事業活動報告 3

2019年度 FDのための情報技術研究講習会 開催報告

1.はじめに

 私立大学情報教育協会が主催する本講習会は、大学教員の教育技術力向上のための学外FD活動の一つとして毎年開催されている。今年度の講習会は、どの分野でも必要となるICTの活用方法および教育改善手法の習得を目的として、教員と学生・学生間の対話を支援するツール、教室内と教室外での学修を支援するツール、動画・音声教材の製作、PBLにICTを活用する方法などについて、認識を共有するための「全体会」と実際に体験するための「ワークショップ」を設定し、2月26日〜27日(2日間)、追手門学院大学(大阪府茨木市)の新キャンパスにおいて開催された。「全体会」の内容は、本協会の事業「情報通信技術による教育改善の研究」における「A分野横断フォーラム型授業の試行研究」との連携を意識して設計し、他方、9つの「ワークショップ」は一昨年からの改善点を踏襲して、参加者に自由に選んでもらうアラカルト方式を採用した。
 今年度は新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、参加申込者数は40名(昨年は64名)と減少し、さらに当日キャンセルが6名あったため、結果、参加者数は34名であった。それでも、参加された先生方はどなたも参加意欲が高く、2日間にわたり会場内では活発な討論が繰り広げられた。
 なお、感染対策として、大学側によるアルコール消毒の手配、本協会としてマスクを着用した説明、参加者間の座席位置を配慮し、二日目の終了時まで体調不良者は見られなかった。

2.講習内容と結果

2−1.全体会(共通講義) 

(1)分野横断フォーラム型授業の取組み
@ 法政策等フォーラム型授業
  中村 壽宏 氏(神奈川大学法学部教授)
 2大学3チームでSDGsの「食品ロス問題」をテーマに、ネット学修で各方面の有識者と意見交流・助言を受け、解決策を提案する授業の有効性を示した。

A 多職種連携フォーラム型PBL授業
  片岡 竜太 氏(昭和大学歯科医学教育推進室 主任教授)
 健康長寿社会での6分野(医学、歯学、薬学、看護学、栄養学、社会福祉学)での職種の役割を検討するため、ネット上で自己学修を行い、その成果をプラットフォーム上で共有し、テレビ会議ソフトで異分野の考えを確認した上で、自己職種の役割を考えるネット学修の有効性を紹介した。

(2)学修プラットフォームに期待される機能の紹介
 袴田 真穂 氏(日本マイクロソフト株式会社)
 対面授業と同様にネット上で課題認識、問題の洗い出し、解決策の意見交換、有識者との意見交流、他チームによる解決策の評価などが行える教育システムを紹介した。

(3)ICT活用と著作権―著作権法改正の意義と 補償金制度
 中村 壽宏 氏(神奈川大学法学部教授)
 第三者の著作物の権利を保護する著作権の対応と、著作権法改正の意義と補償金問題について認識の共有を図った。
 いずれの講演においても、参加された教員から、「異なる専門領域で行われている教育の取組みを知ることができ興味深かった」、「SDGsやフィールドワークなど次年度のPBL授業に取り入れてみたい」、「学生に考えさせる取組みを授業に取り入れたい」、「著作権は良い復習になった」など、高い評価の感想が寄せられた。

2−2.ワークショップ

(1)ワークショップ1
  「Google Formsで授業を始めてみる」

 アンケートなどのツールとしてGoogle Formsがよく使われているが、アンケートだけでなく、多彩な質問形式のコンテンツを簡単に作成でき学修者に回答を求めることが可能なため、ちょっとした発想の転換をして日常の授業に導入すれば双方向性のある授業が可能になる点に注目し、今年度から新しくワークショップを設けた。教員はパソコンで、学修者はスマホを使うことですぐに実現できる授業改善の一つである。
 ワークショップでは、様々な質問形式のコンテンツの作成方法を実習した。さらに、動画を追加し質問と組み合わせることで動画を閲覧した後で質問などに回答できるので、事前学習などへの応用や、回答に応じて異なった質問を表示する方法、自動採点でき回答に応じてフィードバックできるドリルの作り方などを紹介した。また、FormsのURLを学生にリアルタイムに伝えるための方法についても解説した。なお、実施に当たっては小グループを作り、教員と学修者のそれぞれの画面を体験できるようにした。

