特集 アクティブ・ラーニングの実質化に向けて
山田 和人(同志社大学PBL推進支援センター長、文学部教授)
本学では、PBLの教育手法による「プロジェクト科目」を2006年度から開講している。全学共通教養教育科目として設置されており、「キャリア形成科目群」の中に位置づけられている。本科目は、学内外からテーマを公募し、それらを審査・採択し、テーマ提案者を嘱託講師として採用し、授業を担当するテーマ公募制を導入している。毎年、20〜25科目前後の科目が開講されており、200名から250名の学生が履修している。延べ開講科目数は200科目を越え、受講者数も2,000人に及んでいる。この間、2006年度現代GP「公募制のプロジェクト科目による地域活性化」、2009年度大学教育推進プログラム「プロジェクト・リテラシーと新しい教養教育」に採択されている。2009年11月には、PBLの教育と研究を推進するためにPBL推進支援センターを新設し、日本全国で実践に取り組んでいる教育機関と連携し、PBLの普及と発展のためのネットワークを構築しようと活動している。
本学が組織的にPBLに取り組み始めたのは、2004年のローム記念館プロジェクト(課外活動)であり、その試みが2004年度現代GP「プロジェクト主義による人材育成」として採択された。
その準備として2003年前後からPBL導入の検討を始めた。一方、正課科目としては文学部に特殊演習(プロジェクト科目)を設置し、試行実験を試みた。筆者自身、両方の立ち上げと運営にも深く関わってきた。正課と課外の両面からプロジェクト学習のあり方を模索した成果を踏まえて、テーマ公募型の「プロジェクト科目」のプログラムが誕生する。「社会の教育力を大学へ」をキャッチフレーズとして社会連携教育プログラムとしてスタートを切った。
なお、全学設置科目としてプロジェクト科目を設置した背景には、大学全体の教養教育再編の動きがあった。アクティブな教養教育プログラムの創出という命題が急浮上していた。そのために従来の講義型の一方通行の授業とは違う、学生が主体的に学ぶ、いや学びの主人公が学生になるようなプログラムの導入が期待された。
大学教育プログラムとしては、本学の学生が、情報処理能力は高いが問題発見・解決能力が弱い、テクニック・ノウハウの修得は長けているが未知未決の問題を考える力が弱い、総じてチャートなき事柄を自分で考え抜く力に欠けているという問題意識があった。その解決策として、自律的主体的学習・チームによる協同学習・アクティブな学びが必要であり、質の高い多様な切り口を可能にするリアリティーのある教材としての「現場」と「本物」を大学教育に取り込み、そこでの体験を通して創造的・社会的な学びの機会を生み出すねらいがあった。そのための仕組みとしてテーマ公募制が採用された。
テーマ公募制とは、プロジェクト科目の趣旨に賛同し、学生主体のプロジェクト活動を教導し、支援しようとする担当者を、広く企業・団体・行政・個人などから公募し、応募されたテーマを審査・採択する(表1)。同時に採択されたテーマ提案者を本学嘱託講師として採用し、授業担当者とする制度であり、「社会の教育力を大学へ」という理念をそのまま具現化したものである。ただし、担当者が大学教育に直接関わったことの少ない学外の嘱託講師であり、大学の施設・設備、学年歴、成績評価などについて詳しいわけではないので、それぞれの科目ごとに本学の専任教員がサポートする体制を整えた。公募のための告知は新聞広告やWebサイト、各種団体への公募要領の配布、メーリングリストなどを使って、ひろく呼びかける手段を模索し続けている。プロジェクト科目はテーマ公募制の制度設計からスタートしたと言える。
表1 プロジェクト科目応募者数一覧
多様な切り口のテーマやリアリティーのある現代的なテーマを設定し、それぞれにふさわしい環境と条件を学生に提供できることが、テーマ公募制の大きな魅力であろう。学生PBLを実施する場合、この点はきわめて重要である。多様なテーマの中から自らの意志で選択することによって主体的に学ぶモチベーションが引き上げられること、愛着を持つことができるテーマに期待感を抱かされること、そして、これが自律的・主体的に学ぶための大きな動機付けになるからである。
学生は、選んだテーマを具体化していく過程で、テーマを再構築して、実現可能なプランに仕上げていく。ここで、重要なことはそのテーマに愛着を持って取り組むことができるかどうかであり、言い換えれば、そのテーマを自分自身のものにしていくことができるかどうかである。それができたプロジェクトは質の高いアウトプットを生み出す。
