事業活動報告 No.2
2023年度
ICT利用による教育改善研究発表会開催報告
本発表会は、文部科学省の後援を受けて、全国の国立・公立・私立の大学・短期大学における教員を対象に、教育改善のためのICT利用によるFD活動の振興普及を促進・奨励し、その成果の公表を通じて大学教育の質的向上を図ることを目的として、平成5年(1993年)から開催しており、令和5年(2023年)で31回目になっています。
今年度も引き続きオンラインによる発表会とし、発表者全員に13分による発表映像の提出を事前に求め、8月25日(金)に会場から46件の研究発表を配信しました。その上で参加者と発表者の質疑応答は遠隔リアルタイムで行いました。当日の発表会終了後、1次選考を行い、2次選考の対象8件を選考しました。発表会のオンライン参加者は、発表者を除き125名(56大学・短期大学、賛助会員4社)でした。その後、9月23日(土)に第2次選考を実施し、授賞者を決定し、11月30日(木)の本協会第38回臨時総会冒頭に文部科学省専門教育課企画官立ち合いの下、表彰式を行いました(表彰式等の詳細は、本号の「私情協ニュース」で紹介しています)。
※以下の発表者名は、発表代表者名のみ掲載しています
Aグループ
A-1 |
オンデマンド授業における進行シナリオによるマルチインターアクティブ学修 |
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オンデマンド授業は一般的に、リアルタイムでの質問や意見交換、討論ができず、ワークショップによる学習活動を行うことは困難である。そこで発表者はオンデマンド授業における双方向性を実現するために、LMSを活用した学びを、シナリオを用意することで、個人での活動やチームでの活動の時間進行をガイドするようにした。本発表では、改善の試行錯誤の経過に加え、授業実践の結果、プロジェクトでの学生同士のコミュニケーションや、学生と教員との非同期型双方向コミュニケーションに一定の効果があったことについて報告があった。
A-2 |
講義で使用する映像の英語字幕の簡便作成:環境科学関連講義を例として |
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教育現場におけるグローバル化に必要なバイリンガルのテキストや映像教材の完備は、受け入れる留学生の人数に大きく依存している。しかし、発表者が受け入れた留学生は1名であり、バイリンガル教材の準備の場合には、手作業が余儀なくされた。テキストはAI自動翻訳を用いることで簡単に作成できるが、映像の英語字幕の作成は外注できない場合や専門知識がない場合には困難である。本発表では、その解決策として、ICTツール(Microsoft Strem、DeepL、GOM Player)を用いて簡便に、英語字幕を作成し、映像のバイリンガル講義を実施した成果について報告があった。
A-3 |
コピー&ペーストが不可能なレポート作成アプリの開発とその運用結果の検証 |
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レポート作成では、他者の意見をそのままとり入れるのではなく、自分の目で読み、自分の頭で理解し、その適否を判断および思考した上で、自分の言葉で表現することが重要である。しかし、学内のみならず、自宅などの学外においても、いわゆるコピー&ペーストによるレポート作成を防ぐことは困難である。本発表では、受講生間の不公平感の発生を抑え、学修時間を充実させることを企図して、レポートを作成する上で不便を感じない程度にコピー&ペーストを抑止するレポート作成用アプリを開発し、実践した結果について報告があった。
A-4 |
人のロボット化阻止に向けた情報学部における教育 |
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生成系AIや絵文字等の非言語的コミュニケーションツールが普及する中で、大学生の「考える力・自分の言葉で伝える力」の強化を目的とし、言語コミュニケーション能力を高めるための学習教材開発を行い、これらの2つの力を把握することを目標とした。関数グラフを学生に提示し、グラフの形状について数式を使わずに言葉のみで第三者に伝える「数学的な図形の概念の言語化アプリ」の開発を行い、これを用いた教育を実践した。その結果、ある程度の学生の数学的能力や理解力・説明力を計測するための知見を得たことについて報告があった。
A-5 |
作問学習による授業時間外の自主的な学修を促す試み |
