賛助会員だより
芝浦工業大学は、2006年〜2009年に整備したキャンパス無線LANシステムを刷新しました。豊洲、大宮、芝浦それぞれのキャンパスで抱えていたアクセスポイント間の電波干渉やWi-Fiスポットの外来波による通信環境の課題を、フォーティネットの無線LANシステムが持つシングルチャネル技術、APの最高出力運用によって解決。スマートフォンなどアクセス端末の急増に対応しつつ、快適な通信環境を実現しました。
「実学を通じて真理を探究できる技術者、高い倫理観と豊かな見識を持った技術者、自主・独立の精神を持って精微を極めることのできる技術者の育成」を掲げ、多くの卒業生を輩出し、社会の発展に貢献してきた芝浦工業大学。工学分野だけでなく理学やデザインの分野にも教育・研究のフィールドを広げ、複雑化・高度化した社会の要請に応える人材の育成を実践しています。
2006年4月に豊洲キャンパスが開校した際にキャンパス全体のIT化推進が目標に掲げられ、無線LAN環境も同年から2009年にかけて豊洲キャンパス、大宮キャンパス、芝浦キャンパスと順次整備された。当時は、無線LANの利用は自分のノートPCを持ち込む学生がアクセスする程度で、エリアや接続しやすさなど問題なく利用されてきました。
ところが、2011年頃から学生のスマートフォン利用が急速に進み、無線LANへのアクセス端末が増加したことなどを背景に、通信環境は悪化してきました。
豊洲キャンパスでは当初からキャンパス全体で無線通信が使えるようにアクセスポイント(AP)の設置設計を行っていました。しかし、2.4GHz帯で利用できるチャネルは3つであり、複雑な建物構造でエリア設計すると、どうしてもAP間の電波干渉が発生します。「上下階や渡り廊下のある吹き抜け構造のある豊洲キャンパスでは、設計以上に電波が到達して干渉が起きていました。アクセス端末の増大に対応するため、APを増やせばさらに干渉は拡大し、チャネル設計やAPの出力調整で通信環境を維持するのは限界がありました」(情報システム部ネットワークサービス課課長補佐 我妻隆宏氏)という状況でした。
また、什器で部屋の間仕切りをしたり、移動させたりすると電波透過性が悪化して、満足できる通信環境を維持するのが困難なケースも多々ありました。
「豊洲や大宮キャンパスで教員がiPad等で授業をやろうと試みても、無線が安定せず授業ができない、といった状態に陥っていました」(我妻氏)と話す。
一方、周囲にビルが密集する地域にある芝浦キャンパスでは、通信キャリアのWi-Fiスポットが周辺にたくさん設置されるようになったため、それらのAPとの干渉が多発し、安定した通信ができないという課題が出ていました。
「できるだけアクセス端末の近くにAPを置けばS/N比を高くでき、Wi-Fiスポットの影響を少なくすることが可能です。そのため、コンシューマ向け無線LAN機器を各研究室に配布して利用してもらいました」(我妻氏)と急場を凌いでいたといいます。
こうした課題を解決し、アクセス端末の増大に対応できる通信環境の改善を目指し、全キャンパスの無線LANシステムの刷新を計画しました。
我妻氏は、各社の製品機能を含め様々な検討をしましたが、電波干渉を減らす設計とともにS/N比を高くして通信環境を向上させる方法としては、従来の一般的なマイクロセルによる、異なるチャネルを隣り合わせで用いる方式をとっている製品では解決の糸口にならないと判断。「複数のAPで単一チャネルを利用するフォーティネットのシングルチャネルデプロイメント、バーチャルセル・アーキテクチャが最も適したソリューションだと考えました」(我妻氏)。フォーティネットの無線LANシステム採用に至った理由をこう説明します。
導入された無線LANシステムは、コントローラ「MC4200」(最大500台のAPを収容)を大宮キャンパスと豊洲キャンパスにそれぞれ冗長構成で設置し、芝浦キャンパスは豊洲キャンパスのコントローラでカバーしています。
APは、第1期として2015年3月に豊洲および大宮キャンパスの研究室エリアに展開、第2期として同年8〜9月に芝浦キャンパス全域、豊洲および大宮キャンパスの事務部門エリアと共有エリアを対象に配置。両コントローラそれぞれの配下に約250台ずつ、合計500台のAPが稼動します。
導入作業は、従来のマイクロセル方式のように複雑なAPのカバーエリアおよびチャネル設計、出力調整などに煩わされることなく、容易に進められたといいます。
新しい無線LANシステムの稼働によって、アクセス環境は格段に向上し、通信速度も出ているといいます。「従来の環境では、ユーザーはつながりやすい場所を選んでアクセスするなど不便さがありましたが、現在は利用者数が大幅に増加したにもかかわらず、カバーエリア内どこでも快適な通信環境を実現できました」(我妻氏)と導入成果を評価しています。
芝浦キャンパスにおいては、Wi-Fiスポットの影響は避けられないがAPは高出力で運用できるため、通信環境の向上を実現しました。「S/N比を高めることによって、つながりにくさを解決するという対策が功を奏しています」(我妻氏)。
ノートPCを持って歩きながらテレビ会議を行っても、途切れたり速度低下せず、コミュニケーション可能なレベルを維持しているともいいます。
今後、第3期導入として豊洲および大宮キャンパスの教室エリアへのAP展開が計画されています。その背景には、文部科学省の方針でもあるアクティブ・ラーニングを授業に取り入れることがあります。教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学生の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習を、ICTで支援しようとカリキュラムづくりが行われています。「学内でも検討されており、その1つにクリッカーを使った授業があります。講義中に出される質問やアンケートに対して回答をスマートフォン等で行うものですが、こうした講義が展開されるようになると教室における無線LANの利用ニーズは大きくなります」(我妻氏)と、教室エリアへの無線LAN展開の背景を説明します。
従来のシステムでは1つのAPに端末20台程度の同時接続が限界だったというが、「40〜50人収容の一般的な教室で一斉に通信する環境でも、1台のAPで済むだろう」(我妻氏)と見込んでいます。
シングルチャネルと並ぶ、アクセス権を均等に割り当てるエアートラフィックコントロール、アクセスの時間を均等に提供するエアタイムフェアネス技術などの優位性が発揮されることになります。
導入・構築のポイント
(1)シングルチャネルによって、AP間の電波干渉によります通信環境の悪化を解消
(2)フル出力可能なAPによるS/N比向上で、Wi-Fiスポット等の外来波の影響を受けない通信環境の実現
(3)スマートフォンをはじめとするアクセス端末の多様化・増大に対応したキャンパス無線LAN環境の実現
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