 新設の入門的なワークショップではあったが、受講者も多く「とても使えそう」、「実際に授業でも使ってみたいと思う」など興味関心が高いことが分かった。また、参加者の授業を双方性のあるものに改善していこうとする積極的な意欲が感じられた。このようなシンプルなシステムが先生方には受け入れやすく歓迎されるのかも知れない。Microsoft Formsもあるので、今後はGoogle Formsだけでなく、両者を紹介するようなコースも検討する必要がある。

(2)ワークショップ2
  「LMSを授業に生かす」

 LMS(Learning Management System)は、学修支援に活用できるツールの一つである。特に、学生の主体的な学修の必要性が謳われる現在、その利用価値はますます高くなっている。ワークショップ2では、このLMSを授業および事前、事後学修の支援に利用するための基礎的な操作方法の習得を目指し、講義、実習を行った。なお、受講者の所属する大学におけるLMSの導入状況が多様であることに鑑み、本ワークショップでは、無料で入手可能なオープンソースLMSの中から、利用者の多いMoodleを用いた。
 本ワークショップでは、LMSの種類にできるだけ依存しないような基本機能の利用を中心に、学修の支援を「事前学修」、「授業」、「事後学修」の3つの状況に分け、それぞれの状況でLMSがどのように利用可能かについて、昨年度に比べより授業の流れの中での利用を意識した構成に変更して講義、実習を行った。
 講義および実習では、まずLMSを用いたコミュニケーション、教材や資料などの情報の提供と共有方法など、多くの授業で利用可能な基礎的な機能を扱った。また、教員?学生間、学生?学生間の双方向のやり取りを支援するための、アンケート機能、掲示板機能の活用方法についても実習を行った。これに加えて、本年度は、昨年度活用編で受講者の取組みが多かった問題演習についても扱った。

 既に勤務する大学にLMSが導入されているものの、具体的にどのようなスタンスで利用すれば良いのかなど、目的が明確な受講者が多く、受講者数は9名であった。事後アンケートの結果から、課題の達成に対して全員が「達成できた」あるいは「見通しがたった」と回答しており、また、難易度も「難しい」と回答した受講者な0人であったことから、ワークショップの設計は適切であったと考えている。自由記述の内容からも、本ワークショップの内容が今後の授業利用に役立てたいと回答された方も多かった。一方でMoodle以外のLMSでの実習を望む声もあり、今後の検討課題とする。

(3)ワークショップ3・9
  「動画教材の作成」

 講義ビデオなどの動画教材は、反転授業の事前学習、演習問題の解説、実習方法の説明などで益々ニーズが高まっていることから、昨年度に引き続き、動画教材の作成をテーマとしたワークショップを企画した。
 ワークショップ3「モバイルによる教材作成」では、iPhoneやiPadを用いたモバイル環境での動画教材の作成を対象とした。ワークショップの内容は昨年度とほぼ同様で、最初に講義授業やアクティブ・ラーニング授業などの授業形態に応じた活用場面、講義ビデオ作成のポイントなどについて講義形式で解説を行った。その後、iPhoneやiPadを用いて、スクリーンの動画と音声を収録してビデオを作成する方法、作成した動画を編集する方法、そしてYouTubeを用いて配信する方法の操作実習を行った。動画の作成はiPhoneとiPadに内蔵されている画面収録の機能を利用し、動画の編集と配信用ファイルの書き出しはiPhone・iPadに付属のソフトウェアであるiMovieを使用した。これらの実習は受講者が持参したデバイスを会場の無線LANに接続して行った。また、実習に際してアイスブレーキングの活動を行った後に、グループ内で進捗の確認や操作の教え合いなどのコミュニケーションを積極的に促したため、情報交換も活発に行われていた。
 一方、ワークショップ9「PCを用いた動画教材作成」では、PC環境での動画教材の作成を対象とした。よく利用されているプレゼンテーションソフトのPowerPointは、マイクを接続してパワーポイント表示に合せて自らのナレーションを付加でき、かつ、このナレーション付きの動画ファイルを生成できる。この方法についてテキストを参考に各自が実習し、判らない部分をサポートする形式で受講者の理解を深めた。PowerPointではWebカメラの画像で教員の顔を収録する方法や必要に応じて教員の顔を非表示にする方法なども紹介した。
 また別の収録方法として、ブラウザのGoogle Chromeを用いる手法を紹介した。Google ChromeにScreencastifyという機能をアドオンすることで、PC画面やブラウザ画面を収録できる。参加者全員がインストールして収録を体験した。また、Webカメラを接続すればカメラの動画も収録できる。教員の顔を写しても良いし、教材を撮影することもできる。この方法を解説、実習した。ChromeからYouTubeにアップロードする場合はファイル形式を変換することなく可能である。YouTubeにアップロードするのではなく、LMSにアップロードする場合を想定している。ファイル変換は、AnyVideoConverter-Freeを利用できるが、ScreencastifyはMP4への出力をサポートするようになったので、動画ファイルの形式を変換するソフトの使用方法は解説にとどめた。補足資料として用意したWindows10のGameDVRを用いた収録方法も併せて紹介した。

