特集 SDGs(持続可能な開発目標)と学生主体の教育・学修の取組み

東京工科大学の「サステイナブル工学」教育

芝池 成人(東京工科大学 工学部教授)

1.はじめに

 本学は、開学以来「実学主義」を教育の柱としてきました。2015年度に創設された新しい工学部では、「サステイナブル社会」の実現を通してSDGsの達成に貢献できる人材を育成するため、学科共通の教育科目として「サステイナブル工学」を設定しています。本稿では、その全体像と、PBLを活用した独自の実学教育である「サステイナブル工学プロジェクト演習」の実施状況について報告します。

2.「サステイナブル工学」教育の構造

 工学部には機械工学科、電気電子工学科、応用化学科が設置されていますが、「サステイナブル工学」を基盤技術に位置づけ、三学科共通の授業を段階的かつ重層的にカリキュラムに組み込んでいます。また、各学科では、専門領域に特化して、SDGs関連の材料・デバイス、設計・製造、システム等に関する授業を実施しています。
 共通授業の第一段階は講義主体の「サステイナブル工学基礎」であり、2年次前期に三学科合同(約280名)で開講しています。「サステイナブル社会」の多様な論点(環境、生活、経済)における課題や対策技術の現状と動向、社会問題を定量評価する手法等を学ぶとともに、都度グループ討議を行い、問題の理解度を確かめ合いつつ解決策を検討して知識の整理と高度化を図ります。また、施設見学等を通して、問題意識の醸成や将来の学修に対するモチベーションを高めています。
 第二段階の「サステイナブル工学実習」では、「ライフサイクル思考」に基づいた技術開発を行うための科学的アプローチを開始します。独自の就業体験プログラムと並行して実施される学科別の講義実習として、製品等の環境影響を分析する「ライフサイクルアセスメント(以下、LCA)」に全員が取組みます。こうして、サステイナブルな生産と消費にとって不可欠な評価技術となるLCAの理論と実践的解析法を習得しています。

3.SDGsを見据えた実学教育

 共通授業の最終段階がPBL形式の「サステイナブル工学プロジェクト演習」です。再び三学科合同で3年次後期に開講しています。具体的には、各学科の学生が混在する少人数のチームで、身近な製品を対象にLCAによる定量的な分析を行った後、その環境影響だけでなく機能的価値や経済的価値を考慮した統合化指標を作成して、対象物のサステイナビリティを評価します。さらには、その向上を目指した改善策を立案し、チームの成果を受講生全員の前で発表します(写真)。

写真 評価結果のプレゼンテーション風景

 これまでに、照明灯の温室効果ガス削減や飲料缶の機能的価値の向上といった興味深い検討事例が数多く報告されています。ニーズを意識した総合的な分析評価や、技術と社会経済との関連に配慮した改善策を検討することにより、着実な視野の広がりと協力する姿勢を涵養しています。

4.まとめ

 以上、本学の「サステイナブル工学」教育について簡単に紹介しました。「サステイナブル社会」に纏わる課題や対策技術、評価手法等を多角的に学び、LCA実習、専門分野の異なる学生によるグループワーク等を積み重ねてSDGsの達成に貢献できる人材を育成しており、今後も多彩で機動性に富む実学教育を積極的に展開する所存です。


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