賛助会員だより

株式会社ワオ・コーポレーション

WAOの入学前教育データのIRへの活用
学習観・学習動機アンケートと学習ログデータの分析
〜国私立9大学の事例〜

 ワオ・コーポレーションでは、入学前教育をe-Learningで大学にご提供しています。今回、国私立9大学(1)の入学前e-Learningのログデータをもとに、学習タイプ(表1参照)を七つに分類、学習タイプごとの入学後のGPAや中退率にどのような傾向がみられるかを追跡調査しました。その結果、学習開始時の成績よりも学習習慣の重要性が浮かび上がってきました。

表1 入学前学習タイプの分類条件

達成率:必修科目の課題平均達成率を算出。(事前テストの受験有無に関わらない)

ログイン回数:弊社基準による。

■学習タイプ別GPA・退学率分析

 表2、表3は、入学前e-Learningのログデータを用いて、学力とは異なる観点である「学習タイプ」ごとの成績や退学率の傾向を分析したものです(2)

表2 入学前学習タイプ×入学後GPA(2年次末)
表3 入学前学習タイプ×退学率
(2年次末)

これらのデータ分析から下記の考察を得ました。

1)長期達成型(SY)と短期達成型(SN)で、GPA平均値に明らかな差が見られました。多重比較の結果からも、有意な差があることが分かりました。達成率に関わらず、入学前の学習回数、習慣が入学後のGPAに大きく関わっていると考えられます。

2)前半型(YN)はGPA平均値が低く退学率も高い一方、後半型(NY)は学習習慣型(YY)と近い傾向がみられました。学習の偏りが前半か後半かは、単なる学習時期の差ではなく、学習意欲・モチベーションによる違いがあるのではないかという仮説が立てられます。

3)無学習型(NS)はGPA平均値が極めて低く、退学率も10%を越えており、他のどの学習タイプとも有意な差が見られました。また前半型(YN)も無学型同様に退学率が高いことから、これら二つのタイプは入学時より最も注意が必要な層だと言えます。

 退学率低減が問われている昨今、こうしたデータを活用して入学直後から退学防止の対策が打てることは、入学前にe-Learningを活用する最大のメリットだと考えています。

■「学習観」・「学習動機」アンケート

 次に、弊社が入学前e-Learningの受講者に対して2015年度から実施しているアンケートについてご紹介します。アンケートは、東京大学・市川伸一先生が研究されている図1「学習観」、図2「学習動機」の調査項目[1][2]を先生の許可を得て使用しております。

図1 学習観
「学習はどのようにして成立するのか」という学習のしくみに関する考え方
図2 学習動機
「何のために学習するのか」という学習動機づけに関する考え方

 入学前e-Learning9大学の学習結果と、この「学習観」「学習動機」をクロス分析した結果について、その一部を図3でご紹介します。

図3 学力別×学習観分析

 入学前の成績別でみますと、学力が高いほど「学習観」の総合点は高くなり、学力別で差が大きいのは「B:思考過程の重視」と「D:意味理解志向」で、特に学力の高い層で「B:思考過程の重視」が際立って高いことが分かりました。
 次に「学習動機」を入試区分別に見ますと、AO入試が他の入試区分に比べて内容分離的動機(H・I・J)が低めで、逆に附属校特別推薦は内容関与的動機(E・F・G)が高めである傾向が見えました(図4)。

図4 入試区分別の学習動機

 弊社ではこれらの分析に基づき、2016年度からはこの「学習動機」を利用して、タイプごとにサポートの際のアプローチ方法を変え、効果的な学習促進を実施する予定です。

■入学前教育データのIRへの活用

 入学前教育の学習ログデータ、学習観・学習動機アンケート結果、さらには入学後のGPAや退学率など、学生がもつさまざまなデータを分析することにより、学生一人ひとりの学びの状況を可視化していきます。こうしたデータをエンロールメント・マネジメントにご活用いただき、教育をよりよく改善していくIRに繋がる分析とサポートを、ワオ・コーポレーションは今後とも提供して参ります。

(1) 国立3大学、私立6大学(関東1大学、関西5大学)。
(2) 表2、表3ともにA大学2012〜2013年度入学者データより。
参考文献
[1] 市川伸一: 学習動機の構造と学習観との関連.日本教育心理学会総会発表論文集, 37, p.177, 1995.
[2] 市川伸一: 学ぶ意欲の心理学. PHP研究所, 2001.

【お詫びとお断り】

 ワオ・コーポレーションの入学前e-Learningを導入していただいている9大学(国立3大学、私立6大学)につきましては、GPA及び退学率などのデリケートな学生情報を扱う関係から、大学名の明記を控えさせていただきます。あしからずご了承ください。

問い合わせ先
株式会社ワオ・コーポレーション
ソリューション事業部
東京 TEL:03-6880-2010
大阪 TEL:06-6371-0255
E-mail:edu_contact@wao−corp.com
(アドレスは全角文字で表示しています)
http://edu.wao-corp.com/

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