新しい学びの扉
名城大学経営学部では、2014年度より、FSP講座を試験的に導入しております。とはいえ、2014年度は諸般の事情から、後期に1企業のみのご協力を仰ぐという変則的なスタイルとならざるを得ませんでした。この点、2015年度は前期に2企業の課題に取り組むという本来の形でFSP講座を実践することができました。ここでは、両者を比較し、学生に2企業からの課題を経験させることの意味について考察してみたいと思います。
我々は、1年次必修科目「基礎ゼミナール」の2クラスを母体にFSP講座を実践しております。1クラスが15名強の人数となるため、1グループ当たり5名ないし6名からなる6チーム編成での取り組みとなりました。
冒頭でも述べたように、2014年度は、年度途中でFSP講座導入を決定したこともあり、準備の都合や学部行事との調整が上手く進まず、後期にJTB中部1企業のみの協力を仰ぐことしか適いませんでした。もちろん、同社の献身的なご助力を得て、学生たちは多くのことを学びまた更なる学びの必要性を実感していました。しかしながら、同時に我々は以下のような限界を痛感したのです。第1に、半期15回の中に2企業を入れ込むのに比べて、1企業だけで実施する場合には、半端な時間的余裕が生じてしまいます。この余裕が、中だるみを引き起こしたばかりか、授業中に準備を進められるとの認識を学生に植え付け、授業時間外の取り組みを阻む結果となってしまいました。第2に、1企業のみでの実施では、FSP講座の特長ともいえる「失敗→内省→概念化→実践」という学びのサイクルが、内省ないし概念化で止まってしまい、完結できなかったという点です。つまり、リベンジの機会を得られなかったため、学生の成長が期待通りに促されなかったのではと危惧しています。このように、総じて、1企業のみでの実施では、FSP講座本来の効果を引き出すことは難しいというのが我々の偽らざる気持ちです。
以上の反省を踏まえ、2015年度はFSP研究会で提唱されている方針に忠実に従って実施しました。すなわち、「前期」、「2企業」というスタイルです。具体的には前半にJTB中部、後半にはブラザー販売株式会社にご協力頂きました。その結果、上述した限界を見事に払拭することができたと自負しております。とりわけ、2社目の取り組みが文字通りリベンジの機会となったことで、第1次提案のコメントを受けた後の対応に大きな変化がみられました。すなわち、1社目の課題取り組み時には内容を根本的に変えるチームが多かったのに対し、2社目のときには、自分たちのアイディアを企業担当者に受け入れてもらえるよう、説得力を高めるなどの改善に集中したチームが目立ったのです。こうしたこだわりや成長は、プレゼン内容はもとより、原稿を見ずに発表するという報告スタイルの変化にも反映されました。おそらく学生たちは、1社目の課題取り組みでは「やってもできなかった」(結局、他者のコメントを受けて形にしただけ)という経験に終わったものの、2社目には「やればできる」ということを経験できたのではないでしょうか。リアクションシートに記されたコメントも、そのことを裏付けているように思われます。
以上をまとめると、次のように結論づけることができます。1社目での経験に基づいて概念化したことを実践する過程が、2社目を設定することによって必然的に備えられる⇒それによって学生の主体性が効果的に刺激され、わずか半期という短期間のうちに、学生の成長が大きく促される。ここに、FSP講座を2企業で実践することの意義があるのではないでしょうか。最後に、FSP講座を通じ2企業の課題に取り組み、最もワクワクさせられたのは、他でもなく、学生たちの伸びシロを目の当たりにした我々教員でした。それほどに1企業と2企業とでは、学生の伸び方が全く違うものであったことを、繰り返し強調しておきたいと思います。