 アンケート結果からは、動画教材に関するこれら2つのワークショップでは63%の参加者が「達成できた」、31%の参加者が「見通しがたった」としていた。また、「苦手意識がなくなり、今後前向きにビデオ作成できそう」、「実際に動画作成できたので、今後是非活用したい」といった意見をいただいた。一方、「いろいろと制限されていて、全体的なことがよく分かりませんでした」という意見もあったが、会場となったパソコン教室のセキュリティが高かったために動作させることができない機能があったことが要因であると思われる。今後の検討課題としたい。

(4)ワークショップ4
  「Google Classroomで授業を始めてみる」

 最近では学校向けの学習用プラットフォームがWeb上で提供されている。Google Classroomは複雑でなくコンテンツも資料・質問・課題と種類が少なく仕組みが理解しやすい。大学で導入しているLMSを使うのは敷居が高くためらっている先生方には、そのきっかけとしてこのようなシステムを使ってみるのも一つの方法である。このコースの設定は3年目であるが、昨年までは学修者からの視点でシステムを理解するコース「Google Classroomで授業を受けてみる」とセットで実施していた。今年度は授業を作る先生側のシステム紹介のコースのみを実施した。
 ワークショップでは、Classroomで実際にクラスを作り、授業を構成する課題や質問、資料の登録方法を体験してもらったが、教員と学修者で見え方が異なるので、少人数のグループを作り、参加された先生が作ったクラスルームに、生徒としてグループ員が参加し回答やコメントを書くことで、実際の授業環境に近い形で実施した。そのうえで、自分の授業形態にそった活用方法を検討してもらった。

 授業を受ける生徒側からClassroomの機能を理解するコースを作らなかったので、できるだけ詳しく活用の方法を説明したが、結果的に時間が不足し、技術的な紹介についても不十分で中途半端になってしまった。「具体的な利用例を知りたい」という希望もあるので、今後は時間的な問題はあるがミニ模擬授業なども含めてコースの内容を再検討する必要がある。なお、成績のカテゴリやルーブリックなどClassroomの機能が年々向上してきているので、さらに活用するための上級コースの開催も視野に入れて検討していきたい。

(5)ワークショップ5
  「授業に生かすICTツール入門」

 ICTは学生の学びをサポートする有力なツールの一つであり、利用できるアプリケーションやサービスも年々増加している。その一方で、実際にどのようなツールがあり、どのような場面で利用できるのかが分からず、使用することに二の足を踏んでいる教員も少なくない。本ワークショップでは、LMS以外で授業に役立ちそうな様々なICTについて、講義と実習を行った。
 昨年度は、ここのツールの使い方に終始し、また、扱ったツールの種類も多く、やや講義全体が散漫になった感があった。そこで、本年度は、実際の利用場面を想定してツールの説明や実習を行うとともに、昨年度人気の高かったツールの実習に時間を多く配分する構成に変更して実施した。
 ワークショップ冒頭で実施した講義では、「講義とICT」と題して、授業やその準備として利用可能な様々なICTを紹介するとともに、どのようなICTがどのような場面で利用可能かについて解説を行った。本年度のワークショップでは、昨年度人気の高かった双方向授業を展開するためのゲームライクなクイズを実施可能とする「Kahoot!」、共同作業が可能なマインドマップ作成ツール「Coggle」に時間を多く配分した。
 実習は、まず各アプリケーションおよびサービスの利用方法を解説後、それぞれの受講者に使い方を体験していただいた。その後演習時間内で、各人の目的に応じて自由に練習していただくことにし、なるべく個人の利用目的に即した実習ができるよう配慮した。

