特集 大学のマルチメディア環境

遠隔授業におけるマルチメディアの活用


道都大学



1.はじめに

 本学園は、札幌市隣接の北広島市に大学美術学部、短期大学部、紋別市に社会福祉学部、札幌駅北口には道都国際観光専門学校を設置している。昨年4月、大学美術学部が紋別キャンパスから札幌キャンパスに移転し、新学舎建設にともない、マルチメディアに対応したハイテクアート室や各種メーカーのコンピュータ室、更にインターネットを整備した。この高度情報化、国際化に対応した教育施設の一環として札幌キャンパス、紋別キャンパス、札幌駅北口キャンパスをISDNで結ぶテレビ会議システム(3校同時放映テレビ講義室)を整備し、遠隔教育に活かしている。


2.導入の背景

 図1に示すように、短期大学部から大学3年次編入の他、経営科国際コースでは、本学で2年間学び、卒業後、提携米国5大学の3年次に編入する留学システムを有して、進学、国際交流、語学教育に早くから力を入れている。また、本学園は、海外に15ヵ国27大学と姉妹結縁をし、国際的な教育・学術交流を推進している。この環境を有効活用するためにテレビ会議システムを考えた。更に、従来から札幌キャンパス(美術学部・短期大学部)から、約320Km離れた紋別キャンパス(社会福祉学部)と札幌駅北口キャンパス(道都国際観光専門学校)との集中講義などを通した相互交流が行われていたが、3校の距離のハンディをなくすことにより、教育機会の充実やカリキュラムの幅を広げるなど有用性を増すこととなる。
図1 編入学システム


3.システムの概要

 システムは、世界標準方式注)のSONY製ロールアバウトパッケージPCS-5000(ロールアバウトプロセッサー、カメラユニット、オーディオユニット、リモートコマンダー)、29インチテレビで構成され、前面に100インチプロジェクター、両サイドには43・41インチプロジェクションを配置している。カメラは、各キャンパスを遠隔操作できるメインカメラと、180度旋回可能な全景撮影用カメラを設置している。周辺機器として、OHC、ビデオ、コンピュータを接続することにより、効果的な講義や放映状況の録画も可能である。
 PCS-5000は、4ヵ所までのグループをISDNで結び、同時ミーティングが可能である。相手先に同方式のテレビ会議システムを導入していれば、日本国内だけでなく海外とも簡単に接続可能であるため幅広く利用できる。


4.遠隔授業の実際

 昨年8月に同システムを導入し、試行も含め多岐にわたり利用した。社会福祉学部への編入学生を対象に、紋別キャンパスの教員数名が、社会福祉学部のガイダンスや模擬授業を展開、また、姉妹校の外国人教員来日のおり、3校接続し双方向コミニュケーションを実現。さらに、各キャンパス情報教育担当教員による今後のコンピュータ教育の方向性等の意見交換に利用した。昨年度は、学年歴の途中導入ということもあって定期的な遠隔授業まで展開できなかったが、今年度は各キャンパス間で所属する教員の集中講義の事前講義、前述した語学教育利用による一層の推進をする予定である。また、海外姉妹校との接続を可能にすることにより、4ヵ所マルチコミニュケーションを実現し、ネイティブスピーカーとのインタラクティブな直接講義、遠隔授業を進めたいと考えている。更に、様々な国の海外来賓の来学事の様子などを3キャンパス同時中継することにより国際感覚を直接身につける機会としたい。その他、それぞれの専門分野を活かした教員と学生交流(例えば、福祉とデザインの研究)などのきめ細やかな教育交流に活かしていく予定である。
図2 接続状況概略図


5.今後の展望と課題

 インターネットを利用した授業などマルチメディア利用の教育は黎明期を迎えたばかりではあるが、従来の黒板に向かって板書し、学生に向かって一方的に説明する教授方法から大きく変わろうとしている。インタラクティブにしかも遠距離間の授業を可能にするテレビ会議システムは、授業を受ける者のみならず教授する立場においてもその意識の改革を迫られることになろう。
 実際に受講態度などで熱心に耳を傾けるなどこのシステムの有用性が発揮されている。しかし、今後の課題として、授業の進め方や教材の提示の工夫など新しいノウハウの蓄積が必要と思われる。



<< 注 >>
WTSC(世界電気通信標準化会議)が定めたITU-T勧告に準拠。


文責: 道都大学短期大学部助教授 吉本 亮二
  道都大学美術学部助手 上坂 恒章

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