事業活動報告 No.5

2019年度
私情協 教育イノベーション大会 開催報告

 本大会は、「イノベーションを支える大学教育を考える」をテーマに、以下の開催趣旨に基づき実施した。
 「近い将来さまざまなモノがネットにつながり、AIなどの技術革新が進展する中で産業構造、就業構造、ライフスタイルが大きく変化してくる。そのような社会では、異なる分野が融合し、新たに社会的価値、経済的価値を生み出すイノベーションが常態化されるようになる。昨年度文部科学省では「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」を発表し、知識・技能を文理横断的に身に付け、論理的思考力を持って社会を改善していく人材を目指し、多様性を配慮した教育研究体制、とりわけ全学的な教学マネジメントの確立、学修成果の可視化と情報公表の促進、時代の変化や情報技術、教育研の進展等を踏まえた大学設置基準の抜本的な見直しを掲げ、教育イノベーションの課題を提示した。
 これを受けて、国・社会のイノベーションを支える人材育成の方向性と課題、教育の質を保証する教学面での改善・改革の取組み、情報活用能力の強化を目指した学修、授業の改善を目指したICTの活用・効果について探求することにした。
 1日目の「全体会」では、向殿政男会長(明治大学)から、「本協会はこれまでICTの活用を通じて教育改善の働きかけを呼び掛けてきたが、今後は広く教育のイノベーションが進展するよう、事業の名称を『私情協 教育イノベーション大会』に改称して、各大学の改革行動に繋げられる場となることを期待している」との開会挨拶の後、9月4日から6日の3日間に亘るプログラムが実施された。
 1日目の全体会では、①高等教育に対する国の取組みとして、グランドデザインを踏まえた教育改革、AI時代の人材育成に向けた政府の取組み、②デジタル時代の人材育成、③学生主体教育としてのSDGs活用の取組み、④大社接続によるAI活用教育の問題発見・解決力、創造力を促進するためのICT活用取組み、⑤AI技術を取り入れたデータサイエンス教育の試み、⑥文部科学省選定の数理・データサイエンス教育の取組みとした。
 2日目のテーマ別意見交流では、午前中2グループに分かれ、①「分科会A」ではAI社会を理解するための企業関係者との意見交流、②「分科会B」では学修成果可視化とIR活用の取組みと課題の理解共有、③「分科会C」では人間中心のAI社会原則、教育の情報化推進に関する著作権問題に対する理解共有、④「分科会D」ではICT活用による学修行動のモニタリングによる学修成果改善の取組みと課題の共有、⑤「分科会E」では大学・地域社会連携にICTを利活用した医療系教育プログラム実践効果の共有、⑥アクティブ・ラーニングにICTを利活用した取組みの理解共有、⑦社会で求められる情報活用能力育成に向けたモデル授業の見直し、専門教育と連携した授業実践について意見交換し、理解の共有を深めることにした。
 3日目は、教育改善のためのICT活用の発表とし、79件の発表が紹介された。

第1日目(9月4日)

全体会

【高等教育に対する国の取組み】
2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)を踏まえた教育改革

文部科学省高等教育局高等教育企画課 高等教育政策室課長補佐 奥井 雅博 氏

 2018年11月の高等教育のグランドデザインの答申は、すべての高等教育に関わる教職員一人ひとりが理解し、学生と向き合った教育をしていただきたい、ということが大きな方向性となっている。高等教育改革の全体像としては、Society5.0に対応した大学教育改革、教育の質保証、大学の基盤強化と連携・統合、リカレント教育の拡充、アクセス機会の確保があげられる。
 2040年には、現在とはまったく違う社会が出現する可能性がある。そのことを踏まえた人材育成が課題になっている。答申の概要としては、大きく3つのポイントがある。第一に学修者本位の教育への転換、第二に多様性、第三に教育の質保証と情報公表である。
 第一の学修者本位の教育への転換では、予測不可能な時代を生きる人材像として、「普遍的な知識・理解と汎用的技術を文理横断的に身につけていく、時代の変化に合わせて積極的に社会を支え、論理的思考力を持って社会を改善していく資質を有する人材」が重要で、その手法として、学生一人ひとりの学修成果の可視化が必要となる。
 第二の多様性では、社会人や留学生を含めた、多様な学生を受け入れる体質転換、自前主義から脱却した教育、文理横断した教育プログラムの導入とそれを可能にする学部等連携課程の設置基準の改正、単位互換制度の柔軟化、ICT活用教育の推進、地域、企業等と連携した実践的な教育の充実、複数の高等教育機関、産業界、地方公共団体との恒常的な連携体制の構築、教育・研究コストの可視化などが重要になる。
 第三の教育の質保証と情報公開については、実現すべき改革の方向性として、学修者が「何を学び、身に付けることができるのか」を明確にし、学修の成果を学修者が実感できる教育を行うことがあげられる。そのためには、全学的な教学マネジメントを確立し、学修成果の可視化と情報公表を促進する必要があり、さらに質保証システムの確立という観点から、大学設置基準も見直す必要がある。また、大学のホームページから自己点検評価など調べようとしても分からないなど、情報をどのように公表していくのか、社会にどのように見てもらえるのか点検する必要がある。
 答申では、国が全国的な学生調査を通じて、学生の声を通じて学びの実感、例えばどのような学習経験をしたのか、教育が自分にとって役に立っているのかなどを把握し、学生目線から大学の教育力発揮の状況を把握し、各大学自らが教育改善を行い、社会が理解しやすい形で発信・公表していくことの重要性を掲げており、この場を借りて理解と支援をお願いする。質保証については、国のシステムで行うことは当然として、重要なことは大学内部での質保証が機能していくことが避けて通れない課題であり、その結果を社会に発信していく必要がある。答申に書かれた大学設置基準の抜本的な見直しについては検討中であるが、定員管理、教育手法、施設設備、学生/教員比率、教員組織のありかた、ICTを活用した授業を行う際の施設の考え方など、様々な検討事項がある。これらについては、文科省や一部の委員だけではなく、大学関係者とともに、どうしたらよい教育システムが構築できるのかを一緒に議論していく必要がある。

[質問]
大学設置基準の見直しの例として、学生/教員比率の設定があげられているが、中小私学では設定された比率にあわせて教員を採用することは財政的に厳しい。どう考えればよいのか。
[回答]
現時点で確たる基準はない。慎重な議論が必要である。
[質問]
大型大学の場合、相当の内部留保があると考えられる。それを学生/教員比率の改善や授業料の軽減、奨学金などに使うべきだという議論はあるのか。
[回答]
内部留保をどう投資するのかは各大学の経営戦略によるが、大学はそれを社会にしっかりと説明していく必要はある。
AI(人工知能)時代の人材育成に向けた政府の戦略と推進・普及の取組み

文部科学省高等教育局専門教育課課長補佐 加賀谷 次朗 氏

 政府がどのようなAI戦略を策定し、それを踏まえて、文科省がどのような取組みをしているかを説明する。まず、AI戦略が策定された背景には、AI、ビッグデータ、IoT、ロボティクス等の先端技術の高度化によるSociety5.0の到来、人生100年時代、グローバル化、少子高齢化による人口減少等がある。大学においては、大学進学率が上昇傾向にあるが大学進学者数は減少する。さらに、今後10年から20年で、日本の労働人口の約49%が人工知能やロボットによって代替されるとの予測もある。このような状況のなかで、どのような人材を育成すべきか、というのが「AI戦略2019」である。この戦略のなかで、Society5.0は、科学技術イノベーションの活用を通じて人間中心の社会を実現する壮大な構想で、AIはその鍵となる基盤技術と位置づけている。そして、「人間中心のAI社会原則」に基づき、実現すべき未来のビジョンを共有した上で、AIの社会実装を推進するための戦略を策定した。人材育成の主な取組みとして、2025年を目標に、リテラシー、応用基礎、エキスパートという3段階に応じた育成目標・人数を策定した。リテラシー・レベルの初等中等教育段階では、多様なICT人材の育成や生徒一人一台の端末を活用する授業の実現、高等教育段階では、標準カリキュラムの開発と展開や優れた教育プログラムを政府が認定する制度を構築する。応用基礎レベルでは、AI×専門分野のダブルメジャーを促進する。エキスパート・レベルでは、若手の自由な研究を海外への挑戦機会を拡充する。高等教育で年間50万人、応用基礎レベルで年間25万人の人材を育成することを目標にしている。
 数理・データサイエンス(DS)・AI教育に関する教育改革では、リテラシー教育として、文理を問わず、すべての大学・高専生(約50万人卒/年)が、1・2年次に初級レベルの数理・DS・AIを習得することを目指す。学部の3・4年生を想定した応用基礎レベルでは、文理を問わず、一定規模の大学・高専生(約25万人卒/年)が、自らの専門分野の数理・DS・AIの応用基礎力を修得することを目指す。いずれも、大学・高専における標準カリキュラム・教材の開発と全国展開、認定コースの導入、大学・高専に対する運営費交付金や私学助成の重点化などを行う。さらに、大学・高専の卒業単位として認められる数理・DS・AI教育の内、優れた教育プログラムを政府が認定する制度を構築し普及促進する。
 「AI戦略2019」を踏まえた文科省の取組みとしては、数理・DS・AI教育の全学部学生への展開があり、入口(入試)から出口(就職)まで、数理・DS・AI教育の促進につながるシステムを構築することを目指す。具体的な内容としては、第一に大学入学共通テストへの「情報Ⅰ」の追加の検討、第二に「数理・データサイエンス標準カリキュラム」の策定・活用、そして第三に「数理・データサイエンス教育プログラム認定制度」(仮称)を産学官連携により創設すること、などがあげられる。これまでの取組みとしては、文系理系を問わない全学的な数理・DS・AI教育を実施する国立6大学からなる拠点校・コンソーシアムを設置し、今年度、20の国立協力校を追加し、全国への普及展開を加速化している。今後、拠点校・協力校と私立大学との連携も目指す。拠点校の代表的な取組みとしては、北海道大学の「学士・修士・博士にとらわれない、シームレスなプログラムで専門分野にとらわれないボーダレスなデータサイエンス教育」があげられる。この取組みでは、学部でリテラシー、応用基礎、実践力の各レベルに対応した科目が開設され、ICTプラットフォームを活用した授業が行われている。令和2年度の概算要求では、運営費交付金のなかで、大学の数理・DS・AI教育の全国展開のために、前年度より3億円増額した12億円を計上した。
 最後に私立大学の私学助成についてふれる。概算要求では、「Society5.0に対応した高度技術人材育成事業」(継続9億7,100万円)、「知識集約型社会を支える人材育成事業」(新規18億円)、「保健医療分野におけるAI研究開発加速に向けた人材養成産学協働プロジェクト」(新規14億円)などを計上した。また、文科省全体の予算としては、「AI戦略2019」関連予算として、全体で819億円を計上した。

[質問]
文理横断に対してどのようなイメージをもっているのか。また、文理横断に期待することは何か。
[回答]
数理・DS・AIにおいても、例えば倫理的なものや人間知に関わる人文社会科学的な視点が必要となる。文理横断でイノベーションが生まれることを期待している。
【デジタル時代の人材育成】
価値を創り出せる人材の育成

タッチコア代表、九州工業大学客員教授 小西 一有 氏

1.デジタル、IoT、デジタル・トランスフォーメーションの定義

 「デジタル」というのは、アナログの逆という意味ではなく、“つながること(コネクティビティ)”によって可能になる、複数のテクノロジーイノベーションが融合する世界をさす。「IoT」(Internet of Things)について国際電気通信連合(ITU)では、「いつでも、どこでも、何とでもつながる」としており、物理的な世界(フィジカル・ワールド)をこえて情報の世界(インフォメーション・ワールド)へと、あらゆるものがつながっていく世界を意味する。「デジタル・トランスフォーメーション」は、業務の一部をロボットで自動化したり、コールセンターにチャットボットを導入して人員削減したりする単なるデジタル化とは違い、デジタルテクノロジー及びデジタルビジネスモデルを使うことで業績改善のための組織変革を意味するものである(デジタルビジネス変革≠デジタル化)。これらの定義を踏まえた上で、意味のイノベーションとは何か、問題解決のイノベーションの欠点、イノベーションに関する勘違いの3点について説明する。

2.「意味のイノベーション」とは何か

 ロウソクを例にとりあげる。ロウソクの機能は明かりで、その効能は暗いところを明るくすることである。停電時などに使って、安ければ何でもよい。これに対して、Yankee Candleという会社のロウソクは、ゆらゆらと火がゆれて、癒しの機能をもち、その効能は疲れをとるとか、明日への活力をあたえてくれる。ロウソクそのものの存在意義が変わる。これが「意味のイノベーション」である。他の事例としては、写真の意味の変化があげられる。米国のイーストマン・コダック社は、メディアが報道するように、デジタル化に遅れたから倒産したのではない。むしろ、デジタル化という意味では、同社は先駆的だったが、写真は後世に偲ぶものから、言葉よりも強力にメッセージを送るツールに変化したことに対応できなかったと言える。変化が激しい時代には、新たなビジョンを発見し、そこに新たな意味を付加していかないとイノベーションが生まれない。

3.問題解決のイノベーションの欠点とは

 パナソニックが開発した、HOSPIという病院内で薬を運ぶロボットがある。これは、人件費が高い薬剤師の代替手段として、人件費削減という意味では問題解決に役立っているが、「意味のイノベーション」ではない。それに対して、オランダのPhilips社による「周辺環境に注目するヘルスケア事業」(AEH:Ambient Environment Healthcare)は、「意味のイノベーション」を実現している。この事業では、MRI検査を受けるまえに、控室で子供たちが先生と患者になってMRI検査をままごとのようにして遊ぶ仕掛けをつくることで、子供たちの不安を軽減するとともに、鎮静剤を投与する割合を減少させた。つまり、この例では問題解決というよりも、医療の意味そのものを変えてしまっている。問題解決のイノベーションが、選択される商品・サービスの創造であるのに対して、「意味のイノベーション」は、愛される商品・サービスの創造を意味する。そして、前者がどうやって解決するのかに着目し、性能の競争(よりよいもの)に結びつくのに対して、後者は、なぜ解決するのかに着目し、価値の競争(意味深さ)にたどりつく。