学生は現場に出向き、本物と出会うことを通して、テーマの背後にある課題を発見することになる。それを解決するために、現場との往還を繰り返すことを通して、しだいに課題が明確化して、解決のための仮説とそれを実証するための方法を手探りで見つけようと、チームで自律的に活動することができるようになる。これが、テーマ公募制の持つ教育効果である。
なお、テーマ公募制では、応募時点で学生中心のプロジェクト型教育であることをテーマ提案者も了解しており、担当者とプロジェクト科目を運営する検討部会や事務局との間で率直な議論と対話が可能であり、フラットな関係で教育方法をめぐって意見交換が随時可能である点も大きなメリットの一つである。
全学共通教養教育科目であるために、1年次の秋学期から4年次に至るまで、幅広い学生が履修している。この科目では、毎年20〜25科目を開設しているが、最低5名最大19名という少人数で開講しているために、先行登録制にしている。登録者数が5名に満たない場合は採択されていても不開講の扱いになる。これは応募書類にも明記されている。最大19名としているのも、これ以上になると、学生のマネジメント能力を超えてしまうため、少人数でプロジェクトにじっくりと取り組むことができるための仕掛けである。もちろん、大規模集団で効果的にプロジェクトを運営していく方法を学ぶことも重要であるが、一人ひとりがじっくりと課題について考え抜くことを目指しているため少人数制は不可欠であった。
本科目の履修者は毎年、学部も適度に分散しており、いずれかの学部に偏ることもない(表2、図1)。年によって多少の変動はあるものの、男女比もほぼ半々である。近年女子の登録者数が増加傾向を示している(図2)。履修年次も2年次〜4年次までほぼ同じである(図3)。テーマ公募制によって開講された、多様でユニークな科目が多数設置されているために、学生は、自分自身の興味や関心から科目を選択するために、最初の授業ではほぼ全員が初対面である。受講生はチームで学ぶことの難しさと喜びを実感しながら、チームの総合知に磨きをかけていくことになる。多様な学生が一つのプロジェクトに取り組み、多様な価値観と出会うことによって、対話を通してあるべき自分、あるいは他者を通して新たな自分を発見することになる。学生たちにとっては、自分が属す同じ学部、学科や専攻、あるいは課外活動とは違うメンバーと、同じ目標に向かって行動すること自体が新鮮な経験でもあり、そこから多様な視点や方法、知識を身につけていくことができる。
表2 2012年度プロジェクト科目所属学部・年度別登録者数(履修中止後)
教養教育という枠組みがプロジェクト活動の活性化を促進する教育環境をもたらしていたのである。
全科目の授業は、1)「決める」、2)「つかむ」、3)「深める」、4)「伝える」、5)「振り返る」という五つのフェーズで展開していく。
1)「決める」は、意識付けの段階であり、学生は登録説明会に参加して、希望する科目の先行登録をしなければならない。その際、登録志願票(400字)を当日提出しなければ、先行登録の受付ができないルールになっている。シラバスを読み、自分自身の意志として科目を選択するように促すための工夫である。19名を超過する希望者がある場合は、選考・選抜資料になる。
2)「つかむ」は、問題発見と課題設定のレベルであり、各科目がゲストスピーカーを招聘したり、現場体験、市場調査、フィールドワークなどを行っており、基礎的な知識とスキルの実践を通した体験学習によって、それぞれの現場から問題を発見し、それらの問題を課題として設定する段階である。プロジェクトに初めて取り組む学生が大半であり、プロジェクトに関するワークショップやリーダー講習会や会計説明会、学習支援ツールの説明会などを実施して、受講生にプロジェクト学習の基礎を学ぶ機会を提供している。
3)「深める」は、課題解決に向けて、具体的な企画・提案を行っていく段階である。ここでは、課題を多角的多面的に分析・検証し、それをもとに現場との往還を通して、自分たちの課題と向き合い、その解決策を探究する。各科目の進捗状況に応じて、スキルアップ講習会を開催したり、成果報告会のための伝える技術に関するワークショップを実施している。
4)「伝える」は、課題解決のための具体的な提案を公開の場で発表する段階で、各プロジェクトが、シンポジウム・イベント・発表会の開催、提案書の作成と提出、報告書・冊子・パンフレットの発行など、成果を社会に向けて発信する。各科目の成果を踏まえて、成果報告会が、全プロジェクトが一堂に会して春・秋学期それぞれに開催される。これは、それぞれの成果に対する自己評価と他のプロジェクトへの相互評価の場である。日曜日開催であるにもかかわらず、8割を越える学生が参加する大きなイベントになっている。当日の投票によって、最優秀賞・優秀賞・特別賞が選ばれ、トロフィーが授与される。優秀な取り組みは、PBL推進支援センター主催のシンポジウムや、大学を越えた学生のプロジェクトに関するフォーラムに登壇し、いわば他流試合をすることによって、自分たちのプロジェクトの特性や成果を客観的に見つめ直し、振り返る絶好の機会になっている。
