巻頭言
瀬口 和義(武庫川女子大学 学長)
2019年、本学は学院創立100周年を目指して「MUKOJO ACTION 2019-2039」を公表し、2021年度には「新しい武庫女教育」を掲げ、教育・研究・社会貢献など大学運営すべてにわたり、前例のない改革に乗り出しました。立学の精神にうたわれる「高い知性と善美な情操と高雅な徳性とを兼ね具えた有為な女性を育成する」という教育理念を堅持しながらも、「自ら考え、動く」女性の育成を目指し、現在、大学全体のポリシー・各学部・学科のカリキュラム再検討・正課外活動を含めた学修支援体制の見直しなど、教育改革に取り組んでいます。
とりわけ、情報教育およびICTを活用した学修支援は重要であり、すでに2016年から新しい取組みをスタートさせていました。まず学内のWi-Fiアクセスポイントを大幅に増設してBYODによる学修をハード面から支えました。ソフト面では、学修支援を主とした「mwu.jp」を新たに取得して全学生・全教職員にアカウントを付与、G Suite(現Google Workspace)を使用したトータルな教育システムを完成させました。結果的に、この取組みがあったからこそ、2020年からのコロナ禍を乗り切ることができました。
2021年度後期には、全学的な必修科目として「データリテラシー・AIの基礎」を導入しました。この科目を中心としたプログラムは文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)」に認定されています。認定されるためには以下の5つの内容を含むことが求められます。
① 現在進行中の社会変化(第4次産業革命、Society 5.0、データ駆動型社会等)に深く寄与しているものであり、それが自らの生活と密接に結びついているもの。
② 「社会で活用されているデータ」や「データの活用領域」は非常に広範囲であって、日常生活や社会の課題を解決する有用なツールになり得るもの。
③ 様々なデータ利活用の現場におけるデータ利活用事例が示され、様々な適用領域(流通、製造、金融、サービス、インフラ、公共、ヘルスケア等)の知見と組み合わせることで価値を創出するもの。
④ 活用に当たっての様々な留意事項(ELSI、個人情報、データ倫理、AI社会原則等)を考慮し、情報セキュリティや情報漏洩等、データを守る上での留意事項への理解をするもの。
⑤ 実データ・実課題(学術データ等を含む)を用いた演習など、社会での実例を題材として、「データを読む、説明する、扱う」といった数理・データサイエンス・AIの基本的な活用法に関するもの。
これらの内容は、グローバル化や価値観の多様化など、複雑に変化する現代社会において、本学の学生全員が「自ら考え、動く」ようになるための基盤的リテラシーだと考えています。学生たちは基盤をがっちり固めた上で、各学部で“生きること”につながる専門性を身につけていくことになります。その一例として、経営学部(2020年度開設)では学内外を学びのフィールドにする「実践学習」を導入し、社会の課題を直接体験することと自己のキャリアと結びついた学修を目指しています。また、社会情報学部(2023年度開設)では、社会科学、情報科学、データサイエンスの総合的見地から社会に貢献する情報スペシャリストを育成するカリキュラムを用意しています。
「新しい武庫女教育」はまだ緒についたばかりです。課題山積ではありますが、こうした課題にチャレンジすることが大学教育の原点であり、教職員一丸となって取り組むべきと考えています。