4.イノベーションに関する勘違い

 米国のIDEOという会社が提唱し、日本にも広まった「アイデア思考」についてひとこという。アイデア思考について、日本では間違えて伝えられているが、重要なことはただ一つで、アイデア思考というのはマインドセットで、常に人間を意識しながら考える、多様性を活かすことによる恩恵、どのような状況でも自分たちはできるのだという信念、そして、早く、たくさん失敗して経験から学ぶ、という4点につきる。このようなマインドセットが、「意味のイノベーション」を創造するのに重要である。
 現在、世界では米国のGAFAや中国のBAT(Baidu, Alibaba, Tencent)などが力をもっているが、これらの企業は経験価値で勝負しようとしている。日本は、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークといった分野で、工業力としてはそれほど弱くなかった。しかし、工業力ではない経験価値について理解しなければ、この先、競争力の源泉は手にできない。

【質疑応答】

[質問]
中国は、なぜ経験価値の創造で成功しているのか。
[回答]
経験価値の創造以前に、政府が支援して優秀な人材にビジネスを自由にやらせているからだと考えられる。
【学生主体教育の仕掛け】
学生主体教育としてのSDGs(持続可能な開発目標)活用の取組と成果・課題
金沢工業大学SDGs推進センター長
平本 督太郎 氏

 SDGsは2030年までに達成すべき17のゴールとその下に169のターゲットがあり、2015年9月に国連で加盟国193ヵ国が全部賛成し、現在その達成に向けてSDGsを実施している。
 金沢工業大学では、SDGsには「地球規模」、「バックキャスト」、「誰一人置き去りにしない」という3つのキーワードがあると捉えている。「地球規模」は、日々の生活が地球規模の課題につながっており、地域での取組みを世界が求めているニーズとして理解し直して、横展開していくことが必要になってくる。「バックキャスト」は、現在の延長線上では人類が生存し続けることができないと分かっているので、あるべき未来像を描いた上で、現在の優先順位を決めていく思考が求められている。「誰一人置き去りにしない」は、資本主義の行き過ぎによるゆがみを解消するための新しい方法を模索すること。SDGsの前のMDGsの際に、数値目標は達成できても、現場の問題が解決されない状況が起こった。取り残された人びとをきちんと認識し、その人達も含めた社会システムを作らなければならない。子供の貧困がその具体例である。
 「地球規模」の補足をすると、SDGsには「地球1個分の」というキーワードがあり、経済・社会・環境の3つが調和することが重要視されている。気候変動による災害がわかりやすい。生態系の中で、人間が出した負の損害を吸収して浄化することが可能だが、許容量に限りがある。1年間で自然の力で復活できるキャパシティが「地球1個分」で、それに対して、人間の生活は、平均で地球1.7個分使っている状況である。日本は2.8個分使っている。これは、自分たちの子供や孫の生活資源を使っていることで、負のエネルギーを残していることになる。
 負のエネルギーが見えにくいことが難点であるが、今や知らないでは済まされなくなってきている。常に全体のバリューチェーンを意識する必要性が高まっている。ICTを活用して「見える化」して改善する取組みが求められている。
 日本で明確にSDGsが採り入れられたのが2018年4月閣議決定の第5次環境基本計画だが、一つの行政区分の中での取組みに限らず、農村・都市すべてを含めた地域循環共生圏を作る必要がある。
 金沢工業大学では、金沢の地域において様々な自治体と連携してリアルなフィールドで実際に学生達が活動しながら持続可能な社会作りに取組んでいる。山の中のキャンパスでは、教育を新たな核として、新しい循環構造を作ろうとしている。自然と都市の魅力を合わせ、山間部と平野部の格差を是正し、地球1個分に戻していくモデルを実現しようとしている。
 バックキャストに関しては、防げる未来を描き、そこから現在やるべきことの優先順位をつける必要がある。そして、ゴールが決まれば、人びとの行動の優先順位が変化し、それにより地球が持続可能になっていく。SDGsにより、様々なところでルール変更が行われている。
 誰一人取り残さない社会を実現するには、トレードオフ、つまり何かを選択するために何かを犠牲にするという構造を解消しなければならない。このためには、例えば、技術者にとっての倫理感が教育においても必要になり、経営者にも正しい経営倫理が必要になってくる。トレードオフを解消するには、主体の二者間だけでなく、第三者を入れて、調和のとれた仕組みを作ることが必要になる。
 地球規模、バックキャスト、誰一人取り残さない、この考え方のマインドセットをしながら教育を進めていく必要がある。
 金沢工業大学がJapan SDGs Awardに選定された理由は、一つはすべての領域に関連することから学部・学科を超えた全学体制による連携をしており、学生達の教育付加価値を高めることを目指した教育、二つは学生主体のSDGsに貢献する次世代リーダーの育成として、自ら学び行動することを推し進める教育体制、三つは地域の実際の課題に対して、研究成果が役に立っているのかを振り返る中での社会実装型研究を背景にした教育、四つはSDGsに特化した通年カリキュラムの4点があげられる。なお、正課の外では学生達が連携できるように学生団体「SDGs Global Youth Innovators」を立ち上げ、主体的な活動を支援している。
 これからの未来を切り拓いていく学生の感覚を尊重した上で、教員、職員が同じ立場で一緒に持続可能な社会を創っていくことを常に意識しながら活動していく、実際の地域課題を解決するプロジェクトデザイン(PBL)教育の取組みを教育の軸に据えて、問題発見、問題解決能力を培う活動を進めている。PBLは毎年1,600人くらいの学生が6人1チームで、200くらいの提案が出ている。これを実際のフィールドで役に立つのか検証することで、自分達の計画は正しいかどうか見極め、提案している。その中においては、自治体で予算化して実行されるものや、自治体と一緒に国のプロジェクトとして大規模な実証実験を行っているものもある。ベトナムでもスタディツアーの中で、現地の課題に対して、計画・検証のフェイズで進めている。しかし、実際には失敗を繰り返しながら成功を作っていく中で、折れない心が身につく。これは社会に出た後で企業から高く評価されている。
 SDGsに特化した通年カリキュラムとしては、3年生を対象に地域の話だけでなく、地球規模とどのように結びつけるのか、TEDを活用した環境技術イノベーション授業、社会システムイノベーションの授業を展開している。
 SDGs教育の成果として、一つはSDGsアクションカードゲームを企業と共同開発し、国連の組織で英語版のゲームを説明するなど学生の国際発表の機会が増大したこと、二つはSDGsの活動をしていくと、企業に入るよりも多くの経験ができることから、大学院の進学が非常に高く、学生の学修意欲の向上が増大したこと、三つはSDGsのカードゲームを介して、他の教育機関からの高い関心が寄せられ、連携がかなり進められていること、四つは企業や自治体等の学外ステークホルダーとの連携の好循環があげられる。
 今後の課題として、一つは「世代を超えた共創教育」で、小中高の若者が金沢工業大学の取組みに参画できる仕組み、二つは「分野を超えた共創教育」で、若手・中堅教員を中心とした学際的研究ネットワーク、三つは「文化を超えた共創教育」で、地域の課題の解決策やその検討手法を広く世界へ横展開していく仕組みの3つがあげられる。

【質疑応答】

[質問]
取組みに熱心でない学生はいるのか。
[回答]
一言では言えないが、プロジェクトデザイン教育がベースにあるので、就職するにあたって必要性を感じてきちんとやり遂げている。ただ、途中で他の分野に関心が高まっていく場合には無理強いはしていない。
【大社接続によるAI活用教育の取組み】
日本IBMと共同開発した「AI活用人材育成プログラム」の取組み

関西学院大学学長補佐 巳波 弘佳 氏

 関西学院大学が行っている日本IBMと共同プロジェクトの内、AIに関する基盤教育とキャリア支援の施策について紹介する。
 1956年に人工知能という言葉が定義されて、その後10年間、第一次AIブームが起こり、その後1980年代にExpert Systemが流行った第二次AIブームが続き、現在は、ワトソンやアルファ碁に象徴される第三次AIブームにある。この要因には、膨大なデータ収集が可能になったこと、コンピュータの飛躍的進歩があげられる。そして、人工知能の性能が実用レベルになったと言える。
 このような状況下で、AIを使いこなす人材の必要性が叫ばれている。そこで、関西学院大学ではAI活用人材の育成をIBMとの共同プロジェクトとして行うことにした。共同プロジェクトには様々なテーマがあるが、人材育成と学生支援の2つを優先した。
 まず、学生支援のキャリア支援で用いるチャットボットを作成した。これはLINEふうに応答してくれるAIで、学生はいつでもどこからでもキャリアや就職に関する質問ができる。それに対し、会話するAIであるチャットボットが自動的に回答する。音声ばかりでなくテキストでも可能で、スマートフォンやPCの画面上で、自然言語でのやりとりができる。
 チャットボット導入の目的は、圧倒的に多い定型的な質問に対応する人間の時間をなくし、人間のカウンセラーにはていねいに応対する時間を充てることにより、効率的なキャリア支援を確立することである。蓄積した大量のQ&A集をベースにAIに学習させ、チャットボットを開発した。利用度を上げるためにeポートフォリオからワンストップでサービスを提供できる仕組みにした。これにより、いつでもどこでもどんなことでも学生は質問できるようになり、めざましい効果があった。
 チャットボット開発は、1から全部作ったわけでなく、既存システムと汎用的AIモジュールを組み合わせて完成させた。将来は水平展開を考えている。キャリア支援に関するQ&Aを各大学で共有することができれば、日本の学生全体にとってよい就職支援ができると思う。チャットボットはプロトタイプであり、他大学と共同することは決してやぶさかではない。
 AI活用人材の教育について、まずどのような人材が必要なのかを考えた。最先端のAI技術を研究開発する人達はもちろん必要だが、それだけではなく、AIを活用したビジネスや新しいサービスを企画するAIユーザーの人材と、AIユーザーに対してソリューションを提供するAIスペシャリストの人材が必要である。本学はAIユーザーとAIスペシャリストを養成すべく、文系・理系を問わず、AIデータサイエンス関連の知識を持って、それを活用し、現実の諸問題を解決できる能力を有する人材を育成することを目的とした。
 AI活用人材育成プログラムでは、AIの知識だけではなく、ITスキル、データサイエンス、ビジネススキルも必要であり、これらを体系的に学ばせることで、社会や企業の求める即戦力の人材を育てていく。科目構成は全10科目で、PBL的科目が多い。初学者を念頭に置いた授業内容、体系的かつ実践的なスキルの習得、ビジネス視点の醸成、この3つが特徴となっている。
 具体的には、入門として全員受講の「AI活用入門」があり、AI利用のアプリケーションを開発のための基礎知識を学び、実際に活用する演習を行う。次に、基礎として、「AI活用導入演習A・B」があり、モジュールを使って、AIを利用したアプリケーションを実際に開発する。「AI活用実践演習A」では、必要最低限のJavaスキルを使ったWebアプリケーションの開発の仕方を学修する。「AI活用実践演習B」では、機械学習、深層学習に関する基礎的な知識を学び、Pythonを用いて実際に機械学習のプログラムを作る。「AI活用実践演習C」では、UIとUXのインターフェイスを学ぶ。「AI活用データサイエンス実践演習Ⅰ・Ⅱ」では、統計ばかりでなく、様々な問題フレームワーク、マーケティングフレームワークなどの演習を行う。最終的には、総合演習として、実データを自ら学んだ問題解決フレームワークを使って分析し、結果をプレゼンし報告書をまとめる。
 教材及び授業進行は事前に用意されているので、教員はきめ細かな学生指導に専念でき、学生の様子を見ながら臨機応変に対応することが可能になる。IBMとの共同開発により、企業の実務の視点を採り入れ、実際の現場での内容を含んだ演習を多くし、実例を意識したPBLを用意している。
 授業はこの春に始まったばかりだが、定員を大幅に超える受講申し込みがあった。学生たちの注目度が非常に高く、全学部から幅広く受講生が集まった。
 AIは理系の独占物ではなく、みんなが使うものである。やりたいことにAIをプラスすることによってより良いものができる。学生には、AIに使われる人材ではなく、AIを使いこなす人材になってもらいたい。AI活用人材になって、社会を変革するリーダーになってもらいたい。

【質疑応答】

[質問]
文科省推薦のモデル授業のカリキュラムでは学生の意欲が失われる危惧があるが、使えるものから始めて後付けで勉強させるという貴学のやり方はよい。関西学院大学が拠点校になった方がよいのでは。
[回答]
国の動きは承知しているが、理系だけでなく文系も含めて、楽しく学び、学生が実際にAIを使えるところまで引き上げたいと考えている。当プログラムが参考になればうれしく思う。
【AI技術を取り入れたデータサイエンス教育の取組み】
協調学修やプロジェクト型学修を基軸にした データサイエンス教育の試み