5)「振り返る」は、自分たちのプロジェクトの活動を多角的に振り返り、省察を加える段階である。各プロジェクトでは、それぞれ課題レポートや振り返りの時間の中で、学生自身の自己評価やプロジェクトに対する評価を行う。プロジェクト単位だけではなく、プロジェクト科目全体でも振り返りの機会を多く設けている。学生懇談会では、プロジェクトを推進してきた学生の代表がそれぞれの問題点を指摘し、いかにプロジェクトを運営すべきか議論する。プロジェクトを支援するTA・SA協議会では、プロジェクトに最も近い距離で担当者と学生を観察している立場から、プロジェクト運営の問題点を探り、改善点を見つけていく戦略的な振り返りの機会である。担当者懇談会では、担当者自身がプロジェクトを振り返って、経過報告と困難な課題について意見交換をしながら、経験のある担当者が経験の浅い担当者にアドバイスをするケースもある。成績評価や指導上の問題点について議論する場でもある。これがFDの場として機能している。
どこまでやれば、PBLとして成功と言えるのか、一例を掲げてみたい。2007年度「子どものための『京都職場図鑑』作成プロジェクト」では、同志社小学校と連携して、児童の総合的学習の時間の調べ学習で副読本として使えるテキストの作成に取り組んだ。総ルビになっているのは低学年の児童でも読むことができるように配慮している。調べ学習に使用できるように詳細な情報を見開きでわかりやすくレイアウトしている。
ここに登場するのは、千家十職(茶道)の職人であり、釜師の大西清右衛門氏に対する仕事場でのインタビュー記事もある。学生のテキスト制作の目的や視点に共感をして、取材協力が実現した。この行動力は学生本来の強みである。
また、テキスト制作のためのアプリケーションに関しても、IllustratorやPhotoshopを使うのは初めての学生ばかりだった。担当者がIT系の会社所属だったので、スタジオを借りて一定期間、編集作業に没頭できた。そこまで夢中になれるテーマと巡り会えたことが幸せであった。テーマ公募制の強みとして、担当者の所属先の施設・設備・要員などの学習支援が得られることも大きい。
児童のための職場図鑑制作のために、同志社小学校の協力を得て、児童の成長段階に応じた紙面作りのアドバイスと、テキストを使った学生による模擬授業の講評などのフィードバックをもらった。
2007年度の最優秀の取り組みとして、本学主催シンポジウムにおいてその成果を発表した。会場から、「このプロジェクトのゴールは何だったのか」と問われた学生が次のように応えた。「自分たちのゴールは、この冊子を作ることではなく、この冊子を授業で使ってもらうことであり、冊子が流通していくことだ」。冊子を作ることが自己目的化してしまいがちだが、それがどのような社会的な役割を担うことになるのか、そうした社会的な視座を持ち得ている点において、優れた取り組みだった。
もう一例あげてみたい。2008年度・2009年度・2010年度環境演劇を小学校で上演するというプロジェクトの事例である(プロジェクト科目では3年間同一テーマで応募できる)。児童が台本・役者・道具・音響・照明すべてを分担・制作し、父母の前で上演するのを学生がプロデュースするプロジェクトだった。いわば小大連携のプロジェクトである。
学生はふだんの授業や活動やアルバイトなどもあり、毎日小学校に出向くことはできない。そこで、自分たちがプロジェクトを分担して運営するように、児童にも役割を割り振り、それぞれのパートの課題を実行する運営体制を作った。その結果、児童は自分たちで自主的に制作・練習を行い、計画的にプロジェクトを遂行できた。教えることを通じて学ぶというのはこうした関係のことを言うのだろう。
2009年度は公立小学校で実施した。担任の教諭とともに1クラスで環境演劇の制作と上演を行うことができた。そこで、2010年度の学生がさらなる質的向上を目指して、協力依頼に出かけたところ、小学校側から断られた。理由は、2009年度の取り組みが学校から認められ、担任教諭がそれを学校行事として引き継ぐことになったからである。学生たちは残念に思ったようだが、1年間のプロジェクトが学校行事に定着することで、その後も小学校に引き継がれていったという事実は、連携教育のあり方を象徴しており、プロジェクトの継続性について示唆に富んでいる。しかも、演劇の専門家ではない担任教諭にも運営できるだけのノウハウを伝えることができた点も、プロジェクトの成果の汎用性・一般性を考える上でも興味深い。知識やスキルを共有する姿勢が貫かれていたのである。
