事業活動報告No.3

平成29年度
ICT利用による教育改善研究発表会開催報告

 本発表会は、全国の国公立大学・短期大学教員を対象に、教育改善のためのICT利用によるFD活動の振興普及を促進・奨励し、その成果の公表を通じて大学教育の質的向上を図ることを目的としている。今年度は平成29年8月9日(水)に東京理科大学(森戸記念館)において開催した。一般参加者は140名(82大学、4短大、賛助会員2社)で、発表会は第1次選考も兼ねて40件の研究発表が行われた。当日の発表内容は以下の通りである。
 その後、第2次選考を9月23日(土)に実施し、11月27日(月)の本協会の第20回臨時総会冒頭に表彰式を行った(詳細は次号に掲載)。
 ※以下の発表者名は発表代表者のみ掲載。

Aグループ

A-1 環境制約対応型社会・産業形成を題材とした、創造性・主体性を育成する総合教育
実践女子大学 犬塚 潤一

 アクティブラーニング型授業の設計を想定して、①現代的課題の特質である複合構造への着目、②企業との連携による現実的課題の提示、 ③課題状況の構造的把握と協働作業におけるICT活用という3点を中心に授業の設計と運用を図り、9年間に及ぶ取り組みを通じて、企業からの賛同・協力の増加・発展があり、学生の主観的評価とあわせて教育成果が見られたと判断できる、との報告があった。

A-2 PBL型学習の有効性立証と実施手法
麗澤大学 成瀬 猛

 日本の大学生の基礎学力の低下、学習意欲の低下、主体性の欠如が問題視されて久しい。特に、入試難易度に於いて偏差値50前後以下の大学では専門知識を学習させる以前の問題があるとの認識は教員共通の悩でもある。現に学生を抱える教育者としてこの問題に如何に取り組むかが問われている中で、試みとして実施してきたPBLについて一定の有効性が立証できた、との報告があった。

A-4 地域社会との連携参加体験型授業を通じたアクテイブラーニング
京都産業大学 佐々木 利廣

 関西地域で、①ソーシャルビジネスを行っている企業やNPO、②中間支援組織である大阪NPOセンター、③複数の大学のソーシャル系ゼミ、の3者が協働することで、組織運営上の課題発見から課題解決に向けての提案に至る全過程に学生が主体的に参画する持続可能な仕組みと実践ノウハウの蓄積が可能となり、ICTを活用した成果物としての映像資料の編集と共有化などこれまで指摘されてきたアクテイブラーニングの限界を克服する可能性が探れた、との報告があった。

A-5 ICTを活用した学習による地域活性化の可能性:高校地歴科教科教育との連携を視座に
同志社女子大学 天野 太郎

 北海道富良野地域での、2005年から実施の地域連携型教育プログラムでは、観光や地域活性化、まちづくりについての現地フィールドワークで、学生側の主体性低下に繋がる受動的な学習・調査になる傾向がみられた。今回、主体性を向上させるため、地元高校の教育プログラムと連携し、さらに大学生の視点から地域社会に積極的にフィドバックするためICTのSNSなどを活用し発信力の向上を図った。結果、問題解決能力の向上と地域連携効果の向上を図れる実践教育がなされた、との報告があった。

A-6 解答やレポート作成過程の時間分析の研究
愛知淑徳大学 伊藤 春樹

 タブレットPCを利用した自由記述の解答を時間分析することによる教育改善に向けたシステム"Scritivo"を開発し、このシステムを利用して学生の回答過程を可視化し、「課題理解時間」「解答時間」と「見直し時間」の3つに分けた上で、所要時間を詳細に分析することによる教育改善の試みである。今回は、中学・高校の教科、特に数学と英語に限定して実験データを収集し、分析を試み、有効性を検証したとの報告があった。

A-8 勘定科目コード付与による簿記学習支援ソフトの開発−「ペンと算盤」の新展開−
白鴎大学 藤浪 英也

 表計算ソフト利用による簿記検定演習授業の改善報告である。学生の計算技能差のため手作業による試算表作成問題の解法と解説を授業時間内に収めることは難しい。そこで、試算表作表のためのワークシートを表計算ソフトで開発し、集計作業の効率化を図った。結果、試算表完成までの時間は改善し、事前事後学習も可能となった。アンケートから受講生の授業評価も高まったとの報告があった。