 事後アンケートからは、受講生11名全員が、課題の達成に関する質問に対し「達成できた」あるいは「見通しはたった」と回答しており、概ねワークショップの内容が受講者にとって適切であったと考えている。また、難易度に関しても全員が「簡単」あるいは「普通」と回答しており、難易度的にも適当であったと考えている。
 ICTツールは現在も様々なものが開発されており、ライブの授業やオンデマンド授業で利用できるものも多い。今後も継続的な開催を検討したい。

(6)ワークショップ6
  「ルーブリックの作成とICT活用」

 近年、ルーブリックの活用が広まっていることから、昨年度に引き続き、ルーブリックをテーマとしたワークショップを企画した。今年度は自分の授業で使用できるルーブリックを検討する活動を中心におき、LMSでのルーブリック活用とGoogleフォームを利用した学生の自己評価集計方法はオプションとした。そこで、事前にルーブリックを作成する対象の課題を準備しておくことを参加要件とした。ワークショップでは最初にルーブリックについて講義形式で解説し、その後にグループ実習と個別実習によって各自のルーブリックを作成する活動を行った。
 ルーブリックの講義においては、量的評価と質的評価の観点からのルーブリックの位置づけ、ルーブリックの表現方法、ルーブリックの活用場面、ルーブリックの作成方法について具体例を交えて解説した。特にルーブリックが教員と学生のコミュニケーションツールとしての役割を持つことの意味を強調し、ルーブリックを作成する際に参考となる「ICEモデル」を紹介した。
 続いて、グループ内で各受講者が自分のルーブリックの対象とする課題について相互に紹介し合った。受講された先生方は事前の参加要件で示されていた課題を準備してきており、目的意識がしっかりとしていた印象を受けた。
 次にルーブリック作成のポイントを短時間でレビューした後、個別実習に入った。個別実習では、各自が対象とする課題を評価するためのルーブリックを作成した。受講者全員が集中して取組んでいた。この時間帯に余裕がある受講者はLMSやGoogleフォームの実習を行うこととしたが、受講者のほとんどが、各自作成したルーブリックをブラッシュアップする作業に専念している様子であった。
 その後、再びグループ実習を行い、グループ内で各受講者が作成したルーブリックを紹介し合った。どの受講者の紹介においても持ち時間一杯まで質疑応答が活発になされていた。最後に各グループからグループ内の主な話題を発表して頂き、全体で認識の共有を図った。

 アンケート結果からは、67%の参加者が「達成できた」、33%の参加者が「見通しがたった」としていた。自由記述では「体系的にルーブリックを学べたのは良かった」、「実際の講義にすぐ使える内容で良かった」といったコメントがあった。ルーブリックについての講義を聴講し、次に各受講者が自分自身の課題についてルーブリックを作成し、最後にグループでディスカッションするという構成が有益であったと思われる。

(7)ワークショップ7
  「アクティブ・ラーニングで授業を進める」

 アクティブ・ラーニングは、授業方法の改革として重要なメソッドとして指摘されてきた。しかし、昨今の新型コロナウィルス感染拡大により遠隔授業が一時的にも主体になってきている状況下で、対面でないことを理由に、アクティブ・ラーニングから離れていく傾向が懸念されている。アクティブ・ラーニングこそIoTを使った教育の最も合理的な方法でもある。大学教育の成果は、先行してきた欧米に比べ大学等の授業時間・方法の相違もあり、我が国においては対応できる方法を一工夫しなければならなかった。しかし、今般の状況による変化は、大学教育の大きな変容の幕開けとみることができる。
 一方、国は、AIを活用した大学教育の変革を期待しているが、現場に行くほど意識は低いと言わざるを得ない。AIによる教育は、アクティブ・ラーニングの発展的形態でもある。本ワークショップでは、それらを総括的に意識しながら、本来のアクティブ・ラーニングの授業活用を理解しながら、参加者自らの授業に工夫、適応できるようにという意図を持って企画した。

