事業活動報告 No.2

平成30年度
分野連携アクティブ・ラーニング対話集会の結果報告

Ⅰ.開催の目的

 本協会で作成した教育改善モデル、教員の実践事例および第3期教育振興基本計画を踏まえて、アクティブ・ラーニングを実現するための様々な教育方法、学修環境を整理・研究する中で、ICTの活用を含めた効果的な取り組みの促進を目指します。

Ⅱ.開催のねらい

① 問題発見・解決力を高めるアクティブ・ラーニングの質向上を目指して、問題発見・解決力の向上を図るICTを活用した課題探求型授業の研究を行います。

② ネット上で学内外の意見を取り入れたオープンな教育改善の仕組みについて、実現の可能性を探求します。

③ 学修成果の質保証に向けたビデオ試問による外部評価モデルの仕組み、実現に向けた課題等について認識の共有を行います。

④ 多面的に考え、本質を見抜く能力を目指す授業モデルを研究するため、ICTを活用した分野横断的な授業のイノベーション実現に向けた課題・戦略について意見交換します。

分野連携グループの構成

Ⅲ.開催プログラム及び開催結果

1.経営学・経済学・会計学・心理学・数学グループ

開催日時

平成30年12月8日(土)14:00〜17:30

開催場所

法政大学(市ヶ谷キャンパス 58年館 857教室)参加者66名

話題提供

① 経済学分野

「教室外学修を誘導するスマートスピーカー活用の取り組みと教育的効果の測定」

中嶋 航一 氏(帝塚山大学経済経営学部教授)

② 会計学分野、経営学分野

「会計・経営分野の学修意欲を高めるためのビジネスシミュレーションゲームの可能性」

河ア 照行 氏(甲南大学名誉教授)

③ 数学分野

「ビッグデータからデータマイニングや数理モデルの可能性を考察する数学授業の改善提案」

山本 修一 氏(日本大学非常勤講師)

④ 経営・経済・会計・心理・数学等にまたがる分野

「経済活性化イノベーションを目指すICT活用による分野横断型の課題探求授業の提案」

岸田 賢次 氏(名古屋学院大学名誉教授)

意見交換の内容(特徴的な意見)

<問題発見・解決力を高める課題探求型授業におけるICT活用の取り組みと課題>

 これからの授業に答えが定まらない課題に取組む「課題探求型学修」が重要であることを認識した上で、チームは、同じ分野による学生のチームよりも、異なる分野の学生や地域社会を交えることの必要性が確認された。

<ICTを活用した知識の創造・実践力の向上を目指す分野横断型フォーラム授業の必要性と導入の課題>

 「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」を受けて、知識・技能の獲得に加え、実践知を組み入れた教育の推進を目指して、他大学の教員や産業界、地域社会と連携した教育のオープンイノベーションが課題となることについて、参加教員の大多数から賛同が得られた。

<ネット上で学内外の意見を取り入れたオープンな教育改善実現の可能性と課題>

 参加教員の9割がネット上にプラットフォームを設ける必要性を認識していることが確認された。

<ビデオ試問による外部評価モデルの仕組み、実現に向けた課題・対応策>

 考える力を評価するビデオ試問の外部評価モデルのニーズについて、参加教員の半数以上が必要性を認めつつも、3割程度から本協会が実施するなら参加を考えるとの結果が得られた。

経営学・経済学・会計学・心理学・数学グループ

2.社会福祉学・社会学・教育学・統計学・体育学グループ

開催日時

平成30年12月15日(土)14:00〜17:30

開催場所

早稲田大学(早稲田キャンパス3号館)参加者55名

話題提供

① 社会福祉学分野

「社会福祉の理論をICT活用により実践を通じて振り返る授業改善の取り組み」

森田 明美 氏(東洋大学社会学部教授)、
学生(東洋大学社会学部)

② 教育学分野

「対話型、問題発見・解決型教育の展開と支援体制」

石井 雄隆 氏(早稲田大学大学総合研究センター助手)

③ 統計学分野

「地域課題を題材にICTを活用して問題発見・解決策を提案する授業改善の取り組み」

今泉  忠 氏(多摩大学経営情報学部教授)、
小林  等 氏(二宮町ラビッツクラブ)

④ 体育学分野

「健康・スポーツ科学分野におけるICT活用授業の取り組みと課題」

大橋 二郎 氏(大東文化大学スポーツ・健康科学部教授)
内山 秀一 氏(東海大学体育学部教授)

意見交換の内容(特徴的な意見)

<問題発見・解決力を高める課題探求型授業におけるICT活用の取り組みと課題>

 学修支援システムに優れた課題提出物を共有ホルダーに掲載し、他の学生の課題堤出物と比較することにより、学びを振り返させていることが報告された。また、これからの授業には、答えが定まらない課題に取組む課題探求型学修が重要であることを認識した上で、チームは同じ分野の学生よりも、異なる分野の学生、地域社会人を交える必要性が確認された。