A-9 大人数授業時の学生自発型LIVE授業の試行と分析
愛知文教大学 小林 正樹

 ICTの活用と授業のLIVE化により学生の自発的参加を促した大人数授業の実践報告である。manabaによる双方向性確保、MOOK等のコンテンツ利用、授業参加を動機付ける工夫、そして、アナログ的な人間味溢れるアーティストとしての教員の位置付けにより、アクテブラーニングが困難な400人超の授業を音楽LIVEの如くLIVE化し、全体的に出席面の向上が認められたとの報告があった。

A-10 基礎的な授業技術習得のための示範授業ビデオの制作
椙山女学園大学 坂本 徳弥

 教職を志望する学生を対象として、その示範授業ビデオを作成し、それを用いた授業を実施した。この示範授業ビデオコンテンツは、電子黒板やタブレットを活用したICTを活用した授業方法について理解を深めるものである。この示範授業ビデオを用いた授業を受講した学生は、教育実習校での授業力について高い評価を得たとの報告があった。

A-11 情報通信技術(ICT)の積極的利用と改善〜理科の実験授業への最適化〜
神戸女子大学 稲垣 善茂

 小学校教員養成での理科実験授業に実験の概念や方法理解のためにICTを導入し、教育効果の向上を目指したものである。動画、プレゼンテーションツールの効果的利用およびWebテストの導入を行った授業の様子が報告された。授業アンケートに基づく評価は概ね肯定的であること、小テストの結果(平均点)が大きく向上したとの報告があった。

A-12 ピアノ演奏見える化ツールを活用した学生の振り返り記述と教員の指導内容の質的分析
立教女学院短期大学 田中 功一

 保育士・教員養成校におけるピアノ初学者を対象として、ピアノ学習を支援する「ピアノ演奏見える化ツール」の開発と教育実践に関する報告である。このツールの演奏分析に基づいて、学習者と教員が振り返りを行い、この結果をSCAT(Steps for Coding and Theorization)法に基づく質的分析を行った教育効果を考察した。この結果、初学者のピアノ学習が効果的に行われる可能性があることが報告された。

A-13 ICTを活用した大人数講義科目の双方向型TBL化
名城大学 柳沢 秀郎

 LMSと学生所有のスマホ等を利用した、100人超の講義型授業を双方向のアクティブラーニング化するシステム構築の試みである。具体的には、グループ分け、振り返り、オンラインクイズ、グループ毎の課題検討、講義、グループ毎のアクティビティ取り組みと成果共有を授業の流れとしている。学生からのコメントの分析からグループ学習と振り返り学習に教育効果が認められたとの報告があった。

Bグループ

B-1 成人看護学のActive Learning型授業から臨地実習の評価
城西国際大学 今井 栄子

 成人看護学の急性期、周手術期を対象とする臨床実習前のペーパーペイシェントを用いた授業にルーブリックにもとづいた自己評価を導入し、臨床実習に及ぼす効果を検討している。この試みによって学生の実習継続の意欲が向上したこと、およびルーブリックの妥当性を継続して検証する必要があるとの報告があった。

B-2 医学教育におけるLMSを用いた予習復習テストの全講義への導入と試験成績の推移
帝京大学 山本 貴嗣

 効率的な学修を推進するため、平成27年度より医学部の講義形式の全授業にLMSを用いた予習・復習テストを導入した教育改善を実施している。実施前年度を含めた期末テスト成績の推移を検討し、経年的に平均点の上昇および未認定者数の減少など一定の成果が得られている旨の報告があった。

B-3 学修成果を可視化した成績開示と学修ポートフォリオを作成するマクロプログラムの開発
朝日大学 杉山 明子

 学生の理解度を把握して、授業を改善するため、歯学部口腔解剖学の授業において、授業の進捗状況に合わせた小テストをマークカードで実施し、試験情報を瞬時に可視化できるマクロプログラムを開発している。これにより、教員と学生が問題点を共有し、教員の教育改善や学生の学修意識が向上し、学力低下の防止にも効果があると考えられる旨の報告があった。

B-4 ICT活用による学問分野連携型協働学修の実践と教育改善効果の検証
北海道医療大学 二瓶 裕之

 電子シラバスとクラウド型ティーチングポートフォリオを開発・活用し、授業科目の連携状況と授業内容の可視化を図り、医療系の多分野を連携させた協働学習を全学的に実践している。この試みによって多様な協働学習の実践がカリキュラムの変更となく可能となることで、多角的視点に立った問題解決能力の育成を図っている旨の報告があった。