 本ワークショップの実習において基本的な技術部分を加えたため、時間配分が過密になりディスカッションとまとめに時間が不足してしまった。その結果、「達成できなかった」が50%を占めたのが、非常に残念であった。しかし、まとめが充分でなかったにもかかわらず、「見通しがたった」、「達成できた」が50%を占めたことから、受講者のレベルが予想以上に上がってきていると思われる。少ない時間内のディスカッションでも、多くのアイデア、疑問点の論議が行われ、個別にまとめが行われていた。時間の制約から問題点の解消方法の発表ではグループ内の発表にとどまったが、各グループで進んだ論議が行われていたのは有意義であった。IoTを使った次の世代の授業形態は、「画面を見る」、「双方向方からの伝達」の基本から大きく発展する機会であり、その大きな変革は日本の大学レベルの国際的躍進のチャンスでもある。これらを視野に入れた新たな企画が望まれる。

(8)ワークショップ8
  「Google Sitesでポートフォリオを作ってみる」

 ティーチングポートフォリオ、ラーニングポートフォリをいう言葉を耳にするようになり、大学入試などにも利用されつつある。またポートフォリオを用いた指導はプロセス評価であることから、学生の能力や特性をより的確に評価できる、ポートフォリオに対する自己評価により、メタ認知などが獲得され、学生の学びがより深まるなど、その効果が取り立たされている。しかし、実際にポートフォリオを導入し、活用している大学は多くない。本ワークショップでは、ポートフォリオに興味がある教員を対象に、ポートフォリオや、ポートフォリオの作成と利用の概要を把握していただくことを目的として、本年度から新たに設定した。
 講義では、まずポートフォリオの概要およびどのような使い方がされているのかについて解説を行った。実習では、いくつかのサンプル成果物をラーニングポートフォリオとしてまとめる体験を行った。eポートフォリオのシステムには様々なものがあり、システムによってポートフォリオの捉え方も異なることから、操作も多様である。本ワークショップでは、勤務先にeポートフォリオが導入されていなくても、その後の検討が可能となるよう、GoogleドライブおよびGoogleサイトを組み合わせて、簡易的な方法で実習を行った。ただし、今回のワークショプでは、プロセス評価の方法は扱わなかった。

 本ワークショップ設計の当初から、ポートフォリオに対する認識は人によって差があり、また、受講者の目的も多様であることが想定されていた。実際にアンケート結果でも、「課題の達成」においても受講者9名中1名の受講者が、内容が自分の想定と異なり達成できなかったと回答していた。次年度以降も開講するのであれば、ワークショップ方向性を明確にする必要があると思われる。難易度についても初めて取組まれた受講者が多かったことから「易しい」との回答は0人であったが、自由記述欄からはワークショップ自体に対する満足度は高かったものと推察される。

3.おわりに

 本講習会に対する参加者のアンケートの集計によれば、参加者個人が抱えている課題の達成について、「見通しがたった」との回答がほとんどであることから、本講習会の目的は達成されていると見られる(以下のアンケート集計表を参照)。

ワークショップ名 達成できた 見通しがたった 達成できなかった
① Google Forms・Classroom 2コマ 4割 6割
② LMS 1コマ 6割 4割
③ 動画教材 2コマ 6割 3割 1割(1人)
④ ALマネジメント 1コマ 2割 3割 5割(3人)
⑤ ルーブリック 1コマ 7割 3割
⑥ ポートフォリオ 1コマ 6割 3割 1割(1人)
⑦ ICTツール 1コマ 7割 3割

 参加者にはリピーターも多く、彼らの声を聞くと、本講習会の開催がいかに有意義であるかを窺い知ることができた。
 また、上記(ワークショップ7)の報告でも触れたように、今般、新型コロナウィルス感染拡大の影響でほとんどの大学はオンライン授業となり、その意味では、ネット上でチームワークを実現する教育用ツールの紹介や教育用動画作成・配信の体験など本講習会が提供したテーマ全てが、まさに今、各大学において即戦力としてのニーズに応える内容であった。
 今後も、様々な場面でのICT支援教育をテーマとした先導的取組みである本事業を、これまで私情協が永年実践し積み上げてきたノウハウと、教育界の趨勢・最新のニーズを見極めつつ、立案・推進していかなければならない。次年度も、今回の実績を精査し、より実りある講習会の開催を期待する。

文責:FD情報技術講習会運営委員会


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