武蔵野大学データサイエンス学部学部長 上林 憲行 氏

 武蔵野大学データサイエンス学部は、この4月に新入生を迎えたばかりであり、学生の状況も含めてお話したい。2019年度入試の実績については、5月連休のAERAの特集記事で「入学志願者が一番増えたのは、国立大学では滋賀大学、私立大学では武蔵野大学であった」ことが掲載され、両大学はデータサイエンス学部を持っているということで話題になった。
 本学データサイエンス学部のカリキュラムでは、新しい学修スタイルを組み合わせて、学修イノベーションを達成したいと考え、学生たちに「育牧」という教育方針を伝えている。キチンと管理されているわけでもないし、完全に放牧するわけではないが、自由に世の中を駆け回ってもらい、ちゃんと見守って育てると意味合いがある。もう一つは、きちんと教えすぎないこと。高い目標を持って、試行錯誤して、失敗をたくさん重ねて自ら学ぶという学修スタイルを前面に出していきたい。そして、学生たちに身に付けて欲しい力は、テクノロジーを相互作用的に使える「エンパワーメント」と環境変化に対してしなやかに対応できる能力「レジデンス」である。
 カリキュラムは、情報学を基本とし、その中にあるデータ工学、人工知能工学、統計工学、これらを有機的に組み合わせた学問体系を規範として考えている。21世紀型の新学問領域では、大学の存在意義、大学自身の再定義が議論されているが、データサイエンスと大学自身の再定義をかけ合わせて、スマートクリエイティブな人材を輩出したいと考えている。スマートクリエイティブはオリジナルな言葉ではなくて、シリコンバレーを席巻しているGAFAの中で活躍している人を象徴して使われている言葉である。
 4月に入学した学生71名に対して教員は10数名おり、全学生、教員の参加するサイバーフィジカルな空間である実践学修コミュニティをSlackで用意し、24時間この実践コミュニティの中でお互いにコミュニケーションを取るという一種のベースラインを設定している。様々な最新のテクノロジー、例えばZoomを使って、講義をすべてリアルタイムに記録し、学生にすぐ配信するなどのスマートラーニングを実践している。教卓で話しをして講義をするというスタイルはほとんど取らず、7人で1グループ作って、全員BYODでパソコンを持参し、グループの中で課題をインタラクティブにこなすスタイルをとる。「座学なし、試験なし」という形でどれだけできるかということに挑戦しており、教室に入っただけで熱気が非常に伝わってくる。また、レポートは、基本的に動画で提出することで、学生たちの表現リテラシーをあげるとともに、学生同士でも見ることができるようにしている。協調学修などのスタイルを前面に出したので、最初は学生から「先生はちゃんと教えないで不親切」「先生の課題は抽象的で分からない」ということが多かったが、自分で前提を埋めたり制約条件を加味して、1〜2カ月の中で、学生はそれを納得し、協調学修の面白さを会得している。
 学びの理念としては、心に響く、当事者性のある、夢中になる、達成感がある、肯定的なフィードバックにあふれている教室環境を大事にしている。論理的な思考や創造的な思考などのジェネリックスキルは、いろいろなタスクを達成する過程のなかで副次的に身に付くものであり「知幹力」と呼んでいる。ゼミや卒業研究は、教員の薫陶を個別に受けることのできる最も大学らしい教育スタイルだが、私どものほうでは1年生の後期から未来創造プロジェクトという形で、半年に1回、複数の先生に順番に薫陶を受けるプロジェクト型学修を置いている。
 先端的なツールとしては、世界的な企業が使うものを活用している。例えば、Pythonを1年生の時から習う。しかし、Pythonだけできてもユーザーインターフェイス周りのことはできないので、全体は作れない。CS50(Computer Science 50:ハーバード大学やイエール大学で実施されているコンピュータサイエンスの入門コース)では、1年生でPython、TensorFlow、SQL、Tableauなどのレベル1を全部通して行い、2年生でレベル2、3年生でレベル3といった具合に学んでいく。よい点は、例えば1年生の時に「私、Python知りません」という人がいなくなり、それぞれの学年に応じたレベルで課題解決ができるようになる点である。
 卒業までは時間があるが、例えば、転職サイトでデータサイエンスというキーワードを入れると、IT企業だけではなく、職種、業界を問わずニーズがあることがわかる。いわゆる世の中でいうホワイトカラーが21世紀に持つべきジェネリックスキルがデータサイエンスだと考えてもいいのではないかと思う。

【質疑応答】

[質問]
座学なし試験なしというのは斬新ですが、逆に問題は何か。
[回答]
最初思っていた以上に協調学修は学生にフィットした。しかし、皆それぞれ頑張ってやってくださいというのでは機能しない。つまり、コラボレーションに関する基本的なスキル(例えばKJ法)をイントロダクションしないといけない。それと、協調学修が必要となるような問題、世の中に出ていく時に直面する非常に曖昧性のある問題を扱うことが大事である。フリーライダー問題では、辛抱強くリーダーやサブリーダーを教員がサポートし、グループの中でお互いが協調学修の楽しさを分ってもらうことが大切だと思う。
【文部科学省選定の数理・データサイエンス教育強化拠点の取組み】
(1)カリキュラム分科会

東京大学数理・情報教育センター教 丸山 祐造 氏

 2016年12月に、数理・エータサイエンス教育強化方策により6大学(北大、東大、滋賀大、京大、阪大、九大)が拠点として選定され、各大学にセンターが設置された。そして、数理・データサイエンス教育拠点コンソーシアムが形成され、全体会議を年2〜3回開催している。2019年には、新たに協力校20校が選定され、6大学がこれら20校をブロック別(北海道・東北エリア等のブロック)に先導し、数理データサイエンスを全国に広めていくことになった。昨年度、3つの分科会(カリキュラム分科会、教材分科会、教育データベース分科会)が作られ、私が主査を務めるカリキュラム分科会では、標準カリキュラムを作成している。文科省からは、全国の大学のすべての大学生(1学年50万人)に対して利用可能なデータサイエンス標準カリキュラムを作ってほしいと言われている。
 米国NSFの小委員会(StatSNSF)では、「データの設計、取得、管理、解析、データからの推論を目指す科学」というサイクルをデータサイエンス(DS)として定義している。そして、データに基づいた妥当な判断を行う能力を養うための10の分野として、「倫理」、「データの記述・可視化」、「データの取得・管理・加工」、サイエンスとしての3つのベーシックである「統計基礎」「数学基礎」「計算基礎」と、「モデリングと評価」、「ドメイン知識の考慮」「コミュニケーションのチームワーク」「ワークフローと再現性」をあげている。
 カリキュラム分科会では、米国の10分野を参考にDSのサイクルの7分野に注目し、「データの法規と倫理」、「データ記述と可視化」、「データ管理とキュレーション」、「統計基礎」、「数学基礎」、「計算基礎」、「データモデリングと評価」としている。学生がDSに主体的に関わる職業につかない場合でも、受け手としてDSの成果を享受しつつ、しかも負の側面に注意して安全・安心に人生を送れるような教育が大事ではないかと考えている。具体的には、7分野それぞれを大分類とみなし、中分類、小分類を設け、小分類を1個の単位として、スキルセットと学修目標を整理している。最終的には、3段階くらいを想定したレベル別にカリキュラムを用意しようと考えている。また、スキルセットの学修目標では、積極的に高校の科目を多く含むように作成し、先ほどの大分類、中分類、小分類と高校の単元の対応表を作っている。「数学」については現在の学習指導要領の数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学Ⅲ、数学A、数学Bの単元を中分類で対応させ、「情報」についてはDSのリテラシーが多く含んでいる次期学習指導要領の「情報Ⅰ」を対応させている。スキルセット、学修目標を含む第一次報告が、おおよそ1か月内に一般公開される予定となっている。

(2)教材分科会

滋賀大学データサイエンス学部長、データサイエンス教育研究センター長 竹村 彰通 氏

 教材分科会(主査:清水教授(滋賀大学))の活動及び具体的な成果として、教科書シリーズ、そしてeラーニング教材の提供について紹介する。具体的なプロセスとして、①教科書を作ること、②学内教材で可能なものを共有していくこと(提供方法の情報共有)を進めており、コンソーシアムのホームページで情報共有を行っている。東京大学ではいくつかの講義(最適化手法、時系列解析など)を動画配信しており、九州大学はデータサイエンスの概論を提供している。北海道大学ではブラウザ上で受講できる数学の演習システムを作成している。京都大学では生物統計に関する講義動画を公開、大阪大学ではeラーニング教材を作成している。滋賀大学ではMOOC教材を作成し協力校に提供している。
 教科書シリーズ(データサイエンス入門シリーズ(講談社))では、6拠点から編集委員を出していただき、編集方針を定めて10冊刊行するということで進めており、私が編集長をさせていただいている。これまでに、「データサイエンスのための数学」「データサイエンスの基礎」、「最適化手法入門」の3冊が刊行されている。例えば「データサイエンスのための数学」は、データサイエンス応用に特化して数学が書かれており、線形代数では「データの扱い方と組み合わせ方」という観点が入っている。
 最後に、滋賀大学のコンテンツについて紹介する。滋賀大学は2017年4月に日本初のデータサイエンス学部を開設し、この4月には修士課程を開設した。学部からの卒業生がいない段階での修士課程設置のため、院生は企業からの派遣が多く、社会人のスキルアップの需要が強い。博士課程も来年開設予定である。滋賀大学での学部開設後、横浜市立大学データサイエンス学部が2018年、武蔵野大学データサイエンス学部が2019年に開設され、「データサイエンス学部」とカタカナ名で名乗っている学部が3校となった。
 滋賀大学では、MOOCという仕組み(ドコモgacco)を使って、「大学生のためのデータサイエンスⅠ」と「Ⅱ」を提供している。「Ⅰ」では、統計の基礎の他、R、Pythonを使った事例を入れたり、応用事例として企業の方の話を入れている。「Ⅱ」では、機械学習に特化して、機械学習のいろいろな手法をまんべんなく含めている。統計学会で作成した「統計学Ⅰ」「統計学Ⅱ」の2科目と合わせてパッケージとし、ドコモgaccoから学生1人あたり1,500円で半年間使える仕組みとしている。学生にはIDが付与されるので、どの講義を見たか、小テストができているか等を確認でき、講義にも使っていただけると思っている。また、先のデータサイエンス入門シリーズとは別に、滋賀大の授業の内容を書いた教科書を学術図書出版から出している。

【質疑応答】

[質問]
全大学生を対象にした初級レベルの数理・データサイエンス・AI教育について、現段階でどのように考えているか。
[回答]
正直、できていない状況だと思う。一般的なところはビジネスマン向けの本などがあるが、教材がまだ不足している。これからになるが、至急対応しなければいけないことは間違いないと思う。

第2日目(9月5日)

テーマ別意見交流

分科会A:AI社会を理解する

「AIと共存する未来」

野村総合研究所主任コンサルタント 岸 浩稔 氏

 AIと共存する未来について、未来社会論的な観点から、AIが入ってくる社会、人材や組織、教育などがどのように変化するかということに関して話題提供を行う。
 野村総合研究所は、Oxford大学のマイケル・オズボーン教授とともに日本のデータを分析し、2015年12月に、将来、日本の労働人口の49%が人工知能やロボットで代替可能になるということを発表した。米国および英国では、それぞれ47%と35%という結果が得られている。これは、各国の職業の構造にも影響される値であり、日本の場合は、労働構造・社会構造の中で事務職に従事する人口が多いため、代替確率が高くなっている。各種の職種について、コンピュータ化可能確率に注目すると、業務の複雑さ・高度性は、コンピュータ化可能確率との間に相関がないことが分かる。この点から、AI時代に求められるスキルとしては、「創造的思考」、「ソーシャルインテリジェンス」、「非定型」があげられる。
 AIの導入に伴う労働環境の変化として、「機械による失業」と「AIとの共存」という2つのモデルが考えられる。前者では人が機械に置き換えられるだけであるが、後者では人が高付加価値の業務にシフトすることとなり、AIが効率を支え、人は創造性を担い、生産性と創造性が両立する仕事に変化していく可能性がある。人は人でなければできない仕事を行い、各自が得意な分野で能力を発揮するようになる。ここで、AIは知識や業務ノウハウを提供し、これを活用すればエキスパートとして活躍することが可能となる。一方で、社内調整や承認などを行う中間管理職の仕事の必要性が低下する。このようにAIの導入は、業務の見直し・スリム化の推進につながる。
 業務を遂行するために必要や能力を、「コンピテンシー」、「機能スキル」、「運用スキル」に整理することができる。これを人の「ケイパビリティ」とよび、職務・職位によりこれらの3つの能力の比重が異なるため、個人の評価指標になりえる。人材評価は、個人の成果を組織の成果と関連付ける目標管理(パフォーマンス・マネジメント)から、個人の能力を組織の成果と関連付ける能力管理(パフォーマンス・デベロップメント)に移行することが考えられる。このように、今後、AIによる変化とダイバーシティによる変化が同時に進み、「終身雇用から人材流動性の高まりへ」、「ジェネラリストからエキスパートへ」のように、キャリア・能力・組織・業務・ワークスタイルが一斉に変化していく。
 「AIとの共存」をキーワードに、多様性があり創造的な仕事に誰もが取組める社会になることを期待している。

「AIを活用した価値創造の可能性と思考のフレームワーク」

富士通株式会社AIフロンティア事業部長 永井 浩史 氏

 AIの社会への実装について、現在の状況、日本国内からだけでは見えてこない実情を中心に話題提供する。世界各国のGDPに対する通貨流通高の割合を見ると、急速にキャッシュレス決済が進んでいて、電子決済で、お金の流れ、購買の意識などが見える化された社会の到来を示している。さらにグローバル的に急速にAIの社会実装が進み、巨額の投資が行われていることから、富士通はAIと量子コンピューティングを、政府の支援が手厚く、税制面で有利なカナダを拠点に展開している。
 現在、AIはスマートフォンに実装されているように、実用段階に到達している。フィンランドではAIの画像認識技術を応用したスマートレジが、中国・台湾ではAIを「場の認識」、「場の観察」に応用し、挙動不審者を識別する技術が実用化されている。英国では、AIと量子コンピューティングにより、巨大な冷蔵倉庫でのロボット化された製品ピックアップを導入したオンラインスーパーマーケットが誕生している。このように人間界・ヒューマンソサエティからIoTで、ビッグデータをデジタルスペースに送り込み、このビッグデータの海からの特徴の抽出と認識にディープラーニングが使われ、得られた知識がデータベースシステムに蓄積され、組み合わせ最適化問題を量子コンピューティングで高速処理して人間にフィードバックする。このようなIoT×AI×量子コンピューティングという広大なAIシステムが今後5年間で実装されていくと予測される。
 “Data is new oil.”というキーワードで示されるように、膨大なデータが収集される中で、データとAIを掛け合わせるフレームワークの重要性が高まっている。この状況では、「デザイン思考」、「シナリオプランニング」、「ビジネスモデル検討」が必須となり、AI活用の実践には、ツール・技術という面以外にも幅広い思考・スキルが求められる。これはクイックプロトタイピングによりコンセプトを検証し、エスノグラフィーという思考法により「場を観察してInsightを得る」ということが重視され、5年・10年先のフューチャーシナリオを考えながら、バックキャスティングしてデザインする力、未来洞察力ともいえるデザイン力が非常に重要になる。
 最後に、デザイン思考やシナリオプランニングのような、新しい概念を紹介したが、「自分が社会で生きていくためにどう生活するか」、「どのようにコミュニケーションをとってその場を観察して解決するか」など、教育の本質としてはかつてから重要とされていたことに帰着すると考えられる。