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事前に動画配信、確認クイズに答える反転授業を行っていたが、クイズの答え探し以上の学修がなされず、結果として授業外の学修時間が伸びないという問題があった。そこで、この問題を解決するために、クイズへの回答に代えて、ARCSモデル(学修意欲に関するモデル)を手掛かりとして「後輩たちを想定して4択形式の確認クイズを作成する」という作問学習の課題に変更し、これを実践した。この結果、受講生から作問学習が高く評価され、授業外の学修時間の改善、到達目標の評価の改善、そして満足度の改善が確認されたことについて報告があった。
A-6 |
Excel問題の解答に対する正誤判定と採点の自動化の活用による教育効果の向上 |
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Excel中心の演習科目「情報処理入門」において、従来は大量のExcel課題ファイルの正誤判定や採点を教員が手動で行っていた。このため、受講生一人ひとりの可能性を伸長する個別最適化への対応ができていなかった。この点を改善すべく、Excel自動採点Bookを設計してVBAプログラムを開発し、人間判断の介在を考慮したExcel課題ファイルの正誤判定と採点の自動化を試みた。その結果、授業の演習時間内で受講生へのフィードバックと再提出を複数サイクル行うことができたこと、受講生が典型的な間違いに関する解説を受けて再演習と再提出を行い、充分に理解できていない項目に対して的を射た学習ができたことなどについて報告があった。
A-7 |
地域のゴルフ場運営管理会社と連携した低学年向け課題解決プロジェクトの取組 |
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ゴルフ場における3日間の実践を含むキャリア教育を目的としたインターンシップ授業である。15回のプログラムにはエントリーシートの書き方、商工会議所連合会との連携授業、ゴルフ場副支配人によるゴルフ業界研究講座、グループワーク、成果発表などが組まれている。教室内では「若年層・女性のプレイヤーを増やすためには」という課題解決プロジェクトも行う。ICTを活用したグループワークの日程(8回分)では、Zoomにより教室の様子をリモート中継しゴルフ場のスタッフに参加していただき、緊張感のあるプログラムとなっている。ゴルフ業界への理解が進み、同業界への参加学生の関心も向上したようであることなどについて報告があった。
地域のニーズに応えるという観点から、吹田市との連携による「官学連携PBL」を取り入れた実践的なキャリア教育である。市から与えられた課題は①新たな定番商品の開発、②下水道の広報活動である。学生たちはこの2つのグループに分かれ、問題解決につながる情報収集から発表の準備まで4回のチーム学習を行い、報告会を実施した。ICTの活用については、同市下水道部水再生室との連携で「若年層への下水道広報」を目的に動画を作成し、様々なSNSを媒体に発信をした。動画は吹田市のHPのリンクからみることができるという。教育効果の確認については、情報収集力、情報分析力、問題解決力など3つの能力と9つの観点によるルーブリック評価を実施していることについて報告があった。
授業科目は「情報リテラシー」であるが、ここでは出席管理用末端に顔認証システムを導入することによって、より効率的な授業形態を実現した事例が報告された。これまでは、学生が授業開始前に学生証を出席管理用末端にかざして打刻する必要があり、認証を試みても失敗や手間がかかり、学生証を忘れた学生は教務課職員から証明書の発行を求められていた。授業時間を消費し、教員の手間や負担も生じていた。本研究では、学生各自がカードを接触させて行っていた出席時のデジタル打刻を、顔認証システムの導入による非接触の実験を行った。学生の氏名・学籍番号・成績・出席率などの情報を担当教員が把握する方法として、顔認証とARを融合したシステムを考案した。タブレット端末で撮影中の教室の映像にARで学生情報を付加して表示することにも成功したことなどについて報告があった。
A-10 |
アプリとグループワークを活用した薬学部1年次生の主体性を涵養する学修支援の実践 |
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薬学生が卒業後に、医療現場において自ら考え、多職種の人々とコミュニケーションを取りながら専門知識を活用できるようになるには、学部入学直後から学生に主体的な学びを習慣づけることが重要となる。そのために当該校では、アプリとグループワークを活用し、1年次生が正課外で主体的に学習できる機会を提供した。本発表では、参加者と対象としたアンケート調査の回答をテキストマイニングで解析した結果、「考え、話し合うことによる理解」、「学習意欲の向上」などの話題を抽出できたことを踏まえ、そうした機会が、薬学生の主体性を涵養する学修支援方法の一つとなりうることについて報告があった。
A-11 |
ICTを利用した改善型PBLでの対人関係スキルの向上 |
