巻頭言

「社会の変化と大学教育」

牛渡 淳(仙台白百合女子大学・学長)

 仙台白百合女子大学は、本年、創立50周年を迎えました。半世紀前、家政科のみの短期大学としてスタートし、現在では、人間学部の下に4学科(人間発達学科、心理福祉学科、健康栄養学科、グローバル・スタディーズ学科)を有する、東北地方で唯一の4年制カトリック大学となりました。学校法人白百合学園の設立母体は、17世紀末の1696年、フランスに誕生したシャルトル聖パウロ修道女会です。現在は、総本部をローマに移し、5大陸34カ国で教育・福祉活動を展開しています。日本においては、1878年、3人の修道女が函館で活動を始め、現在、二つの姉妹法人と合わせて、6都道府県(北海道/函館、岩手/盛岡、宮城/仙台、東京/九段、調布、関町、神奈川/箱根、藤沢、熊本/八代)に、幼稚園から大学院までの28校、2福祉施設を設置しています。仙台では、1893年に私立仙台女学校が設立されましたが、第二次大戦後の1948年、白百合学園と校名が改められ、幼、小、中、高までを備えた教育機関となりました。その後、1966年に短期大学が設置され、1996年に4年制大学となりました。
 本学は、人間をかけがえのない存在として愛するキリスト教の教えに基づき、時代のニーズに対応した教育活動を実践してきました。これからも、「命を大切にする」というカトリックの教えを基に、質の高い専門知識を持って社会に適応し、未来を創造できる女性を育成したいと考えています。2013年にスタートした現在の4学科による新学科体制は、人間学部という一学部の中に多彩な4学科を置き、「人間への理解と援助」という建学の精神を全学科共通のものと位置付けています。そのため、教養教育の中に、4年間一貫して宗教系の科目を必修にし、キリスト教の精神に基づいた人間観を考えるきっかけを提供しています。
 現在、わが国は、グローバル化、情報化、少子高齢化等、大きな社会変革に直面していますが、大学もこうした変化に積極的に対応していくことが不可欠です。グローバル社会では、人や情報が、国家・地域の枠を超え、地球規模で結びつき、教育のあり方や人の生き方も多様化していきます。単に英語ができるだけではなく、他国や社会をどう考えるかという価値観や視点が重要です。2013年に本学に新設したグローバル・スタディーズ学科では、英語学習に重点を置いたコース、東アジアの言語と文化を学ぶコース、平和な共生社会を築くために現代の様々な問題を探究するコースを設けて学識を深めています。そして、可能な限り留学することを進めています。学生には、すべての人を平等に愛し、命を慈しみ、グローバル社会で異なる価値観の人たちと共存して平和な社会を作ることに貢献してほしいと願っています。情報化に関しても、大学の情報教育の重要性は論を待ちません。しかし、これについても、大学で身に付けた情報知識と技術をどのように使うのかという視点が大事です。現代の大きく発達したテクノロジーの文化と、人間としてのあり方や価値観を考える教養教育を両立させることが重要でしょう。
 そして、少子高齢化です。受験生の減少は、大学の経営に大きな影響を与えます。全体のパイが少なくなりつつある今、大学経営は、ますます厳しい状況になるでしょう。アメリカでも、1980年代に18歳人口が減少しましたが、その時に多くの大学が取った策は、社会人の獲得でした。ターゲットを成人に向けたのです。我が国においても、これからの大学の生き残りの大きな鍵は、「社会人」であろうと思います。「生涯学習(教育)」という言葉は、1960年代から世界的に広まりましたが、わが国の大学が真に「生涯学習機関」としてさらなる発展を遂げるためには、インターネット等の現代の情報通信技術の発達が大いに貢献するでしょう。その意味で、情報通信技術への対応が、大学の生き残りのための鍵になると言っても過言ではないでしょう。


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