分科会B:質保証を確保するための学修成果の可視化

「学修成果可視化とIRへの活用―取り組みと課題―」

関西国際大学評価センター長 藤木 清 氏

 われわれが学修成果の可視化を考えるとき、いつも2008年の「学士課程教育の構築に向けて」という答申に立ち返ることにしているが、ディプロマポリシー(DP)について大学が期待されていることは、以下のようなことである。すなわち、大学全体や学部・学科等の教育研究上の目的、学位授与の方針を定め、それを学内外に対して積極的に公開すること、学位授与の方針策定にあたってPDCAサイクルを稼働させること、そして、学位授与の方針等に即して、学生の学修到達度を的確に把握・測定し、卒業認定を行う組織的な体制を整えること、などである。
 PDCAサイクルについては、3つのポリシーがPlanにあたるとの意見もある。しかし、3ポリシーを頻繁に変更するのは現実的ではないので、あくまでも3ポリシーをPlanに落とし込み、AP実現のための入学選抜方法の整備、CP実現のためのカリキュラムの整備、DPの学修成果を身に付けさせること、などをプランすることになる。これらを実施(Do)し、点検評価(Check)するわけだが、実際には改善(Action)になかなかつながらないという課題がある。そこで、学修成果を可視化し、3ポリシーに照らし合わせて適切に教育が実施できているかを自己点検・評価し、誰がどのように改善の行動を起こすのか、などをアセスメント・プランとして策定しておくという枠組みが内部質保証システムとして必要である。なぜ学修成果を可視化するのかというと、大学レベルと学部学科レベルでは、改善すべき課題を把握し、それを教育改善や学修支援に結び付けていくためであり、学生個人レベルでは、振り返りによる成果と課題の把握により、目標設定ができるようにするためである。
 本学では、DPを制定するにあたって、学修成果の評価ツールとして、従来からあったKUIS学修ベンチマークを含めて、学修行動調査、卒業研究の成果(卒業論文)、到達確認試験の4つを設定した。「KUIS学修ベンチマーク」は、ルーブリックに準拠した学生による自己評価と教員による確認によって評価を実施する。春・秋学期のはじめに、eポートフォリオを通して試験やレポートを返却し、それをもとに学生は自己評価するととともに、教員と学生が面談する。「学修行動調査」は、学生が大学に適応しているかを調査する「適応調査(学修編)」と「進路と学生生活に関する調査」に分かれる。「到達確認試験」は筆記試験で、2年生の終わりに、専門的な基礎知識が身についているかどうかをチェックする。ルーブリックは全学共通のものを作成したが、重要なことは、作成して終わりではなく、評価方法等のすり合わせをしていくことである。
 CPについては、教育内容として専門教育(専攻別)、基盤教育(いわゆる一般教育)があり、教育方法としては、経験学修、アクティブ・ラーニングを意識した授業、科目間・教員間連携、フィードバックなどを設定している。経験学修の内容として、海外で学ぶグローバルスタディを必修とし、サービスラーニングとインターンシップを選択必修としている。ただし、今年度から一部の学部・学科では、3つのうち2つを履修する方式に変った。教育方法としての今後の課題は、ProjectあるいはProblemをもとにしたPBLである。APに関する評価ツールとしては、入学時の基礎学力診断テストと学修行動調査(適応編)がある。
 さて、学修成果について、ルーブリックで示されたKUIS学修ベンチマークに対する学生・教員の評価は、2016年度卒業生のデータをみると、「世界市民=多様性理解」は8割を達成しているのに対して、「問題発見・解決力」の達成割合が低いという課題がある。もう一つの課題は、学修行動・活動、リフレクション、教員との面談、目標設定というサイクルが身についていない学生もいる。そこで、「評価と実践Ⅰ」(1・2年通年の1単位認定科目)と「評価と実践Ⅱ」(3・4年通年の1単位認定科目)という授業を開設した。この授業のなかで、卒業後の進路に沿って、4年間の履修計画を立てる「ラーニング・ルートマップ(LRM)」を作成させている。また、全学的な意識付けをするために、『成長実感ガイド』というリーフレットも作成した。
 学修行動調査では、入学後の能力変化を自己評価させているが、外国語コミュニケーション能力は3年生でもあまり伸びないという課題がある一方で、知識、伝える力、協働などの能力は伸びやすいことがわかった。また、グローバルスタディ等の同じ経験をしても、様々な能力を伸ばす学生とそうでない学生がいることがわかった。
 そこで、IRの面から「成長したきっかけ」を分析した結果、「教授・先生から直接指導を受けた」「尊敬できる教授・先生に出会えた」などの「教授・先生」関係と、「新しい授業を理解しようと努力した」「素晴らしい授業に出会えた」などの「授業」関係が重要な要因であることがわかった。さらに、入学時のプレースメントテスト(日本語運用能力、言語運用力、数理分析力)の合計(ポテンシャル)と1年終了時の累積GPA(パフォーマンス)の相関をみると、ポテンシャルとパフォーマンスの軸で4つのタイプに学生をわけることができる。もっとも問題なのは、ポテンシャルが高いのにパフォーマンスが低い学生群である。このタイプの学生をきっちり分析して、学修支援に結びつけていく必要がある。このようなIR分析の結果をFD等で共有するとともに、学生に対する説明でも使用している。重要なことは、このようなデータやエビデンスが問題となる学生のシグナルになることであり、そのシグナルを察知することで、早めの対応・支援が可能になる。

【質疑応答】

[質問1]
直接評価と間接評価という言葉について説明してほしい。
[回答]
教員が学生の能力についてレポートやテストで評価するのが直接評価、教員の評価ではなく学生の自己評価を間接評価と考えている。
[質問2]
DPのルーブリックについて、学生の自己評価をどのように教員が確認するのか。
[回答]
各ゼミの担当者(アドバイザー)が、学期がはじまって3週目頃に、学生1人に対して15〜20分程度の面談を実施して、自己評価が上がった理由等について聞いている。
[質問3]
達成度が低い学生については、ルーブリックの基準が厳しいのか、教育が足りないかのどちらかの可能性があるが、両者をどのように区別するのか。
[回答]
確かに難しい問題であるが、調査を進めながらルーブリックの文言についても調整を続けている。
[質問4]
主体性や自主性とどのように客観的に評価するのか。
[回答]
基準は、それぞれのルーブリックの文言通りだが、定量的データと定性的データの両方を使いながら評価する。
[質問5]
学修成果を把握するために様々な調査が行われているが、学生側に「調査疲れ」はないのか。
[回答]
確かにその傾向もあるが、授業時間内に回答したり、スマホによる回答を可能にしたりして、負荷を軽減する努力をしている。
分科会C:AIを適切に利用するための社会原則

「人間中心のAI社会原則」

中央大学国際情報学部長 平野 晋 氏

 日本政府は、サイバー空間とリアルワールドがつながり、IoT、AI、ロボティックスを使い経済発展とともに社会問題を解決して行くSociety 5.0を目指している。その中でAIは社会・経済の柱になる。AIに対する期待は利便性・効率性が高まるとか、生産性が向上するなどがある反面、仕事を奪われるのではないか、自動運転で事故が起きた場合、誰が責任をとるのかなどの不安がある。このような不安を解消するため、先進国は倫理綱領のような緩やかなルールを発表し始めている。
 日本の内閣府も今年3月に「人間中心のAI社会原則」を発表した。基本理念として、人間の尊厳が尊重される社会とするためにAIを道具として使い、多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会となるようAIを利活用・開発し、持続性ある社会にAIは貢献すべきとの基本理念を構築した。その上でAIが普及するために必要な、それに備えた社会(「AI-Readyな社会」)はどうあるべきかとして、個人は仕事や生活でAIを利用できるリテラシーを身に付け、企業はAI利活用を前提としたビジネスを展開し、社会のイノベーション環境ではあらゆる情報がAI解析可能なレベルでデジタル、データ化され活用できる状態となることなどが打ち立てられた。
 そのような構造の中で、緩やかなルールとして、人権を尊重することなどに向けてAIは使われるべきであるという「人間中心の原則」、AI弱者を生み出さないために幼児から高齢者にリテラシー教育が必要になる「教育・リテラシーの原則」、個人の自由、尊厳、平等が侵害されないようにする「プライバシー確保の原則」、AI利用のリスク管理の取組みを進めるための「セキュリティ確保の原則」、AI資源の集中と不当なデータの収集や主権の侵害が行われる社会であってはならない「公正競争確保の原則」、AI設計思想の下で全ての人々が公平に扱われなければならない「公平性・説明責任・透明性の原則」、データの利用が国境を越えて自由に闊達に扱われるよう、人材・研究の面から徹底した国際化・多様化と産学官民連携を推進すべきである「イノベーションの原則」の7原則が制定された。
 このような日本でのAI原則が背景に今年5月にOECDのAI原則、6月に日本開催G20でOECDベースのAI原則が採用されるという流れとなった。特に重要なのは、透明性と説明可能性の面で異議を個人が申し立てる機会があるようにすることがG20でコピーする形で採用された。
 その後、AIの利用者(AIを利用してサービスを提供するものを含む)が利用活用段階においてデータの質の担保などの留意事項をAI利活用ガイドライン(AI利活原則)としてまとめ、その解説を記載している。
 今後の動きとしては、原則からそれをどのように実行していくのか、詳細設計の段階に日本も世界もなっていく。

【質疑応答】

[質問1]
日本の公正取引委員会がGAFA規制に乗り出すという、どう規制するのか。
[回答]
優越的地位の濫用が疑われ、何らかの規制が必要というのが日本の姿勢である。
[質問2]
消費者側の同意でデータが集まることを規制できるのか。
[回答]
公正取引委員会が精査し規制に乗り出すとの話はある。消費者の同意の仕方も放置できない。
[質問3]
AI原則のプライバシーで、忘れられる権利についての議論はあるのか。
[回答]
議論はない。忘れられる権利は個人情報保護法等に関係する。
[質問4]
ロボット兵器に対する政府の基本的な姿勢・方針はどのようなものか。
[回答]
ロボット兵器のことは内閣府も総務省もOECDも議論してない。

教育の情報化推進に関する著作権問題「大学教育における著作権問題」

神奈川大学法学部教授 中村 壽宏 氏

 平成30年に著作権法が改正された。その要点は、第1に、デジタル化、ネットワーク、AIの進展への対応。第2にICT活用教育への対応(未施行)。その他、障害者対応、アーカイブ利活用である。この改正では著作権法のコンセプトが変わった。これまでは著作権利者の権利保護が大前提であったが、それが、権利者の権利は保護しつつ利用者が一定の条件を守る限りは著作物を無償・無許諾で使えるようにする、という著作権者の権利主張が制限される権利制限へと転換された。権利制限は3層に分けられる。第1層は権利者の利益を通常害さない行為、第2層は権利者に及ぶ不利益が軽微な行為、第3層は公益的な政策のための行為。これらの条件下で利用者に自由な使用が許される。しかし、権利制限は著作財産権に対するものであり、著作者の人格に関する権利を侵すことはできない。人格権侵害は同一性保持権に関して生ずることが多い。これは著作物はそのままの形で提供するとの原則であり、著作者の断りなく著作物を加工することは認められない(論文引用、授業レジュメ等は例外)。同一性保持侵害と複製は大学教育の中でも無意識に行われている。特に複製権については、原則として私的使用ならば認められるが、例えば、誰もが利用できるコピー機による複写は認められない。同時配信遠隔授業を含む対面授業において著作物を複製・配布することは認められるが、サーバー等に教材を置きオンデマンドで学生がアクセスできるような、異時配信による著作物の利用は補償金が課せられる。この補償金は改正35条で定められたものであり、徴収機関としてSARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)が今年発足した。SARTRASは、教育機関の現状を鑑み、教材管理・共有・経年利用等を認める基本ライセンス及びその使用料を定め、補償金と共に徴収することを検討している。その他、商用利用等は専門ライセンスとなる。補償金は大体決まっているがライセンス料金は未定。学生数を基準とする仮案が出ている。

【質疑応答】

[質問1]
著作権問題を軽視もしくは知識がないのは何学部・何系に多いか。
[回答]
医療系、看護系、語学系が多い。
[質問2]
日本の場合、SARTRASへの支払金額は学部学科により異なるのか。
[回答]
学部学科単位で補償金の契約をできるかは議論の最中。
[質問3]
誰でも著作物をSNS等でアップロードできるが、海外を含め著作者へどのように補償金を分配するのか。
[回答]
未定だがSARTRASも日本音楽著作権協会JASRACと同様な体制をとると思われる。
[質問4]
基本ライセンス、専門ライセンスは著作権者と直接交渉するのか。
[回答]
SARTRASが一応窓口となるだろう。未だ検討中とのこと。
[質問5]
著作権の補償金制度は今後すべての大学と教育機関が加入することになるのか。
[回答]
異時で授業目的公衆送信を行う大学は契約が必須、ということになっている。
分科会D:ICT活用による教育改善の取組み