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Moodleはeラーニングを支援する学習管理システムの一つで、高い汎用性を特徴としたICTシステムであり、各地の大学で使用されている。当該校の日本歯科大学生命歯学部1年次の改善型PBL(LBP)では、Moodleを活用して、情報・伝達の周知徹底や学生教員間の意思疎通などにおける様々な問題を克服することで学生教育の向上を目指してきた。本発表では、Moodleの各種モジュールの適切な利用によって質の高い教育を支援するシステムを構築し、これを活用したLBP実習により、問題解決能力や対人スキルの向上にも大きな教育効果があったことについて報告があった。
A-12 |
コロナ禍におけるオンライン・フィールドワークの新境地 |
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コロナ禍により、現地に赴くフィールドワークの実施が困難となったことから、オンラインン・フィールドワークが各地で模索され、実績が蓄積されている。オンライン・フィールドワークの実績として一定の成果が種々報告されているものの、課題として、インタビューの限界や双方向性の欠如、地域貢献の不十分さなどが指摘されている。本発表では、当該校の文学部地球市民学科において2020、2021年度に実施された「陸前高田フィールドワーク」の事例を通じて、そうしたオンライン・フィールドワークの課題をどのように克服したのかについて報告があった。
A-13 |
オンデマンド学修のデメリット軽減を目指して改善を重ねた「ブレンド授業」の効果 |
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コロナ禍を機に、同一内容の授業を複数開講している教職課程科目「教育心理学」をオンデマンド形式とし、2020〜2022年度にかけて、受講者アンケートの結果をもとに授業形態のメリットを維持し、継続的にデメリットへの対応(①課題忘れや取り組みの先延ばしへの対応、②教員、他受講者とのつながりを実感する機会を作る対応、③教員への質問・相談をしやすくするための対応)を試みた。形成的評価への変更、再テスト制や対面アクティビティの導入、自動化ツールの活用等による改善の結果、授業評価、成績分布、合格率が向上したこと、受講生各々のスタイルに合わせて学びつつ、他者とのつながりも保持する上でICTを活用したブレンド授業が効果的である可能性について報告があった。
A-14 |
主体性を引き出すアクティブラーニングによる演習と学びの個別最適化を促す対話 |
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文学部美学美術史学科の演習科目で実施している口頭発表を目的としたアクティブラーニング型授業の取り組みに関する報告で、教員の指導を、発表後のフィードバックから発表前の準備段階に変更し、学生が直面した問題解決に向けLMSを通して学生と個別対話を繰り返した。また、LMSの活用を通じて、アクティブラーニング型授業に対する心理的抵抗感を軽減し、学生の口頭発表における満足度を高めることで主体的な学びを実現することを目指した。個別対話による学生支援はメタ認知的方略による学修の自己モニタリングを促進する役割を果たし、学修意欲や主体性が高まり、学生の満足度が高い結果となることが授業アンケートで示唆されたことについて報告があった。
A-15(発表辞退)
A-16 |
実務・研究を教育に繋げるPBL:人生100年時代を生き抜く社会人基礎力の養成 |
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地域や企業の課題解決を行うため、ゼミ生が7つのプロジェクトチームに分かれて実践・共創型PBLに取り組んだ事例である。AI就業支援チームでは、AIを利用して障がい者や高齢者の就労機会につなげる取り組みを行い、メタバースチームは、水族館・博物館・美術館などをデジタルで再現して、新たな集客を獲得する取り組みを進めた。ICTの活用については、ChatGPTを含むAIの他、TeamsやZoomを活用して企業の実務者、有識者と学生が意見交換をする機会を増やし、また、学生には、ICTは道具にすぎないのでその活用方法を自ら試行錯誤するように指導しているようである。担当者がAIの専門家でもあり、ICTが日常的に学生間で使用され、学び合って、後輩ゼミ生に受けつがれている。学生たちは当事者意識を持ち、主体性を強く意識するようであることについて報告があった。
Bグループ
B-1 |
マルチビジョンシステムを活用した看護技術の演習:VR・POV教材作成を加えて |
