特集 問題発見・解決思考の情報リテラシー教育の研究

実習系(被服学)教育における
情報リテラシー教育授業モデル案の例
-繊維製品品質管理士養成教育-

本協会情報教育研究委員会分野別情報教育分科会委員

阿部 栄子(大妻女子大学家政学部教授)

1.授業概要

 繊維製品品質管理士(Textiles Evaluation Specialist,通称;TES)、衣料管理士(通称;テキスタイルアドバイザー=Textiles Advisor,略称;TA)は、消費者に供給される繊維製品の品質・性能の向上と繊維製品の消費者苦情の発生を未然に防止することを目的として設けられた資格です。この資格取得を目指している学生は、繊維製品に施される多様な加工、縫製、取り扱いの上で生じる問題点の対応について、情報通信技術の活用を通して最新のデータをトータルに収集することが重要となります。さらに、身近な繊維製品・アパレル製品の品質苦情発生事例とその処理方法について、具体的な事例を情報通信技術の有効活用を経て収集することにより、理解を深め、適切な問題点の対応が可能となります。
 学修活動は、数名で5〜8名のグループを構成して実施します。対象年次は資格取得のための学外施設実習を実施する3年生、授業回数は90分授業3回分を想定します。

2.授業の到達目標

3.授業内容・学修活動と対応する到達

  授業内容・学修活動 到達
目標
繊維製品の取り扱いの上で生じる問題点について最新のデータを収集します  
1) 問題発見・解決の枠組みに基づいて、具体的な調査内容・調査方法を決定する(調査は「関連業界メーカー、商社、卸・小売業、検査機関、クリーニング業、消費者センター等からの最新のデータを収集」「繊維製品に施される多様な加工、縫製、取り扱いの上で生じる問題点の理解」「品質苦情の原因究明と再発防止」等があります)。苦情事例調査結果の整理・体系化、消費者苦情の原因究明と再発防止策の提案等の協働作業を効率的に行うため、情報通信技術を適宜活用します。 A2
2)
信頼性・的確性、専門性に優れたデータベースの存在を認識し、それらの基本的な使用方法を理解するとともに異なる情報源から得られたデータの照合により調査結果の妥当性が保証できます。 B1
  【事前学修】  
策定された原因究明・再発防止策のための統計資料に目を通し、使用者を限定することなく概略が把握できます。
【授業の流れ】
専門データベースの活用法、文献管理の手法等に関する解説
グループ編成の決定、−グループごとに調査内容、調査方法、調査対象等を議論して作業開始
【事後学修】
授業で行った調査を継続します
繊維製品の品質苦情 ―消費苦情の原因究明・再発防止策―  
調査データに基づき、画像ソフトなど(学生の理解度や専門性に応じて自作プログラムも可)を活用して事例シミュレーションを実施。多様な事例が収集できることから、グループごとに対象を定めて対応予測を実施します。 C2
多様な事例シミュレーションについて、プレゼンテーション技術を身につけるとともに、統計的なグルーピング手法や専門知識を活用した再発防止策の考察(例;事前対策)も可能になります。  
  【事前学修】  
繊維製品に施される多様な加工、縫製、取り扱いの上で生じる問題点の対応について、情報通信技術の活用を通して最新のデータを収集し理解します。
【授業の流れ】
苦情処理の分類と予想される再発防止対策の提案、
事前に調べた苦情原因の究明と再発防止の妥当性の確認、
苦情発生の予測と再発防止に関するシミュレーションを実施
【事後学修】
授業で行ったシミュレーション結果を整理します。
品質苦情ごとの原因究明と、防止対策を提案します  
グループごとに、苦情の原因究明と再発防止対策の検討結果をプレゼンテーションする。発表内容に関する議論を通じて検討結果を整理し、どのような再発防止策が考えられるか理由を付して提案します。 A3
  【事前学修】  
プレゼンテーションソフトを用いて、発表資料を作成します。
【授業の流れ】
グループごとに品質苦情のグルーピング化
質疑応答
【事後学修】
発表と討論の結果を踏まえ,問題点ごとに品質苦情の原因究明
再発防止策を明確にプレゼンテーションします。

4.評価

 本科目は、①小テスト・事前課題30点、②期末テスト60点、③課題調査・プレゼンテーション10点の内訳で採点。合計60点以上を合格とします。
 上記3回分の課題に関する成果は、③の10点として評価します。
 ③の採点は、ルーブリックに基づいて行い、問題発見力、課題解決力・情報活用力・チームワーク力を中心に評価します。


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