このように自らが課題を発見し、自律的・主体的に解決策を模索していくプロセスで学生は大きく成長する。そして、その活動が自己満足に終わることなく、社会的な学びになっていること、その成果が創造的であり、他に類例がないようなものになっていることがPBLの成功例と言える。ここで注目すべきは、児童は自分たちが作り上げた演劇だと賞賛し合い、そこまで導き得たことに喜びを感じる学生の姿であった。そこには、担当者の指導を越えた学生たちの自律的・主体的な学びがあった。課題を与えられるのではなく、自ら課題を見つけ試行錯誤しながら答えていく。何度も失敗を繰り返しながら、粘り強く修正していく持続的思考力を身につけていく。文字通りアクティブな学びの姿がそこにはある。
プロジェクト学習では、授業時間以外のミーティングが重要な役割を果たしており、そこでの議論がプロジェクト推進の大きな役割を担っている。プロジェクトの生命線とも言える。そのミーティングのクオリティを向上させるための方策の一つとしてラーニング・コモンズの活用が考えられる。本学には西日本で有数の面積(二階三階で2,550u)を持つ良心館ラーニング・コモンズが、2013年4月に運用を開始した。
プロジェクト科目の場合は、授業時間と教室は、あらかじめ設定されており、1セメスター15回の授業が組まれている(連結2セメスターは30回)。通常授業の場合、授業時間の前後の予習・復習という展開だが、プロジェクト学習では、授業時間は、授業外ミーティングでプロジェクトを推進するために検討した結果を報告し、受講生同士もしくは科目担当者と議論する会議の場である。その結果を踏まえて再び授業外ミーティングで問題点を検証し、一つの方向性を授業で報告をする。その間に学生はプロジェクトに必要な知識や情報を得るために、個人学習で文献や関連資料の調査・読解することになる。
ラーニング・コモンズができる以前は、グループワークができる他の施設・設備を使ったり、ラウンジなどでミーティングを重ねてきた。その意味では、ラーニング・コモンズがPBLに不可欠というものではない。ただし、前述したようにPBLにとって、学生によるミーティングは不可欠であり、この授業外学習における対話と議論によって、学生は最も大きく成長していく。ラーニング・コモンズ開設以来、PBLやプロジェクト学習・演習を組み込んだ授業の受講生はグループスタディエリアを授業外学習のために当たり前のように利用・活用している。プロジェクトが複数ある場合には、少人数のグループに応じたレイアウトで使うことができる。複数のグループが合同でミーティングをする場合は、大きく机などを配置してレイアウトを変更することもできる。
また、プロジェクト科目では各種講習会を開催することも多く、ラーニング・コモンズに配置されているアカデミックアドバイザーによる講習会も開催している。この場合は、参加者数が1科目2名ということで、20科目の場合40名に及ぶので、複数の仕切り(カーテン状)を外して拡大して使っている。基本的に、ラーニング・コモンズは仕切りを設けない巨大なワンルームが理想である。PBLにとってのラーニング・コモンズの必要要件は、仕切りを自在に変えうる可塑性・学習環境を自在に作れる可動性・対話と議論が醸成される開放性である。
プロジェクト科目では、個々のプロジェクトの成果発表だけではなく、全プロジェクトが参加する成果報告会を開催している。昨年度はラーニング・コモンズのプレゼンテーションコートを使って開催した。プロジェクト紹介(3分スピーチ)、ポスターセッション、講評・表彰式など、現在進行形で、レイアウトを変更できるのがメリットである(写真1)。
写真1 2013年度秋学期成果報告会同志社大学良心館ラーニング・コモンズプレゼンテーションコート
本科目は、全学設置のプロジェクト科目として提供している学習支援とその体制についてまとめておきたい。
(1)授業運営費
プロジェクト科目には、授業運営費が各科目1セメスター30万円が予算化されており、春・秋連結型の場合は、60万円を上限として支出できる。会計も科目代表者の承認を必要とするが、基本的に学生が管理・運営している。会計担当の学生は、予算管理を通して、公的な資金を使う責任感を自ずと身につけていく。
(2)ネットワーク型ポートフォリオ