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看護教育において、患者役・看護師役の擬似体験が可能な教材をマルチビジョンシステム、患者体験型VR動画、手技のポイントを提示したデモンストレーション動画等を組み合わせて作成した動画教材を用いて看護技術の習得を支援した結果、学生から「わかりやすい」「理解が深まった」といった評価を得て、この試みが事前学習や事後学習に役立つ可能性およびこのような教材を用いることで患者役・看護師役の実体験に置き換えられる可能性が示されたことについて報告があった。
B-2 |
スマートグラスによる教員の視野情報共有を活用した遠隔理学療法教育の取り組み |
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理学療法教育において実習の質を担保しながらオンライン化に対応させることを目指してウエアラブルデバイスであるスマートグラスを導入し、教員が装着したスマートグラスからの機器操作や治療手技を実施している映像をモニター経由で学生に示して学生が映像を見ながら機器操作や手技を実施する方式で実習を行った結果、学生へのアンケートによってスマートグラスを用いた実技指導が対面での実技指導と同程度の主観的習得度を示したことについて報告があった。
B-3 |
学生の主体的な学びを促す反転授業の取り組み:大人数クラスでの効果と限界 |
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入学者の基礎学力低下傾向や受動的学習姿勢からの脱却を目指して解剖生理学への反転学習の導入を試みた結果、授業満足度は上昇したが単位未修得者数が増加し、その原因が時間の管理ができず事前・事後学修ができない学生、時間外学修の必要性を認識しない学生、他人とコミュニケーションをとることが苦手な学生、他のメンバーに任せて話し合いに参加しない学生の存在であることを示唆し、それらの学生に対してどのように主体的な学びを促していくのかが今後の課題となることについて報告があった。
B-4 |
ロボットボランティア工作班のオンライン工作教室におけるICT利用の効果 |
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課題解決型の授業「ロボットボランティア」において、小学生向け工作教室の教材の企画および開発を行い、ICT技術を利用したオンライン工作教室を実施した。オンライン工作教室では、身近な材料の使用や分かりやすい説明が必要となる一方、動画やアニメーションなどICTツールの活用のため、学生がより本質的な説明を考えるようになり、「なぜ」「どうして」という疑問の大切さへの気づきが見られたことについて報告があった。
B-5 |
生成系AIと共生した文章表現基盤教育の実践:次世代医療人育成を目指して |
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生成系AIを組み込んだ統合型知的学修支援システムを独自開発し、AIが演じる学生・教員・相談役と学生が共に学ぶ基盤教育を実践した。学生自身がAIを検証しながらAIを体験し、そのプロセスを段階的に深めることによって、批判的観点を持つことが生成系AIを使いこなすスキル修得につながるとの認識を醸成でき、AIの利用が日常となる次世代医療の現場で活躍する医療人育成を目指した教育に貢献できたことについて報告があった。
B-6(発表辞退)
B-7 |
基礎化学実験におけるLMSを活用したハイブリッド授業の成果 |
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当該校の「基礎化学実験」では、2021年度と2022年度の対面実験とオンデマンド実験を併用した「ハイブリッド授業」を行った。実験室での対面実験を3回、動画視聴によるオンデマンド実験を3回の計6回の実験を実施した。「ハイブリッド授業」の効果はLMSの「アンケート機能」で検証した。アンケートの内容として、授業全体の評価、事前・事後学習効果の検証、ハイブリッド授業における質問や相談の対応等について詳細な報告があり、併せてハイブリッド授業のメリットとデメリットが明確となったことことについて報告があった。
B-8 |
大規模言語モデル・対話型AIによるプログラミング・データサイエンス演習の学修支援 |
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Pythonプログラミング演習を中心とした複数の科目において、大規模言語モデルを活用した対話型AIによる学修支援を導入した。発表では3年次の機械学習の講義「機械学習」の例が紹介された。履修者の3割が支援システムに対して質問をしていない現象や、一方で、質問件数は人的対応できないほどの数が来たこと、AI支援の導入により、学生がエラーを解決できず挫折してしまうという現象は減ったという内容の報告があった。
B-9 |
SE育成を目指した情報と看護によるオンラインでの大学・異分野間連携演習の取組み |
