特集 学修者本位の教育の実現、学びの質の向上を目指した大学教育のDX構想(その2)
金政 祐司(追手門学院大学 副学長)
2020年春、新型コロナウイルス感染症の影響により、従来通りの学びの継続が困難な状況にある中、本学は「学びを止めない!」を合言葉に全授業をオンラインに切り替え、学年暦を変更することなく、授業を開始することができました。
これは2019年4月の茨木総持寺キャンパス開設に向けて、数年前からBYOD(学生個人のPCを活用した授業運営)やLMS(学習管理システム)など教育環境のICT化を積極的に進めていたことが功を奏した結果であると考えています。
本学では、「高い志を持って主体的に学び、新しい社会の創出・発展に協働的に関わることのできる資質・能力・人間性を有する人物」の育成を教育方針とし、日々、教育改革に注力しています。
これらの教育理念を実現するため、「行動して学び、学びながら行動する」をコンセプトに、主体的に学び、協働して問題解決に当たる本学独自の学修スタイル「OIDAI WIL(Work-Is-Learning)」(図1)、および本学独自の教育手法である「ICTを含めたあらゆる手法を活用し教育内容にマッチした最適な手法で教育効果の最大化を実現するOIDAI MATCH(MAximized TeaCHing)」(図2)を実施しているところです。
図1 OIDAI WILの概念図
これらのスタイル・手法(OIDAI WIL Plus MATCH)をより高度化し、本学独自の「学修者本位の教育」を実現するために、独立しているシステムを連携して学修ログを蓄積、蓄積されたデータを解析し、学修成果を可視化することで、学修者一人ひとりに最適化された教育を提供する環境の構築を行っています。
図2 OIDAI MATCHの概念図
OIDAI WIL Plus MATCHのスタイル・手法をより高度化し、学修者本位の教育の実現を加速するために「追手門学院大学DX推進計画」(表1)を策定し、デジタル技術を積極的に取り入れています。
表1 追手門学院大学DX推進計画
「追手門学院大学DX推進計画」は、3つのカテゴリーと10の取組みを掲げています(表1)。また、「DX推進部会」を設置し、各取組みを強力に推進しています。さらに、最先端の知見を有する企業との産学連携による「DX推進パートナー」を選定し、持続的に高度化する体制を整備しています(図3)。
図3 DX推進体制
これらの計画は、文部科学省の「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン(Plus-DX)」に採択(図4)され、先に紹介した本学独自の取組みであるOIDAI WIL Plus MATCHを後押しするものとなりました。
図4 Plus-DX採択内容
このDX推進計画は既に実行されており、表1に示した【取組1】の「BYODによる教育ICT環境の整備およびキャンパス全体のネットワーク環境整備」について、2019年度からBYODによるPC必携の取組みが始まり、さらに2020年度には安威キャンパスの大規模システム整備において、BYOD利用を前提としたネットワーク環境への適応、新たな教育の展開をサポートする高度かつ柔軟なICT環境の構築を行いました。
今回の新型コロナウイルス感染症により大学のデジタル化は飛躍的に進みましたが、大学におけるDXの推進はさらに加速すると思われます。
本学では、課題達成状況や動画視聴履歴等の学習データを学生へより有効にフィードバックする方法を検討する学修成果可視化プロジェクトの設置、蓄積された学習データを教育や学習の改善へ生かすラーニングアナリティクスの検討、各部署が持つデータを分析するIR担当者の配置などの取組みも行っています。
他大学でも様々な取組みを実施されており、今後、大学教育全体が新しいステージに進んでいくことを期待しています。