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学生のPC必携化に向けた基盤構築を念頭に置きながら、キャンパス統廃合に対してサーバコンソリゼーションに向けた環境整備が急務に。ネットワークの再整備を進めながらデータセンターへの基盤統合を計画、柔軟かつ機動的なインフラ活用が可能な環境整備を目指す。
データセンターへのインフラ集約によって発生するコストを最小化するためにも、機器の集約率が高く省電力な基盤を検討し、ハイパーコンバージドインフラストラクチャーを選定。将来導入が検討されているシンクライアント環境への対応も視野に、拡張性の高い基盤を希望。
省スペースで省電力を実現するハイパーコンバージドインフラストラクチャーを利用することで、データセンター運用におけるコストの最適化を図る。オールSSDによってIOPS的にも十分な環境を整備、重複排除効果の高さとバンドルされたバックアップ環境によって日々の効率的な運用も実現。
大手前大学では、ICT教育の充実を図るべく、学生にPCを持たせる必携化を検討しており、その実現に向けたネットワーク環境やITの基盤となるプラットフォームに関する議論を積極的に行ってきた。「実は1996年にインターネットを敷設して以来、情報環境の整備を行ってきましたが、新たに通信大学を開設するにあたって学生に向けてeラーニングを使った教育環境を2008年に整備し、以降運用を続けてきました」と語るのは、情報メディアセンター課長西尾信大氏だ。このeラーニングの基盤は、実はすでにパブリッククラウドの環境で運用されており、教育環境のクラウド化については早い段階から進めてきた経緯がある。
そこで、PCの必携化に向けた環境整備の一環として、これまで伊丹キャンパスからアクセスしてきた学術情報ネットワーク“SINET”に対して、各キャンパスから直接接続するネットワーク刷新を計画。同時に、キャンパスごとに設置されていたインフラの集約化を図り、IT基盤へのフレキシブルなアクセスが可能なクラウド化への議論が進められてきた。
そのような時、一部のキャンパスを統合することが急遽決定され、サーバコンソリゼーションをはじめとした基盤の集約化についてのプロジェクトが一層加速することになったのだ。「本学におけるサーバ室の中心が、実は閉鎖予定のいたみ稲野キャンパスにあります。それらの環境をどこかに再構築する必要に迫られることになり、データセンターへの移設が具体的に検討されることになったのです」と大手前大学現代社会学部教授にして情報メディアセンター長の森本雅博氏は当時を振り返る。
同センターにて運用するアプリケーションの多くは、実はすでに仮想環境で稼働している状況にあり、当初はeラーニング環境で実績のあるパブリッククラウド上に展開する案も検討されたという。しかし、個人情報を扱う事務系システムのクラウド化については慎重な意見もあり、今回はデータセンターに全ての基盤を集約することに意見がまとまることになる。「事務系になると、学籍番号だけでなく、住所などの個人情報も同じDB内で管理しているケースも。すでにIaaS上で利用しているeラーニングと同じステップというわけにはいかなかったのです」と同センター課長代理谷本和也氏は指摘する。また、従量課金で変動するコストの面でも難しさがあった。「本学が用意しているLMSをポータルにシングルサインオンとして連携できるSaaSのようなサービスであればパブリッククラウドも検討できます。ただし、従量課金のIaaSを利用する際には、事前に予算化したものがオーバーしてしまうこともあり、十分検討する必要があるのです」と指摘する。
そこで、データセンターでの運用を前提に新たな基盤を検討するなかで注目したのが、拡張性がありハードウェアとしての集約率も高いハイパーコンバージドインフラストラクチャ(以下、HCI)だった。「データセンターで基盤を整備する際には、当然ラックの数でコストが変わってくるため、可能な限り集約率の高いものが求められました。また、3キャンパスの基盤集約を前提に考えると、基盤の柔軟性についてもしっかり担保できるものが最適だと考えたのです」と谷本氏。実際の入札要件にはHCIが前提ではなかったものの、応札した企業の多くがHCIを提案だったという。
集約率の高いHCIという部分はもちろんだが、大きな決め手となったのはフルSSDによる提案だった。「業務基盤としてのシステムを集約していく際には、レスポンスの確保も当然必要になってきます。実はPC教室などではディスクレスの環境が展開されており、いずれはディスクイメージをサーバ内に用意することも考えると、ネットワークはもちろんサーバ環境におけるレスポンスについても考慮する必要があったのです」と谷本氏。