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SE育成にあたり、従来型の内容では情報の専門知識やプログラミングなどの下流工程に関する内容に偏重しがちである問題点を解決するために、大学・異分野間連携演習を通して、要求定義・要件定義を中心とした上流工程を疑似体験する完全オンライン授業実践が報告された。看護学部の学生は看護の現場での課題を抱える顧客として、情報科学部の学生はSEとしての役割を演じる。完全オンラインでも学生間のコミュニケーションは成立しており、異分野間コミュニケーションを通して、SEが実際に遭遇する場面が体験でき、演習の効果が確認されたことが報告された。また、実際に今後の技術者教育に有用な教育実践であることの報告があった。
B-10 |
ZoomとLMSを併用したチーム基盤型学修(TBL)の教育効果の改善 |
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医科大学でのLMSの活用を中心としたオンラインTBLに際して、当初は双方向性の討議を伴うチーム討論およびグループの回答(Team Readiness Assurance Test)のステップが実施困難となり、対面でのTBLと比較して学習意欲の低下、主体性の不足、フィードバックの遅れなどの問題が生じたため、Zoomのブレイクアウトルーム機能を用いて双方向性を確保して問題の解決を図ることでフルオンラインTBL実施時に発生する教育効果の低下を防止できたことについて報告があった。
B-11 |
ICTを利用した教育改善への導入教育:高校教員と大学教員の協働とICTへの誘い |
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他者の学習方法を知るとともに自身の学力を把握し自らの理解度に基づいてICTツールを活用する能力の獲得を目的として、学習支援担当部署の元高校教員と協働して学生自身の学びの理解度の把握に繋がる気づきと学生自身に合った多様なICT学習ツールの選択を促す導入教育を、学生の主体的学習促進のために用意された時間(まなび場)を用いて実施した結果、ツール使用率の向上とともに定期試験の成績向上および成績のばらつき減少が観察されたことについて報告があった。
B-12 |
重篤な急性疾患の診療技能を高める臨床シミュレーションソフトウェアによる反復学修 |
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重篤な急性疾患の患者への緊急対応および問題解決ができる人材育成を目的として、能動的な知識・技能の定着を目指してオンライン・医療シミュレーションソフトウェアによる事前反復学習とシナリオスタディを組み合わせたハイブリッド型反転授業を導入して自己評価可能な到達度把握とフィードバックを可能とした結果、学習の反復回数の増加に伴って理解度が上昇し、11回以上の反復学修でほぼ満点に到達できたことについて報告があった。
B-13 |
学修者の多様性を考慮した学習用動画を利用した夏季休業期間における学習の検討 |
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従来型の対面授業では、週1回ずつしか講義を受けることがでず、理解に時間がかかる学生や意欲の高い学生など、早い時期から学習に取り組むことを希望する学生にとっては障壁となっている可能性が考えられる。このため、予習・復習用動画を夏季休業中に配信し、学生の取り組み状況を調査した。夏季休業中の予習・復習にこの動画を活用した学生は、後期の授業に取り組む姿勢に変化が感じられたことについて報告があった。
B-14 |
有機・無機・物理化学を総合的に理解するための実践的な計算化学コース |
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現代の化学教育では、「化学理論の基礎知識」・「実験スキル」に加え、現象を説明予測する「計算化学」・「機械学習」まで求められるが、それら先端技術を含めたカリキュラムは整備されていない。本研究では、「有機・無機・物理化学の基礎知識を統合する実践的計算化学コース」を開発した。複雑系中の分子間相互作用・化学反応を計算化学的に定量化して考察することで、新時代の物質創成に求められる現代化学教育の改善を試みたことについて報告があった。
B-15 |
スポーツ健康科学部でのフリー統計ソフトEZRを活用した授業の充実 |
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従来Excelのみでスポーツに関する測定値解析を行ってきたが、大学生にとってそれらを細かく入力する作業は負担となり挫折する学生も多かった。統計ソフトを全員に使用させる予算の制約もあり、EZRを使った授業を実施した。平常点、定期試験、授業評価等の結果を踏まえ、市販の統計ソフトに劣らない解析を行うことができたこと、導入後の履修者数も年々増加し、導入前と差がない成績を与えることができている。一部の学生は卒業研究にも活用し、教育の充実につながっていることについて報告があった。