B-5 ショートムービーの制作を通して分析機器の原理・理論をわかりやすく表現する試み
神奈川工科大学 清水 秀信

 学生に分析機器の原理や理論をわかりやすく提示するショートムービーを作成させることで、学生の原理・理論の理解度および学修意欲を向上させる試みを行っている。学生の学修効果向上にこの試みがどの程度寄与するかは未検証ではあるものの、学生がこの試みを有意義と認識し、学修意欲の向上に結びついている旨の報告があった。

B-6 ICTを利用した実験技能習得困難者の早期発見と教育効果向上システム構築の試み
日本大学 岩淵 範之

 生命科学分野における諸実験の技能習得を支援するための映像教材の提示、および学生が習熟度を把握して改善に繋げることができる環境の提供をLMSの活用によって実現させている。この試みによって、学生の手技に関する理解が容易となることによる実験精度の向上が図られ、さらに、実験技能習得困難な学生の早期発見に繋がる可能性がある旨の報告があった。

B-7 特別支援教育のためのアプリ開発をテーマとしたPBL教育の取り組み
日本工業大学 山地 秀美

 特別支援教育に使用するアプリ開発をテーマとしたPBLの取り組みの報告である。肢体不自由、知的障害の重複障害を持つ児童生徒が通う特別支援学校と連携し、タブレットPCをベースにして画面に触れて使えるコミュニケーションアプリやゲーム・漢字練習、時計学習などの学習アプリを学生が開発した。3年間にわたる実践を通し、学生への強い学びの動機づけとなったことが報告された。

B-8 組み立て型概念マップによる授業支援システムを用いた双方向型授業のタスク化とその効果
近畿大学 山元 翔

 知識伝達型授業における組み立て型概念マップによる授業支援システムを用いた双方向型授業の提案に関する報告である。「コンピュータネットワーク演習」の授業において、その概念を理解させ、知識を伝達するため、組み立て型概念マップとその授業支援システムを用いることで、学生の授業内容の理解の促進や、議論の手法の理解による能動的な授業参加が確認されたことが報告された。

B-9 建築専門科目の反転授業におけるアクティブ・ラーニングの教育効果
摂南大学 柳沢 学

 建築系構造分野の講義形式の必修科目において学生の能動的学習を促すための取り組みの報告である。ICTを利用した事前学習教材を毎回提示する反転授業を行い、授業時間にはグループ学習を行い、興味の深化や学習成果の向上を実現した。その結果、中間・期末試験の得点の増加や単位取得比率の増大など教育改善効果が認められたことが報告された。

B-10 多様化する学生の学力やスキルに応じたWEBページ教材の設計と実装
九州産業大学 香川 治美

 多様化する学生の学力やスキルに応じたWEBページ教材の設計と実装の取り組みに関する報告である。「情報処理入門」の授業において、学力やスキルにばらつきの大きい学生に対し、教員が授業中にそのばらつきを確認しながら授業が実施できるWEBページ教材を用いた授業を実施した。このWEB教材を利用することで、情報処理プロセスについて考えたり、学修意欲の継続や向上が確認されたことが報告された。

B-11 自主的学修時間の確保に向けた数学基礎教育e-Learningの取り組み
山陽小野田市立山口東京理科大学 亀田 真澄

 工学系大学の数学基礎教育における、対面授業とe-Learning環境による融合型授業の取り組みに関する報告である。「微分積分学及び演習」と「工学数学及び演習」の授業において、少数題オンラインテストの反復受験を実施し、学生の主体的な学修活動と自主的学修時間の確保を実現した。オンラインテストの評価と定期試験の得点による評価には相関が有り、オンラインテストは有効な学習手段の一つであることが報告された。

B-12 学びの可視化と多様なアクティブラーニングを支援するe-シラバスの構築
金沢工業大学 山本 知仁

 従来のシラバスを拡張したe-シラバスと自己成長シートを全学的に導入した取り組みの報告である。学生のポータルサイト、シラバス、教材配信システム、ポートフォリオシステムを統合し、e-シラバスとして全学的に導入するとともに、学生の単位取得状況や出席状況などの学びの経緯を視覚的に確認できる自己成長シートを導入した。運用開始1年目のアンケート結果からe-シラバスの有効性が報告された。

B-13 学内ネットワークを活用した数理系科目の授業支援のための計算力向上講座の実施
金沢工業大学 西 誠

 数学に関する学力不足の理工系新入生の計算力を向上させるために、教員自らが作成したビデオ教材と学内のデジタルコンテンツ配信システムを利用して基礎クラスに配属された学生に対する演習講座を実施している。教員による採点とコメントを繰り返し行った結果、学科を越えた学生同士の学びあいが見られ、成績の上昇も確認された旨の報告があった。

