教育・学修支援への取り組み
本学のキャンパスは、首都圏の北部に位置し、茨城県南部に近接しており、柏市、鎌ケ谷市などとともに、千葉県の東葛地区を形成する流山市にあります。首都圏とつくば地域を結ぶ「つくばエクスプレス」の中間地点に近い流山おおたかの森駅及び船橋と大宮を結ぶ「東武アーバンライン」の中間地点に近い豊四季駅が、最寄駅です。都心からの移動が1時間程度のベッドタウンで、現在も住居開発が継続している地域です。
本学は、社会学部(人間心理学科、現代社会学科、経営社会学科)及びメディアコミュニケーション学部(マス・コミュニケーション学科、情報文化学科、こどもコミュニケーション学科)の2学部6学科、2,000人ほどの学生、約80人の専任教員、約90人の非常勤教員並びに職員等により構成される文科系中心の小規模校です。
本学は、「人間陶冶(とうや)」を教育の理念とし、人間としての優しさに満ち、普遍的な教養と時代が求める専門性を身に付け、職業人として社会貢献することに喜びを見いだせる人材の育成を目指しています。
昭和6年に松岡キンが江戸川区小岩の自宅に創設した城東高等家政女学校を礎とし、二代目理事長の木内きぬが「誠実・明朗・喜働」を柱とする教養ある堅実な女性の育成を目指した江戸川女子中学校・高等学校をはじめとして、江戸川学園取手中学・高等学校、江戸川学園豊四季専門学校(現・江戸川大学総合福祉専門学校)、江戸川女子短期大学に続き、平成2年に開学されました。そして、江戸川学園取手小学校、系列の社会福祉法人喜働会によるえどがわ森の保育園並びに、えどがわ南流山保育園を加えた総合学園[1]を形成しています。
専任教員は、原則、いずれかの学科に所属し、学科における基礎教育や専門教育を担当するとともに、教育活動やその改善にかかわる以下のような部局や委員会委員を兼務する形をとっています。
まず、全学の基礎教育にかかわる内容は、学長が委嘱するセンター長、併任教員並びに非常勤講師により構成される「基礎教養教育センター」が担当し、その運営委員会が内容や方法等を検討しています。
また、教務部長、各学科長と教員1名等により構成される教務部に置かれ、カリキュラムをはじめとする教務全般を取り扱う教務委員会並びに教職員の資質向上等にかかわる内容を担当するFD委員会が設けられています。この他、学生指導全般を扱う学生部(学生委員会)、在学時の進路変更の相談や学修継続が困難な学生の支援を担当する学習支援室、心理カウンセリング等を担当する学生相談室、キャリア教育や就職活動を支援するキャリアセンター(キャリアサポート委員会等)が置かれています[2](4月以降、若干の組織体制の変更を予定)。
これらを学長、学部長、総合情報図書館長、事務局長、教務部長、学生部長、学科長等により構成される運営委員会が統括する形となっています。
なお、平成27年に発足した将来構想検討プロジェクトチームが、18歳人口の減少に伴う2018年問題等に対処すべく、建学の精神の再確認、アクティブ・ラーニングを実効的な形で(それぞれの授業に)導入するための方策の検討、基礎学力を担保するために全学対象の基礎教養教育を中心としたカリキュラムの見直し、そして、学部学科組織の再編などについて、検討を重ねています。
設置趣旨にうたわれている「国際化と情報化への対応」の一助として、昨今では当たり前になってきたノートPCを開学当初から全学生に貸与するとともに、中庭やグラウンド等を含めたキャンパスの全域で、安全なネットワーク接続を1500個の情報コンセントと約140ヶ所の無線LANアクセスポイントにより提供しています[3]。
そして、学生や教職員は、在籍時に提供されるEDO-NETのIDとパスワードによる認証で、学内ネットワークに接続することができます。また、Googleのサービスに基づくEdo-mail等を利用することができます。このサービスは、卒業後も同窓会組織に引き継がれます。なお、学外からは、VPN接続により、キャンパスとほぼ同様なサービスを利用することも可能です。
さらに、利用時の困りごとに対応するために、授業期間中は、学生によるヘルプデスクが(マルチメディア演習室の隣に)常駐するとともに、学内における貸与PCの修理サービス等も提供しています。この他、40台程度のWindowsデスクトップ機と様々な周辺機器、メディアコンテンツの作成を意識したソフトウェア並びに環境復元ソフトウェアを備えた三つのマルチメディア実習室も授業や自習等で利用することが可能です。これらのサービスは、学術情報部により統括されています。
ICT機器と日常的に接することにより、情報活用にかかわるスキルを身につけることを意図して、休講、教室変更、呼び出し、お知らせ等の連絡、履修登録、成績確認、出席登録、出席状況の確認など、学生生活において必要となる手続きのほとんどをネット上で行うように工夫しています。
なお、これらの教育活動や学修支援を支えるICTシステムは、先述したような小さな組織規模を鑑み、大きな費用負担が必要となる独自開発ではなく、既存のシステムを(多少の改修を含めて)組み合わせることにより、データを連携させる仕組みとして、実現しています。
(1)エドポタ(Edogawa Portal)