B-16 |
トラッキングシステムを含んだICT教材によるコロナ禍以降の実験教育での効果の向上 |
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2020年度以降、コロナ禍の影響で、体験や実験の機会喪失、経験不足により「作業時の手際の悪さによる実験技術力の低下」という問題が浮上した。そのため、トラッキングシステムを導入してその結果を検証した。必修科目である応用生物科学実験における植菌操作に当たりアイトラッキングシステムを導入したところ、理解はできたがうまく操作できなった学生が一部に存在はしたものの、概ね、習熟度が上昇したことについて報告があった。
Cグループ
C-1 |
SDGsと中国文化を取り入れたPBL型授業のLMS可視化による教育改善の実践 |
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CLILを取り入れた中国語授業の実践報告である。中国文化とSDGsに関連する情報や知識をコラボさせたオリジナル教材を活用してグローバル人材育成をめざしたPBL型中国語授業である。その際にLMSを活用して授業の可視化を図り、課題アップロード、課題提出、コーストップなどへのアクセス回数や試験結果および自己評価を学生たちに可視化させ、授業への取り組みを高めさせ長続きさせる工夫を行っている。その結果、学生たちは中国語学修だけでなくSDGsにも関心をいただき、その後の専門科目のPBLへとつなげることができていることについて報告があった。
C-2 |
韓国語ハイフレックス授業において自己調整能力を育むICTの活用法とその効果 |
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学習者本位の方針に基づいてICTを活用した対面授業と遠隔授業を組み合わせたハイブリット授業の実践教育の報告である。「韓国朝鮮語基礎」の授業をハイフレックス型で実施したが学習者の学修態度や成果のばらつきが課題となり、ICTを活用した事後学修を導入した。具体的には学習者の自己調整学修能力を育むICT基盤振り返りノートの導入により教育効果を高めた。LMSを用いて初回授業で学期の目標を設定させ、学期中は遂行、内省、予見を繰り返し確認させて自己調整学習能力を向上させた。学習者と教授者がネット上で学習効果を相互確認することにより、単位未取得者比率を改善することができたことについて報告があった。
C-3 |
中国語教育資源のデジタル化の試み :モバイル端末の利便性を活かして |
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モバイル端末(スマホ)から利用できるオリジナル中国語メディア教材を長年かけて開発した報告である。モバイル端末の利便性を中国語教育に活かしてより良い学習環境を提供するとともに、教育資源の無償化を図ることを目的としている。実際にはモバイル端末だけで音声を再生し単語検索ができるだけでなく単語暗記練習機能なども備えており、シャドーイング練習、単語の復習、文法項目の確認なども可能となっている。書き込み機能や日本語訳を求める学生からの要望など今後の課題もあるが、教育資源のデジタル化による教育効果と利便性を評価することができ、無償で他大学の教員も活用できるという汎用性のメリットもあることについて報告があった。
C-4 |
管理栄養士養成課程における情報処理技術習得と学生による栄養分析 |
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管理栄養士養成に必須の「基礎栄養学実習」において、医療系学生が苦手とする数学的・煩雑な計算部分に「栄養計算・評価ファイル」を応用することで、そこを乗り越えて進んでいける便利さや自己肯定感を学生が容易に感じられるようになり、そのポジティブな経験が学生の学習意欲を高めていった。
さらに本効果は他の授業にも持続可能な波及効果をもたらし、全体として教育方法の改善につながっていくことができたことについて報告があった。
C-5 |
管理栄養士国家試験合格率向上を目指したIRとTBLの活用 |
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昨今の学生による学力低下、主体性の低下という共通問題に対し、TBLによる授業形態、OODAループを取り入れた学修を実施し、その教育効果を検証した。TBLにより、学生とのグループに学習の質に対する責任をもたせ、能動的に学習するような「しかけ」を工夫した。その結果、グループ学習のパフォーマンスにより、①教育効果の客観的評価項目の一つである管理栄養士合格率が有意差をもって高率になった。②学生アンケートの結果、授業への活発な参加、議論の向上、学力の向上に関し、9割以上の学生が「向上した」ことなどについて報告があった。