<ICTを活用した知識の創造・実践力の向上を目指す分野横断型フォーラム授業の必要性と導入の課題>

 「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」を受けて、知識・技能の獲得に加え、実践知を組み入れた教育の推進を目指し、他大学の教員や産業界、地域社会と連携した教育のオープンイノベーションが課題となることについて、参加教員の7割程度から賛同が得られた。

<ネット上で学内外の意見を取り入れたオープンな教育改善実現の可能性と課題>

 教育改善の意見交流をネットワーク上のプラットフォームで行う必要性について、アンケート結果から参加教員の6割強で認識していることが確認された。意見交流の枠組みとしては、自大学や複数大学より、大学と地域社会との連携が4割近くあり、教員以外に特に地域団体、企業、学生、有識者の参加が確認された。

<ビデオ試問による外部評価モデルの仕組み、実現に向けた課題・対応策>

 考える力を評価するビデオ試問の外部評価モデルのアンケート結果から、参加教員の半数以上が必要性を認めていることが確認された。

社会福祉学・社会学・教育学・統計学・体育学グループ

3.被服学・美術デザイングループ

開催日時

平成30年12月16日(日)13:30〜17:00

開催場所

大妻女子大学(千代田キャンパス)参加者33名

話題提供

① 被服学分野

「被服教育におけるICT活用の効果と評価について」

田中 早苗 氏(東京家政大学服飾美術学科准教授)

② 美術・デザイン分野

「学生作品の評価と振り返りを迅速化するICT活用の試みと提案」

宮本 真帆 氏(東京家政大学造形表現学科准教授)

③ 被服学分野 美術・デザイン分野

「海外共有サイトを活用したインテリアプロダクト分野の作品制作実践力向上に向けた授業改善の試み」

山下  健 氏(椙山女学園大学生活科学部助教)

意見交換の内容(特徴的な意見)

<作品の独創性を高め社会に発信する力を向上させるICT活用による授業改善の研究>

 スマホの授業支援Webシステムを用いて、匿名性を保って教員と学生とのコミュニケーションを図ることで、学生の多様な捉え方を確認できるとともに、学生同士で授業の確認や他の学生との違いを確認できる点で効果があることが確認された。

<ネット上で学内外の意見を取り入れたオープンな教育改善の可能性と課題>

 作品を世界に公開し外部評価を受けることに学生の発信力を高めるメリットがあるが、否定的な意見などのリスクを伴うこともあり、オープンにする時は範囲を決めた取組みから始めてはどうかとの意見があり、反対はなかった。

<ICTを活用した外部評価モデルの仕組み、実現に向けた課題・対応策>

 評価の基準をいかに明確化するかが重要で、今後検討する必要性が認識された。

被服学・美術デザイン学の分野連携グループ

4.英語教育・法律学・政治学・国際関係学・コミュニケーション関係学グループ

開催日時

平成30年12月22日(土)14:00〜17:30

開催場所

日本大学通信教育部(市ヶ谷キャンパス)参加者51名

話題提供

① 英語教育分野

「英語をツールに多面的な思考力の向上を目指したICT活用の授業提案」

吉田 研作 氏(上智大学特別招聘教授)

② 法律学分野

「ICTを活用した分野横断法政策フォーラム型授業」の実践と改善ICTを活用した分野横断フォーラム型授業の提案」

中村 壽宏 氏(神奈川大学大学院法務研究科教授)

③ 政治学分野

「事前・事後学修にLMSを用いて考えさせる教養教育の試み」

清滝 仁志 氏(駒澤大学法学部教授)

④ 国際関係学分野

「ICTを活用した国際関係学/平和学における創造的学修の試み」〜日中韓の平和のためにプロジェクトを企画しよう〜

佐渡友 哲 氏(日本大学法学部教授)

意見交換の内容(特徴的な意見)

<問題発見・解決力を高める課題探求型授業におけるICT活用の取り組みと課題>

 答えが定まらない課題に取り組む「課題探求型学修」が重要であることを認識した上で、チームの編成は同じ分野による学生のチームよりも、異なる分野の学生や地域社会を交えることの必要性が半数以上で確認された。

<ICTを活用した知識の創造・実践力の向上を目指す分野横断型フォーラム授業の必要性と導入の課題>

 考える力を育成するには学内教員の授業だけではなく、学内外の多分野と連携した分野横断型授業の必要性が大多数で確認された。

<ネット上で学内外の意見を取り入れたオープンな教育改善実現の可能性と課題>

 プラットフォームの枠組みを大学単独よりは複数大学や地域社会との連携を重視している。大学単独と複数大学のプラットフォームでは教員が中心、大学と地域社会では教員以外に職員・学生・企業、有識者の参加を必要としていることが確認された。

