情報教育と環境

追手門学院大学の情報教育環境



1.これまでの経緯

 本学は、1968年の経営学科設立にともなって、数理分野を充実させ、計算センターを設置するなど、情報教育への取り組みは早くから進められてきた。そのことは、進取の気概を持つという本学の理念を具現するものとして、本学の特色の一つとして現在にも受け継がれている。
 1985年にパソコンLANベースのCAIを構築。1990年には従来のホスト主義から分散型ネットワークへの移行構想を検討し、いち早く情報処理教育から情報教育への転換を模索した。その結果、1992年に言語情報演習室を設置して語学研究・教育における情報化を図るとともに、クライアント/サーバ方式に基づく学内LAN(HARUKA)を構築して情報化社会に見合った情報教育を施す体制を整えた。
 さらに、高度情報マルチメディア社会を先取りする構想として、1995年に、従来の語学教育を中心として出発した視聴覚センターと経済・経営系を主体とした計算センターが、総合情報教育センターとして組織的に統合され、全学規模の情報ネットワーク構築の基盤整備がなされた。その理念は、国際性と情報化という2つの大学のあるべき方向性を、統合的コミュニケーション概念としてまとめて大学教育の改革を図ろうとするものであった。その理念を具体化する総合情報教育ネットワーク(OceanHARUKA)は1995年に導入設置された。現在、その情報施設・設備を活用した大学教育改革の努力が進められている。


2.総合情報ネットワークのコンセプト

 1990年から計算センター内部で構想されてきた学内情報システムの目標は、“誰とでも、何処からでも、どのような媒体情報も自由に交換できるキャンパス”の実現であった。すなわち、それは高度情報社会の有様をキャンパス内に実現して、キャンパス空間における学生・教員の自由な情報活動から来るべき社会に向けた行動と発想を生み出そうとするものである。この構想は、前述の統合的コミュニケーション理念実現の技術的側面を担った。
 統合的コミュニケーション概念は、人と人、人と機械、機械と機械のコミュニケーションの3つの概念から構成されるものとした。それぞれは、語学教育、情報リテラシー教育、高度情報処理教育に対応づけられ、ネットワークとマルチメディアを中心とする情報技術による教育の充実を図る教室機能へと変換された。
ネットワーク構成図


3.ネットワーク環境と教室機能

 マルチメディア情報の転送を配慮するとネットワーク・トポロジーは複雑になる。本学のトポロジーは3階層で構成されている。すなわち、FDDIによる基幹バックボーン・ループと、それに接続する教育・研究・コミュニケーションの3つのFDDIグループ・ループ、各ループには各種サーバーが機能分けされて接続されている。さらに、それぞれグループ・ループに接続する教室サーバーと教室端末で構成される支線ネットワークである。音声および動画などの大量情報のトラフィックに適切に対応するには、この構造では不十分であることは明らかである。このような階層化を図ることによって情報がネットワーク全体に広がることを回避し、障害の局処化をはかり、かつダイナミック・スケジューリングなどのソフトでカバーすることでその問題に対処している。
 教室機能は、それぞれの教育特性に適合したマルチメディアとネットワーク機能の活用を考慮した構成になっている。語学教育や演習のためのコミュニケーション演習室はマルチメディア対応パソコンとビデオオンデマンド(VOD)による双方向授業と個別学習に特徴がある。情報リテラシー教育は、通常の情報処理教室で進められるだけでなく、通常科目の授業を情報機能によって効率的に行う目的を持ったフォーラム教室と呼ばれる多目的教室によって行われている。また、各種プロトコルやインタフェースおよびミドルウェアは高度な情報教育の切り口として適切である。高度情報演習室および言語情報演習室はそれら高度な情報応用教育施設として位置づけられる。さらに、学生の自由な情報空間としてサイバースペースと呼ばれるオープンな教室を設けている。


4.マルチメディア環境

 情報技術による大学教育の効率化の1ステップは、媒体情報を駆使した良質な教材活用とネットワーク機能を駆使した多様な授業形態への対応とによってまずは実現できよう。
 最初の教材問題に対処するために、本学ではマルチメディア・ラボラトリーを設置してマルチメディア教材の開発環境を整えた。この施設は、多様な媒体情報のデジタル化、変換、作成、編集、および管理など12のブースと1つのスタジオに機能分けして構成されている。ここで作成されたデジタル素材はイントラネットのCGIを活用することによってきわめて高度なマルチメディア教材にまとめることができる。
 一方、多様な教授形態への対応として、本学では、講義支援と学習支援の2つのシステムを開発し、活用している。講義支援に含まれるチャット・システムと呼ばれるリアルタイムの応答システムは、双方向性を授業に持ち込む1つの試みであって、多人数授業においても教員と学生の関係を緊密に保てることが分かっている。学習支援は学生の自主的な学習を支援するもので、予習や自宅からのサーバー・アクセスあるいは欠席者フォローの機能を持つ。


5.今後の課題

 昨年度(平成8年度)1年かけてマルチメディア教材の開発作業を進めてきた。それはまだ十分な内容にいたっていない面もあると考えられるが、平成9年からそれらを授業に活用して、問題点を洗って行かねばならない。情報技術の進歩はまさに急速であり、今後もそれに対応した大学の情報環境の在り方を大局的な立場から注視して行かなければならないであろう。



文責: 追手門学院大学経営学部教授 池亀 正勝

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