特集 SDGs(持続可能な開発目標)と学生主体の教育・学修の取組み

関西大学商学部での
カードゲームを活用したSDGs教育の試み

長谷川 伸(関西大学 商学部准教授)

1.はじめに

 SDGsは、政府や企業だけではなく、個人レベルでの当事者としての行動も必要とされていますが、それは困難です。なぜなら、SDGsの全体像をつかむこと自体がほとんどの人びとにとって難しいことですし、「私一人では何もできない」という無力感とあきらめが人びとの間に根強くあるからです。学生も例外ではありません。
 そうした問題意識から私は今、SDGsを達成するために現在から2030年までの道のりを体験し、「世界はつながっている」、「私が起点であること」を実感してもらうことを教育目的として、カードゲーム「2030SDGs」体験会を授業などで開催しています。このカードゲームは、一般社団法人イマココラボと株式会社プロジェクトデザインとが共同で開発したものです。これまでにおよそ5万人が参加し、今年4月には国連の日本代表部でも開催されています。

2.本学での取組み

 私は、このカードゲーム体験会を昨年5月の私が担当する授業「基礎演習」(1年次20名の初年次教育科目)を皮切りに、今年2月ブータン王国で「ブータンにおける持続的コミュニティ創生国際共修プログラム(本学とRoyal Thimpu College(RTC)の学生計8名)、今年度は私が担当するゼミや「基礎演習」合同クラスなどで実施してきています。もちろん「このカードゲームはSDGsを実践するための入口だから自分の周囲でも流行らせたい」との思いから、それこそ「私が起点」と考えて個人で始めたものです。そのため、まだ私が担当する授業が中心ですが、徐々に同僚の教員のクラスでの実践も広がりつつあります。
 ここで、カードゲームに参加した「基礎演習」の学生たちの典型的な感想を紹介しましょう。

 それぞれの学生の成熟・発達段階に応じて受け止めは異なりますが、このカードゲーム体験会に対する学生の評価は比較的高く、おおむね「世界はつながっている」、「私も起点」につながる気づきを生み出していることがわかるかと思います。これはカードゲームによる教育の成果と言えます。

3.まとめ

 このカードゲーム「2030SDGs」体験会の実践を通じて見えてきたのは、参加者(学生)の無力感とあきらめを緩和して「世界はつながっている」「私も起点」との気づきをもたらし、参加者同士の信頼関係の醸成にもつながるということです。自己肯定感と自己効力感が高く、信頼関係を築きながら、自分の人生を自分の脚で歩んでいく学生・若者こそ、SDGsを成し遂げていく未来の希望です。そうした彼らに真正面から誠実に向き合い、あたたかく見守る責任と覚悟が大学とその教職員に問われています。
 なお、このカードゲームの概要については下記のウェプページを参照してください。

カードゲーム「2030SDGs」の紹介

https://imacocollabo.or.jp/games/2030sdgs/

写真 今年2月ブータン王国でのカードゲーム体験会

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