C-6 |
ICTを活用した日台遠隔授業における異文化理解力と英語発信力養成の取り組み |
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単なる「異文化理解」に終わらせることなく、英語教育と専門教育(本報告では「食マネジメント」)を繋いでいくような「教育手法」を目指した。PBL学習を基盤におきつつ、専門外国語科目に海外との遠隔共同授業を導入し、学生が英語で、食に関する自らの文化を表現する力を養成する足場づくりを工夫した。英語の導入科目において、台湾の学生と日本の学生達が能動的に今後の様々な実践学習に発展していくためのモチベーションを高めていった。ICTを活用し、食の専門に関する英語表現能力を、学生が楽しみつつ多面的に鍛えていくことができたことで、一定の有効性が示されたことについて報告があった。
C-7 |
表現内容指導法におけるICT機器の活用による客観的評価と表現力の向上 |
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本研究は、新型コロナ禍におけるハイブリット型授業において、表現系科目(造形、音楽、身体、言葉)の指導時にiPad等のICT機器を活用し表現力の向上に取り組んだ実践報告である。「保育内容表現指導法」におけるパネルシアター制作において授業開始時と終了時に書かせる「振り返りシート」のPDCAを実施した。その際に使用したツールは、授業支援ツールWebClass、作品提出用格納ツールTCUストレージ、動画アップロード用YouTubeなどを活用した。これらの試みの結果受講者一人ひとりが主体的に課題に取り組むことが可能となったことについて報告があった。
C-8 |
教員養成系学部におけるデータサイエンスに着目した教育実践の意義と課題 |
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本研究は、教育学部の多くの学生が苦手意識をもつデータサイエンスに取り組むにあたり、「算数科指導法」にはExcel、「算数科概論」にはインターネットを活用した。その結果、前者では児童の多様な思考を認めることが大切であると気づき、後者ではお互いの思考を共有しながら、数値の意味を捉え直して意思決定する場面が見られた。大学を一つの社会と仮定して各々も授業を関連づけたデータサイエンスを試みることは、社会に出てから物事を関連付けて問題解決する力を育成することになる。今後は、この成果をもとにして、FD研修等を生かした学内の共同研究に幅を広げていきたいことなどについて報告があった。
C-9 |
子ども子育て支援実践におけるICT活用の教育効果 |
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本研究は、保育学生であっても子どもとの関わり経験が乏しく、ましてや協働関係を結ぶべき養育者との関わりについては非常に少ない現状を鑑み、本学では保育学生を支援者として養成するために親子支援ひろば「ひっぱらん」活動を通して保育学生の子どもに関わる質と量の改善に取り組んでいる。ICTツールを活用した子ども子育て支援活動は、現代社会に必要とされる非認知能力やOODA(観察、状況判断、意思決定、実行)を育てることに通じているものと考えられることについて報告があった。
C-10 |
新学部英語カリキュラムにおけるメディア授業の試み |
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オンラインツールやアプリケーションを活用した外国語(英語)教育の組織的取組みに関する事例報告である。Zoomを使用したオンライン授業と同時にSlackやGoogle Classroomを用いた個別対応も行っている。デジタル教科書を使用して英語4技能の修得を行い、結果をTOEICスコアで確認して次年度以降のクラス分けにも活用している。成績評価は「授業内ディスカッション」、「課題」、「レビューテスト」で行い、月1回FD会議を開催して担当者(専任教員と非常勤教員)間で進捗状況の確認や評価に関する意思疎通も行っている。TOEIC600点以上を目指す授業を行い、スコアもアップしていることについて報告があった。
C-11 |
Zoomを用いたオンライン交流とoVice(オヴィス)を用いたその改善 |
