特集 問題発見・解決思考の情報リテラシー教育の研究

栄養学系教育における
情情報リテラシー教育授業モデル案の例

本協会情報教育研究委員会分野別情報教育分科会委員

武藤 志真子(女子栄養大学名誉教授)

1.テーマ

 「あなたの提案する東京オリンピック・パラリンピックの食事提供へのロードマップ」の作成

2.授業概要

 情報通信技術を活用して現在の東京オリンピック・パラリンピックの食事提供に関する知識やデータを収集し、IOCの持続可能な社会の実現の方針、これを配慮した食材の調達コードや農作物の国際認証(グローバルGAP)についての理解を深め、調査結果をまとめます。
 この結果に基づいてオリンピック・パラリンピック大会における食の提供のシミュレーションを行い、日本の食文化や地域の魅力をふまえたおもてなしを提案します。また、この経験を通じて世界各国・地域別の食事の特徴を理解するとともに、シミュレーションを栄養学的仮説検証の手段として効果的に活用することを学びます。学修活動は数名でチームを構成して実施します。なお、対象は1年生を対象とした初年次教育、授業回数は90分授業3回を想定しています。

3.授業の到達目標

4.授業内容・学修活動と対応する到達目標

  授業内容・学修活動 到達
目標
東京オリンピック・パラリンピックの食事提供に関する背景を調査します。  
問題発見・解決の枠組みに基づいて、具体的な調査内容・調査方法を決定します。調査内容としては「国際認証」「食材調達の基本ルール」「ロンドン、リオにおける実例」「各省庁や機関の取り組み」などが一例として考えられます。調査結果の整理・体系化、行動計画の策定・調整などの協働作業を効率的に行うため、アウトラインプロセッサー(word利用程度)、グループウェア(大学によって異なる、場合によっては無料グループウェアを利用)などの情報通信技術を適宜活用します。 A2
信頼性、正確性、専門性に優れたデータベースの存在(国際認証等について)を認識し、それらの基本的な使用方法を理解するとともに、異なる情報源から得られたデータの照合によって調査結果の妥当性を保証します。 B1
  【事前学修】  
指定された食材調達コードの情報に目を通し、ロンドン大会、リオ大会について概略を把握しておきます。
【授業の流れ】
専門データベースの活用法、文献管理の手法等に関して解説します。
チーム分けをします。
チームごとに調査内容、調査方法、調査対象等を議論して作業を開始します。
【事後学修】
授業で行った調査を継続します。図書館、コンピュータ室を利用します。
東京大会で期間中提供すべき対象人数、食数および食材さらに料理人などのヒューマンウェアをシミュレーションします。  
グループ毎に下記の課題の中から1つを選んで取り組みます。 C2
調査データに基づき、表計算ソフトなどを活用して食材準備、食事提供のシミュレーションを行う。  
パワーポイントなどにより東京大会での選手村レストランマップの概要をデザインします。  
陸上領域のアスリートのための選択メニューを作成し、栄養量をシミュレーションします。(料理別の栄養量データベースはExcelで作成済みなので、追加・修正で可能です。)  
  【事前学修】  
食材準備・食事提供および選択メニューを作成する行う際に必要と考えられる手法や計算方法を整理します。
【授業の流れ】
事前に調べた計算方法の検討、妥当性を確認します。
選択メニューに関するシミュレーションを実施します。
【事後学修】
授業で行ったシミュレーション結果を整理します。
食材調達コードを踏まえて、自給率をあげる可能性や食材輸入について、将来の予測について理由を付して提案します。
 
チームごとに将来予測の結果を発表します。発表内容に関する議論を通じて検討結果を整理し、おもてなしにはどのような食材調達が可能か理由を付して提案します。 A3
  【事前学修】  
プレゼンテーションソフトを用いて発表資料を作成します。
【授業の流れ】
チーム毎に食材調達とおもてなしの提案をします。
質疑応答をします。
【事後学修】
発表と討論の結果を踏まえて、各自の東京大会にむけてのおもてなしを明確にします。

5.評価

 ①課題調査30点、②成果物(作成したレストランマップ、またはアスリートのための選択メニューなど)40点、③発表・討論30点の内訳として100点満点で採点し、合計点60点以上を合格とします。
 ①および③の採点はルーブリックに基づいて行い、①は問題発見力、情報収集・評価・活用能力およびチームワーク力を中心に、③はプレゼンテーション能力およびコミュニケーション能力を中心に評価します。


【目次へ戻る】 【バックナンバー 一覧へ戻る】