毎週提出の個人の活動記録、ミーティング開催ごとの議事録・各種報告書・企画書、プレゼンテーション用の資料、作業工程表、スケジュール表などをすべてそれぞれのフォルダにアップロードする。アップロードされたファイルに対してコメントを付ける。プロジェクト科目では専用のCNSというSNS型ネットワーキングサービスを提供しているが、アクティブ・ラーニングの場合、自分自身の学習履歴を管理するとともに、それをチームで共有していくことが重要であり、デジタル・ポートフォリオが重要な役割を果たす。いわばチームと個人の学びをモニタリングできる仕組みを作る必要がある。
(3)TA・SAの配置
担当者と学生の間をつなぐTA(大学院生)もしくはSA(学部学生)の仲介的な役割は、アクティブ・ラーニングにおいてはきわめて重要である。チーム内の現状把握、時には人間関係にも及ぶ場合もあるが、そうした報告もプロジェクト運営では貴重である。近年、TAとSA間の連携を深めるとともに、プロジェクトの問題点や改善のための提案を行うことができるTA・SA協議会として、TA・SAの活動日誌をネットワークで共有し、日常的な意見交換も行うことができるようにしている。
(4)プロジェクト科目事務局
プロジェクト科目の運営を担当している事務局(教務課)が学生対応の窓口業務も行っており、プロジェクトから申請されてくる予算書を精査して、適宜対応している。予算はすべて大学経理の管轄であり、その基準を満たさなければ支出できないので、不備な場合は再検討を依頼する。プロジェクトの本来の目的と合致しない場合は、改めて企画書の提出を依頼することもある。これも広義の学習支援といえる。アクティブ・ラーニングの場合、こうした具体的な個別のフィードバックやアドバイスが不可欠であり、それが可能になる支援体制を整える必要がある。教員・職員・学生のプロジェクト型運営体制である。
毎年行っている授業関連のアンケート結果(2012年度)を次に掲げる(受講生春学期234人中回収率88%・秋学期225人中82%。TA・SA春学期20人中60%・秋学期20人中65%。担当者春学期20人中75%・秋学期20人中65%)。図4の通り、授業内容についての満足度は高い。また、履修動機に関するアンケートでもテーマが魅力的であったことが大きいという結果である。また、 TA・SAの修得スキルのアンケートでは、観察力・コミュニケーション力・サポーターシップ・課題探究力・傾聴力などが注目される。なお、公募制による科目担当者アンケートでも「学生の知識レベル・能力」「学生の授業への取り組み」「授業への支援体制や制度」についての調査しており、それぞれ満足度が高いこと を付言しておく。
図4 2012年度プロジェクト科目授業満足度
2009年11月にPBL推進支援センターを設置した。本センターはPBLの実践校とのネットワークを構築し、PBLの教育効果や教育方法について研究することを目指している。具体的な活動としては、PBL推進協議会による研究会を開催し、事例報告を中心にした教育・研究活動を行っており、小・中学校、高等学校、大学などの教育機関を越えた活動になっている。PBLをすでに導入している機関、今後導入を考えている機関のみなさんとともにPBLの教育効果や教育方法について検討する場を提供している。
それ以外にPBL関連の講習会の開催、PBLを主要テーマとした学生事例報告とパネルディスカッションを組み込んだシンポジウムの開催、大学を越えた学生同士がプロジェクトの成果を発表する機会を大学間合同成果報告会や教育フォーラムというかたちで提供してきた。
PBLなどのアクティブな学びの成果は成長した学生自身であり、かれらの発表と質疑応答、ディスカッションによって、どれほど学生が成長したのかを確認することができる。各教育機関ではそれぞれに成果発表の場を持っているが、いわば他流試合の場を設けている機関は少ない。こうした発表の場がPBLを導入している機関だけではなく、将来的にPBLの導入を考えている機関にとっても貴重な情報提供の場になっている。
また、学生にとっても、こうしたオフィシャルな場で発表をすることによって、第三者的な評価を受けることができるとともに、自分たちのプロジェクトの特性を多面的多角的に知ることができる。そうした場を提供することの教育的な効果と意義は大きいものと考える。
同志社大学プロジェクト科目とPBL推進支援センターについては、以下のサイトをご参照下さい。
同志社大学プロジェクト科目
http://pbs.doshisha.ac.jp
同志社大学PBL推進支援センター
http://ppsc.doshisha.ac.jp