特集 数理・データサイエンス・AI教育の紹介

佐賀大学における数理・データサイエンス・AI教育
〜産学官連携による数理・データサイエンス・AI教育の全学展開〜

皆本 晃弥(佐賀大学 全学教育機構数理・データサイエンス教育推進室長 佐賀大学教育研究院自然科学域理工学系 教授)

1.はじめに

 本学では、2016年から数理・データサイエンス・AI教育(以下、数理・DS・AI教育と略す)に取り組んできました。この取組みは、地元企業や自治体との連携を基盤とし、全学的な教育プログラムとして展開されてきました。2022年8月には文部科学省より「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)」に認定され、2023年8月には「リテラシーレベルプラス」にも選定されています。本記事では、これまでの取組みとその背景、そして今後の展望について述べます。

2.本学における数理・DS・AI教育の沿革

 以下では、本学における数理・DS・AI教育の取組みを時系列に示します。

写真1 「チャレンジ・インターンシップ」での成果発表の様子(2016年度)
写真2 「データサイエンス特論」でのグループワークの様子(2018年度)
図1 数理・DS・AI教育体制

3.本学の数理・DS・AI教育の特徴

 上記の沿革で示した内容について特徴的なものをもう少し詳しく説明します。

図2 学生が関心を持った項目(青)と難しいと感じた項目(ピンク)
図3 リテラシーレベルの修了要件

 また、編入学生に対しても必修化が進められています。2026年度には大学全体で収容定員に対する履修率が100%に達する予定です。

図4 インターンシップ募集案内

 チャレンジ・インターンシップでは、学生の成長を見るために、参加企業と協力してルーブリックを作成し、初日と最終日に評価を行うことで、学生の成長を把握しています。学生は、ルーブリックを見ることにより、求められる能力と水準を把握することができ、結果として学習支援にもつながるものと期待されます。さらに、2021年度以降は理工学部の「地方創生インターンシップ」においても地元企業と協力してデータサイエンスに関するインターンシップを実施し、学生がAI技術を用いたソリューションの提案などを行っています(図5)。

図5 学生によるAIソリューション提案例
図6 「科学へのとびら」プログラム例
図7 「データサイエンスBasic」募集案内[3]
表1 佐賀大学 DXリスキルプログラム 募集内容(2023年度)[4]

4.その他の取組み

 2017年度よりデータサイエンス教育について、地元企業・自治体と意見交換会・講演会等(高度情報系専門人材育成懇談会)を必要に応じて行っています。
【参加・協力された自治体・企業(順不同)】
佐賀県、佐賀市、唐津市、有田町、日本マイクロソフト、佐賀電算センター、EWM、キャリアバンク、オプティム、木村情報技術、SUMCO、中山鉄工所、福博印刷、佐賀銀行、あいおいニッセイ同和損保、ネットコムBB、フィロソフィア、とっぺん、カラビナテクノロジー、アイセル、FabLab Saga、九州コーユー、CitynowAsia、ローカルメディアラボ、ナレッジネットワークなど
 2023年度には、日本マイクロソフト社と協力して、生成AIに関するFD研修を2回実施しました。本研修は学内だけでなく、学外者も受講できるようにし、延べ529人が受講しました。
 また、理工学部では2019年度の改組でデータサイエンス教育を強化し、リテラシーレベルを2021年度より、応用基礎レベルを2022年度より必修化しました。そして、2023年度にはデータサイエンスコースを設置しました。大学院理工学研究科においては、2019年度にデータサイエンスコース(修士)、2021年度に数理・情報サイエンスコース(博士)、2022年度にAI・データサイエンス高度人材育成プログラム(修士・博士)を設置しました。このように、リテラシーレベルからエキスパートレベルの教育を実施できる体制を整えています。なお、理工学部知能情報システム工学コースでは、2021年度より応用基礎レベルからエキスパートレベルへの橋渡し科目として、3年次科目「実践データサイエンス」、「データサイエンス演習」を開講し、数理・データサイエンス・AIの理論と実践について教育しています。この内容を教科書としてまとめ、サイエンス社より「Pythonによる数理・データサイエンス・AI−理論とプログラム―」を2023年11月に出版しました(図8)。

図8 Pythonによる数理・データサイエンス・AI−理論とプログラム−

 さらに、2024年度には、全学教育機構においてデータサイエンス副専攻を設置しました。専門教育科目と教養教育科目を組み合わせ、文系学生(教育学部、芸術地域デザイン学部、経済学部)に数学や情報に関する科目を、理系学生(医学部、理工学部、農学部)に会計、経営、法律に関する科目を受講させる分野横断的な教育を提供することで、数理・データサイエンス・AIの理解と応用能力を兼ね備え、社会課題の解決や価値創造によって持続可能な社会構築に寄与する人材の育成を目指しています。

5.おわりに

 本学の数理・データサイエンス・AI教育は、地元企業や自治体との連携を基盤とし、全学的な教育プログラムとして展開されてきました。本稿ではリテラシーレベルを中心に述べましたが、農学部と経済学部の応用基礎レベル認定に向けた取組みや、さらなる地元企業・自治体との連携を強化を検討しているところです。本学の数理・DS・AI教育については、本学の全学教育機構数理・データサイエンス教育推進室、広報室、理工学部などのWebページで随時お知らせします。

関連URL
[1] 佐賀大学全学教育機構 数理・データサイエンス教育推進室
https://www.oge.saga-u.ac.jp/dsci/
[2] 佐賀大学理工学部に,情報分野と連携して学べるデータサイエンスコースが登場しました!
https://youtu.be/db2MnWj8pAo?si=jMNfk12_AlzWnA2B
[3] 大学の授業を高校生向けに開講します。〜合格すれば大学の単位取得。入学すれば卒業に必要として単位認定〜
https://www.saga-u.ac.jp/koho/press/2023083030582
[4] 佐賀大学DXリスキルプログラム
https://www.sagallege-dx.admin.saga-u.ac.jp/

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