毎回の意識付け、振り返りの実施

 チームにすれば、議論が始まると思うのは間違いです。チームでの議論を活性化させるためには、それぞれが意識して取り組むべきことがあります。すべての講義で、ファシリテーションに関するワークショップ型の講義を1回目にやるようにしています。これによって議論の型に関する知識を与えます。さらに、この議論の型を意識して実践させるために、毎回、チームメンバーに自分が意識することをチームメンバーに発表することで意識付けし、講義終了時点で振り返らせることによって次に生かすべきことを意識させ、これを繰り返すことによって、ファシリテーション技術の向上を図るようにしています。
 また、議論のプロセスを細かく区切って、個人で考える時間、考えた結果を個人で書き出す時間、書き出した結果を発表する時間など、数分間隔で細かく区切ることによって、議論の活性が低下しないようにしています。

(2)SAの導入

 120人の受講生のある講義では、3名のSAを導入しています。
 SAはその講義の既習者で、かつファシリテーションを中心にしたゼミに所属する上級生から選抜するようにしています。さらに、講義開始前にSAを対象にしたコーチングセミナーを開講し、話の引き出し方を再確認するとともに、講義終了後にSAと講師による10分程度のAAR(After Action Review、事後検討会)を行い、コーチングのスキルアップを目指しています。
 SAは議論が活性化しないグループ、欠席者が出てチームでのまとめに支障が出るチームに入ってチームメンバーとして、またファシリテーターのサポートとしてチーム内での活動を行います。チーム数が10以下であれば、講師一人で活性が下がったチームを順に巡回して、活性を高めるように支援することが可能ですが、それ以上の受講生がある授業でアクティブ・ラーニングを効果的に行うためには、SAの導入は不可欠だと感じています。受講生も講師には聞けないこともSAには聞くことができるなど、講師が支援するよりもSAが支援するほうがチーム活動の活性は向上します。
 また、SAは受講生よりも深く予習をする必要がありますが、コーチングのスキルを学べ、実践できること、授業について受講生に教えることによって、自らもさらに深く知識を得ることができることなどから、非常に充実しているとの評価が得られており、多くの学生がSAを希望します。

(3)チームの構成

 ほとんどの講義は、男子学生の比率が大きいため、上述した方法でチーム分けを行うと、女子学生が1名のチームができてしまいます。これまでの経験で、このようなチームはチームの活性が低い傾向にあります。また、過去の事例では、この女子学生が授業に出席しづらくなることもありました。そこで、女子学生が一人だけの構成になるチームを作らないように、チーム編成時には若干の修正を行うようにしています。

(4)チーム活動の評価

 最初は、作成したマインドマップなどの成果物をもとにチーム活動を評価していました。これによって、チーム内の議論よりも、グラフィックスが得意なものが一人で書くことに集中し、他のメンバーが参加しなくなる傾向が見られました。そこで、グラフィックスのみを採点基準とするのではなく、チームメンバーの傾聴の姿勢、チームでの議論の活性度を講師が巡回しながら評価し、その評価結果とその理由を授業中に公表するように変更しました。これによって、議論の方に集中するようになりました。
 また、各自の予習の採点を他のチームが行うことにしています。これは、講師側の不可を低減するために行ったことであったのですが、受講生にとっては先生に採点されるよりも同級生に見られることの方が予習に対する動機付けになっているようで、Peer Reviewの効果が得られていることを実感しています。

(5)課題の分担

 当初は予習の課題の分担を意識しておらず、1名でできる量の課題を課していました。
 しかし、特に英語の教科書を用いる授業では各チームで課題を分担するようになっていました。また、分担を許したほうが、自分のための課題であるとともに、自分が課題をしてこなければチームに迷惑がかかるとの意識が芽生えており、課題への取り組みへの責任感が生まれていると感じました。また、「自分が単位を取得するために提出する自分のための予習」から「チーム学習を効果的に行うために必要なチームのための予習」と、予習の意味づけも変化しており、予習の効果も高まっていると感じています。
 課題をチームに課す課題として量を増やして、チームでの分担を前提として課題に取り組むよう指示するようにしています。また、分担した学生が休むとその部分がグループ学習できなくなることから、同じ場所の分担を二人で行うように指示しています。

(6)ケースの改訂

 議論が実りあるものになるか否かは、ケースの内容およびケースにおける問いの難易度と質が適切である必要があります。各授業における議論の内容をよく聞き取って、ケースを改訂していくことが重要です。ここでは、SAの意見が貴重になり、SAとのAARにおいて、当日のケースの難易度を検討し、これをもとに毎年ケースに修正を加えています。