一般的な学生ポータルで、大学からのお知らせや休講、試験日程、学生呼出などの情報を、対象者を限定して提供する『リアルキャンパス』をカスタマイズした仕組みで、パソコンやケータイ等により、学内外からアクセスできます(図1)。学生との連絡には、学科やゼミ等を単位とするメーリングリスト、SNS等も利用されています。
図1 エドポタの画面例
(2)教務システム(Web履修登録、Webシラバス)
履修登録やシラバスの検索などが行えます(図2)。一般的な教務システム『Campusmate-J/学務系』をカスタマイズして実現しています。すべての学生は、各自のPC等を利用し、履修登録を行います。初年次の前期必修科目「情報リテラシー」において、その利用方法を学ぶとともに、履修登録期間中は、操作に不慣れな学生等を対象としたサポート・コーナーを学務課の近くに設置し、ヘルプデスクを担当する学生や履修相談等を担当する学生リーダー等がサポートしています。
図2 履修登録の画面例
(3)エドへん(出席情報システム)
ノートPCやケータイによりアクセスすることで、全学的に出席を管理する出席情報システム(『iCompass出席管理』パッケージをカスタマイズしたもの)を平成21年度から導入しています。
授業実施日の朝、その日のすべての授業に対応づけられた講義パスワードが、担当教員の指定アドレスにメール送信されます(図3)。当該授業を受講する学生は、授業開始時、エドへんにアクセスし、授業担当者から伝えられる講義パスワードを入力します。この講義パスワードは、当該授業の開始5分前にならないと入力できないように制限しています。
図3 エドへん画面例
(教員ログイン)
毎回、各学生の欄には、講義パスワードを入力した時刻が記入され、設定時刻(図4では20分)を過ぎると自動的に黄色のマーカーが付加されます。また、欠席した場合は、赤色に「×」印が記入されます。なお「公欠」、「その他」を含め、担当教員が手動で、修正することも可能です。
図4 エドへん画面例(授業ごとの出席状況)
その出席状況は、授業ごと、学生ごとに他の教員が参照することもできるため、学科所属の学生の出席状況を把握し、きめ細かな指導に活かすことができます。特に、欠席や遅刻の多い学生など、退学に結びつく可能性のある学生や何らかの問題を抱えている可能性のある学生を早期に見つけて、サポートする助けとなっています。
なお、エドへんによる出席チェックは、その仕組み上、授業に出席した学生が、授業に出席していない学生に何らかの方法で、講義パスワードを伝えたり、入力後に退出したりすることも可能であることから、より厳密な実際の運用のためには、例えば、授業内課題のチェックと併用したり、終了時に紙媒体の出席カードを回収したりする等の工夫も求められます。しかしながら、本学の場合には、小規模校の特徴を活かした少人数制の授業も多く、教室をざっと見渡すことにより、学生の出席状況を把握することも可能となっています。
さらに、各学期末に実施している「学生による授業評価」を先行して入力させた後、当日の出席を登録する仕掛けも組み込んでいます(図5)。これにより、学生は、普段利用している出席登録の延長として、Webによる授業評価の入力を行っています。
図5 授業評価結果例
(4)エドクラテス(学修支援システム)
エドクラテスは、Moodleをベースとして、学生が提出したレポートの一括ダウンロード機能等を改修した学修支援システムで、授業のための配布資料や教材等の配布(ダウンロード)、レポート等の提出(アップロード)、受講者による意見交換(フォーラム)、小テストなどが行えます。当初は、一部の教員による試行的なサービスとして提供されていましたが、ここ数年間で、学術情報部による業務としての管理が定着しました。
平成28年1月の時点で、150コース程度となっていますが、利用頻度や利用方法は、学科や教員により大きく偏っており、全学や学部レベル等での統一的な利用には至っていません。
SNSの利用例はあるもののICTの活用を前提としない地域や高校との連携にとどまっています。全学や学部単位ではなく、個人や少数の教員や学生にとどまっています。
現在、学生に貸与しているノートPCをはじめ、学科等が保有するタブレット端末などのICTツールの利用は、学生の個人持ちのスマホには遠く及ばないものの、日常的な教育や学修の場で、身近な道具となってきています。世に言う、他大学が行っている様々な取り組みや、その一部は、ある程度、普段着化していると感じられます。そのために、全学的、あるいは、学部単位での一体感を持った取り組みとしての「もう一歩」に踏み込むことができない状況にあるように思われます。
次年度からの改革を目指している将来構想検討プロジェクトチームの刺激に期待したいところであり、教育活動の内容や質の議論が必要であると考えています。
関連URL | |
[1] | http://www.edogawagakuen.jp |
[2] | http://www.edogawa-u.ac.jp/about/guidance/sosikizu.html |
[3] | http://www.edogawa-u.ac.jp/campuslife/e_campus/ |
文責:江戸川大学 情報教育研究所
所長 波多野和彦