「能動的学修支援と学修行動のモニタリングによる学修成果の改善-ICT活用による教育改善の取り組み」

北海道医療大学情報センター長・薬学部 二瓶 裕之 氏

 現在、様々な教育現場において教育の質的転換が求められている。その中で能動的学修を支援するICT活用や学修成果の可視化による教育効果の検証が重要な課題となっている。北海道医療大学で実践してきた教育改善の取組みとその教育効果の検証について紹介する。
 本学では、10年前よりICTを活用した知識習得の支援を行ってきた。これは本学の医療系学部で国家試験対策が重要であったことに起因する。また、夜間教育ではワークショップ型の授業が導入されており、グループワークや発表会を通して一定の成果をあげていた。このようなことから、能動的学修を促進するような支援が進めることになった。能動的学修には多様な方法があることから、それぞれの方法について教育効果を検証することが重要である。また、学生の主体的な学びを促進するには、学生が学修成果をできるだけ早く把握できるような可視化の仕組みも必要である。
 そこで、本取組みでは、まず、授業設計の改善を試みた。「どの時点でどういう能動的学修を行い、どのようなことを評価するのか」を意識した授業設計を行った。授業回ごとに到達目標と演習課題を設定し、課題を実施するために行う学修方略(反転学修や協働学修のやり方など)も決めた。加えて、事前・事後学修についても演習課題を設定した。その上で、到達目標に対する達成度を評価するためのルーブリック評価表を設定した。また、これらの情報を学生に一括して提示した。提示方法は、紙媒体のシラバスだけではなく、Google for Educationを利用した電子シラバスも用いた。具体的には、Googleカレンダーに授業回ごとの到達目標や演習課題など、Googleフォームにルーブリック評価表を掲示した。教員や学生が常に確認できるようにした。
 次に、協働学修でのプロダクト作成やホワイトボード作業をGoogleスライドやJamboardで共有化し、教員や学生が自他の学修行動をモニタリングできるようにした。これによって、教員が素早くフィードバックを返したり、学生が成果を把握して振り返りをすることができるようになった。また、電子シラバスを利用したことで、学生は過去の学修内容や学修成果物を確認することができる。その結果、過去の学修記録を参照しつつ、現在の課題を進めることができるようになった。
 このような能動的学修を促進する取組みを行った授業は5科目で、本発表では情報リテラシーに関する「情報処理演習」と「基礎統計学」、リメディアルに関する「文章指導」について報告する。
 まず、情報処理演習は6学部の1年生を対象にICTに関する知識・技能の修得を目指す授業であった。全授業回の内、前半の授業回は、知識の定着を重視した反転授業で、後半の授業回は、反転授業に協働学修の内容を加えたものであった。
 この協働学修を加えた後半の授業回で、到達目標の達成度に対する学生の自己評価平均値が全体的に上昇し、学部間の差が小さくなることが分かった。その原因は、学生が他の学生の学修行動をモニタリングして自信を深めることができたこと、教員がモニタリングしながら適切にフィードバックできたことだと思われる。
 次に、基礎統計学はリハビリテーション科学部の3年生を対象にした2コマ連続授業で、記述統計量の算出や統計的検定、分散分析などを協働学修で学ぶものであった。また、反転学修と協働学修を交互に取り入れて授業を展開した。
 この授業では、授業回が進むにつれ、主体的な学修成果が見られるようになった。これは事前・事後学修の達成度が高くなってくることから示唆された。さらに、文章指導は薬学部の学生を対象とした3コマ連続授業で、悪文添削、文章読解、調査研究レポートの作成を演習課題と協働学修で学ぶものであった。特に、2019年度からクラウドを全面的に活用し、KJ法のボードや文章を評価するルーブリック評価表の作成過程をモニタリングして協働学修を行った。その結果、到達目標の達成度も高く、学生のコミュニケーション能力も高まった。また、学生の文章作成に対する自信も高くなった。これは教員のモニタリングとフィードバックが適切であったことを示唆している。
 以上のことから、学修内容を設定し、到達課題や演習課題、ルーブリックを適切に設計した上で、ICTを活用して学修行動をモニタリングすることで、協働学修の効果を高め、学生の主体性を育成することができた。今後、学生のコミュニケーション能力を醸成するきっかけになるような工夫を加えていく予定である。

【質疑応答】

[質問1]
授業を展開する上で作業量も多く負担も多いと思うが、こんな授業を実際に展開できるのだろうか。
[回答]
授業は担当教員2名と補助してもらえる職員がいる。電子シラバスやデータ収集はこの職員にお願いしている。この体制で授業を展開している。
[質問2]
同時アクセスの問題でアプリケーションが動かないというトラブルは起きていないのか。
[回答]
この授業の最大同時アクセス数は200で、有線ネットワークで対応している。1、2度トラブルがあったが、常にバックアッププランを用意しており、それで対応した。バックアッププランの用意は必要だと思う。
[質問3]
反転学修の予習をしてこない学生にはどのように対応しているのか。
[回答]
事前課題のフィードバックをすぐ返すことが重要だと思っている。実際にはできないこともあるが、できるだけ対応している。また、文章指導の授業では、課題の提出締め切り時間を授業前にしている。
[質問4]
協働学修ではフリーライダー的な学生は出ないのか。
[回答]
100%見つけることはできないが、高い確率でそういった学生を見つけることはできる。モニタリングの効果だと思う。
分科会E:大学・地域社会連携にICTを利活用した取組み

「3大学9歯科医師会が連携したICT活用による歯科医学教育プログラム実践の効果」

昭和大学歯科医学教育推進室主任教授 片岡 竜太 氏

 昭和大学の特徴に、新入生が1年間全寮生活を送ること、なおかつ、医学部、歯学部、薬学部、保健医療学部の学生が混ざった4人部屋で生活をし、授業の4割が学部共通の科目であることがあげられる。
 ICTを活用して連携した取組みは、学部卒前教育の今後について提唱されたスパイシスモデルがベースにある。つまり、従来のホスピタルべーズドからコミュニティベーズドに変わる。大学病院は非常に難しい患者が来る特定機能病院となっており、学生が普通の病気の患者に触れる機会が少ないのが現状で、大学では学べないことを地域の診療所や病院で勉強することになる。
 大学と地域社会との連携を、北海道医療大学、岩手医科大学、関連する歯科医師会と共同して取組むことが文科省の大学間連携共同教育推進事業に採択された。
 3大学とそれぞれの地域合わせて9つの歯科医師会が連携して口腔医学をチーム医療として行うための教育システムを構築した。ステップ1として3年次に、アクティブラーニング形式で全身と口腔の関連についての基礎知識を習得し、ステップ2で4年次に、ヴァーチャルペーシェント(仮想患者システム)を活用してコミュニケーションと臨床推論能力の養成を行う。そして、ステップ3として5年次の臨床実習で、実践と振り返りを行う。平行して電子ポートフォリオシステムを活用することによって、きめ細かな学生指導が可能になる。
 連携教育の運営は、3大学9歯科医師会で年2回の対面ワークショップとSkypeによる月例会議、これに加えて到達度評価委員会と教育プログラム検討委員会を開催した。
 3大学の教員を対象にした模擬授業で、教材と授業内容の周知を図るとともに、その都度フィードバックし、教育プログラムの改善を図っている。これは現在でも継続して行っている。また、3大学共通試験のフィードバックもプログラム改善に活かしている。
 地域連携歯科医療実習は、歯科医師会との協働で行い、学生は地域歯科医医療の現場で様々な側面に触れ、知識や技術に加え、コミュニケーションの重要性を理解する。こうした取組みを、学生による実習報告会、歯科医師会との教育に関する意見交換会、公開シンポジウム、Web会議システムを活用した3大学の学生交流、学生による学会発表などで、フィードバックし、教育効果を高めており、高い外部評価も得られた。なお、取組み内容とその成果はホームページに公開している。
 得られた成果は、社会のニーズを意識することにより、学生のモチベーションの向上と教員に対してのFD効果が上がったこと、特に、実習での歯科医師の指導とそのフィードバックとにより、学生が社会のニーズを実感したことがあげられる。ICT活用で特記すべきは、教材の共有、仮想患者の教材、卒前教育を生涯教育へ発展させることである。
 今後の発展性として、多様な地域の特徴を採り入れた教育システム、卒前卒後教育システムの連続性、歯科医師会を中心とした生涯学習システム、社会のニーズの変化に対応した教育システムの構築につなげていきたい。
 今後の課題は、IT教材の更新にかかる労力と費用、患者情報を含むためIT教材の公開の難しさ、教員および歯科医師のITスキルの向上、IT教材作成時に生じる著作権の問題などがある。

【質疑応答】

[質問1]
学生の交流はその後も続いているのか。
[回答]
交流会の前にプロダクトを公開し、他の意見を聞いてPPTを修正している。これにより初対面意識がなく、おそらく学生間の自主的交流はその後も続いていると思う。
[質問2]
教材アップデートの計画について聞かせてほしい。
[回答]
スタート時は2025年問題だったが、今は2045年問題にかえる必要がある。予算が限られ、一部の教員に負担が集中することもあり、頭が痛い。参加大学が増えていけば、大学間協力で多少は上手くいくだろうと思う。
[質問3]
教材の評価について聞かせてほしい。
[回答]
学生からは、正答でも誤答と判断されることがある、という不満をよく耳にする。多様な正答例を作成しているが、すべてのバリエーションに対応するのは難しい。一方で、動画は実際の患者が登場するので、臨場感もあり、とてもよい評価が得られている。
[質問4]
教材作成に関しての苦労があったら聞かせてほしい。
[回答]
MCQ形式でないものを作りたかったので、正答を数多く作るのに苦労した。実際には正解でも不正解となってしまった答を正答に加える作業を今も続けている。著作権問題には頭を悩ましている。動画作成および更新時に患者から同意を得るのに骨が折れる。
[質問5]
映像のライブ配信についての考えを聞かせてほしい。
[回答]
画像や情報のライブ発信にストリーミングサーバを使っているが、これでも録画されてしまい、その録画が出回る危険性がある。これを考えるとキリがない。3大学間では、画像や動画データのアーカイブを作成しようという案があるが、完全にクローズできるかどうかというと難しい。もしうまくいけば、大いに活用していきたいと考えている。
分科会F:社会で求められる情報活用能力の育成に向けたモデル授業の理解と実現に向けた対応策の考察

「価値の創出を目指した問題発見・解決思考の「情報活用能力」の育成〜Society5.0 に対応したAI人材の育成を視野に入れて〜」

情報教育研究委員会情報リテラシー・情報倫理分科会 主査 玉田 和恵 氏

 社会で求められる情報活用能力を育成するために、私立大学情報教育協会では「社会で求められる情報活用能力育成のガイドライン」を、大学卒業時に全ての学生が修得しておくべき学士力として提案している。学士課程教育では、生涯に亘って学び続け、主体的に考え最善の解を導き出すために多面的な視点から思考・判断・行動できる人材の育成を目指している。また、近年Society5.0時代に向けて大学教育においても、データサイエンスやAIなどを適切に活用できる人材を輩出することが求められているため、本年度はそれに対応したガイドライン改定について提案を行った。また、現在、SDGs(持続可能な開発目標)が社会の課題となっている。貧困を撲滅し、持続可能な世界を実現するために、17のゴール(目標)が設定されている。問題解決の取組みの深浅に応じて能力が評価できるような課題としてSDGsは適していると考えられるため、授業モデルの一例として、SDGsの中でも大学生の身近な課題として解決可能な「食品ロス」の問題をテーマとして取上げた教材例を紹介した。

「社会で求められる情報活用能力の育成に向けたモデル授業の理解と実現に向けた対応策の考察<到達目標C>」

情報教育研究委員会情報専門教育分科会 主査 大原 茂之 氏

 IoTによって我々の周りの空間は物理的な空間に加えて、サイバー空間が誕生し急速に拡大しつつある。その結果、両方の空間を有機的に活用する新たなニーズが生まれ、文系、理系を問合わず必須の活用力として求められつつある。この活用力を修得させるには、ビッグデータとAIの応用事例に基づいて基本的な活用の仕方を理解させ、これらをツールとして創造力、構想力、コミュニケーション応力を高める新しい教育のあり方が求められる。そのための反転授業案は次のようになる。①情報通信技術の社会的役割、②モデル化とシミュレーション、③データが先導する社会、④社会における情報通信技術のあり方と情報セキュリティとした。IoTやAIの技術を修得することが目的ではなく、空間とこれらの技術を活用して生み出す価値について、思いを巡らし、意見交換できるようになれば初年次教育としては成功。

「文系(経済学)の社会で求められる情報活用能力育成教育の授業モデル案」

情報教育研究委員会分野別情報教育分科会 主査 児島 完二 氏

 「AIや産業用ロボットの導入により、日本の労働現場はどのように変化するか」を講義テーマとして文系(経済学)の授業モデル案と到達目標を提示した。経済学部3年生を対象とした授業では、1回目に産業革命時の機械打ちこわし運動から現代における職業の変化を捉え、生産現場に導入されているロボットなどの状況から将来の労働現場を推論する。2回目には、少子高齢化に直面する日本では労働者一人当たりの生産性の向上が急務であるという課題を、現在の経済政策と関連させて考察する。最後の3回目には、チームごとにまとめた結論を発表する。毎回の授業では、受講生の事前学修に基づきチームでの議論を進め、事後学修により理解度を深める。

「理系(機械工学)の社会で求められる情報活用能力育成教育の授業モデル案」

情報教育研究委員会分野別情報教育分科会 角田 和巳 氏

 専門教育(14コマ)の4コマを使い「あなたの提案する日本のエネルギービジョン」というテーマで、情報活用能力育成を目的とした専門科目との連携モデル授業を実践した。前年度の授業結果を踏まえ、事前課題として、SDGsを手掛かりに日本のエネルギー戦略やその実現に向けた課題調査を行い、その結果を持ち寄って第一週目にグループ内で課題解決の方向性を議論した。第二週は、ICTを活用して収集したデータに基づき、エネルギー需給に関するモデリングやシミュレーションを行い、第三週に進捗状況を報告した。そこでの議論や指摘を再度検討して最終的なエネルギービジョンを取りまとめ、第四週に各グループから提案を行った。

「医療系(医学)の社会で求められる情報活用能力育成教育の授業モデル案」

情報教育研究委員会分野別情報教育分科会 渡辺 淳 氏

 医療系分野(医学)の授業モデル案として「医療プロフェッショナルに必要な医療情報の利活用」を提案した。授業は学生3〜5名を1チームとしたTBLを基本とし、対面学修4回程度およびその前後の事前学習と振り返りで構成され、医療情報を活用した課題発見・解決の要点、手順、心構えについて学修する。まず、根拠に基づいた医療(Evidenced based Medicine;EBM)の枠組みに沿って治療方針決定に至るプロセスを擬似体験しながら生涯学習に必須となる医療情報の取扱い方を修得する。続いて、機械学習・深層学習の概要を学び、チーム毎にAIを用いた診療支援について提案を試みるとともにAI浸透後の医療人に求められる資質について考察する。