(7)机の配置

 当初は講義型を移動させることなく、講義型の机の配置のままで前列の学生を後ろ向きにして座らせて、チーム学習を行わせました。しかし、全体討議のときに、講師が教室前のホワイトボードを使うと、後ろ向きに座った学生は前を向いてしまい、その後議論に戻るときに支障が出ていました。そこで、時間はかかりますが、前述および写真1の通り、机を教室前のホワイトボードに対して垂直になるように島状に配置しました。これによって、前のホワイトボードを使う場合でも体を動かさずに顔を前に向けるだけで見ることができるようにしています。
 SAによると、このように授業の前に受講生みずからが座席を島状に配置することは、「これから参加型の授業が始まる」というマインドセットを切り替えるのにも役立っているようです。机の配置と復旧で授業時間を犠牲にすることになりますが、それ以上の効果が得られると実感しています。

5.実施による教育的な効果

 図2に2012年前期の全学部の2年生向けの講義「経営と経済(現代の企業経営入門)」において授業の最終回に実施した受講生へのアンケート調査結果を示します。
 受講生の中で講義型授業によって知識を得たいと思う受講生は全体の10%未満でした。これに呼応して、グループ学習によるアクティブ・ラーニング型の授業を他にも広げたほうがよいと思う学生が9割を超えていました。さらに、この講義では、講師が一方的に知識を伝授する講義型授業に比べて、獲得できる知識が少ないと受講生が感じるのではないかと危惧していましたが、受講生のほとんどはそのように感じておらず、講義終了直後であってもアクティブ・ラーニング型の講義の方が、定着する知識が多いと受講生が感じていることがわかりました。また、「科目への関心度や理解度は従来型講義に比べて高まった」と100%の受講生が回答しており、アクティブ・ラーニングの有効性が示唆されました。
 また、この講義で初めて上級生によるSAを採用しましたが、このアンケートによってSAが受講生にとって有効であったことがわかり、その後SAを採用する科目を広げました。この講義の前には本学にはSA制度がありませんでしたが、この講義でSAの有効性が認められたことから本年度からSAが制度化され、他の講義においても採用できるようになりました。
 学部の2,3,4年生において実施する「経営情報システム論」における同様のアンケートの結果、グループ学習型の講義が就活において役立つとの意見が多くありました。この講義によって就活で実施されるグループ面接やグループ討議、さらには個人面接における対人コミュニケーションスキルが育成されているためと考えられます。

図2 全学教育における授業アンケート結果

6.今後の課題と改善点

(1)LACSの利用

 現時点では、予習の課題提出は紙媒体で行っています。これらは授業終了後受講生に持ち帰らせますが、整理して保管されているかは個人によります。また、チームごとにホワイトボードを使うと、議論した結果が残らず、学生は手持ちのスマートフォンなどで議論の結果を個々に撮影して記録しています。また、本格的なディベートを行うためには、授業時間外にチームメンバーが立論を構成する必要がありますが、本学は学部によって複数のキャンパスを保有しており、たびたび集まるのは困難です。
 そこで、本年度より導入された長崎大学主体的学習促進支援システム(LACS)を用いることを計画しています。また、今年度入学の学生からパソコン必携となっていることから、授業中もパソコンが活用できます。そこで、チームごとに課題や議論した結果をこのシステム上に残し、他のチームも閲覧できるようにするほか、各メンバーの課題もシステム上に提出するようにして、学習結果の整理と、他の受講生の結果の閲覧などを容易にできるようにすることを考えています。しかし、これらの登録作業を講師側が授業後に行うには労力がかかることから、現在効率的な方法を模索し、試行錯誤中です。

(2)他の講義とのケースの連携

 経営情報システム論では、来年度からアクティブ・ラーニングを計画している「数理計画法」の講義とケーススタディーを連携させ、システム面(経営情報システム論)とシステムで用いられている計算アルゴリズム(数理計画法)とのシームレスな知識の獲得を目指すことにしています。

(3)アクティブ・ラーニング専用の教室

 現在は机の配置と復旧に時間を要しています。アクティブ・ラーニングは全学的に推進されていることから、このような形態の講義が増えれば、チーム学習型専用の講義室、もしくは、時間割上でチーム学習型講義をある曜日に集中させるなどの配慮によって、机の配置の時間をなくせるとよいと考えています。

7.むすび

 アクティブ・ラーニングは、受講生の出席率や講義への参加意識、満足度も高く、また、就活へも有効との評価が得られており、従来の講義型授業に比べると、高い教育成果を得ていると実感しています。このアクティブ・ラーニングの授業計画にあたっては、本学の大学教育イノベーションセンターが開催するFDが大きく貢献しました。グループ学習に基づくアクティブ・ラーニング授業設計のためのFDでのアクティブ・ラーニングにおいて、参加された先生方から多くの示唆をいただき、授業設計に役立てました。したがって、これらの講義は教師間のアクティブ・ラーニングをもとに設計されたアクティブ・ラーニングと言えます。
 本稿がアクティブ・ラーニングの実施を計画されている先生、あるいはすでに実施されている先生方の参考になれば幸いです。


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