B-14 ICTによるアクティブラーニング導入前後の学習成果分析
西九州大学 石松 秀

 アクティブラーニング環境を構築し、教員が作成した書き込み型の講義資料を学生にプリントさせて授業に持ち込ませて書き込ませるとともに、授業後の小テストの受験を義務付け、授業への集中度、学生同士の学びあい、知識の定着を試みている。本環境の構築前後の試験成績を2科目について比較したところ、いずれも有意に向上することが確認された旨の報告があった。

B-15 サービス接遇教育におけるWebカメラを用いた客観的自己評価の効果
産業能率大学 藤原 由美

 サービス接遇教育における身だしなみや接客態度などを顧客の目線で評価するために、Webカメラを用いて撮影された自身の行動を自らを含むグループで評価する方法を提案し、6つのロールプレイング課題に関して授業で扱っている。この取り組みによって、サービス接遇検定の合格率が極めて高くなり、面接試験対策として有効であることが判明した旨の報告があった。

Cグループ

C-1 ICT基礎への関心を呼び覚ますための授業方法の改善
戸板女子短期大学 西岡 健自

 コンピュータにあまり興味がない学生に対して、反転授業を含むアクティブラーニングを行い、情報系の知識への関心を呼び覚ますことによって成績の向上を図っている。その結果、知識定着を示す期末試験の平均点が10%強改善された。また、授業態度も私語や居眠りが減少し、反転授業の実施方法について学生から提言があるなどの意欲向上が見られた旨の報告があった。

C-2 eラーニングを活用した授業システムの構築と運用
京都女子大学 宮下 健輔

 予習復習を具体的にどのように行えばよいかわからない学生に対して、予習・授業・復習の流れを具体的に指示して定着させるための授業システムを構築・運用している。対象科目は数学で、予習は授業収録動画と電子ブックの閲覧、授業は問題演習と解説、復習は応用問題の答案をLMSで提出である。その結果、受講生の理解度および成績の向上が見られた旨の報告があった。

C-3 LMSを活用した主体的な学修を促進する授業の提案と実践
日本大学 登川 幸生

 学修意欲向上を目標として、LMSによる事前学習の記録、授業中の確認テスト、授業後の振り返りを行うリアクションペーパーを1学習サイクルとした授業を設計し実施している。LMSの基本機能のみを利用しているので、多くの授業で利用できる汎用的な授業方法である。プレテスト・ポストテストの結果と事前学習記録の記入回数から学修効果を確認できた旨の報告があった。

C-4 こと創り教育におけるサイバーフィジカルな教材の活用とその効果の検討
東京工科大学 中村 太戯留

 サイバーフィジカルなデザインにおいて、創造的思考にたどり着く前に挫折する学生が多い。創造的思考に素早く到達できるようにするため、フィジカルなタグと、それをサイバー世界の情報に結びつけるソフトから構成される支援教材を導入している。その結果、授業開始から6週間で約3割の受講生が制作した作品を対外発表することができ、大きな効果が見られた旨の報告があった。

C-5 工業大学での初年次プログラミング科目におけるTA/SAの教育力向上の取組み
日本工業大学 大橋 裕太郎

 TA/SAは学期ごとに入れ替わるため、教育力向上が課題である。初年次プログラム科目においてTA/SAが蓄積した知識を調査・分析し、教員が優良と判断したものを抽出して、ガイドブックと自己評価のためのルーブリックを作成した。これを次年度に運用したところ、TA/SA未経験者だけでなく経験者にとっても有益であることがわかった旨の報告があった。

C-6 地域貢献をテーマとした文理協働PBLの試み
日本工業大学 松田  洋

 大学への社会的要請として、地域社会の課題解決や活性化に貢献することが求められている。埼玉県宮代町に対する地域貢献をテーマとし、情報工学科と他大学の国際経営学部観光ビジネスコースの学生による協働PBLを試みた。観光マップの作成プロジェクトを行った結果、達成感やコミュニケーション能力の獲得などの点で効果が得られた旨の報告があった。

C-7 TEDを素材としたアクティブ・ラーニングでGlobal Issuesを学ばせる
創価大学 前田 幸男

 スーパーグローバル大学創生支援の採択を受けて、グローバル・イングリッシュへの理解を深める教育を法学部専門教育科目として立ち上げている。TEDを題材に事前視聴による反転学習授業を行い、留学生や帰国子女と日本人が同時に受講し、グループディスカッションなどを通じて、コンテンツを楽しみながらクリエーティブ・シンキングなどの力を養成している。学修時間の増加などの教育効果は見られるが、客観的に評価方法に関しては今後の課題である旨の報告があった。