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コロナ禍で海外留学が困難な中、あらたにICTを活用して海外での短期・長期研修を教員主導から学生主導の双方向学修(交流)へと改善した事例報告である。学生たちによる自由な交流を可能にするプラットフォームとしてoViceを活用して、ポストコロナ時代のあらたな国際交流の枠組みとなる可能性を示している。以前はZoomによる交流であったが、学生たちからもっと自由に交流したいという要望が寄せられ、oViceによる仮想空間(メタバース)を設定して個別の会話を容易に行えるようにした結果、学生たちは自ら相手を選択して多様な交流を行って相互理解を深めることが可能となったことについて報告があった。
C-12 |
臨床推論と患者コミュニケーションの育成:PBL統合型英語授業におけるICT活用 |
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医学部生向けの4年次医学英語コースにおいて教育DXを設計・運用した授業実践報告である。具体的にはICTを活用した集中的な形成評価を含む評価方法を導入し、臨床推論力と患者とのコミュニケーション能力の向上をはかった。Googleスプレッドシート、Googleフォーム、Google ClassroomなどのICTツールを導入して、学生のリーダーシップ、協調性、コミュニケーション力、およびプロフェッショナリズムの醸成および成績向上を目指した。この方法により、簡単で費用効果の高いICTツールを使用してより質の高いアクティブラーニングが可能となった。また他大学においてもPBL型統合授業などで活用できる汎用性の高いプログラムとなっていることについて報告があった。
C-13 |
ポストコロナ時代のICTを利用した観光通訳のクラスの取り組み |
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ポストコロナ時代の観光通訳クラスにおいてオンデマンド教育と対面授業を効率化した事例報告である。対面授業での非言語コミュニケーション教育とオンラインでの文法、語彙、リスニングなどの練習を同時に組み合わせることにより教育改善を行った。オンラインでの練習においては学生たちが自分のペースで学修が可能となり、同時に対面授業では実践的な通訳の練習を行うこともでき、受講者の満足度も高まった。教員が毎回の練習をモニターしてフィードバックを行った結果、試験結果で伸びを確認することができ、アンケート調査でも成績の質の担保ができたことが明らかとなったことについて報告があった。
C-14 |
ハイブリッド授業課題による、英語発話の「流暢さ」と「発音」に対する意識づけ |
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「英語会話」の授業で、これまで弱点であった英語らしい発音で発話する訓練にShadowing課題を開発して授業に取り入れることにより教育改善を行った実践事例である。学生が長続きしなかったシャドーイング学修にカラオケ採点という手法を取り入れ学生たちの関心を集めて学習効果を高めて長続きさせ、英語特有の流暢さと発音の正確さを高めている。成果はVersantという検定試験で確認されている。シャドーイングにカラオケ採点を活用するこの研究は、発音やイントネーションなどの修得などの面で、英語だけに限らず日本語学習を含めた多言語学習に応用可能な教育方法で、汎用性も高く将来発展できる可能性が高いことについて報告があった。
C-15 |
ワークショップにおけるオピニオンリーダーの振る舞いに関する評価と実践 |
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授業内で実施されたワークショップ型展開の基盤に「デザイン思考」を取り込み、その展開において、オピニオンリーダーからのチームメンバーとの関わりの発話量を計測していった。「デザイン思考WSでは、オピニオンリーダーは回を重ねるごとに周りの声を聞くようになっていく」を検証すべく計測がなされた。実際には、2019年、2020年度に授業内で実施されたデザイン思考WSにおける、チーム内でのオピニオンリーダーによる振る舞いの検証になる。検証の結果、オピニオンリーダーによる意思決定に一定の効果が期待されることが明らかとなったことについて報告があった。
本研究は、情報学系の入学予定者に対する入学前教育において、LMSの導入により教職協働による学生支援体制を構築する試みの報告である。具体的には、manabaを活用してオンラインによる講義動画の受講、小テストの提出により質問が可能となる体制を構築した。講義内容は前半では高校数学Ⅰ、Ⅱ、A、B、後半は数Ⅲの範囲と大学数学入門を含む内容で構成し、講義ではMicrosoft PowerPointを活用し、演習では小テストの自動採点機能を利用した。受講者・教職員に対する様々なアンケート結果から、教職員が受講者の着手状況及び習熟度の把握が容易に行えるようになり、入学前教育を通して教職協働体制を築き上げることができたことについて報告があった。
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