特集 生成系AIへの対応

生成AIの到来にどう向き合うか

太田 邦史(東京大学 理事・副学長)

 本学では、本年5月に、教員、学生向けにそれぞれ「AIツールの授業における利用について(ver. 1.0)」をメッセージとして発表しました。
 生成AIの利用の是非については、本年1月より学内で議論し始めました。研究室の学生など筆者自身の周囲でもChatGPTが話題になり、実際に使ってみたところ衝撃を受け、授業のレポート作成や成績評価に大きな影響を与えると思ったからです。
 学内の先行的議論では禁止しても学生の利用は止め難いという話になり、ならば大学教育に良い形で活用する方向性が良いということになりました。新学期が開始する4月には、教員や学生に向けて「生成系AIについて」という本学の見解を発表し、活用を前提として大学側が対応をとる、とのメッセージを発信しました。その後公開した「AIツールの授業における利用について」は、その後の学内の意見を踏まえ、実際に授業で生成AIを利用する上で教員がどのような点に注意すべきなのかまとめた文書です。
 一連の文書作成にあたり意識したことは、授業や学問に対して真面目に取り組んでいる学生が損をしないように、という点です。大学が生成AIの利用指針を出しておかないと、学生が安易に生成AIのみでレポート作成をするなど、学生の学習効果が低下してしまう状況を招くのではと懸念しました。むしろ生成AIをうまく活用して教育効果が上がるよう、教員や学生の意識を建設的な方向に向けていきたいと考えました。
 もう一点気にした点は、日本全体への影響です。生成AIは今後社会を大きく変革する可能性がある技術です。一律禁止にすることで、日本全体での活用が止まってしまい、世界の進歩から取り残されます。現状維持バイアスを打破するために、意図的に積極的なメッセージを盛り込んでいます。
 本学では、生成AIを実際に教育や研究に活用し、グッド・プラクティスや問題点を検証したうえで、知識の共有、新たな利用法の模索や様々なルール策定をしていきたいと考えています。

 以下は、本学utelecon(オンライン授業・Web会議ポータルサイト)よりの転載です。
 https://utelecon.adm.u-tokyo.ac.jp/docs/ai-tools-in-classes


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