特集 データサイエンス教育を知る

同志社大学文化情報学部における
データサイエンス教育

宿久 洋(同志社大学 文化情報学部教授)

1.はじめに

 同志社大学文化情報学部は2005年4月に同志社大学8番目の学部として新設されました。設立当初よりデータサイエンスを教育の柱として位置付けており、「興味を学びに。好奇心を学びに。データサイエンスで文化を読み解く」というテーマを掲げ文理融合の教育研究に取り組んでいます。2017年度より、コース制を実施し、文化資源学コース、言語データ科学コース、行動データ科学コース、データ科学基盤コースを配置し、より専門性の高い学部教育を実施しています。ここでは、本学部における特徴的な教育についてデータサイエンスを中心に紹介させていただきます。学部の詳細につきましては、http://www.cis.doshisha.ac.jpをご参照ください。

2.体系的・網羅的なカリキュラム

 本学部のカリキュラムの大きな特徴の一つは、体系的かつ網羅的なデータサイエンス科目群と多様な文化クラスター科目群の設置です。データサイエンスの観点で各科目の関係をまとめたものが図1です。データサイエンスのコアとなるデータ分析科目を中心に、数学的な基礎を習得する基礎数理科目、アルゴリズムの理解、実践的なプログラミング能力を身に付ける情報・コンピュータ科学が関連科目として配置されております。
 本学部のカリキュラムの特徴は他の理系学部とは異なり、専門科目として、多くの人文社会系の科目を配置していることです。このことにより、データサイエンスの方法論のみならず、その分析対象である社会現象についての感性を養い、課題発見・解決のセンスを身につけます。

図1 データサイエンス関連科目

3.初年次教育・プロジェクト型科目

 本学部では、1年次から3年次までPBL科目を必修科目として配置しています。1・2年次においては、各分野の典型的な課題についてデータ分析を行うグループワークを実施します。3年次においては、複数の教員がテーマごとにグループを作り、学生は各グループに所属し、それぞれのテーマに合わせて、自由度の高い課題設定・データ分析を用いた問題解決の演習を行います。つまり、豊富に開講されている講義演習において、基盤的な知識技能を習得し、並行して取り組むPBL型講義において、実践的な分析の能力、プレゼンテーション能力、レポーティング能力を身につけます。3年次からは、各研究室に配属され、通常の講義演習に加えて、研究室独自の活動に取り組みます。例えば、外部のデータ解析コンペティションへの参加や企業との共同研究に参加などです。並行して、卒業研究に向けた準備も開始し、学生個々人のテーマに合わせた研究活動を行います。

4.奨励学生制度

 本学部の特徴的な取り組みの一つに学部・奨励学生制度があります。これは成績などの諸条件を満たした学生が申請し、認められれば、4年次生の段階で大学院文化情報学研究科の講義を受講することができるというものです。取得した単位は、同研究科に進学した際には修了単位として認められます。また、この段階から大学院生と同等の研究環境が提供されます。進学後、さらに大学院・奨励学生として認められれば、最短1年で博士課程(前期課程)を修了することができます。

5.社会連携と国際交流

 本学部では、学部レベルで国内外の関連機関と学術研究教育に関する協定を締結しています。具体的には、高麗大学(政治経済学院)、北京大学(数学科学院)、中国人民大学(統計学院)、カールスルーエ工科大(経済ビジネス工学)、中央研究院(統計科学研究所)、大阪大学(大学院基礎工学研究科)、統計数理研究所などです。また、企業連携としては、Yahoo JAPAN社寄付講座の設置(2014年度〜2016年度)、SAS JAPAN社寄付講座設置(2018年度)、SAS社との共同認定プログラム「データサイエンス」設置(2017年度〜)などの取り組みを行っています。

6.これまでの成果と今後の展開

 設立以来14年目を迎える本学部は2,500人あまりの卒業生を輩出し、その多くはデータサイエンスの基礎的素養を備えた総合職、データサイエンスの専門知識を備えた専門職として活躍しております。初等中等教育における統計重視の流れやデータサイエンス人材に対する社会的要請の高まりを受け、本学部におけるデータサイエンス教育はさらなる高度化実質化が必要であると考えています。今後はこれまで以上に大学間のあるいは産業界との連携を深め、単に知識技能をもつだけではなく、人間活動に対する感性を備えたデータサイエンス人材を育成していきたいと考えています。


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