特集 大学のマルチメディア環境
大学図書館におけるマルチメディアの活用用
東京情報大学
1.はじめに
東京情報大学は1988年に千葉市に開学し、現在は大学院経営情報学研究科と経営情報学部(学生数約2,300名)を置いており、また電算センターと教育研究情報センターという2つのセンターを置いている。電算センターは学内のコンピュータ演習室や大型汎用機等の管理運営を所管する。教育研究情報センターは大学図書館と視聴覚センターの機能を併せもった組織だが、昨年、図書館機能を含む新しい建物を建設して、その管理運営にあたることとなった。この建物は『総合情報センター』と命名されているが、ここではわかりやすく“図書館”ということにする。
当館はこれまでもLL教室やスタジオ、館内のAVブースなどの運営を通じて、メディア教育の支援サービスに力を注いできた。学内の講義講演の模様などを収録したオリジナルビデオ教材も100本を越える。こうして蓄積されたノウハウを反映して、新しい建物にもスタジオや調整室、大小2つの視聴覚ホールなどを備えるとともに、図書館機能のなかでも、いくつかのマルチメディアへの対応を図っていくこととなった。
2.VODによる図書館利用指導
当館ではVOD(ビデオ・オン・デマンド)システムを、学内広報や図書館利用指導に用いている。ビデオサーバは、16ギガバイトのハードディスクにMPEG1で約20時間の動画・音声情報が蓄積可能である。ここからスター型にネットワークされたクライアント用パソコンが館内12か所に配置されている。ここで提供しているのは、前述の講義講演の記録のほか、学内の諸行事を取材したニュースや大学施設紹介など、3分から1時間半まで、長短さまざまな映像番組約60本である。オリジナル番組は、図書館員がベータカムで取材したもので、ノンリニア編集機によって効率的に編集、文字入れ等が行われている。
クライアントでは、メニュー画面にある9つの項目ボタンからセレクトすると、6つの子画面に各番組のタイトルと静止画像が現れ、これをクリックすることで番組が始まる(図参照)。9項目のうち「大学・センターのご案内」「図書館の使い方」「お薦めコレクション」「図書館の達人」の4つの項目のなかに、それぞれ、館内施設、資料検索や貸出・返却方法、コレクションの紹介、各種データベースの利用法など、全部で20本余りの図書館利用指導に関する番組が収められている。
当館ではこれまでもガイダンスでビデオ上映を行っていたが、今回、VODを導入してみて、次のことを長所として感じた。
まず、情報の内容と、伝達の方法との相性の良さである。というのも、大学図書館には多様な資料と利用形態があるが、それをVODでは利用の各場面ごとの短編映像として提供できるので、そのとき利用者が必要とする情報だけを、ごく短時間で視聴してもらえるという点がたいへん実用的である。言うなればノンリニアに展開している図書館サービスの内容を伝えるのには、ノンリニアなメディアが適しているというわけである。これは第2に、番組を制作する上での負担の軽減につながる。もしこれらの番組が全部で1本につながった長編であったら、そこに起承転結のストーリーをもたせ、観客(学生)を飽かせることなく、多くの情報を上手に理解させる脚本・演出というのは至難であろう。3〜5分で1テーマを理解させるのなら、淡々と場面の流れを説明すれば十分だし、修辞的な演出は少ない方がVOD向きでもある。各々の番組を別々に作ることができ、ある番組だけを後でさし替えることも容易で、この点ではCD-ROMよりも気楽なメディアと言える(逆にいえば、感動というものを伝えるには不向きなメディアであろう)。第3に利用指導の機会が飛躍的に増大する。本システムのクライアントは、館内各所に分散配置されており、学生はロビーの壁に埋めた40インチモニタやOPACの隣に置いたパソコンなどで、必要な情報に随時アクセスできる。ガイダンスでビデオを1度上映するだけなのに比べ、日常的で効率の高い利用指導となる。今春のガイダンスでは、当館の大ホールの200インチビデオプロジェクタ(ILA)で、このVODとホームページを上映し、「当館ではこのようなメディアから必要な情報を自分で獲得していくのだ」という方法のみを説明したのであるがが、その後の利用者の行動を見ると概ね十分な成果があったものと思っている。
実際、この春は新入生を中心に、当館のVODの人気は非常に高いものがあった。もっとも利用指導番組よりも、課外活動や入学式などの学内ニュース番組の方がより喜ばれている。コンピュータの画面に自分や友人達が動画で出てくるというのは、たしかに面白く、キャンパス・コミュニケーションの手段として、とてもインパクトがある。その一層の活用のためには、現在の閉じたネットワーク環境での利用から、リアル・ビデオの技術を用いた開かれた利用環境へと、できるだけ速やかに移行していきたいと考えている。
3.マルチメディア・ワークショップの設置
当館では閲覧室の一角に、マルチメディア・ワークショップと称して、12台のAVブースと22台のパソコンを設置し、AV資料や電子出版物、ネットワークなどを自由に利用できるようにした。書架や閲覧席との仕切りのないコーナーであり、図書館資料と新しいメディアが渾然一体となった学習環境として提供することで、学生が知的興味のおもむくままに、様々なメディアを紡いでいけるような図書館にしていきたいと考えたのである。コーナーの一部にはスキャナ、MIDIキーボード、ビデオ編集機なども用意している。パソコンのうち5台はDVDプレーヤを備え、前述のVODのクライアント機能を持ち、インターネットも使えるという、いわゆるマルチメディアパソコンになっている。
このほか館内の閲覧席には、114口の情報コンセントを設け、利用者がノートブック・パソコンを接続すれば、IPアドレスを自動発行してインターネットを利用できるようになっている。当館のホームページでは、学外の情報リソースへのリンク集の充実にも力を入れているつもりである。
このような試みを通じて、学生達が、多様なメディア・リテラシーを体得しつつ、自ら調べ学んでいくことの楽しさを感じることのできるような図書館づくりをしていきたいと思っている。
(URL:http://www.iic.tuis.ac.jp)
文責: |
東京情報大学 |
|
教育研究情報センター事務長 伊藤 敏朗 |
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