【ディスカッション】

 話題提供後のディスカッションでは、初等中等と大学での情報教育の接続の問題や、データサイエンス・AI・プログラミングなどの教育をどのように実践していくべきかということが議論された。主には大学に入ってくるまでの知識や技術の習得度の差をどう解決するか、全ての私立大学でデータサイエンス・AI・プログラミングなどを指導する場合の指導体制、特に指導者不足の問題が明らかになり、今後の課題とした。

分科会G:アクティブ・ラーニングにICTを利活用した取組み

「TEDを活用したアクティブ・ラーニングでGlobal Issuesを学ぶ」

創価大学法学部教授 前田 幸男 氏

 創価大学がスーパーグルーバル大学創成支援事業に採択されたのを受けて、法学部の専門科目Global Issuesで行っている、TED(Technology Entertainment Design)を素材としたアクティブ・ラーニングの取組みについて紹介する。
 同科目は、2年次に政治学・国際関係論の専門科目(2単位)として開講され、履修者は約25〜50名で、すべて英語で授業が行われる。また、言語能力(Listening, Speaking, Writing, Readingの4技能を駆使できる力)と思考力の向上を目指す。授業デザインとしては、Global Issuesに関する10のトピックとそれらに関連するTEDのコンテンツを選び、それらが国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)に掲げられている17の目標とどうつながるのかを意識させる、「ネクサスアプローチ」という方法をとった。設定した10のトピックは、食、教育、セキュリティか共生か、創造性、デモクラシー、貧困と多様性、人口、環境、リーダーシップ、宗教、などである。90分の授業の流れは、①発表者によるプレゼン、②質疑応答、③他の履修者によるプレゼンに対する評価、④グループ・ディスカッション、⑤各グループのディスカッション内容のシェア、などからなる。これらをTED×LMS×反転授業×LTDのアクティブ・ラーニング・コンプレックスと呼んでいる。時系列的にみると、履修者全員がTEDのコンテンツ事前視聴し、学習管理システム(LMS)にコメントを書き込み、さらに、TEDの内容を事前にインプットした上で、プレゼン担当者に対する成績評価をルーブリックにしたがって行う「反転授業」、その後、4〜5名での「話し合い学習法」(LTD)で思考のアウトプットと相互共有を促し、そして、授業終了後に、プレゼンとLTDで得られた知見に対する省察をLMSに書き込む、という授業の流れになる。評価方法は、講義へのコメント、期末レポート、グループ発表、TEDの事前学修と気づきの事前入力、発表へのフィードバックとLTDで気づいたことの事後入力、などからなる。
 授業で取り上げたTEDのコンテンツとひとつ紹介すると、第1回目の「食」についてでは、有名な料理人であるジェイミー・オリバーのプレゼンを手がかりにした。彼は、学校給食がいかにひどいかという話をしたうえで、子どもたちが野菜などの食べ物がどうつくられて、どこから来ているのかを理解していないことを示し、給食も教育の一部であるという。つまり、ここでは給食から様々問題を解決する糸口がみつかる可能性を示している。このコンテンツを深く考えるために、都市と食の関係についてもコンテンツをはじめ、関連するコンテンツを組み合わせて活用した。
 受講生の英語レベルにはばらつきがあり、英語のネイティブ学生もいる。学生のモチベーションを持続させるために、発表グループにはネイティブ学生や帰国生とバランスよく配置し、発表をリードしてもらうようにした。また、スピーキングが苦手でもライティングであれば対応できる学生のために、授業前学修と授業後学修でLMSへの書き込みを評価の一部とする工夫をした。さらに、LMSへの書き込みと学期末レポートは、ライティング・センターでネイティブ・チェックを受けなければならない仕組みにした。
 このような取組みの結果、学生からは、英語力が向上した、とのコメントがあった。また、数量的な分析結果では、Global Issues受講生の授業外学修時間と授業の理解度において、大学全体の平均を上回った。ただし、残された課題としては、①クラスサイズの設定、②英語レベルの下限設定の是非、③学期途中での履修取消しへの対応、④履修者の英語力のフォローアップの可否、⑤グループ発表の評価の公正性、などの5点があげられる。

【質疑応答】

[質問1]
法学部学生の受講生はどれくらいいるのか。
[回答]
国際平和・外交コースの学生は毎年50名程度で、2〜4年のあいだで受講するが、毎年、25〜35名程度である。
[質問2]
LMSは何を使用しているのか。
[回答]
独自開発の「プラス」というものを使用している。
[質問3]
英語能力以外に、取り扱われるテーマそのものについてのフォローアップはあるのか。
[回答]
いまのところは十分に手が回っていないが、この科目をきっかけとして、国際関係やグローバル系の科目に興味をもってほしい。
[質問4]
本来の標準的なLTDだと60分はかかるはずだが、実践されているLTDとはどのようなものか。
[回答]
久留米大学の安永教授等が推進する標準的なLTDそのものではないが、それと同じような仕掛けを使っている。
[質問5]
ディスカッションがうまく進まないときの工夫はあるか。
[回答]
幸いにも、あまり沈黙を続ける学生がいなかったが、かなり意識的にコミュニケーションが促進されるようにファシリテートしている。
[質問6]
学生の自己肯定感の向上や英語に対する抵抗感の軽減といったデータはあるか。
[回答]
アンケート項目のなかに、それらを問う質問はないが、今後、取扱う必要がある。
[質問7]
プレゼンやディスカッションのやり方について、事前に学ぶ機会はあるのか。
[回答]
初年次セミナーでテーマとしてあつかっている。

第3日目(9月6日)

大会発表

※以下の発表者は発表代表者のみ掲載。

A-1 私情協ガイドライン到達目標Cの指導を目指した大学新入生のプログラミング教育に関する意識調査
江戸川大学   小原 裕二

 小中高大連携の情報教育実現のため、新入生のプログラミング教育に対する期待、学修したい内容を調査・検討した。学生は、初等中等教育でプログラミング教育の必修化、ロボットやAIなどSTEM教育に敏感に反応している。今後は、指導法及び教材開発、カリキュラムの検討が必要である。

A-2 情報リテラシーの過去20年と今後
東海大学   白鳥 裕

 20年前と現在のパソコン保有率と使用目的を比較した結果、情報リテラシー教育を取り巻く環境が変化したことがわかった。スマホの普及により、ネット利用などがパソコン型スマホに移行している。このような状況下で、情報リテラシー教育を再考していく必要がある。

A-3 ファシリテーター活動を通じた大学生の問題解決力育成〜小学生へのプログラミング教育での実践〜
江戸川大学   神部 順子

 プログラミング教育の目的が明確化されていないのが現状で、プログラミングをさせることが主眼になっている。調査結果から、大学生のファシリテーターとして問題解決能力を育成するとともに、小学生へのプログラミング教育の指導のありかたを検討していく必要がある。

A-4 モバイル・ラーニングによる ALの実践とソフトコントロールによる学習環境整備の試み
帝京平成大学   庄司 一也

 モバイル・ラーニングによるALを実践したことにより、多くの学生たちが「授業の理念」を理解し、正しい行動をとって学修をすすめることができた。満足度や理解度も向上した。今後は、ソフト・コントロール」ばかりでなく「ハード・コントロール」の視点も取り入れていきたい。

A-5 能動的学習と授業内容の質を両立させるスマホクリッカーを活用した文学教育の授業
創価大学   山中 正樹

 スマホクリッカーを活用して、能動的学修と授業内容の質向上を図った。回答内容をスクリーンに投影し、補足説明や発展的内容の解説を加えた。双方型の授業実践によって、学生の関心が高まった。さらに、他の学生の意見が可視化されることなどによって、学生の学修意欲向上につながった。

A-6 武道教育におけるアクティブラーニングの模索−剣道形におけるICT活用の事例−
桐蔭横浜大学   高瀬 武志

 武道教育において、ICT活用の授業方法、および、モバイル端末等を利用した授業を行うことによって、学修意欲の向上、専門的動作の理解度向上、技術習熟度の向上が見られた。ペアワークやグループワークなどの協働学修を通じて、授業の消化不良をなくすことが可能になった。

A-7 振り返りでのインサイトを可視化、情報デザイン力の向上に組んだ実践報告
敬愛大学   彌島 康朗

 AIを活用した分析ソフトを開発し、AIに機械学習をさせた。これにより多様な分析が可能になり、学生の結果評価だけでなく、プロセスを可視化し、指標化することができた、管理用データとばかりでなく、成長を支援する効果的なフィードバックやプログラム改善に果たした効果は大きい。

A-8 基礎力学のブレンド型授業の実践
神奈川工科大学   神谷 克政

 ブレンド型授業による主な改善効果は授業外学修時間の増加であった。学力下位層と学力上位層で、全学平均を大幅に上回った。その理由は、宿題のオンライン化で学生の学修活動の自由度が高まったことである。また、宿題と授業内活動と関連づけることで、学生の学修意欲が高まった。

A-9 OneNote Class Notebookによるeポートフォリオのクラウド化
甲子園大学   梶木 克則

 OneNote OnlineにClass Notebookを付加することで、これまでのeポートフォリオで必要とされていた機能を追加できた。入力画面が分かりやすく、無理なく入力できるようになった。また、サーバーを置く必要がないクラウドサービスを利用し、eポートフォリオのクラウド化を実現できた。

A-10 技術系大学におけるポートフォリオシステムの活用と改善の取り組み(1) −学修成果の可視化−
広島工業大学   加藤 浩介

 ポートフォリオシステムHITPOを独自開発し、2016年度から全学利用を開始した。学修成果の可視化により、適切な学生指導が可能になった。今回HITPO機能の問題点に対する改善を報告した。今後はさらなる充実を図るとともにディプロマ・サプリメントへの展開を試みる予定である。

A-11 技術系大学におけるポートフォリオシステムの活用と改善の取り組み(2) 〜教養科目の大人数授業における活用例〜
広島工業大学   萬屋 博喜

 初年次技術者倫理教育の必修科でのMoodleの活用事例とその成果を示した。アクティブ・ラーニング手法の再現は、学生相互の意見共有の機会を増やし、学修態度を向上させるという利点かがある一方で、ネット接続環境の不安定さや教員側のスキル不足という課題が浮き彫りになった。

A-12 技術系大学におけるポートフォリオシステムの活用と改善の取り組み(3)〜事前事後学修〜
広島工業大学   大谷 幸三

 フォローアッププログラムにより、新入生の単位取得率は向上し、その目的を達成できた。また、退学率の減少もこの効果であると考えられる。しかし、このプログラムの授業が放課後にしか開講できないことから、履修範囲や学生のレベルに細かく対応することが難しい。次年度以降改善してきたい。

A-13 Moodleにおける学力可視化および効果的な指標について
九州産業大学   石田 俊一

 学力可視化により、学生が自身の学力を把握でき、学修すべき箇所を確認できるようになった。学生の学修意欲も向上し、一定の効果を発揮できたと言える。授業内容と各授業回の双方に対応した指標作り、科目の特製を考慮した指標作りの検証が必要であり、学力可視化機能の改良も必須である。

A-14 水工水理学を通じた教育改善の試み
日本大学   安田 陽一

 アクティブ・ラーニングに関連した問題を出題することによって、論理的に考えることの重要性を周知することが可能になり、授業内容の構成を理解する習慣と他の科目への取組みに改善が見られた。また、学力低下の学生ばかりでなく、上位学生の学力向上を確認することができた。

A-15 予習用動画・音声資料は到達度型要通過試験と受け身型講義の理解に資するか
専修大学   小川 健

 基本的概念の理解につながる映像や音声資料の提供に関しては十分な効果が認められなかった。講義内容や映像内容を理解して回答していないケースが推察された。予習用動画や音声資料を毎回視聴する習慣を付ければ理解促進に効果がある。他方、事後学修に活用する利便性が認められた。

A-16 教えることから学ぶ英語科教育法の実践 −AL型教職科目の開発−
環太平洋大学   井上 聡

 「教えることから学ぶ」授業を設計し「理論と実践の往還」を試みた結果、学生の主体的な関わりが促された。一方、「指導内容と指導技術の交錯」という課題が残された。知識の活用を通して、知識・技術の両面から課題の発見・解決を促進する効果的な教職科目の授業設計が求められる。

A-17 ブレンディッドラーニングが叶える英語対面授業時間の活性化
中部大学   小栗 成子

 主体的で持続可能な英語学修を行うためにブレンディッドラーニングは必要で、これにより授業が活性化される。対面授業とe-Learningをうまく循環させ、学生の主体的学修時間を多く取ることにより、よりよい学修成果が得られる。また、学生の英語に対する不安感も減少し、学修意欲向上にも貢献した。

A-18 日本語教員養成と日本語学習者のため双方向学習プログラムの研究
神戸女子大学   安原 順子

 双方向学修プログラムの実施により、学生の主体的学修の向上が見られた。このプログラムは、遠隔授業の一形態として、様々な学修者主体の学修プログラムにも応用が可能であり、学びを促進するツールとして活用できるとともに、学びのネットワークの起点となる。

A-19 新しい学びのための初級日本語教科書とそのウェブ教材のための開発
城西国際大学   林 千賀

 初級日本語のウェブ教材として、言語学修ポータルサイトとして、音声教材の開発とビデオ教材の開発を行っている。実際の現場で使用可能な画像の提供、大学以外でも使用可能な教材を目指している。また、汎用性のある言葉を中心にした画像を提供するプロジェクトを進めている。

A-20 eラーニング教材使用における学修方略と出題方法が及ぼす効果の分析
東海大学   結城 健太郎

 学修者の負担を減らす課題は、学修者の課題実施をうながすことにはつながらなかった。成長志向・参加志向の学修者は、負担がある程度大きいと、課題取組みが促されるが、完了志向・防衛志向の学修者は、負担を軽くすると行動を起こさない傾向があることがわかった。