C-8 留学前英語力強化のためのICTを使った協調。協働学習の実践
同志社女子大学 飯田 毅

 学科全員の学生を留学させる留学前英語プログラムにおいて、Google DriveやSuper英語のICT機器を担当教員や学生が相互に利用して、留学前の英語力向上を目指している。教育方法として、アウトソーシングを用いず、専任教員の協働により運営されている。英語圏の大学28校に留学させて、留学期間中に正規科目の単位を修得させるという目標を掲げて実績をあげている。しかし、TOEFL ITPの成績は向上しているがTOEFL iBTの成績向上につながっていないという課題も抱えている旨の報告があった。

C-9 ICT機器を利用して毎回定めた目標を達成するためのグループ学習を行う授業
福山大学 山之上 卓

 情報工学科の専門英語授業において、小型コンピュータであるRaspberry Piを用いてグループ学習による実習を伴う英語の授業を行っている。工学部の学生は英語が苦手な場合も多いが、最新の技術や理論を修得するために英語で記載されたマニュアルや論文を読む必要があり、CMSを使ってほぼ毎回小テストを実施して効果をあげている。CMSの多肢選択問題では事前に正解を登録しておくことにより自動的に採点され、学生が瞬時に採点等を把握できるように工夫され学力向上につなげている旨の報告があった。

C-10 学習者相互評価モバイルアプリによるカルーセル。プレゼンテーションの促進
京都産業大学 ロブ トーマス

 学生がピアのプレゼンテーションを聞いてリアルタイムで評価できるモバイル・アプリケーションであるPeerEvalを開発し、教育に活用している実践事例の紹介である。今回は「カルーセル・プレゼンテーション」と呼ばれる方法で複数回のプレゼンテーションを行わせて多くの話す機会を提供させている。今回開発したアプリケーションは、その評価結果をオンラインで即時集計し、閲覧・ダウンロードできるものであるため、手作業による煩雑な作業を削減でき、教育効果を高めている。最終的な評価基準や学生の評価に対する信頼性の確保などが今後の課題となっている旨の報告があった。

C-12 3Dプリンタを用いて歴史的建造物を印刷する3D-CAD教育の実践
新潟経営大学 齊藤 光俊

 日頃は直接ものづくりと関わることが少ない経営情報学部の学生に対し、地元の歴史的建造物を3次元CADでモデル化し、それをもとに3Dプリンタで実際に触ることのできる模型を作成させるという演習を実施している。自分たちの身近な歴史的建造物を3Dプリンタでカタチにすることが、完成時の充実感を深め、学生のものづくりへの理解や学習意欲の維持につながる旨の報告があった。

C-13 クリッカーを利用したアクティブラーニングの教育効果
早稲田大学 池島(片岡)宏子

 理工学部において新入生全員が必修の「生命科学系基礎実験」のなかでクリッカーを用いたアクティブラーニングを試みた。個人を特定せずに返答ができるクリッカーは、学生が躊躇せずに意志を表明するのに最適で、授業への参加度合いが高まった。クリッカーの授業への導入は学生にとってアクティブラーニングへの登竜門となったばかりでなく、教員自身の講義内容の見直しにも非常に役立つとの報告があった。

C-14 LMS上の自動採点システム構築による自由記述文評価の取り組み事例
名古屋外国語大学 山本 恵

 作文スキルに関する部分を自動採点し、内容に関する部分は手動で採点するハイブリッド型レポート自動採点システムを構築し情報処理基礎科目の授業で試用した。その結果作文スキルに関する評価の厳正化を保ち、教員の時間的な負担軽減が実現できた。今後は授業所感の自由記述文など、随時記述する内容を採点し分析することで授業改善に結びつけたいとの報告があった。

C-15 eポートフォリオなど活用した文献評価に関する考察
神戸女子大学 貝増 匡俊

 提示された文献リストから選択しプレゼンテーションを行うビブリオバトル形式、および質問表に回答する形式による文献評価授業を実施した。ビブリオバトル形式では、比較的発表者の解説を良く聞いていることが伺えた。また、質問表形式ではLMSを利用して実施したが、22名中10名の受講生がLMSを活用した当該型式の文献評価は効率的であると評価したとの報告があった。


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