なお、今回提案からインテグレーション、運用管理まで含めて手掛けているのが西日本電信電話株式会社であり、HPEのSimpliVityを最終的に提案したのも同社だ。その理由について、ビジネス営業本部 アドバンストソリューション営業部文教担当営業G主査中塚翁夫氏は、「長年HPEが培ってきたハードウェアによるクラスタ構成については信頼性に足るものですし、高可用性を担保する意味でも重要な構成です。またVMware vCenterのプラグインでHCIの管理が可能となっており、VMware HAやVMware vMotionなどへの対応も考えると、運用管理性の高さは我々にとって大きなメリットになります」と言及する。
他にも、個別にバックアップ環境を整備する必要があった従来システムに比べて、HPE SimpliVityではデータ保護のための仕組みが最初からバンドルされている点も提案した大きなポイントだった。「データ保護の仕組みを個別に構築せずに済むだけでなく、重複排除率が高く、データ取得の頻度も含めて高品質なバックアップ運用が可能になります。運用視点で見ても顧客メリットが大きい」と中塚氏。
現在は、2ノードのHPE SimpliVity上で教育基盤として利用してきたファイルサーバやAD、ログ管理やネットワーク監視、メールのバックアップといったワークロードが動いており、研究用に必要なVMの払い出しやテスト環境も含めて35を超えるVMが稼働している。事務系システムやPC教室に展開するディスクレスPCのイメージファイルなどは現状対象外だが、将来的にはHPE SimpliVityで動かすことが想定されている。なお、Microsoftとの包括契約によってMicrosoft Azureが利用できることから、LDAPの環境についてはパブリッククラウド上に展開している。
データ保護については、従来は用途やアプリケーションごとに詳細にスケジューリングを行い、バックアップ頻度も変えていたが、今はファイルサーバに十分な容量がある上にHPE SimpliVityが持つ重複排除の効果もあってか、一気に取得したうえで世代管理も含めたバックアップ運用が可能になっている。「今後は全ての基幹システムが稼働していくことを考えるとバックアップは一層重要になります。以前に比べてデータ保護に関するサービスレベルを上げていますが、十分対応可能な環境になっています」と森本氏は評価する。
ブレードサーバーを中心とした3Tierの環境の運用からHPE SimpliVityに切り替えたことで、消費電力は4分の1ほど、スペース効率もラック3本分をフルに使っていたものから今は1本でも余裕がある状況でおそらく5分の1ほどまで高めることに成功している。「新たに発生するデータセンターに関するコストを、削減した電力コストで補うといったイメージで運用できています」と谷本氏。
HPEについては、メーカーとしてのサポート力を高く評価しているという。「実は本学は長年にわたってHPEを利用しており、充実したサポートを高く評価しています。数値に現れない部分ではありますが、HPEであれば大丈夫だという安心感があり、我々としても大切なパートナーだと認識しています」と森本氏は力説する。日々の運用管理を行っている視点では「普段から慣れ親しんでいるVMware vCenterで運用できますし、オールSSDにしたことでデプロイがとっても早くなったのは、構築した我々にはとてもありがたい。また仮想ストレージや仮想スイッチなど複雑な面がHCIにはありますが、HPEのエンジニアにトータルでお願いしたことで、ほぼノントラブルでプロジェクトを進めることができました」と中塚氏は評価する。
実は来年度以降に新設される看護学部において、PCを必携化する議論が進められており、他の学部についても同様の試みが検討されている状況にある。今後は、そのための基盤としてもSimpliVityを活かしていきたいという。「オールSSDだからこそIOPS的にも非常に有効ですし、重複した情報が多いクライアントのディスクイメージだからこそ、効率的な重複排除が可能になります。今後もさらに期待できる仕組みだと考えています」と谷本氏。
また西尾氏は、変化の激しいIT環境の中で、ある程度自由な形で対応していける基盤としてHPE SimpliVityを積極的に活用していきたいという。「学内における意思決定のプロセスに対してフットワークよく動くためにも、今回整備した基盤が助けになるようなものになることを期待しています」と西尾氏に語っていただいた。
森本 雅博 氏
大手前大学
現代社会学部 教授
情報メディアセンター長西尾 信大 氏
大手前大学
情報メディアセンター 課長谷本 和也 氏
大手前大学
情報メディアセンター
課長代理中塚 翁夫 氏
西日本電信電話株式会社
ビジネス営業本部
アドバンストソリューション営業部
文教担当 営業G 主査
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