B-1 出席管理および学生ポートフォリオ・システムを用いた学生の中退予防に関する取り組み
湘南工科大学   三浦 康之

 授業出欠状況を準リアルタイムに管理する出席確認システム、及び学生個々の目標管理・出欠状況・成果物・教員所見の記録等を集約した学生ポートフォリオシステムの構築について。これらシステムに基づき欠席過多学生を抽出し教職員間で情報共有して対応。状況によっては保護者と連携し、その対応記録をポートフォリオに記載する。本取組みにより欠席過多学生はピーク時よりも半減し中退率も低下した。次年度はピアチューターとの連携により更なる中退学者の減少を目指す。

B-2 学修ポートフォリオに対する学生の意識
名古屋女子大学   三宅 元子

 学修ポートフォリオを紙媒体から電子媒体に変えたことによる学生の取組み状況と学修意識の変化についての報告。紙媒体では予習内容・時間、授業内容、復習内容・時間、質問、理解度を手書きさせたが、電子媒体では更に自由記述と成果を付加した。学生への調査では、溜め書き増加、年次に伴う予習・復習時間減少、学修意識低下等、学修ポートフォリオの理想と現実の乖離がみられた。学修ポートフォリオの意義とメリットを学生に提示することが今後の課題となる。

B-3 ディプロマ・ポリシー対応ルーブリックのICTによる学生自己評価の実施について
金城学院大学   渡辺 恭子

 本学共通DPに基づく学生自己評価DP対応ルーブリックの作成、及びその実施についての報告。ルーブリック評価項目は知識、論理的思考、コミュニケーション等の8項目から成り、到達度の自己評価は4段階、評価基準は4レベルとした。入学生に実施しほぼ全員が回答。各項目の評価から本学共通APに対応した基準1の選択が多いのは妥当といえるが、学修以外の影響が大きいチームワーク、自律性、コミュニケーション項目については評価が低く、その要因の検討を要する。

B-4 学生のファイル管理とGoogle Drive
松山大学   安田 俊一

 学生のファイル管理の現状とGDFS(Google Drive File System)利用促進の効果についての調査報告。アンケート調査によれば、ファイルの未保存、紛失、未整理を多くの学生が経験している。一方、GDFSを学生に利用させた場合、これらの問題発生が減り、クラウドを利用したファイル管理に効果が見られた。ファイル管理上、学生へのGDFS利用促進が望ましいが、スマートフォン等の浸透によりフォルダやファイルの概念が希薄となっている学生に対してファイル管理の作法を教えることも重要である。

B-5 RubyGirls―大学生によるICT支援活動の取り組み事例
京都女子大学   丸野 由希

 プログラミング言語Rubyのコミュニティ活動を受け、プログラミングの楽しさを高校生に体験してもらうために開始したRubyGirls活動の報告。活動の中心は年数回のオープンキャンパスにて催されるプログラミング体験会であり、学生は企画、運営、チューター対応の役を担う。この活動により学生は、学びの深化、自己成長、プログラミングの社会的意義を確認できる。また、学修履歴の追跡可能なオンライン学習システムを導入し、高校生が継続的に学べるようにした。

B-6 悪徳商法への注意を促すインタラクティブゲーム教材の開発
共栄大学   伊藤 大河

 マルチ商法の概要と具体的な手口を理解し、マルチ商法に巻き込まれないための教材を開発。ゼミ生のプロジェクトによって開発の全工程を遂行した。教材形態は、学習者の興味関心を高め理解度向上に効果のあるノベル風インタラクティブ・ゲーム。ゲーム内容は、マルチ商法、ブラックバイト、学生ローン、複利計算等の理解を含むシナリオとし、確認テストも含めた。脚本作成、音声編集、コーディングを行い、PC・スマートフォン・タブレット上で動作可能な教材として完成した。

B-7 3Dバーチャルフィッティングソフト導入によるパターンメーキング力向上への効果
武庫川女子大学   末弘 由佳理

 アパレルメーキングの授業において3Dバーチャルフィッティング機能搭載のアパレル3Dソフトを利用し、完成度の高い作図を目指した取組みの報告。利用ソフトは作図、裁断・印付、仮縫、着付、確認、修正の工程を3Dバーチャルで行える。授業では、ソフトの基本操作、一連の工程、課題を実習した後、同一デザイン画からパターンを起こす最終課題に取組ませた。作図の完成度は筆者考案の離れ値で評価した。学生の声から、本ソフトがパターンメーキング力向上に役立つことが示唆された。

B-8 出欠情報集約による学生の欠席許容意識の検出と出席率改善の方策
東大阪大学   石川 高行

 授業への出欠情報集約に基づく、欠席許容回数に対する学生意識の分析と学生指導への活用についての考察。「5回超の欠席で科目受験資格が欠格」との説明を「5回までなら欠席できる」と解釈している学生が少なくない。そこで、今年度導入した出欠情報集約機能を利用して、こう解釈している学生の意識を分析した。結果からは、科目による欠席数の使い分け、大学と短大の違い、真面目な学生の比率等、いくつかの知見を得た。出欠情報による適切な学生対応が今後の課題である。

B-9 (発表中止)
B-10 地域の歴史的建造物を題材としたプロダクトデザイン教育の実践
新潟経営大学   齊藤 光俊

 地域資源を題材としたプロダクトデザイン教育の実践報告。地域についての興味と魅力をプロダクトデザインとして昇華させることが目標。授業では3D-CADでデザインした小物を3Dプリンタで印刷した。制作物を手に取れるので、ものづくりが実感でき教育効果も増幅された。応用課題として、地域の歴史的建造物である旧七谷郵便局ポストと旧中島浄水場排水塔を題材に小物を制作させた。今後の課題は、プロダクトデザイン検定につながるような座学の授業を設けることである。

B-11 ICTを利用した教育の功罪
聖隷クリストファー大学   石津 希代子

 ICT利用教育のメリットとデメリットからみえてくる実践的な課題についての報告。Moodleを利用した反転授業にアクティブラーニングを組合せたICT利用授業を実施例として、そのメリットは、授業準備の効率化、授業外学習支援の円滑化、自分のペースでの学習可、グループ協働活動の実現等々にある。一方、デメリットは、理解の曖昧さ、能動的思考の減衰、インターネット検索への依存、フリーライダー等々。懇切丁寧な対応が学生を受動的にしてしまうという実践的課題が生じている。

B-12 教養教育における主体的な学びの工夫
豊橋創造大学短期大学部   伊藤 圭一

 時事問題をテーマとする講義において実施した、学生に興味を持たせる工夫についての報告。採用試験での必要性から渋々受講との側面があるため、講義では興味を持たせるための工夫を凝らした。すなわち、目標の明確化(ニュース時事能力検定2級合格)、パワーポイントの活用(学びの気付き)、相互学習の導入(集団討論の訓練)、クリッカーの利用(興味・緊張感の持続)等々。クリッカーについては学生からの好評価の声が高かった。クリッカーの利用を目標につなげる工夫が今後の課題である。

B-13 数理科目における授業ビデオ配信とその教育効果
金沢工業大学   西 誠

 学生の自由な視聴のために配信した数理科目のビデオ教材に関して、学生の視聴状況と教育効果検証の報告。ビデオ教材は1コンテンツ10〜20分に抑えた講義、演習等であり、eシラバスを通じて配信した。月別アクセス人数とコンテンツ視聴数から、視聴数は月を追うごとに増加、視聴数20コンテンツ以下の学生は約半数、60コンテンツ以上の学生は約25%であり定常的に視聴していた。また、視聴の有無と試験得点の関係が認められた。ビデオ教材の教育効果の詳細な検討が今後の課題。

B-14 反転授業の実践を踏まえた「ピアノレッスンメソード」
広島文化学園大学   和田 玲子

 ピアノレッスンメソードと音楽療法の授業連携により、学生の指導力向上と発達障害児の援助を目指した授業実践報告。ピアノレッスンメソードは実践的なピアノ指導力の修得を目的とした授業で、レッスン録画による事前学習、協働討議、振返り等を取入れている。音楽療法は音楽療法士としての自覚促進を目的とした授業で、障害児施設において対象児のレッスンを実施している。対象児が問題をクリアする度に学生が自信を付けていく様子がみられた。体験事例を学生や地域レスナーに伝えていく予定。

B-15 実習系科目における「高次技能習得型」反転授業のデザイン
九州産業大学   緒方 泉

 オンライン学習教材を用いた反転授業の実践報告。教材は博物館学芸員業務を効率的効果的に伝えるために開発した。博物館実習における反転授業は「高次技能習得型」と考えられ、内化と外化を繰返す学習活動が重要となる。反転授業の実践例として「掛軸の取扱い」を取り上げ、事前学習時と事後学習時の教材映像視聴のログ分析を行った結果、学習時間の増加、学習行動の見える化、学習の動機付け誘発等の教育効果が確認できた。学ぶ側から教える側への転換が今後の課題である。

B-16 ICTを利用した反転授業と双方向型授業の試み
順天堂大学   鈴木 良雄

 反転授業とコミュニケーションツールによる自主的な予習復習・学習内容理解を促進させるための授業実践報告。授業スライドと小テストを予め授業HPにアップロードしておき、学生には予習の上で授業に臨ませ、授業で予習内容を確認した。授業形態はコミュニケーションツールSli.doを利用した双方向型。小テスト解答・感想記載用の小冊子を授業開始時に配布し、記載後に回収し採点とコメントを付した。反転授業により成績が向上、Sli.doにより理解度把握・学生対応が向上した。

B-17 VR(実質現実)・AR(拡張現実)を活用した語学教育教材の開発
沖縄国際大学   小渡 悟

 VR空間内での対話性を向上させたVR学習システムの開発、及び学習者間のコミュニケーションを容易にするAR学習システムの開発について。試作VR学習システムは学習者によるVR空間内での移動と物体操作が可能であり、身体動作を通しての単語学習が期待できる。試作AR学習システムでは予め準備したマーカーにカメラを向けると画像等により単語の意味を確認できる。これらシステムを用いた講義を行い、意見収集、学習効果の測定評価を行っていきたい。

B-18 コンピュータを用いた映像制作授業へのミニチュア模型制作の意味
十文字学園女子大学   角田 真二

 ミニチュア模型が織り成す映像制作、授業連携への展開についての報告。ICTによる映像制作の受講学生が、卒業研究テーマとして古い住居のミニチュア模型を製作した。単独で取組む場合は制作するだけで終わってしまうが、それらを後輩が受け継ぎ民話等の映像制作に利用する流れ、卒論研究と映像制作との授業連携が生まれ、また、このことがミニチュア模型製作の動機付けとなっている。手を動かすことによる学びと面白さ、そこから派生する想像力・創造力の重要性を再認識した。

B-19 VR動画教材を用いた基礎看護技術の学習プログラムの開発−2D動画教材との比較−
聖徳大学   駿河 絵理子

 看護技術の主体的な学習促進のために開発したVR動画教材に対する学生の視聴・評価の報告。1年次演習科目において「清拭」のVR教材及び比較対象として「洗髪」の2D動画教材を視聴させ、視聴デバイス、視聴場所、教材評価等々について調査した。結果から、2D教材は帰宅後に携帯端末で、VR教材は空き時間に大学で視聴という傾向がみられ、VR教材は「自分が実施している感覚がある」の評価は高いが「見にくい」との回答もあった。視聴環境と見にくさ改善が課題である。

B-20 実習のためのアセスメント・システムの構築に向けて
東京家政大学   尾崎 司

 実習中における学習支援と学生ケアのために、保育実習ルーブリックのICT化である実習アセスメント・システムを構築した。Googleフォームを活用したシステムであり、学生は実習中でもスマートフォン等でアクセスできる。このシステムにより実習中の情報を直ちに収集し学習支援と学生ケアの両面からの迅速な対応が可能となる。また、収集情報は教員間で共有でき、実習指導への活用、研究への活用、教育への活用の道も拓ける。収集情報の分析と可視化によるシステム検証が今後の課題である。

C-1 LMSの活用による初年次情報リテラシー教育の改善の試み
日本大学   毒島 雄二

 日本大学文理学部で2020年度に予定されている情報関係スキル修得を目的とするカリキュラムおよび授業内容見直しについて報告がなされた。LMSの全面的な活用を通して授業内容の質を保証し、習熟度が基準に満たない学生をより基本的な内容を学ぶ科目へ誘導する仕組みなどが報告された。

C-2 LMS利用の阻害要因の探求 ―専任教員と非常勤教員との比較―
山梨学院大学   原 敏

 専任教員に比べてLMSの利用率が低い非常勤講師に対してLMSの非利用理由に関する質問紙調査を行い、非利用の理由が専任教員の場合と同様であることが明らかになった。そこで、非常勤講師に対してはLMSの活用事例を伝える教学的なFDの促進が有効ではないかと提案された。

C-3 簡易プレイスメントテストの開発とその効果
城西国際大学   尾本 康裕

 留学生の日本語習熟度を効率的に測定し、学習者のレベルに合わせた日本語クラスに所属できるよう、LMSを使ったプレイスメントテストの開発に関する経緯が報告された。現在、簡易版が作成され完全版に向けた開発および効果検証が行われている。

C-4 学習管理システム(LMS)によるスチューデント・アシスタントの「学び力」の養成
金城学院大学   岩崎 公弥子

 情報系科目の授業補助を行うSAのスキルや責任感を身につけ、学びに主体性を持つことができるようになることを目的として導入された研修制度について報告された。SAが立てた目標設定と日々の振り返りを職員やSAでLMSを用いて共有することで、SAの積極性が向上することが示された。

C-5 RPAの教育分野への応用−BizRobo!とGoogleClassroomの連携
香蘭女子短期大学   田中 健吾

 LMSを含む複数のアプリケーションにまたがる情報処理をRPAと連携させることによって工数の軽減ができることが報告された。具体的には、Google ClassroomとBizRobo!を連携させ、Google Formに入力された学生の回答を集約し、評価結果を再び登録する事例が説明された。