<ビデオ試問による外部評価モデルの仕組み、実現に向けた課題・対応策>

 分野別の外部評価と分野を横断した外部評価の説明があり、評価が目的ではなく、卒業までにビデオ試問を通じて論理の展開力、批判的思考力などの振り返りを学生に求める訓練として活用することの必要性を尋ねたところ、6割程度から賛同が得られた。

英語教育・法律学・政治学・国際関係学・コミュニケーション関係学のグループ

5.理工学グループ(物理学・化学・機械工学・建築学・経営工学・電気通信工学・土木工学・生物学)グループ

開催日時

平成30年12月26日(水)13:30〜17:00

開催場所

法政大学(市ヶ谷田町校舎)参加者49名

話題提供

① 「異分野融合によるビジネスシーンを模したプロジェクト教育の紹介」

松本 重男 氏(金沢工業大学基礎実技教育課程主任、教授)

② 「学内外の多様性を活かした考動型学びの事例紹介とICT活用による高度化」

建山 和由 氏(立命館大学常務理事、理工学部教授)

③ 「ものづくりPBLによる質保証を目指した企業との共創教育の取り組み」

青木 義男 氏(日本大学理工学部次長、教授)

④ 「大人数講義におけるタブレットを用いた双方向授業の実践」

島津  弘 氏(立正大学地球環境科学部教授)

意見交換の内容(特徴的な意見)

<問題発見・解決力を高める課題探求型授業におけるICT活用の取り組みと課題>

 答えが定まらない社会的課題を議論させること、自分の考えに異分野のアイデアを加えて問題解決を考えられるようにすること、学びのプラットフォームをネット上に構築すること、教員間の連携、職員との協働が欠かせないことについて、8割以上から賛同が得られた。

<ICTを活用した知識の創造・実践力の向上を目指す分野横断型フォーラム授業の必要性と導入の課題>

 ロジカルシンキングが重要であり、他者の意見を聞いて組み合わせて発想するネット上でのオープンな学びの必要性が確認された。

<ネット上で学内外の意見を取り入れたオープンな教育改善実現の可能性と課題>

 教育改善をオープンに議論する仕組みとして、7割がネット上にプラットフォームを設ける必要性を確認した。

<ビデオ試問による外部評価モデルの仕組み、実現に向けた課題・対応策>

 自前主義を前提とした大学設置基準など関連法規の抜本改正が急務であり、学修者本位の仕組みが必要とされていることの認識を共有した上で、外部評価モデルのニーズをたずねたところ、参加者から反対がないことが確認された。

物理学・化学・機械工学・建築学・経営工学・電気通信工学・土木工学・生物学のグループ

6.栄養学・薬学・医学・歯学・看護学グループ

開催日時

平成31年1月26日(土)14:00〜17:30

開催場所

帝京平成大学(中野キャンパス)参加者83名

話題提供

① 栄養学分野

「課題発見・解決力を高めるICTを活用した科目横断型授業の取り組み」

由良  亮 氏(中京学院大学短期大学部准教授)

② 医学分野

「ICTを活用した分野横断型の課題発見・解決型教育の提案」

大久保由美子 氏(東京女子医科大学医学教育学教授)

③ 歯学分野

「ICTを活用した分野横断型の課題発見・解決型教育の提案」

片岡 竜太 氏(昭和大学歯学部教授)

④ 看護学分野

「多職種連携による看護教育の改善に向けたICT活用の提案」

丸山 陽介 氏(帝京平成大学健康医療スポーツ学部講師)
仲井 克己 氏(帝京平成大学健康医療スポーツ学部教授)

意見交換の内容(特徴的な意見)

<問題発見・解決力を高める課題探求型授業におけるICT活用の取り組みと課題>

 課題をLMSで事前学修させた上で、授業でグループ討論を行い、掲示板に意見や発表を掲載・共有することを通じて、他の学生との意見の相違を気づかせる点で学生から評価を得ていることが確認された。

<ICTを活用した知識の創造・実践力の向上を目指す分野横断型フォーラム授業の必要性と導入の課題>

 他大学の教員や産業界、地域社会と連携した教育のオープンイノベーションの必要性について、ほぼ全員から賛同が得られた。

<ネット上で学内外の意見を取り入れたオープンな教育改善実現の可能性と課題>

 教育改善を学内外で意見交流するプラットフォームの必要性について、アンケート結果から6割強の教員が認識している。プラットフォームの枠組みについては、大学単独が2割、複数大学が4割強、大学と地域社会が3割強となっている。複数大学では、教員が中心となり職員、学生、有識者による構成が考えられており、地域社会との連携では、教員、職員、学生、企業、有識者などすべての参加が考えられていることが確認された。

<ビデオ試問による外部評価モデルの仕組み、実現に向けた課題・対応策>

 アンケートによると4割が必要性を認識し、2割が不要としていたが、訓練の一環として活用することについて改めてたずねたところ、過半数から賛同が得られた。

栄養学・薬学・医学・歯学・看護学グループ

【目次へ戻る】 【バックナンバー 一覧へ戻る】