C-6 LMSを活用した社会人基礎力育成のための授業改善の取り組み
熊本学園大学   嶋田 文広

 PBL授業においてLMSを用いることで学生対応のレスポンスが改善された結果、PBL授業前後で測定した社会人基礎力の自己評価が向上したことが報告された。これによりPBL授業においてデジタル的手法を用いても成果が得られる可能性があることが示唆された。

C-7 aibo Project Based Learning−aiboから私たちの未来を考える−
愛知学泉短期大学   神谷 良夫

 PBLの課題としてaiboを用いて行った実践例について詳細な報告がなされた。主題は「aiboがキャズムを超えるためには?」であった。学生は事前学習、グループ討議、店舗スタッフへのプレゼンテーションを通して知識や経験を獲得し成長した。

C-8  英語教育におけるPBLの試行
愛知工業大学   加藤 久佳

 英語教育の中で学生にCritical Thinkingを修得してもらう工夫について報告がなされた。時間外学習のノート作成課題の中に英語に関する内容だけではなく、Critical Thinkingに関する問題も含め、教員がそれを添削することで一定の効果があることが示唆された。

C-9 初学者を対象としたプログラミング教育実施前後の意識変化
関西学院大学   岩田 一男

 一般学生を対象としたプログラミング教育の進め方を検討するため、初学者を対象に授業の前後で行った質問紙調査の結果が報告された。初学者は授業を通してプログラミング能力習得に難しさを感じる反面、論理的思考力や発想力を高める上で重要だと考えていることが分かった。

C-10 社会科学系学生の情報活用能力を向上するサービス・ラーニング環境の構築
拓殖大学北海道短期大学   庄内 慶一

 地域住民を対象としたコンピュータ資格取得公開講座に学生がSAとして参加することにより、学生の情報活用能力を高める試みについて報告された。一定の効果は確認できたが、地域住民との協働を進めるためには学生に対する情報教育の改善が必要であることが課題とされた。

C-11 IT教育の入り口としてのドローンの活用
熊本学園大学   新村 太郎

 ネットワークシステムに関する教育の入門としてドローンの制御を課題とすることが効果的であるとの報告がなされた。ドローンに対して学生の興味関心は高く、ドローンの制御を通してネットワークの基礎知識も得ることができた。また、課題の達成度も高かった。

C-12 短大数学科目において、授業内・外の学習で選択肢を提供することに関する検討
福岡工業大学短期大学部   上村 英男

 「学びのユニバーサルデザイン」理論に基づいて実施された授業の事前学習・授業内学習・事後学習それぞれにおいて、学生がどのような学習行動を選択したかについて報告がなされた。どの場面においても学生の行動選択は画一的ではなく、UDL理論の適用が可能であることが示唆された。

C-13 デジタルとアナログの融合を考慮したICTの効果的活用
愛知文教大学   小林 正樹

 大人数授業の授業内学修にICT機器を活用する試みとして、通常の対面授業の中に機器を操作して回答を求めるようなLIVE授業を展開した内容とその効果について報告がなされた。授業全体に対する満足度が改善することが分かったが、他の要因も考えられることが課題とされた。

C-14 全学共通教育科目ハテナソンセミナーの設計及び実践
京都産業大学   佐藤 賢一

 質問駆動型学習を中核とする授業「ハナナソンセミナー」の目的や授業設計、学習効果などについて報告がなされた。この授業は問いを自ら立てるために必要な知識や方法について学び、問題解決の計画策定や実行を行うもので、その学習過程で動画教材が重要な場面で活用されていた。

C-15 MBA教育におけるICT活用に関する事例報告−授業収録配信の実践と遠隔授業の計画−
青山学院大学   川口 央

 MBA教育に活用されているオンデマンド配信の利用状況や双方向遠隔授業の計画について報告がなされた。この授業はMBA取得を目指す院生の学習支援のもので、配信動画に対して学生は画質や音声について高く評価しなかったものの、有用性について高く評価していることが分かった。

C-16 データサイエンス教育を実現するための問題解決型統計教材の開発
江戸川大学   山口 敏和

 統計知識の実践的な活用力を身につけることを目的とする統計教育の授業設計の例として、ICTを用いた問題解決型の学習課題を導入する試みについて報告がなされた。教材から必要な統計手法を発想させるような仕組みを導入し、今後実践することで効果検証を行うことが報告された。

C-17 工学系専門基礎科目における協働学習導入の試み―「機械製図」での実践例―
北海道科学大学短期大学部   亘理 修

 講義主体で行われていた3次元CADを利用して図面を作成する授業において、ALの手法を導入し、協同学習を行った。その結果、学生が授業に能動的に参加することや学習内容に関する理解が深まることが示された。一方、教員の力量向上や教員間の協働の必要性も指摘された。

C-18 大学入学共通テストに向けたピア・インストラクションを導入した物理学授業の開発
金沢工業大学   工藤 知草

 物理学を学ぶ授業でピア・インストラクションを導入した授業の設計と内容について報告がなされた。物理学の事象に関する問題に対してクリッカーを利用したり、実際に測定データを収集したりすることで理解を深め、集団討議も加えながら正解にたどり着くような試みが発表された。

C-19 Google Classroomを用いた地域の計画提案の協調学習
立命館大学   笹谷 康之

 建設系学科の学生を対象に行った地域の計画提案に関するグループワークにGoogle Classroomを導入した実践例について報告がなされた。評価としては、学内システムと比べ使い勝手がよいこと、効果としては、知識・技能・態度すべての面で向上していることが示唆された。

C-20 「テレまね」システムを用いた遠隔地を結んでのSTEAM教育の展開
北海道科学大学   木村 尚仁

 まず、北海道科学大学でこれまで行ってきた「クラウドキャンパス」プロジェクトの中からSTEAM教育に関する内容を取りあげた遠隔講義の実践例が報告された。次に、これまでの実績を踏まえて「テレまねシステム」という遠隔教育システムの構築と運用を検討していることが報告された。

D-1 大東文化大学教学IR委員会発足と今後の展望
大東文化大学   三嶋 啓仁

 学内データを収集・分析し、改善施策立案と実行および大学執行部の意思決定の根拠資料の作成のために設置された、登壇者の所属大学における教学IR委員会について、組織の発足、委員の構成、活動(データの収集と管理・分析ツール・データ分析項目履歴)について報告された。

D-2 全学のFD活動を支援する学修基礎データの組織的な整備と可視化 ダッシュボード機能の実現に向けて
名古屋学院大学   児島 完二

 全学FD活動のひとつとして、学期ごとの授業実績データ(授業実績、成績分布、出席状況)を教職員に公開しているが、このデータの準備に自動集計を取り入れたことと、将来的にダッシュボート機能を導入して各種のデータをリアルタイム表示し、離籍対策への活用が期待されることが報告された。

D-3 講義収録システムLecRecの運用・利活用とその評価
京都産業大学   大本 英徹

 平成24年度から継続している、講義映像を自動収録してネットワークを介してオンデマンド配信するシステムについて、システムの導入から更新の経緯と運用状況について紹介された。学生の利用状況に基づいて、学業成績と視聴状況に関する分析を行った結果について報告された。

D-4 ICT活用による教育改革の取り組み−BYODの有効利用のために−
長崎大学   若菜 啓孝

 平成26年度入学生から実施しているPCの必携化による、ICTを活用した教育改革について、動画教材をベースとした授業設計が必要となり、スライドの動画化、コンテンツ事例紹介、学習成果の確認方法などに関するFDやマニュアル作成を通して普及活動を進めていることが報告された。

D-5 CMSとVBAによるWebアンケートシステムの開発
皇學館大学   張 磊

 授業アンケートのWeb化について、MoodleやExcelという汎用的なツールを利用して開発したシステムについて紹介された。安価性・即時性・安全性・自由な利用形態などのメリットはあるが、本人照合・回答率に問題があることが報告され、改善点として教務システムや成績評価との連携が提案された。

D-6 G Suits for Education 活用による情報伝達システムの構築
武庫川女子大学   蓬田 健太郎

 スマートフォンやSNSの普及に伴い、学内の情報伝達システムとしてG suits for Educationを導入したことが紹介された。導入に際し、学内wi-fi環境の強化などの課題を解決し、クラスルーム機能などが活用可能となったこと、初年次教育の見直しに向けたシステム構築に着手していることが報告された。

D-7 情報倫理教育用e-Learning教材の開発と授業方法の提案
名古屋文理大学   山住 富也

 情報倫理教育のためのe-Learning教材として、モラル・法律・セキュリティなどの広範囲の内容に関するコンテンツを開発していることが紹介された。情報倫理に関するアンケートの実施結果を通して、今後のコンテンツのあり方や授業方法の検討課題についての考察や提案が報告された。

D-8 被服製作実習授業におけるICT教材活用の可能性
武庫川女子大学   吉井 美奈子

 教員養成課程の「教科家庭」の被服製作実習において利用することを想定した動画を活用した教材を作成したことと、授業での活用の可能性に関し「基本縫いのスキル」に関する事前調査、「動画の活用状況」などの事後調査の結果および「考えられる効果」について報告された。

D-9 出席情報の登録に有効なスマ−ト情報メディアの提案
湘南工科大学   保坂 良資

 学生証などに組み込む認証方法として、RFIDやステルスインクで印刷したQRコードを用いることが提案された。前者は病院内の患者や医療スタッフの認証に実用化され、カードリーダなしで教室での出席状況の確認が可能で、後者は顔認証との併用で「なりすまし」除去の可能性が生じることが報告された。

D-10 講義視聴システムが医学部生の学修行動に及ぼす効果について
帝京大学   菊地 弘敏

 講義を完全自動で収録し、後日学生が視聴する形態を学修支援について紹介された。この講義視聴システムの利用状況の解析結果から2年生と3年生の利用が多く、アンケート結果から利用の理由は欠席・復習・聞き逃しなどで、利用者が良好な感想を持っていることが報告された。

D-11 授業評価アンケートの所感の提出率をアップさせるために 授業成果レポートとワードクラウドによる可視化
名古屋学院大学   加藤 めぐみ

 授業評価アンケートの結果に対する教員による履修者へのフィードバックと所感の提出状況を改善するため、授業改善に向けた振り返りのための授業成果レポートの提示、自由記述のワードクラウドを使った提示、過去の結果との比較の機能を追加し、教員支援を改善したことについて報告された。

D-12 ラーニング・コモンズでのW|Aを用いた基礎数学勉強会の試行
同志社大学   伊藤 利明

 数値計算・数式処理の可能な計算知識エンジンを用いて、基礎数学勉強会をラーニングコモンズで試行していることが紹介された。春学期の高校と大学の数学の橋渡し、秋学期の大学初年次の基礎数学の取組み、およびこの方法の他の理系基礎科目などへの転用が期待できることが報告された。

D-13 情報リテラシー科目におけるタイピング学習の効果に関する研究
大阪商業大学   小林 俊和

 コンピュータの操作に不慣れな文系学生に対する基礎情報科目で、タイピング学習の導入効果について紹介された。タイピングの速度より正確さの方が、各種アプリケーションやプログラミングなどの応用科目の学修意欲の向上につながる可能性があるという傾向が見られることが報告された。

D-14 大学教職科目「初等教科教育法(算数)」におけるプログラミング教育の導入について
浜松学院大学   坂本 雄士

 プログラミング教育を教職科目である「初等教科教育法(算数)」に導入することについて、登壇者が実践したプログラミング教育に関する授業について紹介された。「スクラッチ」などの複数のプログラミング教材について、実践した結果および学生のアンケート結果について報告された。

D-15 ビデオコラボレーションプラットフォームを用いた看護技術自己練習の学生による評価
日本福祉大学   水越 秋峰

 看護技術教育にビデオコラボレーションプラットフォームを試行的に導入し、課題を検討したことについて紹介された。ベッドメイキングの動作について撮影された動画をプラットフォーム上で視聴した学生の使用感評価、これを用いた自己練習について分析した結果について報告された。

D-16 ICTを利用したアクティブ・ラーニング
広島女学院大学   中田 美喜子

 座学講義にアクティブ・ラーニングを取り入れて実施する方法について紹介された。講義資料の配布、課題レポートの提出、SNSによる振り返りなどを導入してグループ学習を実施した科目について収集したアンケート結果を報告するとともに、各種の情報ツールの利用例について提案された。座学講義にアクティブ・ラーニングを取り入れて実施する方法について紹介された。講義資料の配布、課題レポートの提出、SNSによる振り返りなどを導入してグループ学習を実施した科目について収集したアンケート結果を報告するとともに、各種の情報ツールの利用例について提案された。

D-17 ICTを活用した海外留学中の学生のフィールドワーク
関西学院大学   木本 圭一

 海外留学中の学生が訪問国で実施したフィールドワークについて紹介された。日本を含めた9か国で、各国での就職活動についてインタビュー調査を行い、その結果をICTによる音声・文書の連絡ツールを各国間で用いての比較分析することにより、フィールドワークを実現できることが報告された。

D-18 AI人材の情報倫理教育におけるインフォームド・コンセントを基盤とした能動的学修
京都女子大学   水野 義之

 AI時代の人材に求められる情報倫理教育について、一般社会でのAIの取り扱われ方からAIの定義の再確認を行うことからその重要性について述べられた。AIの倫理教育として医療倫理を範型としたインフォームド・コンセントを基盤とし、AI倫理の教育および能動的学修の議論を進める必要性が提案された。

D-19 世界の消費に対する人口の影響度に関する基礎ゼミでの統計データ分析学習
関西学院大学   藤澤 武史

 登壇者の担当する基礎ゼミ・演習科目での統計データの分析学習について紹介された。ExcelやSPSSなどのソフトウェアを用いた、世界の消費に対する人口の影響度について、乗用車購入台数や冷蔵庫やカラーTVの需要のような具体的なデータを用いたデータ分析の授業内容に関する報告が行われた。

D-20 仮想経営演習(ビジネス・ゲーム)を通じて学べること再考
流通科学大学   小笠原 宏

 独自開発のゲームエンジンを教材とする「ビジネス・ゲーム」による教育学習効果について紹介された。仮想的に経営者の環境と立場を再現し、学生が体験を重ね「極限まで考え、自ら学習する」ことを課していることが報告され、希望のある場合には他大学に教材の提供も可能であると提案された。


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